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外伝:3月2日

美術館より歩く道、飛空市の中心街にある大型ショッピングモールへの大通り。


7名の簡易的な紹介。

アルト、性別は男性、15歳の祭り師の星渡見習い。飛行団団長の息子、幼い頃より星を渡り歩き、全種族に知り合いや友人がいる、地球きっての国際派。功績の方は地球の連邦と同盟の冷戦終結の立役者、スペル芸術によっての祭と迷宮創造の基礎を作った。容姿の方は地味な普通顔、地球の服装を一変させた制服事件も起こしているので、ファッションの方は流行の最先端。


姫、性別は女性型、タイプは翼人、15歳の戦巫女、飛行団団長の娘、アルトの腹違いの家族、清楚で華やかな容姿、純白の翼を持った飛行団のお姫様、功績は特になし。


サツキ、性別は女性型、タイプの兵器、15歳の細工師、レドの娘、母親はレドの妻の一人のアリサ、綺麗な顔と銀髪の髪を持つ、細工師の腕は秘宝級、地球では最高峰の細工の腕前を持つ、功績は芸能祭の美術総監督と細工全てを担当した。これらは非常に高い評価を受け、これらの細工は連邦の国宝に指定された。


風鈴、性別は女性、15歳の忍者、両親の方は忍者の家系、エリートでもある生まれながらの忍者、両親もそうなのでエリートの中のエリートの生まれ育ち、幼馴染の小波、姫野、二代ことスターとは紆余曲折を経て仲直り、容姿の方は艶やかなお嬢様風。服装の方はギャル系、この服装はアルトの嫌いな物だが、風鈴はこれを貫く決意。


小波、性別は女性、15歳の元忍者、所謂の抜けた忍び、風鈴と同じような生まれながら、当時の忍びの腐敗の我慢しきれず出奔、アルトに拾われ色々と有ってサツキと出会い、普通の幸せタイムの刹那の為に全てを手放した、アルトの反撃によって窮地に陥る事はなかった。服装は露出の多い服を好む、容姿の方はボーイッシュな方。


姫野、性別は女性、15歳の元忍者、風鈴、小波、スターとは幼馴染、しかし当時の忍者の腐敗から、小波と共に出奔、小波と共に至る、現在は小波と風鈴と共にアルトの恋人候補、服装は女の子ファッションのピングが特に好き、容姿の方は小生意気そうな顔つき、スタイルの方は精鋭発展中、一言で言うのならまだお子様。


ピローテス、性別は女性型、タイプは理由が有って不明、年齢は理由が有って不明、レドの娘の一人で、姉妹の最年長の長女。容姿を言うのなら褐色の肌に、エルフの長耳、顔付きの方はエルフ特有の美貌、雰囲気の方は凛々しいものの、冷え冷えとしている。スタイルの方は豊満、功績は地球戦争のプレイヤーの一人で最終階級は大佐。



