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3 約束



トントン


私が決意を新たにしているとそこにノックがあった。


「ルーナ、入るよ」


そう言って私の部屋に入ってきたのはヴァンフリード。

ヴァン兄様だ。


「ヴァンにいさま?」


ヴォルとヴァンには家庭教師が来ていたはずだ。

まだ午前の授業中の時間なのだが…

家庭教師は…まさかサボり?

いやいや、真面目なキャラの彼にそれはないか。

私が不思議そうにしていると

それに気づいた彼は説明をしてくれる。


「ヴォルの成績が悪いから、僕だけ休憩貰ったんだよ。

ヴォルは魔術の方は上手いけど、剣術は剣を投げる位だからね」

「そうなのですか。で、ヴァンにいさまはどうしてここに?」

「そんなの決まってるだろう?僕の可愛いお姫様に会いに来たんだよ」


そんなうっとりした顔で見ないで下さい。

免疫のない私は、どこを見たらいいのか分からないじゃないですか

あぁ、にしてもこの歳から愛を囁いてくれるんですね…

兄様、貴方は本当に8歳ですか?

にしても、これが私、ルーナに対してじゃなかったら萌えられたのに

画面の外なら自分の作ったキャラに発狂出来たのに


「えっ、えっと、けさもおあいしましたよ?」

「今朝はヴォルにルーナの日を邪魔されたからね。

本気だしてヴォル叩き潰してきたんだ」


きっとお昼まではエレク先生に離してもらえないね

そう軽く言うヴァン兄様は少し、いや、かなり楽しそうだ。


「僕には魔術の才能はあまり無いみたいだけど、剣ならヴォルに負けないよ。

まぁ、最終的には…」

「どうかしたのですか?」

「ん、あぁ何でもないよ。そんなことより今日はルーナ勉強してたのかい?」

「えっ…?」


ひょいっと、私が書いていたノートを持ち上げるヴァン兄様。

あぁ、それには知られてはいけない秘密が満載なんです!


「んー、なになに?」

「ヴァンにいさまっ!かえしてください!!」

「んんー、この字はルーナが作ったのかな?上手に書けたね」

「へっ?」



因みに、私は字を創作した覚えはない。

今書いていたノートもきちんと『日本語』で書いたのだ。

…と言うことは、つまり


「にいさま。おひまでしたら、ほんをよんでくださいませんか?」

「ん?あぁ、いいよ。ルーナの好きな絵本を読んであげるね」


そう言って、私の部屋の本棚から出した薄めの本

多分童話だと思うが、私は表紙からして『字』が読めなかった。


「ほら、ルーナおいで」

大きく手を広げて手招きするヴァン兄様

ポンポンと自分の膝を叩いているのは、ここに座れと言っているのだろう。


「そこにすわったら、にいさまのあしがしびれてしまいます」

「ルーナは羽のように軽いから、心配いらないよ」

「ルーナは『はね』ではありません」

「ハハッ、本当可愛いな。ほら僕は大丈夫だから」


手を引かれ、結局私はヴァン兄様の足に座る事になった。

そして、後ろから手を回すようにして絵本は開かれる。

読んで欲しいなら、大人しく座っていろと言うことですか

諦めは肝心ですよね…


「にいさま、タイトルをよんでください」

「タイトルは『蜘蛛と蟻』

一人で生きていく蜘蛛と、集団で暮らす蟻のお話だね」


この、ミミズが這っているような文字がこの世界の文字…

覚えなければいけないことは、とても多そうだ。


私は内容もそこそこに、ヴァン兄様が読む文字を目で必死に追う。

が、一度見ただけで覚えられるはずもなく

ただただ、目が疲れただけだったのは言うまでもない。


「はい、おしまい」

「ありがとうございました、にいさま」

「いつでも読んであげるからね」

「はい。またおねがいします。…それではにいさま、そろそろはなしてくださいますか?」


本を読み終えたヴァン兄様は、私のお腹に手を回し

ガッチリホールドしていた。

…さっきから抜け出そうと試みているが、見た目とは裏腹にヴァンは怪力だ。

全然びくともしない


「ルーナもう少しだけ。ね?」


そっ、そんな至近距離でお願いしないで下さい!

断れないじゃないですか!!

自分の見せ方を知っているヴァンは、少し首を傾げ更にお願いしてくる。


「もうそろそろヴォルが来るから。それまで、ね?」

「ヴォルにいさまが?」

「そう。また好きな本読んであげるよ」

「ほんは、きょうはもういいです」

「じゃあ、このままお話しようか。質問でも良いよ」


ニコニコと私に笑いかけるヴァン兄様

私に拒否権は…

はい、無いですよね。


「僕に答えられることなら、何でも答えてあげるよ」

「じゃあ、しつもんにします」

「どーぞ」

「『ルーナのひ』ってなんですか?」


私がずっと気になっていた『ルーナの日』。

ちょくちょく会話に出てきたが、私はそんな日は作った覚えがない。


「あぁ、それは僕とヴォルで決めたルールだよ」

「ルール?」

「ルーナの着替える服を選んだり、一緒に寝たり、お風呂入ったり…ルーナと優先的に遊べる日だよ」

「そ、そんな『ひ』はひつようないとおもいます」


ルーナの設定は、一般的な主人公セオリーをきちんとつんでいて

自分に対する好意にはとても鈍感だ。

このゲームが『口説かれゲー』でもルーナはそのルートに入るまでは

彼らの『それ』を華麗にスルーする

なので、彼らはそれこそ自分のルートに入るようにグイグイ攻めてくるのだ。

…これもその一つなのだろうか

私がここにいるせいで、余計な設定が増えてしまったのだろうか?

あぁ、画面の前に居れば『プロット』を確認して解決するのに。


……まさか、今からルート分岐とかしないよね?

気を付けるのは15歳からで大丈夫だよね??

いっ、一応確認をした方が良いかしら…


「ヴァンにいさま」

「どうかした、ルーナ?」

「ヴァンにいさまは、ずっとルーナのにいさまですよね?」

「…えっ?」


『えっ』って何ですか、『えっ』て!

そこはそうだよって言うところでしょ!!

変なフラグは即、潰すに限ります。


「にいさまは、『ずっと』ルーナのにいさまですよね?」

「んー、そうだなぁ。あっ、それよりこの本読んであげようか?」

「にいさま!にいさまは、ずっとルーナといてくれますよね?」


話をあからさまに逸らそうとするヴァン兄様

それでも私は無理矢理方向修正しますよ!

すると、私の言葉を聞いたヴァン兄様は目を大きく見開いた。

そうですよね、ずっと兄妹では『結婚』出来ませんもんね。

私はそれが狙いです!


「ずっと…」

「そうですよね、にいさま?」

「ルーナは『ずっと』()と一緒が良いの?」

「はい、ルーナはずっとにいさまにいてほしいです」


兄妹として。

普通の兄として居てほしいです。

お願いですから口説かないで下さい。


…それから少し驚いた様子の、兄様が出した答えは


「わかった。ルーナが『ずっと』と言うのなら」

「よかった!にいさまありがとうございます」

「可愛いお姫様たってのお願いだからね」


こうして、私はヴァン兄様と約束を取り付けることに成功した。

一つルートを潰してウキウキ気分でいた私は

この時、ヴァン兄様の頬が少し赤い事には、全く気づかなかった…



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