第05:WHO星系、手紙の配達~其の1
休憩の後に向かう。
空の飛べない四人、純白の翼を持ち、空を飛べても飛ばない姫の旅だ。
1号区画、この中央の御殿に来る。
受付に申し込む、旅に出るので取りに来たと。
受付の女性は不思議そうな顔で、申し込んだアルトを見てから、伝えた。
誰に伝えますか、アルトは答えた。刀に。
意味の分かる者は皆無であったが、困った受付は上司に連絡、この上司も困りその上司に連絡、これを繰り返し行く付くところに話が来る。
訳の分からない事を言う空若に、事情を聞くために二人が呼ぶ。
通された広い部屋、居るのは7名、時々に空若の訳の分からない独特の言葉を使うので、翻訳を担当する冥夜と十兵衛が座って待っていた。
凛々しい顔立ちの冥夜、綺麗ながらも不愛想な顔の十兵衛の、二人にとってみれば兄のアルトに質問した。
「まず、刀とは?」
冥夜が質問すると、アルトは軽く笑ってから話す。
「最高峰の刀だ。この二振りを取りに来た」
この少年の言葉に、質問した冥夜も困り、十兵衛も該当する様な物はない、そもそもここはVRMMOのヴァーチャルワールドだ。有るはずがない。
仕方なしに十兵衛は、兄様に言葉を訳してもらうことにした。
「兄様、言葉を分かり易く行ってもらえませんか?」
「これ以上に分かり易く言っているが」
中々意思疎通が難しいらしい、久し振りに兄様言語に長年の付き合いの十兵衛も困って、兄様言語の分かりそうな姫を見てから頼む。
「姫、兄様言語の翻訳は可能ですか?」
不愛想な十兵衛の困り顔に、清楚な容姿の姫は穏やかな顔ではあるが、首を左右に振る。
これには誰もが困り、付き合いの浅い三名ではどう考えも無理だ。
困った末に言語の解析の為に、久しぶりの翻訳作業に入る。
「まず、刀を指さしてもらえませんか」
十兵衛の頼みに、アルトは二人の腰に帯びる刀を指さした、ちなみに二つとも初期装備の木刀だ。相変らずの難解な兄様言語だと思えた。
「他の刀は?」
「・・・なんでわからないんだ?」
困惑するアルトに、困惑する一同。
独特の世界に生きる十兵衛や冥夜でも、この難解な言語には常に苦戦する。しかもアルトには分からない事が分からないのだ。
「・・・どうします姉様」
バトンタッチに、冥夜は途方に暮れる、兄の独特の言語は難しく、この難解な言語の解析は、様々な部署の言語学者が集められて解析されているが、学者でもない二人にこれを分かれと言っても解るはずもない。
深刻な言葉の壁に、冥夜はひとまず別の言葉からアプローチを試みる。
「旅に出るそうだな」
「ああ」
「どこに?」
「受取人だ」
再びの言葉の壁、一般的に言えば受取人は地球の何処かに居るはずなのだが、何せアルトは星渡見習い、色々と出来るがこの言語の事だけはいつまでも難解だ。
しかもアルトにはどう伝えればよいのかが分からない、深刻の言語教育を行うべきではあった、ただアルトは容姿こそ地味な普通の少年だが、中身は非凡の一言、戦闘能力も非凡、称号持ちの二人の主な訓練相手がこの少年、なにも勝てる訳ではない訓練の為に戦うのではあるが、兎に角も常識も何も通じない、言葉の壁にすらある。
「会いに行くと言いました。最後の手紙を配達する最後の務めだと」
これに冥夜も十兵衛も意味は分からないが、どうやら戦いに行くらしい事は分かった。
「受取人は恐らく、あの綺麗なエルフです」
「兄様が見かけには無頓着です。綺麗と言っても兄様と姫の綺麗は違います」
「その時に外見に拘るなと呆れられました」
「「!?」」
長い付き合いの二人でも、これは大きな情報だ。
何せ外見には全く無頓着で興味すらないアルトが、外見という言葉を使った、それは言語が通じる、ただエルフは一般的な人々でも美貌の人々だ。
しかしヒントはヒントだ。これを逃す二人ではなかった。
