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EX-4 不穏な屋敷?


 「ん? こりゃ……日記か?」


 「随分年季が入っていますね」


 「どわ!?」


 部屋を物色していると、陽がベッドの下から古ぼけた日記を発見。それを後ろからフレーレが覗き込んできたので驚いたのだ。現代高校生にはフレーレの胸元は刺激が強すぎる。


 「(くそ……フィリアみたいな感じかと思っていたけど、無自覚だからタチが悪いな。いや、あえてやっているとしてもそれはそれで問題あるけど……)」


 ここには居ない金髪の女神見習いを思い浮かべながら、フレーレと距離を取りつつ日記をめくる。文字は何語か分からないが『読む事』はできていた。


 『〇月×日


 ついにフランソワと一緒に結婚! 僕の日常がきっとバラ色になる事請け合いだ! フランソワに用意した大きな屋敷を見せると、首をブンブン振りながら涙を流していた。涙を流す程嬉しかったんだね、用意した甲斐があったよ!』


 「このお屋敷の方の日記みたいですね。結婚を機に書き始めたのでしょうか」


 「ち、近いな……続きを見てみよう」


 一応部屋の扉を閉めてベッドに腰掛けてページをめくる。


 『〇月□日


 フランソワがこの屋敷に居る。それだけで僕の心はとても踊った! 食事もお風呂も、寝る時も一緒! 寝るときにフランソワが『お母さん……』と呟いていた。大丈夫、これからは僕が君を守ってあげるからね!』



 「ラブラブですねー! わたしにもいい人が現れて欲しいです」


 「え? 恋人居ないのか? 可愛い顔しているのになあ……」


 「な、何を言ってるんですか!? お姉さんをからかわないでください」


 「いや、事実を言ったまでだけど……後、身長とか俺の方が高いからな? 次、めくるぞ」



 『〇月△日


 結婚から一週間。フランソワは部屋から出てこない。食事の時は一緒だけど、それ以外は部屋から出てこない。寂しい。だけど今日は庭に出たいと言ってくれた! 僕は嬉しくなって庭を案内したよ! 色々な花や植物を植えているのを見て彼女は困ったような笑顔をしていたと思うと、門を見て泣いていた。まだ実家に未練があるのかもしれない』


 「……」


 「……少し先を見てみよう」



 『△月×日


 彼女が部屋から居なくなった……大変だ!? でも、僕のしもべ達がすぐに見つけてくれた。もし地下に行ったのなら……危なかった……』



 「何か変じゃありませんか……?」


 「……読めば答えがありそうだ……先を見てみるか」


 「わたし怖いんですけど……」


 そして陽はページをめくり、そして……。



 ◆ ◇ ◆



 「来るわ!」


 ルーナの叫びで咄嗟に身構えると、角から可愛い栗色の髪をした女の子が出てきた。その姿を見て削夜が驚きの声をあげる。


 「ア、アリシア!? お前もここに居たのか!?」


 「あら、可愛い子! あんたの彼女?」


 「俺の嫁の一人だ……ってどうしたアリシア? どうして目のハイライトを失くしているんだ……?」


 「コケー! コケッコ!」


 「ガウゥゥゥ……」「わん! わんわん!」「きゅきゅーん!」


 ベティちゃんが鳴きながら削夜の後ろに隠れ、レジナ達はアリシアに吠えかかる。近づいてきながら、アリシアは静かに口を開いた。


 「……また」


 「また?」


 「また、女の子と一緒なんだね……? ボクやエミリ、エフィちゃんにトレナに飽きちゃったの……?」


 「ハッ!? い、いや、これは不可抗力だ! だいたい、いつここに来たかもわからないし、気付いたらこいつが横に寝て……」


 「横に……寝た?」


 削夜は今のはマズイと口を押えるが、アリシアには『そうとしか』聞こえなかった。ぼやっとした目がカッと見開かれた。


 「もう我慢できない……サクヤを殺してボク達も死ぬよ……!」


 アリシアが大きな鎌を取り出し、サクヤ達へと襲いかかる!


 「ちょ、ちょっと!? あたし達を巻き込まないでよ!?」


 「うわ!? 通路が狭いから逃げにくいわね、一旦バラバラになりましょう!」


 「分かった!」


 ルーナと綾香はアリシアの脇を抜けて通路へ。削夜はそのまま後ろへ下がった。アリシアはルーナと綾香を無視してそのまま削夜へ前進した!