大型ショッピングモール、この内部に入る。

アルト達に一瞥する者はなんだかんだ言って多いが、話しかける者はいない、何せ幼い頃から知っている者が多いからだ。

直ぐに受付に行く、挨拶し交渉。

受付も確認の上に店長に判断を仰ぎ、好いサービスと言って許可した。

内部の詳細に地図を確認し、この内部の空間の天井近くにスペル芸術の作品を綺麗に作り出し、広告の方のコーナーは特に力が入っていた。


アルトのスペル芸術に、細工師のサツキも舌を巻き上手さであり、これを芸の一つと言われたらサツキのような細工師の出る幕はない。

ピローテスの方は感心しており、天井に作られた氷の芸術品に、可愛らしい形から、厳つい形、綺麗な形、そう言った難しくはない作品に、親しみ易さがある。


「上手だ」


ピローテスの称賛の独白に、姫は半分を誉められて嬉しそうに頷いてから話す。


「半分の趣味です」

「氷芸術か」

「いえスペルによる芸術、一つの都を生み出すほどのものです」

「都?そんな巨大な、ふむ。まあシルトだしな」

「はい。地球の方々はこれが大変に好きです」

「分からんでもない」

「どのみちまたみられますし、半分の主な仕事はこれですから」

「なるほど、いつから侍から芸術家に転向したのか」

「いえ侍のままの、趣味なのです」

「趣味でこれだけの事をされると困るな」

「他にもあるので楽しみにしてください」

「ああ。そうしよう」


アルトの方も終わったらしく、6名の元に来てから一つのコーナーに向かう。

装飾品コーナー。

支払いはアルト持ち、これに知らないピローテスが質問した。


「どこから金を持ってくる」

「俺は星渡、世界の情報が手に入る、これをあちらこちらに流して儲ける事も可能なのだ」

「なるほど」

「何より使い道のない金が減っても惜しくはない」

「防具は?」

「そっちは別通貨だ」

「それで金がないのか、確かに同じ通貨とは言っていないな。分かった世話になろう」


買い物時間、それぞれが選ぶ、アルトの方もメンズの方に行く選び、購入に向かうとレジの担当者が不思議そうな顔で値札を見る。

アルトが購入しようとするのは最安値、若様の感性は分からないとネタの一つとなる。

6名はじっくりと選ぶ。

基本的に男性の買い物は短いが、女性の買い物は長い。

この中で細工師のサツキは珍しい感想、品質の良いアクセサリーが多い、最近の飛空市のアクセサリーも改善されたらしい事が分かるが、値段が品質に比べれば安い物が多い一方で、品質の割りには高額じゃないかと思う物もある。

審査の末に言えば、このコーナーの店員は目利き。

ちらりとアルトの物を見て舌打ちした。

良い物だけをきっちりと抑えていた、強かい奴だと思う。


「これは可愛いです」


隣の姫が選ぶ、つている値札を見るサツキ。さすがはお姫様!値札の方が吃驚の数字と戦慄した。支払うのはアルトなので反対はしないが。

風鈴も姫野も小波も選んでいるが、選ぶ基準は人それぞれでも値札の数字が容赦ないのは皆が共通、遠慮というものを知らないかのような行いだ。

ふと思う。


(こいつ等って生まれながらよね)


三人とも生まれながらの忍者の育ち、風鈴を見ればいかにもお嬢様、上流階級の出身の3名は容赦がない理由もわかるが、容赦がなさすぎるのも考え物だ。

一応姉に当たるピローテス、良い物が多い一角、手に取るのは安い値段が自慢の布製のブレスレッド、こちらの方は布なのでサツキの評価は低いが、決して悪くはない。

アルトが、ピローテスの傍に来て何やら話していた。

二人の手に持つ物、値札の方の数字は最安値、ここでサツキは舌打ちした。


(試す!?普通試す!?)


つまりアルトは調べている、誰がどのような好みで、どの様なセンスで、どの様な金銭感覚で、どれ程の鑑定眼が有って、選んだ物を見れば大体の事が分かるからだ。

しかしサツキは教えない、教えたって意味がない、アルトに夢中の三名、よもやそのアルトに試されているとは理解に及んでいないようだ。

友人の姫、値段は品質の割には最低、物を見る目が全くないタイプが姫だ。


(くそ、孤立無援)


少なくてもピローテスは合格ラインらしい、小波や姫野の方を応援したサツキとしては歓迎できない。


(これは一計を考えないと)


