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EX-5 館の秘密と最強のニワトリ


 『〇月×日


 目が覚めると私は、知らない部屋で目を覚ました。そして私を覗き込む顔……その男の顔は……まったく見たことがなかったわ。え!? 私と結婚した!? ど、どういうこと……もしかして誘拐されたの?』


 『〇月□日


 あの日から一週間が経ったわ。

 あの男はグレイブというらしい。私が何を聞いてもニコニコして「心配しなくていい」としか言わない……食事は美味しいけれど、グレイブと一緒に居るのは怖いので私は部屋にこもってこれを書いている。私が居なくなったと分かればきっとお父様とお母様が探しに来てくれるはず……これでも領主の娘ですもの。

 でもそうは言ってもすでに一週間が経っているので、自分でもなんとか逃げられないかと、庭へ案内してもらった。そこで愕然とした……見たことも無い景色……開かない扉……ここは、どこなの……? 私は耐えられなくなり涙を流してしまった』


 「……どう思う?」


 「誘拐、だろうな。何か勘違いした男がどこか遠くへ連れ去った、という事だと思うが……気の毒に……」


 「一応先を読んでみるか」


 『△月×日


 グレイブの目を盗んで、私は屋敷中を捜索した。食料を運び込む必要がある必ず外に繋がる出口がどこかにあるはず……すると地下へ通じる階段を見つけた。奥へ進むと、大きな鉄の扉が……。近づこうとしたところで私は何かに担ぎ上げられてしまった。影は二つ……もう一つの影から何かを嗅がされ気が付くとまた自室のベッドの上に居た……怖い……。でも、あの部屋にはきっと何かある……部屋の扉についてたプレートには見たことも無い文字が書かれていたし……』


 日記は続いているが、とりあえずキーワードを見つけたので一旦日記をクリスは閉じた。


 「地下にどうやら秘密があるらしいな」


 「ああ……目的が見つかっただけでも儲けものだ、行こう」


 「日記は持って行くか。ゲームだと、他に攻略のヒントがあるしな」


 「ゲーム?」


 「こっちの話だ、行こうぜ」



 ◆ ◇ ◆



 「……とんでも無い場所ってのはよく分かった。この日記書いた奴頭おかしいんじゃねぇか?」


 「そうですね……まさか、別世界の人間を召喚する魔法で女の子を呼んだなんて」


 ハルが胸糞悪い、とフレーレの手を引っ張りながら廊下を歩く。日記を読み進めていると、男は『別世界の人間を召喚する』魔法を使えるといことが分かった。対象は色々だが、思い描く理想の女の子やそれこそ本の登場人物を呼び出す事ができるらしい。その魔法を使い、女の子を呼んで監禁したのだった。


 「で、女の子に拒絶されて殺した、か」


 「何度も召喚していたようですし、理想の女の子が来るまでやっていたんでしょうね」


 「それでぽっくり死んだんじゃ、今までの女の子が報われないな。それはいいとして、俺達がここに居る理由が分からない。日記の最後はこの屋敷の主は死んだみたいな感じじゃないか? なら誰が魔法を使ったんだ……?」


 「そ、そういえばそうですね。あれ? というか……もしかしてわたしって新しいお嫁さん候補……?」


 「今更かよ!? 日記読んでいる時に気付いてたと思ったのに!?」


 「わ、わたし、そういうのは疎いんですよ! ルーナにもよく言われてましたし! あ、ちょっと離れないでください。急に怖くなってきたんですけど……」


 「扉を破壊するような人が言っても説得力ないけどな……ま、俺もここからは出たいから協力するよ。となると、まずは地下だな……」


 クリスとレイドが見たフランソワの日記には書かれていなかったが、屋敷の主人であるグレイブの日記には魔方陣が地下にあると書かれていた。

 そのため、ハル達は地下を目指しはじめたのである。魔方陣を直接動かせなくても何か手がかかりがあるだろうと歩き出したのだった。


 しばらく歩いていると、T字路に差し掛かった所で爆発音がした。


 「な、何だ!? 左からか!」

 

 状況を確認しようと走りだし、通路を確認しようとしたところでフレーレに腕を掴まれる。


 「は、離れないでくださいよ?」


 「こら、くっつくな……! もし綾香に見られでもしたら……ハッ!? 殺気……!?」


 ゴゴゴゴゴゴゴ……


 ◆ ◇ ◆


 陽が殺気を感じる数十分ほど前。


 「わんわん!」「きゅんきゅん!」


 「どうしたの? 鼻をふんふんして?」


 シルバとシロップが尻尾を振って通路の先をじっと見つめていた。


 するとそこに……


 「あれは……甲冑?」

 