十兵衛が質問する。
「兄様、エルフでしょうか?」
「いや違うぞ」
再びの座礁、深刻な事情で、翻訳できる翻訳機が二人は喉から手が飛び出してしまう様に欲しかった。
「他種族でしょうか」
「は?」
「まず星の名前は」
「WHO」
「WHO人でしょうか」
「いや違う」
「WHOに住む方でしょうか?」
「住んでいた、かな」
「どちらに居られるかわかりますか?」
「面倒なんだが、もういいから二人も準備しろ」
「うーん。さすがは兄様、難しい」
「刀はどうする」
「だから取りに来たといっただろ」
「落ち着いて兄」
「十分落ち着いているよ。早く準備、やっとの事で冒険に出られるのに、ここで捕まる訳にはいかないんだ」
義理の姉妹は、仕方なしに№3に留守を頼む。
部屋に前にいた№3の誉は、空若の意味不明な言語の事もあり、仕方なしに引き受けた。
「翻訳できましたか?」
「捕まりたくないからもう行くそうだ、私達も付き合う事になった」
「そうですか、相変わらず空若の言葉も行動も常識も全く理解不能です」
「ただ色々と貴重な情報も手に入った」
「ほう」
「姫が綺麗なエルフと言ったら、外見に拘るなと呆れたそうだ」
「・・・普通に考えればなのですが、姫ですからね」
「だがこれは兄の言語を解析するよい手掛かりだ。しかも最後の手紙を渡しに行く、最後の務めだそうだ」
「・・・」
「付き合う事になるが、すまんな」
「空若には要注意を、何を考えているのが最も理解できない方です」
こんな兄の為に、あちらこちらで付き合いを辞めろという人が多い、しかし兄を止められるものはおらず、止めようとして返り討ちに遭う者しかいない、どんな精鋭もどんな剣豪もどんな称号持ちも傷をつけるのも難しいのが兄なのだ。
日本連邦でも兄を欲するものは未だに少なくない、色々と優れたモノを持つ兄をどうして欲するのかは、簡単な物でもあり、モルモットをとしてみているのだ。兄を解析し量産すべしと主張した者もいた。
そんな兄を放り出す事はどうしてもできない、十兵衛も同じだった。
同盟も連邦でも、虎視眈々と狙う者は未だに多い。互換性のない二つがあるように、兄を量産できたとしても、扱うのはどう考えても不可能なのだ。多くの人に理解すらできない兄をどうやって扱うのかと素朴な疑問しかない。
味方も多い兄ではあるが、同時に多くの敵を抱えるのもまた兄なのだ。
普通ではない生まれの兄、見かけだけは普通だったが、他は全部違った、そんな兄が不通を学ぶために入れられた学校で上手く行けるはずもない、紆余曲折を経て今に至るが、数多い敵と数多い味方を作って生きるのが兄の道なのだ。
そんな兄は外見にも容姿にも無頓着、なににも固執しない、異質で有り過ぎた。だが別に異常という訳ではなく、通じるのは通じるし、まだマシになった方である。
兄に比べれば姫の方は普通過ぎる、兄の半分と知って何を考える敵がいたか、とても分かり易い物しかなかった。そんな敵が手を出せば直ぐに兄を叩き潰された。
戦い方は常に苛烈、しかし事情によれば追放で済ますなど、温情も多く、理解できないところが多い兄ではあるが、別に心がない訳ではなく、余りに酷い事には涙する事も多かった。付いたあだ名が心のある怪物、それが空若のもう一つの意味だ。
飛行団の最高傑作、日本連邦の空の化け物、懸けられた賞金も多い。そう言う兄なのだ。
そんな兄が旅に出ますという、飛行団がそれを許すはずもない。
□
一行が7名に増え、初期装備しかないが、次に向かったのが武装探偵学園、この旗艦の所に現れた。
門番に伝え、生徒会長の悪童、及びAに用が有ると。
この二人の元に通される、そんな二人はアルトのよき理解者、会話の通じる相手でもあり、アルトの様々な事を説明できる二人で有り、学園が誇る最高峰の武装探偵でもある。
