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EX-9 お気楽女神登場

 「こっちだ」


 サクヤ達は隻眼のデッドリーベアと戦った後、慎重に歩を進めていた。一階の扉まで後少しのところまで近づいていた。


 「最初はどうなることかと思いましたけど、全然平気ですね!」


 「ある意味最強メンバーが揃っているからなあ……おい、ローラ、いいかげん起きろよ」


 「油断するなよ? 俺達の邪魔をするつもりならあれだけで終わると思えない」


 ここまでの間、通路で巨大ネズミの魔物や某黒い悪魔型の魔物などを倒していた。ただ、隻眼ベアのような強力な魔物が出てきていないのは幸いだった。

 

 陽がコントローラーをペしぺし叩いていると、シロップを抱っこした綾香が覗き込んでくる。


 「きゅきゅん?」


 「ローラは駄目?」


 「うんともすんとも言わないな。こりゃ、俺達お荷物かもしれないぞ……」


 「ははは、大丈夫だ。俺もそんなもんだし」


 「慰めにならないよクリスさん……」


 陽がクリスにため息をつくと、綾香がフレーレに掲げて言う。

 

 「?」


 「大丈夫じゃない? 一応、魔法は使える訳だし≪シャープエッジ≫」


 綾香がフレーレのメイスに魔法を使うと、メイスが鈍く輝き出し、やがて消えた。


 「これはなんですか綾香さん?」


 「武器の切れ味を上げる魔法なんだけど、よく考えたらメイスにはあまり意味なかったかも。ま、そういうことだからサクヤさんと、ルーナさんには効果があるはずよ」


 「ふーん、武器そのものに使う補助魔法ねー。これ、私にも使えないかな」


 ルーナがフレーレのメイスをまじまじと見つめていると、綾香の足元にシルバがてくてくと歩いて行き、ひと声鳴いた。


 「わん!」


 「ん? どうしたの?」


 「わんわん!」


 綾香がしゃがんで尋ねると、シルバが歯をガチガチさせ、前足を綾香の膝に置きながら吠えた。


 「……まさか、牙と爪にシャープエッジをかけて欲しいの……?」


 「わん!」


 そうだと言わんばかりに、その場でくるりと回るシルバ。そして、綾香の裾をぐいぐい引っ張っていた。


 「うーん、可愛い。 それはさておき大丈夫かな? ルーナさん?」


 「いいんじゃない? 別に死んだりするわけじゃないでしょ? 効果が無かったら諦めると思うし」


 「飼い主さんがいいなら……≪シャープエッジ≫」


 綾香が魔法を使うと、シルバの爪と歯がぼやっと光ってしばらくすると消えた。輝きが増したような気がする。


 「わぉーん♪」


 「あ、どこいくんですか!?」


 「追いかけよう、はぐれたら面倒だ」


 フレーレが止める間もなく、歯をガチガチ鳴らしながら通路の奥へと走って行く。レイドの言葉で慌てて追いかけると、角を曲がったところでサクヤが叫んだ。


 「お! ここだ! この下にある扉、あれがそうだ。恐らく開くと思うが……」


 発見した喜びも束の間。サクヤは口をつぐむ。それもそのはずで、扉の前に巨大なゴーレムが立っていたからだ。


 「コッケー」


 ベティちゃんがちょいちょいっとサクヤの足を突く。


 「ベティちゃんのくちばしならいけると思うけど、俺が先行するからベティちゃんは後から飛んで――」


 サクヤがオーダーを決めようとしたところでクリスが叫んだ。


 「あ、おい、狼が!?」


 「シルバ!」


 「わおわおーん!」


 「コケ!? ……コケッコー」


 「ベティちゃんまで!?」


 崩れた階段からシルバがゴーレムに向かって飛んだ! そして一匹で活躍をさせまいとベティちゃんも文字通り飛ぶ!


 ギン!


 騒ぎに気付いたゴーレムがギギギ……と動き出し、拳をシルバに突きだした!


 「わおん!」


 シルバは構わず、拳へ特攻。


 「きゃあ! シルバ!」


 フレーレが手で顔を覆い叫ぶが、ルーナがフレーレの肩を叩いて言う。


 「大丈夫よ! あれを見て!」


 「え? ……ええ!?」


 「ありゃすごいな……」


 レイドが呆れて口を開く。なんとシルバは拳を牙で削り取っていたからだ!