ちなみにサツキのあだ名は猪、対してアルトは地球の立役者、どの様な違いがあるかは推して知るべし。

ひとまず姫への支援、さりげなく良い物を見せる。

お姫様興味がなさそうだ。

次に一手も考えて行う。

中々妥協点が見つからないまま、時間だけが過ぎる。

ちらりと時計を見る、時間が不味い。

他の三名、値段と品質の方がかなり懐疑的、サツキから言わせればゴミ以下の物だけを選ぶ、一様に流行品ばかり。

サツキは必死に考える、このバカ1号の試験になんとか合格させたい。

好きではないが評価される援軍か、孤立無援のままの不合格か、葛藤の中で援軍を取った。


「ピローテスちょっと」


呼ばれたピローテスは、見透かしたようにクスリと笑う、頭が沸騰しそうになるが我慢した。援軍に交渉する前に、傍に来たピローテスが、皮肉気に笑うよう言う。


「あれだな。分かっていない方々に助けろと?しかも恋敵に?」


正論であった。どうしようもない正論、敵を助けろという精神は確かにあるが、それを恋愛にまでいうのはどうかと言えばまず無理。

凛々しく綺麗な顔で、酷薄に笑うピローテスに、サツキはますます好きになれない女になるが、能力の方は高かった、そこは評価しているので、味方を得るために努力するしかない


(カードがない)


その一言に尽きる。

三名も姫も購入し時間切れ。


「まあ人はそれぞれ、妹も物好きをするのは別に良いが、一人一人のフォローをするのも別に良い、だが担当者が足りないぞ?」

「薄情者」

「じゃ何か、私は態々恋敵に援護をしないといけない理由があるのか?」


正論、全くの正論、どうしようもない至極当然の流れでもある。

交渉は成立せず、次のコーナーに行く。

服装の方、こちらはサツキも自信があるが、アルトの姫野、小波の服装評価は一度の良い結果を残し、全て酷いと論外の評価、風鈴に至っては常に論外。

友人の姫、こちらは競争していないが、物を見る目は全くないダメダメ。


(不味い、二敗目確定!?)


不味いと思い仕方なしにアルトの許可をってから4名を連れ出した。

四人に言う。


「あんた値が敗北するのは別にいいけど、恋人じゃなくて、候補なのよ?分かっている?」


三名は分かっていない顔で、不思議そうな顔になる。


「女は男を見る、でも男も女を見るのよ?」

「えーと」

「姫は黙って。いい片方の評価が高くても、相手からの評価が三名とも低いのよ」


三名は分かったらしく、やっとの事で自覚が現れたらしい。


「現時点の作戦は評価を上げないとだめなのよ。あのバカ1号は単純な奴じゃないわよ。女の子がどんなに容姿がよくても、彼奴が靡くと思う?」


三名が首を左右に振る。


「彼奴の仕事関係をも知っているでしょ?」


三名が頷いた。


「候補にはなれた、恋人になるのは難しいのよ?」


三名は冷や汗だらだら。


「ライバルはあれ」


ピローテスを指差し、三名も見る、容姿、三名とは比べようがない遥か彼方の高見、スタイル、ガキの三名に比べようがない豊満、服装、文句のつけようがない大人の魅力満載、自分の良い所最大限に使う気満々、装飾、アルトの評価が高そうな物ばかり、化粧、上手過ぎた。


「勝ち目がない様なものばかりなのよ」


歩兵で要塞に突っ込むぐらい無謀、ガキ3名と彼方のピローテスのどちらを選ぶか男性なら分かり過ぎるぐらいわかる、女性からしても勝ち目がなさすぎる。

しかし候補には入っているが、恋人ではない、ステータスが必ずしも評価に繋がるかは別だ。

サツキから言わせればザ・権力者のアルトは、仕事先も綺麗所ばかり、それなのに一切手を出さない少年だ。興味すらないといった少年で、性欲があるのかと疑う位の少年、結局のところは、少年にとってみれば容姿は重要ではないのだと分かる。

候補にする何かしらの理由が有った。

サツキはそう考えている。


「ひとまずラインにつく選手にはなれた、そういう事よ。後、彼奴は容姿を重要視はしないわ。色々な情報から言わせてもらえば、候補にする何かしらの理由が有ったという事よ」