細面の青年の悪童、細身の青年のA、一行が現れると、まずアルトが挨拶した。
「話に来た」
「珍しい、なにを」
「役目を終える予定だ」
二人の顔には困惑が浮かぶ、次には理解するために考え始める。
「これを同盟にも伝えるべき時が来た」
「星渡の役目を終える、これを同盟に伝える?」
「ああ」
「何のために?」
「もう俺達の時代は終わって、次の時代に入る」
「それは、外交か」
「俺達は冷戦の準備期間、俺達の次が平和を築く」
「役目に無頓着だな」
「戦うべきものは、既に力にはない、言葉というものや、文字というものに移る、それが外交で有り、この外交の中で平和が守られる時代に移る」
「時間はかかるが確かにそうだ」
「俺達という繋ぎは、役目を終えつつある、自由が手に入る」
「確かに役目を終えれば自由だ」
「これを同盟にも伝えるべき」
「伝える事は出来るだろうが、理解されるかは別」
「いや、騎士団も動くだろう、連邦とAZAを効率よく守るにはそれしかない」
「確かに効率的ではあるが、人間は効率ばかりに生きる生き物ではない」
「そうだ。特には不効率や不合理の方が返って効率は良い」
「なるほど、方法論か」
「真正面からだけでは意味がない、ソードも動くだろう、どんな戦いの中でも決して本心から動く事のなかった少年が、希望を掴む」
「なるほど、理解者らしい台詞だな。彼奴からすればお前は好きではないだろうが」
「そう言う問題ではない、潜水団もついに全ての成就に動く」
「潜水団?」
「海の平和」
「なるほど、確かにメリットのある話だ」
「各所に反対勢力も動く、戦いを望む者と、戦いを望まぬ者の矛盾の中の戦いが始まる」
「・・・難しい事になるぞ」
「これを伝えるべき時に来た」
「話は以上か?」
「いや、侍も、忍者も、戦士も、武器を置く時代が来た、しかし思わない者もいるだろう、きっと牙を抜く、各所で争いが起き、しかしこれを決めるべきものは既に旅に出る」
「・・・留守なら、争いは起きないのか?」
「起きる、しかし収拾がつかない事ぐらいは分かる、だから戦う事は選べない、あるのは策謀、あるのは政略、しかしこの全ても矛先も既に旅に出る」
「冥夜も、十兵衛も、スターもか」
「だが策謀でソートに敵う者はいない、権謀の中で生きた少年が希望を掴む」
「なるほど」
「だがソードには政略が出来ない、彼奴は騎士、政は出来ない」
「ならば議会を起こすしかない」
「そうだ。しかしどこも主導は出来ない圧倒的な強者のない議会は、話す事から始めなければならない、各所よりきっと不満が起きる、だが望む者達は直ぐに理解する、何故不満が起きるのかと、それは望まないから、平和と戦争が違う目的の中で矛盾を言いながら戦う、それが議会」
「これを伝えるのか」
「同盟も変化が起きる、力の時代の終わりを知る、鉄と血の時代の終焉を知る、頼るべきは秩序ではない、力でもない」
「言葉か」
「そう、ゲームにより統一された言葉、これによりこのゲームの中が策謀の中に渦巻くが、これは全て一つの先を選ぶ、選ばざる得ない、それは希望を取るしかない、先の無い者達ではない、長い先があるのなら必ず希望を取る、これを次に渡す」
「ないものは」
「戦いを望む、しかしそれは少数派」
「ああ、なるほど、確かに役目を終えるのだな」
アルトが頷く、二人の青年も微笑し軽く拳を合わした。
「各所の連絡を頼む」
「了解した」
「鳳凰との喧嘩も終わるかもしれないな」
「終わる、どちらも方法の先しかの違いしかない」
「危惧すべき者は?」
「いる、しかしいない」
「名前は?」
「ソードが全てを知っている」
「だから暗躍していたのか」
アルトが肯定し、二人も納得していた。