 「古い洋館にありがちね」


 「そうなの?」


 サクヤが目を細めて奥を見ると、通路の真ん中に甲冑が立っていた。綾香はゲームのお約束だと呟き、ルーナは首をかしげていた。そのまま進むと、サクヤが叫んだ。


 「ん!? あいつ、動いているぞ!? <ファイアアロー>!」


 「あ、魔法使えるんだ」


 だが、サクヤの放ったファイアアローは甲冑にヒットするも霧散してしまう。

 

 「マジックレジストか? って、まだ居るのかよ」


 「うわ、気持ち悪いわね……」


 ルーナが剣を抜いて魔法を打ち消した甲冑の後ろを見ると、さらに数十体、がしゃがしゃと近づいてきていた。


 「ならぶった切るまでだ。綾香、お前は武器が無いみたいだから後ろにいろ、ルーナは戦えるか?」

 

 すらりと、腰の刀を抜きながらサクヤが二人に言うと、綾香とルーナがそれぞれ答えた。


 「悪いけど頼むわね! 武器さえあれば大したことないんだけど……」


 「私は勿論戦えるわよ! ……その剣、蒼希のものに似てるわね? 刀身が黒いのは闇の剣っぽいけど……」


 「ん? 蒼希ってなんだ? こいつは黒焔刀アシミレート・レプリカってんだ。俺の愛用の刀だな」

 

 「レプリカ?」


 「ああ、悪神ってやつと戦った時に刀身が折れたし、本来宿っていた魂も成仏したからこいつは、似て異なるもんなんだよ。だからレプリカだ。それでも切れ味は……」

 

 一気に甲冑へ迫り、刀を振るうサクヤ。袈裟がけに軌跡が走り、ずるりと上半身が床に落ちる。


 「こんな感じだ。倒すぞ!」


 「サクヤさん強い! 私も! ……ん? ベティちゃん!? 危ないわよ!?」


 「コケー! コケッコ!」


 ルーナがサクヤの攻撃に感心していると、トコトコとベティちゃんが前へ躍り出る。それを見たサクヤがため息をついてベティちゃんに聞く。


 「お前がやるって?」


 「コケー♪」


 歓喜の声を上げて、ベティちゃんが羽根を広げるとサクヤはベティちゃんを拾い上げる。

 

 「どうするの……?」

 

 「ガウ?」


 「わんわん!」「きゅんきゅんー」


 ルーナが訝しげに聞き、レジナ達が声をかけてくるが、サクヤは「いいから見ててくれ」と言い、ベティちゃんを投擲するか前に入る。


 「ちょ、ちょっと……!? え? 魔力が収縮している……?」


 ベティちゃんの体が段々と光り輝き始め、最高潮に達したその時、サクヤがベティちゃんを放り投げた!


 「ベティちゃんフラッシュ! &<フルシールド>!」


 「コケー!」


 トン……コロコロ……


 甲冑軍団の中央に転がるベティちゃん。それを攻撃しようと甲冑が襲いかかったその時……!


 カッ!


 ベティちゃんを中心にゴゴゴ……と爆発が起こる。光に飲まれた甲冑は跡形もなく消し飛んだ! サクヤから後ろに居るルーナや綾香、レジナ達はサクヤのフルシールドで完全ガードして無傷である。


 「コケー♪」

 

 満足げなベティちゃんがサクヤの元へ戻り、羽を広げる。


 「何それ……ニワトリ?」


 「ああ、ニワトリだ。卵を産むぞ」


 「卵を産めばいいってもんじゃないと思うけど……」


 珍しく綾香も呆れた感じでベティちゃんを抱え上げると、ベティちゃんがくすぐったそうに身をよじる。


 「ま、進めるようになったしいいじゃないか、行こうぜ」


 と、サクヤが促した時前方から声が聞こえてきた。


 「こ、こらくっつくな!?」


 「この声……! 陽!」


 「陽ってあいつか? ……あ、気をつけろ!? さっきのアリシアみたいに偽物かもしれないぞ!」


 「大丈夫、私が陽を間違える訳ない、か、ら……」


 自信たっぷりに綾香が言い放ったあと、すぐに言葉が詰まった。綾香の前には確かに陽が居た。だが、その腕に縋りつく女の子……フレーレと一緒に……!


 「陽ぅ……?」 

 

あー月一しか更新できない……。


いつも読んでいただきありがとうございます!


【後書き劇場4K】


『段々揃ってきたわね』


あまり長くしたくないかな、とは思っているけど……


『絶対長くなるわね(笑)』

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