「頑張るっす」

「励みますわ」

「努力します」

「なら問題ないわ」

「あの」

「なに姫?」

「半分の重要視するのは性格です。何せ性格の悪い者はまず選びません」


頷けた。


「それに候補に挙がった時点でかなり特別な事です。悔しがる人は多かったですし」


それは三名も知っている。


「それと何故に小波と、姫野を選んだのかは、理由は知っています」


二人もそれは知っていたし、サツキも知っていた。


「風鈴もそれに準じる何かを行った、ピローテスもという事になります」

「分かったわ」


サツキは意を決し、アルトの元に向かう、突然の行動に誰もついていけない。


「バカ1号、少し聞くわよ」

「ああ」

「何故4名を選んだの」

「・・・それを知ってどうする?」


少年の顔は特に変化のないポーカーフェイス、いつものような慎重な問いかけに、サツキは考えた後に、答えた。


「全員が知っておくべき事じゃない?」

「何故知っておくべき事なのだ」

「共同生活するからよ」

「いやそれはない、ピローテスの事なら俺が送る」

「珍しいわね。信じられないの?」

「知れば戦いになる」

「アルト?」

「サツキは旅したから色々と分かるが、他は星から出るのは1度のみだった。慣れていない事も多い。ピローテスは異星人だろ」


そうであった。サツキも同じ様に異星の生まれ育ちの異星人だが、日本人の血が流れるからそれらは教わっていたし、宇宙でも血の絆は意外な結果に繋がるからだ。


「ここは地球だ。何よりお前らは若すぎる。いや幼過ぎる」

「アルト、いい加減にして!」

「では問うぞ。サツキ。お前は敵を許せるか。自分達の肉親を殺した者をそう易々と許せるか」

「・・・」

「プレイヤーのピローテスに殺された者は許すのか、自分達の祖を殺した者を許せるのか、自分達の家族を殺した者を許せるのか、お前は許せなかったのではないのか?」

「それでも決めるのは私達よ。アルトじゃない」

「ならサツキ、お前はどうする」


サツキの事を知らせれば、三名は離れるだろう。


「それでも必要なの事なの。私も話すわ」


サツキが珍しく、自らを危険にさらす気になったらしい事に、アルトは納得した。

この銀髪の細工師の戦いは、普通の女の子への道を妨害する全てとの戦い。彼女の基準は常に普通の女の子で有り、それ故にアルトも譲れるのだ。

アルトが薄く笑う。


(珍しいわね)