 「って、俺が狙われてるんだから、こうなるよな!? お前等薄情だな!?」


 「何言ってるのよ、あんたの嫁なんでしょ! 誤解を解きなさいよ!」


 「ご、ごめんなさいー! つい!」


 綾香が罵倒し、ルーナが両手を合わせて謝ってくる。削夜の足元には狼達とその背中に乗ったベティちゃんが吠えたり鳴いたり騒がしかった。


 「死ね!」


 カキン!


 「あぶね!? あいつらはたまたま一緒になっただけだ、別に浮気相手でもなんでもない!」


 「削夜削夜削夜削夜殺す殺す殺すキルキルキル……」


 「わんわん!」


 「あっちいってろ! 危ないぞ!」

 

 シルバが削夜のズボンを引っ張りながら何かを訴えていた。そこで、ベティちゃんとレジナがアリシアに襲いかかったではないか!

 感情の無い瞳でギリギリと押してくるアリシアの足にレジナが噛みつき、顔にベティちゃんが引っ掻きに飛び掛かる。


 「狼はともかく、ベティちゃんがアリシアを攻撃した……? もしかしてこいつ……」


 「ウガガガガガ……! ハ、ナセ!」


 削夜が躊躇しているとアリシアの足と顔の皮膚らしきものがボロボロと剥がれ、中身が見えてきた。緑色をした何かだが正体までは掴めない。


 「アリシアじゃないってんならやらせてもらうぞ!」


 アリシアの偽物の胸へ刀を突き刺すと、ベティちゃんとレジナを引きはがしてもがきはじめた。


 「ア!? グボロォォォォ……」


 ベシャっと、液体状になって削夜の足元に広がった。匂いなどは無く、服もその一部だったのかすべて緑の液体として床に広がった。


 「な、何だったんですか……? レジナが噛みついたみたいですけど」


 「うわ、気持ち悪いわね……あんたの嫁さんはミュータントか何か?」


 「普通の人間で聖女だよ!? 俺にも分からん。ただ、狼達とベティちゃんは正体に気付いていたみたいだな。ただ、目のハイライトが消えるのはアリシアには珍しい事じゃないし、話し方も武器も俺の知っているアリシアそのままだった」


 「目のハイライトが消えるのが珍しい事じゃないってのは気になるんだけど……」


 綾香が目を細めて削夜を見るが、ルーナはそれを制して口を開いた。


 「削夜さんでも見分けがつかない、ということはもしレジナ達が居なかったら油断して後ろからバッサリって事もあった訳ですよね? そうなると、今後は気をつけないといけません。今みたいな状況になったらレジナやベティちゃんに任せた方がいいかもしれませんね」


 「そうだな……ベティちゃん、頼めるか? お前達もな?」


 「コケッコー!」


 「わぉん!」「わんわん♪」「きゅきゅーん♪」


 動物達が元気に返事をし、その場の雰囲気が和む。しかしすぐに削夜は怒りを露わにして呟いた。


 「偽物とはいえ、アリシアに刀を突き立てさせたこと、後悔させてやらないとな……」


 「大事にしてるんですねー」


 「……ちょっと羨ましいわね……」


 「ん? どうした? とりあえず正面の扉は開かないし、他の所へ行ってみよう。ルーナさんが来た方行とは違う通路へ行ってみようぜ」


 「そうね。下も分岐はしていたけど、とりあえず二階を探索してみましょうか」


 「魔物が出るならそれはそれで、だな。偽アリシアはともかく、何か手がかりがあるといいけど……」


 アリシアに変化していた謎の魔物をそのままに、三人と三匹と一羽は再び歩き出した。



 ◆ ◇ ◆



 「この部屋は……?」


 「女性の部屋、か?」


 レイドとクリスは通路を歩いていると、少し豪華な扉を見つける。鍵はかかっておらず、中は整頓されており薄いピンクの壁紙が女性の部屋を思わせる。


 「屋敷の主の部屋かな? ベッドの下のお宝には期待できそうもないな」

 

 「ん? 本、か?」


 クリスが引き出しやタンスを物色していると、レイドが机の引き出しから一冊の本を見つけた。


 「どれ、見てみるか。手がかりがあるかもしれん……これは日記みたいだな」


 「お、おい、女性の日記を見るのか?」


 「手がかりは必要だろ? こういうのに手がかりがあるんだよ、ゲームとかで良くあるんだ」


 「そうなのか?」


 「どれどれ……〇月×日……」


 クリスとレイドが見た日記の内容とは……! 

 

これはゾンビ映画の世界……?


いつも読んでいただきありがとうございます!


【後書き劇場EX】


『ホラーな屋敷?』


一応近いけど違うと言っておこう?


『なぜ疑問形なの……』

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