「希望を掴むその一心で全てを行ってきた、その少年の純粋な心が紡ぐ、清き誇りある騎士は、ついに全てを出し代を終え、自由の騎士となる」
アルトはこう言うが、あんな策謀家を純粋な心の少年とか、清きとか誇りとか、とても思えないような腹黒さ満点の男だ。
だからこそ、この原理というべき、根本的なもの、アルトは知っていた。
「表面を取り除く時代に来た、全ての本質の争いに至る」
「なるほど、確かに争いが起きる、表面上の戦いではなく、本質的な争いになれば根本的なものが違う、兄の言うべきことは本質の事だったわけか」
「刀と言われても解らない筈です、兄様言語もやっと解決しましたよかったぁ」
二人は諸手を上げて喜ぶ、長年の言語が解決した。一つの問題に解決によりドミノ倒しに全てが分かり始める、アルトの戦いとは即ち本質の争い、それらの本質同士の戦いの中、アルトは動いていた、味方と敵を知り、これを見極め、時には争い、時には協力し、そうやって生きてきた少年は、長年の役目を終える時を告げる旅を考えている。
「教えてよアルト」
「?」
「父は、なんなのよ」
「遍く自由を考え、それには平和が必要だと判断し、これを整えた、その使いが星渡、膨大な気の遠くなる永遠と続く、時、これを使いこの根本的にことだけを追求し、宇宙に種を巻き続け、結果、完成したのがPO、プラネットプランの最終的な完成品」
「あのゴミが?」
「レドのとある最高峰の盗賊と約束した、ゴミ以下の仕事をしながら人を救う、盗賊は最低の事で人を救う、共に救うを約束し、今に至る、本質的には何も変わらない、根本的な願いは二人とも同じ、自由が欲しかった」
「なんなのよ」
「レト、ポリス、レッド、盗賊は皆同じ、自由を渇望し、ただひたすらこれだけを願い、この為に生きてきた、彼らは同じ仲間だ」
「それは冒険者?」
「そう、冒険者のPTだ」
「自由ってなよ」
「空の上にあるもの」
「意味が分からないわよ。それって宇宙?」
「空は自由か?限りある空は自由か?」
「あたしにはさっぱりよ」
「縛る楔との戦い、それが彼らの戦い」
「難しいわよ」
「簡単なもの、縛る全てとの戦い、ありとあらゆる縛るもの全てとの戦い、彼らは冒険者の始祖、自由の使徒、遍く自由を考え最古のPT」
「だから」
「彼らは自由を妨げる全てに戦う、彼らの願いは成就された、それが完成品のプラネットプラン、根本的なもの、自由が欲しかった」
「何のために」
「PTの自由」
根本的なもの、単純に一つ、PTの自由が欲しかった。自分達の自由の為に戦い続けた。
縛ろうとする者からすれば、どう考えても反りが合わない連中でもある。
「あんたへの報酬は?」
「自由」
単純であった、根本的なものが同じ、レド達の戦い、その報酬は自由を願う者にとってみれば魅力的だった、報酬は自由、願う者にとってみれば是非でも欲しかった。
願わない者からすれば何の価値もない、だからこそ本質的な戦いに至る理由になった。
だから姫は聞くしかなかった、その一択のみだった。
「ボクは枷ですか?」
姫の言葉に、冥夜は凍った、自ら放った言葉が最悪の結果への原料となってしまう。
アルトはキョトンとしていた、意味が理解できないらしい事は誰にでもわかる。
この少年の戦いは本質的な自由とそれを縛る者の戦い。
「なんで」
半分は心底理解できないらしい。
姫は聞く。
「何のために自由なのですか?シルト」
「PTの自由」
「誰とのPTですか」
「半分と仲間」
何の難しい事もなかった。ただ半分と仲間との自由が欲しかっただけ、どんなに無理だとしても。
室内にいる者はこれで解決した、アルトにとってみれば半分の姫と、仲間との自由な時間が欲しかった、ただこれだけに動いていた、縛る側からすればどうしても妨害したかったが、レド達の戦いにより、これは破られた。