暖かく笑ったかに見えた。



買い物を中断し帰宅、地下の方に行き秘密話をするような部屋に来た。

姫はいつぞやのPOの時のようなサツキの顔に、また打ち明け話が訪れた事を理解し、茶室に来た。

それぞれが座り、アルトは特に茶は淹れず、適当に座らせてから一つを説明した。


「秘密の事は厳守してもらいたい」


姫、サツキ、風鈴、姫野、小波、ピローテスが頷いた。


「まずはサツキから行くか」

「ボクから行きます」

「・・・半分のは少しなんというか」

「実を言うとボクは半分を愛しています」


茶室が重たい空気になる。一人残らず微妙な顔。


「ぶっちゃけ産みたい位」


重たすぎる告白に、他の女性たちはなんとも言えない顔になった。


「こう言うのをアブノーマル、近親愛というのですね」


知っていた者も複雑な顔、知らなかったピローテスは、信じられない顔で姫を見る。


「こんな感じです。続いてサツキと行きましょう」


友人のアブノーマル趣味のカミングアウトに、サツキは重い顔になるが気を引き詰めた。


「あたしはレドの娘よ」


知らなかった三名は信じられない顔になり、あの親の娘と言った顔。


「これ位ね。次は姉の方ね」

「あ、ああ。家族愛というのは複雑怪奇なり」


大人のピローテスでも重たすぎる、姫のアルトへの愛を、どう言えば良いのかが分からなかった。秘密を打ち明ける。


「私はレドの養女だ」


アルトを除き全員がショックを受けていた。


「ついでに私は人ではない、エネミーだ」


この衝撃的過ぎる秘密の打ち明けに、アルトを除いて息を飲む。特にサツキは茫然とピローテスの顔を見る。何もかもが人と同じな義理のになる姉。


「これ位だ」

「三名の事は俺が話そう。言い辛いだろうし」

「重い話か?」

「お前は絶対に許さない行為をした。三名とも」


ピローテスの顔に緊張が漲る。


「小波はとある夏の日に、地球戦争回避の掛かった時間に、それらと引き換えに俺との刹那の幸せの時間を望んた。姫野も同じく」

「なんだと!?」


激昂するピローテスを、アルトが手で制した。


「その望みは叶う」

「・・・愚かな」

「まあ俺の反撃で事なきは得たがな」

「愚か過ぎる」

「風鈴の方は、俺が好みだったので最初にあった時から調べ、地球全土に現れる正体不明の賞金首の正体を突き務めた、尋ねる者と呼ばれ、それは俺だった」

「・・・」

「それから俺を徹底的に調べていた、極秘にな。色々と知ったらしいが、結局風鈴は誰にも明かさずに、今に至る。皆、少しは肩の荷が下りたか?」


5名が唸る。姫がアルトの袖を引っ張る。


「半分の秘密は」

「うーん。有り過ぎて」


誰もが分かる程に秘密が多いアルト、謎しかない少年なので、どう言えば良いかわからない。そんな事が増え始めるアルトとの時間だった。

茶室を出る。

6名の空気は重い、女の子5名はショックな事が多かったようだ。

褐色美人のピローテスを、呆然と見るサツキに、アルトは話しかける。


「だから言っただろサツキ」


サツキは茫然とした顔で、ピローテスを見たまま、コクリと頷いた。


「知っておくべき事、お前の戦いを見せてもらうぞ」


細工師の少女の戦いが、始まるようだと、少年は感じた。


6名を連れてVRルーム。

ゲームのチェックを素早く行い、POとは別の物を選ぶ。

剣と魔法のファンタジーゲーム、ガイアソードオンライン、通称GSO。


「おし準備してくれ」


6名がVRのフルダイブ用スーツに、着替えてから現れる。

上半身にはブラウス、下半身にはスラックス、内部にはボディースーツを着込む、色々な安全性の為に格好で、フルダイブ用のハードギアを装着し、それぞれの席に付き。


「ダイブするぞ」

『アクセスを確認。ログイン許可が下りました。ログインします』


□GSO


現れた7名。

ヴァーチャルワールドの内部、種族・外見・性別の変更できないし、リアルスキルも使えないので、ジョブとスキルによる構成となる。

ピローテスは懐かしく、馴染み深いゲームワールドに、ガイドなどを読む。

他の者も同じ様にガイドを読む。


▽GSO説明

ジョブ:主に補正傾向、特技なども取得可能。

スキル:補正と特技とシステムアシスト。

HP:耐久力

TP:アーツ系、生産系の特技使用ポイント

MP:スペル系、サポート系、レシピスペル系の特技使用ポイント

アルトは6名を見る。

単なる無地のシャツにズボン、足元はサンダル、装備の方は単なるナイフ一本、一目で初心者と分かるような外見。


「おーしPT要請を行うぞ」


6名に送る。


『ギスギスPTを結成しました』


6名がアルトを睨む。明らかに名前が不満そうだ。

初心者の村、所謂の序盤のトレーニング用だ。


「ほんじゃ狩りに行くぞ」


先頭になる少年、他の者も溜息を吐いて進む。

序盤のモブはコボルト、身長は120cmほどのいかにも弱そうな体格、持つ武器は棍棒、防具はなし、特にユーモラスでも、怖くもなく、犬と人の融合体のような外見のモブだ。

