EX-7 ひとまず全員集合!
「げほ……えほ……フレーレさんだっけ……? ちょっと過激すぎるな……ベティちゃんも調子に乗るんじゃない」
「コケー♪」
「いえーい♪」
「どことなくフィリアっぽいけど、この子の方が怖いわね……」
「一緒にいて分かったことは、基本力技だ」
フレーレとベティちゃんが削夜の言うことなどどこ吹く風でハイタッチをしていた。陽と綾香が肩を竦めながら部屋の中を覗くと、部屋の中に上へ登る階段があった。
「ダンジョンRPGみたいだな」
「そうね、部屋の中に階段なんて出来過ぎよね」
「だんじょんあーるぴーじー?」
ルーナが『?』を出しながら尋ねるが、陽と綾香は話を続ける。
「一応、隠し階段と見るなら、この上でイベントがあると思うんだが……」
「そうね……できればローラが復帰するイベントが欲しいわね」
コントローラーを握りしめて綾香が呟くと、ルーナは後ろから覗きこみ尋ねる。
「ローラって誰? それ何?」
「削夜さんが武器持ちだからとりあえずは大丈夫だと思うけどな」
「うん。いざとなったら守ってくれるんでしょ? (フィリアがいない今がチャンス!)」
「お、おう……」
そこでルーナはフレーレに抱きついた。
「うわーん! フレーレ! あの二人イチャイチャして私の話を聞いてくれない!」
「イチャ……!? ち、違う! そんなんじゃ!」
「ハルさん、彼女さんと会えたからってそれは酷いですよ?」
「んふふ、彼女だって陽ぅ~」
そしてついに、カオスになった現場を収拾すべく削夜が口を開いた。
「はいはい! そこまでだ! 今はそんなことを言っている場合じゃないだろ? 階段も出てきたことだし、先へ進もう。元の世界に帰れるかもわからないんだ、手がかりを探そう」
「コケー」
「え? 自分はお嫁さんが誰も来なかったから拗ねてるんですか?」
「うるさいな!? ホントに分かってんのか!?」
ベティちゃんとフレーレが会話をすると、ルーナが慈愛の目で肩を叩いた。
「あー……」
「もういい! 行くぞ!」
削夜はベティちゃんを抱えて階段をドスドスと登っていき、それをルーナ達が追って行った。登りきると、似たような部屋に辿り着き、内側からは簡単にドアが開いた。
「……変わり映えしないな?」
「そうね、薄暗いのは変わらないし……ここって三階でいいのかしら?」
「だな、しらみつぶしか……面倒だな……」
削夜とルーナが話をしていると、足元で鼻をふんふんしていたシルバが鳴いた。
「わぉん!」
「どうしたのシルバ? あ、待ちなさい! 危ないわよ!」
「きゅんきゅーん♪」
「シロップまで!? レジナ、追わないと!」
「わふ」
大丈夫と言わんばかりに、ててて……と歩いていくレジナ。少し歩いた所で、角から声が聞こえてきた。
「うわ!? お、狼か!?」
「あ! シルバとシロップか! お前達がいるということは……」
「今の声!」
ルーナが角の向こうで聞こえてきた男性の声に心当たりがあるようで、ルーナはシルバ達を追って駆け出し、角を曲がったところで、思っていた人物を目にして叫んだ。
「レイドさん!!」
「ルーナ!」
「(誰だ?)」
「(レイドさんです! ルーナの恋人で、勇者なんですよ)」
「(ほー)」
「(勇者だったら私達もそうよね)」
「(だな。というか何でボソボソ喋ってるんだ俺達は……)」
「(コケー)」
「(あれ? よく見たらレイドさん以外にも人がいますね)」
フレーレがとてとてと近づき、削夜達もそれに倣う。すでにルーナは隣にいる男とあいさつをしているところだった。
「私、ルーナって言います!」
そこに削夜達も合流し、それぞれ挨拶を始める。
「わたしはフレーレです、宜しくお願いします」
「俺は削夜。出月 削夜だ」
「俺は神代 陽で、こっちは……」
「雨宮 綾香よ!」
「俺はクリス。クリス=ルーベインだ……って日本人がいる!?」
「え? 俺達が分かるのか?」
「ん……俺はこんななりだけど、日本で折戸 真ってサラリーマンだったんだよ。死んで異世界に転生しちゃったけど……」
「へえ、死んだのは俺もそうだけど、姿まで変わったのは初めて見たな」
「俺達はそもそもハゲ神に攫われたようなもんだしなあ……やっぱり世界を救ったりするのを頼まれたんですか?」
同じ日本人ということで削夜と陽のクリスに対する食いつきが凄かった。横に居たレイドは割と簡単に空気になる。
「……お、俺はレイド……あの、ルーナとフレーレと同じ世界で……」
「なんだ、ルーナも恋人いるんじゃない。フレーレは?」
「わ、わたしはその……」
「へへー。魔王と勇者のカップルって地元(魔王城付近)じゃ有名なのよ」
「う、うん……物騒な感じは伝わるわ……」
「コケー!」
「わんわん!」
一通り話した後、先に進まない彼等に業を煮やしたベティちゃんと狼達により、仕切り直しを要求され、レイドとクリスを交えて情報交換と相成った。三階の適当な部屋に入ることができ、そこはリビングのように広かったので、そこで一度休憩を兼ねることにした。
「俺達が持ってきた日記は監禁されていた女性の分」
「わたしとハルさんが持ってきたのは恐らく屋敷主のもの、ですね」
「まだ誰か屋敷に連れてこられているかもしれないけど、とりあえず今出来そうなことは三つだな」
お互いの日記を見直した後、削夜が腕を組んで言う。
「屋敷の主を探すこと、それとまだ生きているなら監禁された女性を探すこと。最後は地下室とやらを探すことだろう」
レイドが言うと削夜は頷き、話を続ける。
「俺は一階から上がってきた、ルーナ達は二階、そしてクリスさんやレイドさんは三階……俺が一番地下への入り口に近かった。けど、下に降りる階段は見つからなかったよ」
「なら屋敷内ではないのか?」
「日記には『屋敷中を』と書いているから外ではないと思う。それに怪しい扉はもう一つある」
そう言って削夜は一階にあった朽ちた階段付近の扉を説明すると、クリスと陽が揃って口を開いた。
「「もしかしたら全員揃ったら開くフラグとか??」」
「ふらぐ?」
ルーナが小首を傾げるが、削夜は腰をあげて皆に告げた。
「とりあえず扉に行ってみよう。これで開けば儲けものだし、開かなければ別の手を考えればいいさ」
「そうですね!」
フレーレが元気よく答え、削夜達は部屋を後にした。
「……ねえ、ふらぐってなによー」
本人たちは気付いていないが、これで全員集合となった削夜達。さて、彼等を待ち受ける出来事とは?
ひとまず集合することができました!
のんびり進めていきますのでよろしくお願いします(笑)
【後書き劇場EX】
『本格的に探索が始まるのね』
ようやくだ……というか、中々かけない……
『元々かくのがあるからねえ』
でも地味に非公開の新作があったりする……
『なにやってんのよ……』