 「わんわん!」


 サクサクサクと、まるでビスケットを砕くようにガジガジと拳を削る。ゴーレムは開いた腕でシルバに掴みかかろうとした。


 だが――


 「コッケー!」


 ゴッ!


 ベティちゃんが腕の付け根にくちばしを刺すと、鈍い音と共にヒビが入り、腕はゴトリと床に落ちた。後は敵ながら見ていられない状態になってしまう。


 「あーあ……」


 「ゴーレムってあんな簡単に砕けたっけ……」


 

 「わんわん」


 「コケコケ」


 足を崩した後は丁寧に砕いていき、床にはただの砂だけが残ったのだった。


 その後すぐ、サクヤのレビテーションで全員を階段下へ降ろしてから扉の前に立った。


 「凄かったわねシルバ! 偉い偉い!」


 「わふん♪」


 ギラリと牙を見せつけながら喜ぶシルバを尻目に、扉の前でサクヤとレイド、クリスと陽が唸っていた。


 「開かないか……」


 「ここしか怪しい所は無いんだけどなあ」


 「ぶった切ってみるか?」


 レイドが剣に手をかけるが、サクヤはそれを制した。


 「変な魔法がかかっていて反射されたら全滅だし、もう少し調べよう。壊すのは後でもいい」


 「よし、そういうことなら頑丈な俺がやるかな。どれ――」


 丈夫な体を持つクリスが押したり引いたり叩いたりしたが、効果は無く徒労に終わった。


 「なんで俺の時は活躍できないんだ……」


 「やっぱり、俺と一緒に役立たず枠――ん?」


 陽がクリスの肩を叩いて慰めていると、コントローラーがぶるぶる震えていることに気付く。


 「! 来たか! もしかしてここに来ることがローラが復活するフラグ……!」


 慌てて取り出し、電源を入れると――


 『あ! やっと繋がった! 陽さん、今どこに居るの!』


 「お前かよ!」


 赤い髪をした女の子……女神ルアが画面に映っていた。


 『4つ目の世界に行ったと思ったら、行ってなくて焦ったわ。無事見たいだけど、フィリアは?』

 

 「それが……」


 綾香が口を開いたところで、サクヤとクリスが詰め寄ってきた。


 「お前ルアか!?」


 「久しぶりだなあ」


 『あれ!? サクヤさんにクリスさん!? 何で陽さんと一緒なの?』


 「知り合いなの?」


 綾香が尋ねると、サクヤは即座に応える。


 「元凶だ」


 『酷いっ!? ……まあいいわ。ちょっと状況を聞かせてくれる?』


 「俺達にもよく分からないんだが……」


 「(誰なの?)」


 「(世界を管理している女神の一人よ)」


 「(女神……エクソリアさんとかの知り合いかな?)」


 ルアを知らないルーナ達をおいてけぼりにし、サクヤは顛末を話す。すると、ルアが険しい顔で腕組みをし、しばらく考えていたが目を開いて語り出す。


 『……かなーり昔、神の目を逃れたとんでもない男がいたって話を聞いたことがあるわ。その男の名はグレイブ……』


 「に、日記の人と同じ名前です」


 『そう。恐らくそこはグレイブが作りだした虚空間……ずれた場所だと思うわ。まさか、コントローラーで通信ができるとは思わなかったけど、幻とも言われたグレイブの屋敷を知ることができるなんてね』


 「そういうのはいい。問題はどうやってここから抜けるか、だ」


 サクヤが鼻を鳴らして言うと、ルアはうーんと考え込んでしまう。


 『情報が無いから私も役に立てないけど、そこから帰ってきたという人間がいないわけでもないの。今、どこにいるの?』


 「一階の大扉の前だ」


 『あ、そうなのね。そこは確か力づくでぶっ壊していいはずよ!』


 「……」


 サクヤ達は腑に落ちないものを抱えて、全力で扉を破壊した……!

【後書き劇場】


『いえーい!』


 やかましい! えー、そんなわけでご無沙汰しております。


 こちらの作品、ルーナやレイド、フレーレの出演する『パーティを追い出されましたがむしろ好都合です!」が書籍化にあたり、キャラが登場していて問題ないか確認しておりました。


 問題ないということで、再開とあいなりました!


 『そして復活一話目で、私! 登場!』


 ふん!


 『ぐは……!?』


 というわけで引き続きよろしくお願いいたします!


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