根本的な事、姫は言うべきことがあった、もう隠す必要がなくなったのだから。
「愛しています」
「知っていた」
二人の願いも叶ったらしい、ただ絶対に伝わっていない事は間違いなかった。
仕方ないので冥夜が尋ねる。
「まず、兄」
「ん?」
「根本的に違う」
「なにが?」
「姫を異性と認識しているか?」
「女性型」
「そういう事ではなく、性愛的に」
「ない」
姫の願いが砕かれた、泣きだした姫に、十兵衛があやす。
三名の姉妹も、多分こうなるなとは思っていた。
この少年が異性に靡く様な奴ではない事ぐらい明らか過ぎた。
「ばっさりと切ったね」
「見事過ぎる玉砕だ」
「アルトだし、どう考えも」
有名過ぎる姫の初恋は見事な玉砕だった。
□
学園より離れた一行、泣き止まない姫、涙か止まらなかったようだ。
三姉妹としても、初恋は見事な玉砕、バッサリと切断された、どうしようもない失恋。
冥夜としても姫のあやしは十兵衛に任せ、兄の傍で今後を考える。
半分と仲間との自由の為に戦っていたアルト、冥夜も兄との旅を考える。
全てを捨てて旅へ、現に今そうしているのが実に気分が良い、最高峰の解放感だ。
「病みつきになるな」
しみじみと思う冥夜、何せ一切の義務がない、仕事の一つもない、もう予定の一つも確認する必要がない、面倒な柵の一つもない。家も、国も、星も、習い事の一つもない。
所謂の幸せというべきものが今ある。
「兄」
隣にアルトは、普通の地味な顔を向ける。
「幸せというべきものだ」
「ああ。縛るものがないからな」
冥夜も解る、今なら頷ける、戦う方がどう考えても幸せへの近道だった。
「まずはPTを組もう」
「十兵衛もか?」
「妹の意思次第だ」
「なら了解だ」
冥夜も十兵衛の元に行く。
「十兵衛、PTを組もう」
「いいのですが、姫と兄様は」
「兄はOKだった」
「ならよいのですが、見事な玉砕でした」
「望みの一つも一切なかった」
「まあどう考えてもなかったのですが、姫が諦めればよいのですが」
「無理だろうな」
「ですね」
「何せ、頭にあるのは兄へのモノだけだからな」
「初恋実らず、こればかりは」
「相手が悪すぎた」
「我々もついに」
「ああ。相手を見付ける素晴らしい旅路の始まりだ」
二人は笑う、精神年齢が老け過ぎてモテない二人は、自由を手に野に放たれた。
目指すは長年の目的、恋人との甘い時間、リア充への昇格だ。今まで散々負け組扱いされた二人の逆襲が始まる。
二人の基準は過酷、侍の最高峰の称号の剣聖の二人より強い事、これが最低条件、次に人型である事、これは好みの問題、男性である事、これだけは死守したい、そう言った基準を満たした男を見付ける事だ。なおなるべくは歳の近い者が良い。
妥協の一つも必要ない現状での合格ラインだった。
ちなみに地球ではアルトぐらい、少なくても女性という分類では二人は地球最強だ。それ位に強かった。だが幸せの一つもない地球に未練があるはずなかった。
こちらの姉妹の方もあって、レドの三姉妹の方も作戦会議を開始。
「リーダーはサツキこれに賛成」
スターが直ぐに言う、思わぬ攻撃にサツキは頭が真っ白になる、ワイバーンの方は考えてから手を上げた、裏切りというものに遭った。
「リーダーよろしく」
「よろしくね」
「嫌よ!」
「我儘はよくない」
「そうだね」
「私には主君探しがある」
「僕には修行と鞘探しがあるからね」
「な、なにを勝手な、あたしだって彼氏が欲しいのよ!」
三者三様の動機が発覚、根本的なものがあったらしい。
「夢のある話だ。好い旅路になる」
「そうだね~まあ弱い奴は論外だし」
「全くだ」
サツキは言うべきか悩む、忍者最強とアイヌの戦士最強より強い奴が居るかと怒鳴りたいが、サツキも言えないようなことが多い為に悩む。
「妥協の一つも必要ないからね」
