7 暇
それから暫くして
『どちらも同じくらい大好きです』と言う
私の言葉に言い争いを渋々止めた兄様達だったが、私の髪を見て
『お昼ごはんよりルーナの髪を直さなきゃ』
『なんでこんなにボサボサなんだ?』などと言い出してしまった。
私の頭がボロボロなのは兄様、貴方達のせいなんですけど…
「かみなんてどうでもいいので、それよりもごはんたべにいきましょうよ」
「そんなのダメだよ」
「そうそうダーメ。ルーナはいつも可愛くしてないとね」
こういう時ばかり、双子特有のシンクロを見せる兄様達。
でも、私は声を大にして言いたい。
可愛さより今はお昼ご飯ですよ、と。
私はもう、お腹と背中がくっつきそうなんです。
ほらっ、耳をすまさないでも聞こえてくる…
グーグーグーグー
私のお腹はさっきから全然止まりません。
「にいさま、はやくー」
「はいはい。もう出来るからね」
私の髪をしばり直すのはヴァン兄様。
鼻歌を歌ってルンルンだ。
その横でヴォル兄様は、静かにヴァン兄様と私を見ている。
「ほらっ、可愛くなった」
「ありがとうございます、ヴァンにいさま」
…っと、ここでヴォル兄様にも一言かけないと
仲間外れにしてまた、言い争いを始められたら堪らない。
「ヴォルにいさま、どうですか?」
「いつも通りとっても可愛いよ。ルーナはポニーテールもよく似合うね」
「ありがとうございます、ヴォルにいさま」
私がニッコリ笑えば、兄様達もまた笑い返してくれる。
本当、笑顔だけ見ていれば、今でも私の理想の王子様なのは言うまでもない。
「じゃあ、今度こそお昼食べに行こうか?」
「そうだな」
ほらっ、ルーナ。
そう言って兄様達がそれぞれ手を差し出してきた。
本当こうしてみるとこの二人、まさに『王子様』そのものだ
成長したらさぞ美男子と持て囃されるだろう。
自分で言うのも何だが、この兄達かなりモテる。
もし、王子と言う肩書きがなくとも、ご令嬢達からの黄色い悲鳴を
その身一身受けることは間違いないだろう。
…と言うか、受ける。
ルーナの嫉妬イベントでもそんなシーンをいくつも用意したし
「ほんとイケメンは、いきてるだけでおとくですよね」
「ルーナ?」
「なんでもないです!はやくごはんたべにいきましょう」
私は兄様達の手を華麗にかわし、一番前をズンズンと歩く。
しかし、いくら進んでも私は食堂につけず(中庭についた)
結局、兄様達に手を引かれる羽目になったのは言うまでもない。
「ルーナは本当、僕達が居ないと駄目だなぁ」
「まぁ、そこも可愛いんだけどな」
「きょうはたまたま、たまたままよってしまっただけです!」
そう、偶々。
決して私は方向音痴ではない
「はいはい」
「偶々ね、偶々」
「ほんとうです!」
「はいはい」
それから、私のお腹は無事満たされ、その後部屋に強制的に送られた
私を部屋に送って満足したのか、兄様達は午後の授業に戻っていった
また夕食時に迎えに来ると言って。
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そして数分後、兄様達が出ていったドアを見て
「…ひまだ」
そう私は思った。
分かっていたことだが、ルーナはとてつもなく暇だ。
まだ3歳になったばかりの私には、勿論家庭教師なども無く
貴族である為家の手伝い何てものもない、そう兎に角暇なのだ。
「べんきょうするにも、じもよめないし」
早速詰んだ。
家庭教師を頼もうにも、父様は出掛けて居ないらしいし
母様も一緒ときたものだ。
兄様達の話によると一週間程で帰ってくるらしいが、それまで暇過ぎる。
「ひまだ、ひまだ、ひーまーだー!!」
部屋の中でグールグル
あっちに行ってはグールグル
こっちに来てはグールグル
暇過ぎて、部屋の外に出て冒険しようと思ったら
手がドアに届かないときたもんだ。
メイドを大声で呼んでみても
『お嬢様はお部屋にいらして下さいませ』
『旦那様にも言われていますから…』と
部屋から出ることさえも止められてしまった。
何故っ!?
何故なんだっ!
私、今家の中で軽い軟禁にあってるんですけどっ
兄様達が一緒だったときは何処にでも行けたんですけど
部屋から出るなとは言われませんでしたけどー?
あっちにグールグル、こっちにグールグル。
私はこれを兄様達が来るまで、ずっと続けることになる。