余裕過ぎ狩りだが、PTのギスギス感は非常に高い。

適当に狩り終え。


「装備を整えに行くぞ」


村に戻っての装備の更新に向かう。

それぞれ武器を購入した。

アルトは木製の刀、姫は木製の弓、サツキは木製の大鎌、ピローテスは木製の剣、風鈴、小波、姫野は木製の忍者刀。

性能はナイフよりマシな程度。

再びの狩り、この後に防具を揃えていく。

喋るのはアルトのみ、ギスギス過ぎてどうしようもない。

仕方なしに一つの機能をオンにする。


『PKがオンになりました』


6名とも、最もヘイトを稼いだ相手に、襲い掛かるのに言うまでもなかった。

大乱闘の末に、運の良い勝者は風鈴、HPはレッドだ。


(これを修復するとか)


貧乏くじを引いたようだと思うアルトだった。


『PKがオフになりました』


6名を説教し、個別面談、一人残らず不満だらけ、ヘイトを稼がなかった者は皆無だった。

この6名をどうしたものかと考え、閃いた末に一つのPTにして送り出した。


自由になってソロ狩り。

コボルトをひたすら木製の刀で殴る。

そんな幸せの時間が過ぎた。


ログアウト前に集まり、不満そうな6名、自由の幸せタイムが終わって、ポーカーフェイスになったアルトはログアウトした。


『ログアウトしました』


直ぐに友人に愚痴りに行く。

現れたアルトに、ソードは何も言わず酒を取り出した。


DKの私有地で、集まったメンバーの中でも女子を纏める出雲、ソードからのメールを読んで嘆息した。あのアルトが愚痴っている。

6名を呼び出した。


「ソードの所でアルトが愚痴っています」


6名の顔に変化が浮かぶ。


「私の人生で初めての事なので、事情を聴きます」


事情聴取が始まった。

終わってからの措置として、サツキを除きアルトの自宅より退去処分を受けた。

平和の帰還に、アルトは喜んでいた。



夕方、自宅での食事。

子供達が3名に減り、客のピローテスも落ち込んでいた。

親達も、アルトが恋愛に全く興味がない事は知っているので言わず、一度この恋愛を押し付けたために、アルトは仲間と共に旅に出る事もあった位に興味がないのだ。

候補の4名以外ではこれを言っても理解すら難しい、地球人口の多くが女性、最近の社会はマシになりつつあるが、それでも女性が優位過ぎたための弊害、男性の事を理解せずに恋愛を押し付ける様になってしまった。それでは上手く行くはずもない。

男性の方もそんな女性に辟易し、より晩年化が進む。

各国の政治家も、国連もこの問題には頭が深刻に痛い、ただでさえ人口が少ない地球に、更に復興の遅れを与えるという、改善せねばならないが、価値観というものは難しく、易々とはいかない問題でもあった。

そこで、この改善の為に、とあるゲームが提案された。

VRでの恋愛ゲーム、様々なサポートを搭載した地球人類の未来がかかったゲームだ。

なのだが、男性からは興味が湧く要素がない、どこまでも女性向け、ここでもまた弊害が現れた事に、政治家たちの頭は深刻に痛かった。

苦心する各国はとあることを立案した。

祭、兎にも角にもくっつけないといけない、しかしこれを可能とするのはアルトのみ、このアルトがまた旅に出るのはどうしても避けたかったが、かといってもデータも少ないために行わなければならなず、そこでアルトの大親友のソードに依頼した。