「うむ。やはり妥協は負けだ」
「全くだね」
二人の秘めた夢が叶う時が近い様な、遠い様な話らしい事に、押し付けられたサツキは頭を働かせ、一つの事を閃いた。
「アルト」
魔法の名前、二人は言われてから考えていた。
色々と満たしてはいるが、顔が冴えない。
「顔がね~」
「地味だ」
サツキは内心舌打ちした。理想が高過ぎる。
ただ基準が判明した事で、アルト並みと好みの顔が一致する奴を見付けて押し付ける、素早く算段をつけて、内心は復讐を考えながら微笑む。
「分かった、ひとまずはアルト達についていきましょう。何せアルトは異星の知り合いが豊富だし。好い道案内ね」
「ふむ。確かに妙案だ」
「異議なし」
サツキの内心は復讐の神算を考える。
経験豊富な二人が分からない筈もない、三姉妹の基本的な事となった。
方針が決定すると、アルトに話しかけた。
「ついて行ってもいい?」
「えーと。ひとまず手紙を届けないと」
「うん解った」
「彼奴の事だから喜ぶだろう」
「そう」
「ちなみにだが、手紙はお前らだぞ」
「なんとなくそうじゃないかと」
「なら別にいいが、では方針も決まったし、出発するぞ」
手紙の配達に出るアルト、手紙たる天翔三姉妹も分かっているのなら何の問題もない。
アルトのPTも集まり、姫はボロボロと泣いていたが、一応集まっていた。
「まずは同盟だ。役目を終える最初だ」
「地球人には興味がない」
「全くです。狂都に行きましょう」
「・・・なるほど、狂都」
思案したアルト、場所が分からないが妙案でもある、何より追っ手より隠れられるところもよいし、アルトと戦う愚策を犯すバカは皆無の為に、現れる者も構成される者も、それらすべてが分かる、どうせ現れるのはキャスターたち以外はいないからだ。
彼らは確かにスペルの専門家達、優秀であるが、追っ手としても悪手、零はよく纏めてはいるが、内心の目的な動機やなんやらは笑えるほどに単純なものしかない単細胞の集まりだからだ。どんなに頑張っても無理な者しかいないのが、キャスターたちなのだ。
典型的なものでいえば、スペルの研究がしたい、スペルの道具が作りたいなど、単純なスペル関係の欲求に生きる、難しい者も確かに居たが、そう言った者は別に追っ手になる必要もないので志願もない、無理に行えば離反するからだ。
アルトがいなくなれば、それぞれの欲をむき出しにするのが目に見えるのが飛行団の主な若者たちだ。だから上層部にはそんな奴が皆無なのだ。
元忍者達も動き始める、目の光る所に無い影や闇に彼らは容赦なく狩る。
それが忍者達の本分だからだ。
「妙案だ。サツキ案内を頼む」
「まあ別にいいけど」
「その前に言っておくが、追っ手はキャスター達だ。他は準備が出来ていない」
「・・不味くない?」
「スペルが使えるだけの単細胞の集まりだ。知恵なんてない」
「・・・前々から疑問よ。もしかして飛行団って味方じゃないの?」
サツキの疑問に、アルトは鼻で笑う、正しくバカバカしい方の事だ。
「夢見ているなサツキ」
「はいはい」
「彼奴らは単細胞だから、単純な連中の集まりだ。分かり易い連中ばかりなので簡単だったに過ぎない」
「上って黒いわ」
「上?俺がいつ飛行団の長になった」
「違うの?」
「出来損ないの七光り風情に過ぎんよ」
「・・・そう言う事」
「まあゴミ過ぎる連中はもういないからな」
「用済みって奴?」
「用も何も、ないし、そんなもの」
「まあアルトだしね」
「仕込んで忍者達も動くし、一部を除けば飛行団より離れる、晴れて飛行団は弱体化、野良になった連中は欲に動いての破滅、残った連中が再建に動く、暫くの活動停止、あちらこちらでこれが起きる、冥夜と十兵衛を失った侍たちも同じ末路だ、晴れて連邦の若者たちは気付く、どうやら自分達は統率を失えば単なる烏合の衆だと。特に男性も、女性も欲に生きるタイプには世知辛ぞ、舐めてくださいって奴だな」
