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日常


カタカタカタ


私はとても集中していた。

無機質なタイピング音とお気に入りの音楽

最近買い換えたばかりの最新のパソコンは、とても筆が進む進む

ん、この場合も筆で良いのか?

まぁ進んでるのだから何でも良いか。


「う~ん、やっぱりシナリオを書くのは夜に限るわぁー」

   

『ルーナ起きなさい。何時まで寝ている気だい?』 

『うーん、後5分だけぇー』


うん、主人公のルーナちゃん可愛いわ~

流石私が考えた主人公ちゃん、私が可愛いと思う要素と性格

見た目に関してもこだわりにこだわった、最高の主人公ちゃん!

黒い瞳に闇のように深い黒髪。

綺麗に伸びた髪は腰まである、15歳の女の子。


………私が今何をしているかと言うと、ズバリ乙女ゲームのシナリオ書き。

市販の乙女ゲーでは飽きたらず、自分で作ると言う暴挙に出た腐女子でございます。

社会に出て30年、リアルで恋人も出来ない女は

ゲームに恋すると決めたのですっ!


あっ、自分で言ってて悲しくなってきた…

 

『ルーナ、もうおねぇさんなんだから…』


カタカタカタ


あぁ、仕事のストレスは好きなことするに限るわー

主人公のルーナは勿論の事、攻略対象もイケメン揃い。

これでもかと、私の萌えをつぎ込んだ

出てくるイケメンはほぼ全てが攻略対象

サブキャラによく恋する悪い癖もこれでカバーできる!

まさに、私のための私だけの物語

あぁ、出来ることなら私がルーナになりたい…!

イケメンのお兄様に会いたいっ

頭なでなでされたい!キャーッ!!


……はい、無理なのわかってます。

明日も仕事なのでもう寝ます。 

社畜の朝は早いのです。  



**********



カタカタカタ

 

ディスクに響く無機質なタイプ音 

シナリオ書きと違って仕事は苦痛である。


「佐藤さん、これもお願い」

「はい」

「佐藤さん、昨日の書類まだ上がってないんだけどっ」

「今やってます!」

「佐藤、今日中にこの書類あげといてくれ」

「……はい」


はい、サービス残業確定でございます

しくしく…

あっ、因みに私の名前は佐藤しおです。 

だいたい自己紹介で

「砂糖?塩??」

と?マークを出されるのは私です。

自分でも思います。

本当甘いんだか、しょっぱいんだか… 

 


キンコーン、キンコーン



今鳴った間抜けな音は、この職場の定時を知らせるものです。

はい、只今17時でございます。

因みに私が定時で帰れることは、まずありません!

…ブラック企業でございます


「おーい皆ー、今日は飲みに行くぞー!!」

「部長の奢りですかぁ?」

「良いぞ、良いぞ!」


…この皆、と言うのは部長のお気に入りの方をさします。

そして私は勿論


「はい、佐藤はこれもやっておけよ」

「…はい」


自分の仕事回してくんじゃねーよっ!

てめぇ、今日一日なにしてやがったんだ!!

私の他にも何人かに残業を言い渡して、部長は帰宅しました。 


…定時に帰ってんじゃねーよっ!


 

「そんな顔してても仕事は減らねーぞ」


コトッと、私のディスクに置かれたのは淹れたての珈琲

私がブラックを飲まないことを知っている彼は

ミルクと砂糖をたっぷり入れてくる。


「だって、いつもいつも嫌味ったらしいんだもの」


そう続ける私に彼は苦笑いした。


「お前も損な性格だよなぁ、自分以外の仕事は断れよ」

「波風立てたくないんですー」

「いつも残業ばっかだから肌も荒れほーだい。嫁の貰い手無くなるぞ?」

「うっ、うっさいわね!ほらっ、仕事の邪魔だからあっちいった!」

「おっと、いつもながら冷たい反応」

 

彼は同期の阿東君。

仕事は出来るが、私に絡んできてはっきり言ってうざい。  

可愛い彼女も居る癖に私に絡んでくる変わり者だ。

 

「ほらっ、阿東君は残業じゃないでしょ、帰った帰った!」

「帰ろうと思ったんだけどさぁ、この量一人じゃ終わんないだろ?」


手伝うよ、そう言って私のディスクから半分の量の資料を持っていった彼を格好いいとか、好きだとか思った私の想いは墓場まで持っていこうと思う。

   

「これが最後!!」

「はい、お疲れ様」


結局、最後まで残業に付き合ってくれた阿東君

これで惚れるなという方が酷だ


「ありがとう。なんとか終電には乗れそう」

「良いって良いって、今度焼き肉奢ってな!」

「自分より給料安い女にたかるなよー」

「じゃ、割り勘で食いに行こうぜ」

「はいはい」


この約束が現実になる事は多分無いけど

少し期待してしまうのは、女心と言うやつだろうか


「っと、終電乗り遅れるぞ」

「ヤバッ、急がないと!」

「ほらっ、走るぞ!」



……

………



『間もなく電車が発車いたします』


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