何かと多忙で、何かと大変な事ばかりのソードも、存続がかかった事なので、これらに対する教育的な観点からとあるプランを提案した。

総合ゲーム。

恋愛も必要であるが、興味の無い者からすればどうでもいい、冒険という要素を加え、女子向け、男子向けの両方を両立する事だ。

メインの方はどう考えても恋愛ではあるが、これを徹底的に隠すために冒険という要素が銜えられた。これらの広告の方にも力はいれる予定となる。

そこでかつての時代を知る生粋のゲーマー達の、プレイヤー達にも協力を仰ぎ、ゲーム開発が始まる。

ありとあらゆる観点から、とある双子に白羽の矢が立つ。レドの娘の双子、ティアとコマリだ。WHOのイーニャでの、地球人類の存続がかかったゲーム開発が始まる。


日本の飛空市、ここも大きな注目が集まる、何せカップル率が非常に高い、他の地域からすれば信じられないような数字、この連邦ですら異世界扱いの飛空市にも調査チームが入る。


夕飯の後、子供達は地下へ、褐色の美女も考えた末にアルトを呼び止める。


「アルト」

「ん」

「話を聞きたい」

「・・・良いだろう」


自宅の裏側にある縁側、ピローテスがビールケースを持ってくる。豪快な所があるとアルトは思う。

生ぬるいビールを渡されて受け取って開ける、一口飲むと安さが自慢のチープな味わい、アルコールの方は大したことはない、酔う事はない様な低さだ。


「不味いが飲み易い」

「そういうものだ。もう12年か」

「そうなる」

「3歳のお前が、スカオに連れられてきたのが初めてだな」

「ああ」

「最初にあった時は子供とは思えない目だったし、何の反応もない、イーニャの子供のような子供らしさの一つもない、凍った眼で世界を見ていた」

「ああ」

「それから1年、お前の誕生日にお前が言った、剣が習いたいと」

「ピローテスの剣は綺麗だったから、習えばなれるかなって」

「それは嬉しいな」

「何もかもが新鮮だった。剣の修行の日々も、冒険の日々も、地球の生活などどうでもよくなる事ばかり、幸せがそこにあった」

「そうか」

「なんだかんだ言っても時間は過ぎ、俺にとってみればイーニャは第二の故郷、レドの屋敷は第2の家だった」

「ああ。知っている」

「ピローテスとの時間も多かった。よく怒られたものだ」

「そうだったか?」

「よく怒るからな、何かあれば直ぐに怒る、俺にとってみれば世界で最も理解できない奴、それがピローテスだった」

「そ、それは」

「それでよかった」


少年なりの感じた事、褐色の女性からすれば、3歳の頃から面倒を見てきた弟子の少年だ。大きくなっていくに連れて、ピローテスも次第に異性として見る様になり、気付いた時には恋をしていたという事になる。父が知った時は激怒したが、そこは何とか。


「久し振りに甘えていいか」

「ああ」


アルトがもたれかかる、その頭をピローテスの手が包む。

いつの間にか身長が追い抜かれたのが、ピローテスには少し悔しくも嬉しい。


「子供の成長は速いな」

「子供だからな」

「ああいえばこういい返すあたりがお前らしい」

「ピローテスもいつもそうだ」

「そうだったか」

「時間が過ぎる、それが俺のような短命種の特権だ」

「私のような長命種にとってみれば、短すぎるのだがな」

「人生は長い、それが子供の意見だ」

「分かった分かった」

「都合が悪くなると、いつも子供扱いだ」

「立ったら大人にしてやる」

「遠慮する」


夕方の時間に、少年はピローテスにもたれかかって時間が過ぎた。


夕方が過ぎ、アルトが離れる、ピローテスは名残惜しそうに少年から手を離し、少年の方は地味な普通顔をピローテスに向ける。


「酒が飲みたくなった」


珍しく弟子がそんな事を言う。ピローテスが知る限り一度もなかった事だ。


「飲みに行こう」


少年の提案に、ピローテスは頷いた。

これを親達に伝えると、スカオは仕方なく許可し、実の母親の方は嬉しそうな顔でピローテスに声をかけた。


「ピロ、押し倒しなさい」


実の母親とは思えない言葉に、ピローテスとしてはどうしたものかと考えるも一応頷いた。


「準備してくる」


ピローテスは初めてのデートに舞い上がっていたが、冷静さはまだあった。


少年の方はいつも格好から珍しいスーツ姿、黒一色のジャケットとスラックス、中に着込むベストは濃いブルー、中のシャツのホワイトシャツ、ネクタイの方は薄いブルーのネクタイ、全体的に落ち着いた雰囲気を持つアルトの好むような色合いの格好だ。