「現実に生きているな兄は、夢も何もない」
「甘さの一つもないから兄様なのですが」
「ざまぁって奴」
三人はケラケラと笑う、スターも理解はできる三人とも徹底的に現実に生きていた、生まれた頃から現実ばかり見ていたら当然のような性格になるのだ。
綺麗なものの一つもない現実ばかり見れば、甘さなど直ぐに消える。
忍者も直ぐに瓦解する、生まれた頃より汚いモノばかりの業界で生きているのに、自由が手に入って仕事を行う者などいるはずもなく、一部の者は察知し逃げだそうとするが、無秩序となった忍者達の統制は取れない、よって一切合切のものが破壊され、微塵もなく潰れる。
上に立つ者達は別にいい、だがそうでない連中の末路は常に同じ、飛行団も、侍も、忍者も、その生まれながらの連中はゴミより酷いゴミだらけなのだ。
そんな者ばかりに囲まれるのに、姫の様な唯一の綺麗な物が有る、守ろうと考えない奴が居れば是非紹介してもらいたい、それが共通の事なのだ。
恐らく、潜水団も、薬師も、巫女も、騎士団を除く全てが潰れる、琉球も、アイヌも似たり寄ったりだと言えた。
連邦の若手の長達は、汚いモノばかり見てきた、自由が手に入れば、埋めてきたモノが動く、冥夜も十兵衛もだから動いた。
性欲がない以上問題の多くが消え、問題の起きない以上は不満も爆発する。
腐った贅肉が消えて、上は上機嫌で辞職するという訳になる。
極一部のまともな連中は集まって議会を起こすという、殺人も性問題もない、こちらとしても気分良く交代が出来るので何の問題もない。
「スターも?」
「ああ」
「じゃワイバーンも?」
「夢見ているね。夢見がちってレベルじゃないよ」
「夢も希望もないわ」
「そう言うのが地球人の若者なのだ」
「むしろ姫のような奇跡的な例の方が珍しいかな」
「だから姫なのね」
「ああ」
「常識だよ」
「まあ案内するわ。奇跡的な姫以外の奴が居る事を祈るわよ」
まだ夢を見るサツキに、二人は何も言わない。
□鎌倉
集まった者達、全員が辞職した者達だ。
不満が爆発し、鎌倉全土で戦いが起きている。
唯一騎士団の者はいない、彼方はソードを中心の一枚岩だから安心であった。
一人残らずアルトが密かに知らせていた者達、アルトの本心が綴られた手紙も届く。
半分と仲間との旅に出ます、もう帰りません、自由を楽しめる環境な事を心より喜びます、届けられた方々の心中は理解しますが、納得できる方々ないので、理解はできるかと存じます、もう隠す事も必要なくなりました。
追伸 地球なんてと知った事か。
長年隠していた本心がむき出しになったアルトの手紙だ。
誰もが納得していた。
ここにいる者は全員がアルト派、渇望したが、埋めるしかなかった連中だ。
敵も味方もいた、職を辞した以上はそれも消えた。
隠していたモノが全員に現れていた。
全員の共通したものは、意外な事に多かったという認識だ。
240万名の内、凡そ10万名。
「狂都」
誰かが呟いた言葉に、行先は決定した。
埋めていたモノが手に入った、もう縛るものはない、隠す必要も、埋め戻す必要もない、自らに従ってのみ生きられる。
自由が手に入った。
手放す必要もなくなった、なら取るべき道は一つでしかない。
10万名の逃走劇が始まる。
□
歩く中、見渡す限り草原、永遠と続くが、当然のように発見される確率も高い。
鎌倉では戦争、殺人も性問題もなくなった以上、抑えるもの全てがなくなった。
アルトの同類たちがとる道は一つ、アルト達を発見し、そのまま追跡する事だ。
狙いは主に姫、何せあり得ない奇跡の産物だ。
PTを組みたいと思うのは自然の流れであり、アルトへの失恋中なら考えるのは似たり寄ったり、分かるからアルトは逃げたのだ。
間違いなくPKに来る、後に姫を連れての逃避行。
当に姫は泣いている、ボロボロと泣いている、失恋のショックから立ち直るのも難しいらしく、この為に歩くのがとても遅い。
「追いつかれたな」
スターが呟く、風に消える事もない力強い響きが姉妹PTとアルトPTに伝わる。
「追っ手?」
サツキの問いかけに、スターは頷いた。
「うーんまあ仕方ないよね」
ワイバーンの納得に、誰もが納得していた。
「戦うしかないか、まあ隠す必要もなくなったしね」
ワイバーンが召喚を使う。
【召喚:タイプ従者:ジン】
現れた一体の風の巨人、ワイバーンが伝え、後方に暴風が吹きあられる。
「足止めしておくから行くよ」
「召喚か、使いの中でも最高峰の術」
「スペルが使える人はいるの?」
「忍法なら使えるが」
「私と十兵衛が使える」
「三名か、アルトは?」
「好きじゃない」
「使えるの?」
「使えないでどうやって戦う」
「四人か、まあ悪くはない戦力だね」
「先に進もう、というか半分は俺が運ぶ」
「頼むよ~」
仕方ないので半分を担ぎ上げて運ぶ。
姫としては久し振りのスキンシップに喜んでいた。
走り出した一行は足は速く、スペルの使える4名は支援系の強化で高速に移動し、サツキにはスターの忍法系統が使われる、ワイバーンの方は別に召喚した従者に運ばれる。
追っ手の一人が暴風より突破し現れる。
真っ青に翼に、知的な容姿、美青年の王子系の青年、飛行団の№2の星守りだ。
「困りましたね」
計算外の事が多かった、調査が足りなかったらしい。
まさかのアルトがスペルを使う、しかも支援系の強化系統の最上位、相変らずのでたらめな奴である、目的の姫はアルトが担いでいるし、足が非常に速い。
星守りは別にアルトに従っていた訳ではない、忠誠心の一つもない、飛行団などどうでもいい、姫の為に全てをしていたに過ぎない。
姫に惚れている奴、その代表格が星守りなのだ。
「相変らず、隠す事に長けていますね」
アルトは見た目以外全てに秀でる、星守りよりも一枚も二枚も上手、正しく飛行団の最高傑作、それがアルトだ。
「かといってもこの機会を使わない理由もありませんし」
飛びながら思案し、一行の前に舞い降りる。
「あら星守り」
「久し振りですねサツキ」
「一応聞くけど誰が目的?」
「誰?決まっているではないですか、姫ですよ」
「更に一応だけど、その理由は?」
「恋しています」
「分かり易いわね」
「それ以外は必要ありませんし、排除と行きましょう」
そこにアルトのスペルがかかる、妨害系のスペルロックだが、成功する一方で星守りは性能を確かめてから解除する。
「やはり零が伝えていましたか」
「ああしかし相変わらずの女に狂う奴だな」
「そうでしょうか、一般的な事ですが、邪魔です」
「何がいいのかね。俺にはさっぱりだ」
「何がいい?全てですよ」
女性陣はうんざりの顔、しつこく迫る奴は基本的に好きではない方々なのだ。
「一応なんだけど、しつこい男はモテない理由は知っている?」
「異星の事を知っても意味はありませんし、特に興味はありません」
「キモイからよ」
「なるほど、それで?」
「PKした方が速いわね」
「PK、スペルの一つも使えないあなたが?」
「星守りはスペル主義者なんだ。スペルの使え奴には価値はない」
「見たいね」
「では再排除しましょう」
唱えられたスペル、現れ凝縮するエネルギー、アルトが使ったスペルにより星守りの心臓が貫かれ、淡い光を放って消滅しセーブポイント送り。
「知恵がないな」
「ああいう奴って、強いの?」
「強いぞ、ただ致命的なまでに頭が悪い。キャスターたちはそう言う頭が致命的に悪い奴らの集まりだ」
「脳筋ならぬスペル脳だね」
「同じだ」
「逃げるぞ」
逃走劇の幕が上がるようであった。