父親のスカオは息子の姿に、喜ぶべき事なのだが、飛空市でも人口の多くは女性、当然の様に男性が少ない為に女性は常に余る、そんな女性が多い社会で、未成年の男性は良くも悪くも色々な意味で、狙われる。


その狙われる男性№1のアルト、容姿的には地味過ぎる顔、これ以外を除けば全て非凡、細工師の少女から言わせれば、容姿以外の全て派手過ぎると言っていた。

息子の事は信用しているし、信頼しているが、理性的な女性だけで構成される社会ではないのが困りもの、意中の女性が妙な考えから男性の元を離れたら、当然の様に男性の方も考えるだろう。その切っ掛けになるかもしれないのが現状だ。

かといっても息子以上の強さを誇るものは皆無、頼りに出来る息子の師匠も、結局は息子を異性と認識した。

良くも悪くも息子は強く惹きつけてしまう。色々な者を。

こんな息子に比べれば娘の方は普通、どう考えても息子の半分とは思えない普通。

同世代でも飛び抜けてしまい過ぎた事もあり、友人の方も恐ろしく少ない。

そんな息子の父親に、露骨に言ってくる者もいたが、息子に排除されて今は収容所に居る。当然のように現状の変化をよく思わない者は、妨害に動く事は目に見え、信頼できる護衛の二人もいるが、知れば妨害側に傾く事は目に見える。

真に息子を案じる者がどれほどいるか、父親としても心配にもなる。


DKのメンバーに連絡が入り、何かと世話になるアルトの為に一肌脱ぐ。


DKメンバーの色々な意味で、フル装備で現れた。

飛行団団長はこれを伝え、サポート担当者は若の情報からこの店に行く予定と突き止める。星渡のシーとクーも先回り、二人を乗せた飛空艇も密かに護衛が動ている。

ただこれらの事はアルトには知られてはならず、こう言った仰々しいのが死に程嫌いな奴なので、少しぐらいは受け入れて欲しいとも言いたいが、これはアルトに喧嘩を売る様な事と同じなので誰も言わない。


アルトの好みそうな店、普通のバー、どこも珍しくもない有り触れたと言い切れる平凡な店、なにが特徴なのかもわからないそう言ったバー。


飛空艇の運転手も、不思議に思う様な店の前で二人は下りた。

普通のバー、名前の方は零夜、0時に閉店という店からちなんだらしい。


店に入った二人、客も吃驚と、マスターも吃驚、どう考えても超上流階級の来る場所じゃないからだ。

アルトとピローテスは空いている席に座り、マスターが溜息を吐いて水を出す。

注文したのはビールとナッツ、銘柄の方もコンビニで買える様な物だ。なんでの団長の息子が、そんな銘柄を知っているのかは謎だった。


二人は楽し気に談笑していた。


外では噂を聞いた一部の方々が動き、この目的を察知したアルトに拾われた忍者や侍が徹底して妨害、やり過ぎるとアルトに怒られるのでやり過ぎない範囲が大変。

アルトの飛空市での初めての夜遊びは、周囲を巻き込み大変な事となっていた。


夜が更けて店仕舞いの時に二人は帰り、マスターは本気で店仕舞いを考えた。


帰宅した二人、母親達は仕打ち服装に一切の乱れがないから、父親としてはホッと一安心、娘の方は般若のような顔で、サツキに捕まって抑えられていた。


3月2日はそんな一日だった。


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