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第15:WHO星系、手紙の配達~その12。残響

 

 翌日の朝方、地球の娯楽が増えた事もあって、この氷の塔のダンジョン内部の映像が公開されると、地球で大絶賛される事となる。

 これを重く見た連邦は、所属国に呼びかけ一つの計画を立案した。

 ダンジョン計画、ありとあらゆるゲーム会社など娯楽産業の、より発展に向けての一つの方向性、飛空市の氷の塔この複合ビルなどの計画でもある。

 連邦を統べる足利もこのアルトの功績を称え、ゲームメイカーの称号を新設し与えた。

 祭り師でもあるアルトの為に、二つの称号持ちとなった。


 8月9日の昼間、アルトと仲間達はダンジョン攻略組のギルドを結成し、これによりダンジョン計画などにも関わった。

 スペルの二つの分野を創り出し、この情報を受けた各種族より星渡達が派遣される。

 ダンジョン攻略班、略称はDK、夏休みも有るので、飛空団より提供された敷地にいた。

 サポートにもゲーム会社より派遣された技術者達、様々な技術者も派遣され、より高品質なダンジョンの創造に挑む、同時にこの攻略もするため、多方面より期待の集まるギルドとなる。

 アルトの持つ神器『祭り師』、これは珍しい事に二つの特殊能力を持つ、スペル芸術用の祭り、迷宮ゲームのダンジョン創造のために迷宮創造。

 開発者もアルトの才能は認めており、調整は受け付けるとあった。

 集まったDKと、サポートの技術者達、こちらのサポートはレンズが統括した。

 集まっての会議室はまだなく、テント小屋ではあるが、連邦は協力は惜しまず、この娯楽の、スペルの為に一切のコストがかからないので、非常に優れた娯楽であった。


「まずは、氷の塔、この内部はこんな感じだ」


 作り出した氷の塔のミニチュア、半分に切断されたような物で、内部の方を見る関係者は興味津々、アルトによって全員の前に現れたので、詳しく見る事が出来る。

 内層は簡単であった、10階建ての塔で、現れるエネミーの方は比較的易いと言い切れるような物ばかり。

 よく出来た模型のような物、内部の方も精密で、模型職人たちは嬉しそうに見る。


「基本的に見るからに本体と思える様なものが本体、鬼のみ最高効率、この理由は武器が本体だから、この為に鬼はいくら鬼を叩いても無駄。武器を壊さない限り永遠に復活する」


 アルトの編み出したスペルによって活動するために、これらの法則性などはまだ公開されないが、ゲーム会社にとってみれば魅力的なものだ。


「色々と問題もあったし、内部の生産用の問題はな」

「露店ですし、何か工夫が要ります」

「ああ。まあ簡単に出来るのだが、何せ俺以外の経験が少なからな」

「確かに、よくまあゲームが出来ないからと言ってスペルで生み出して遊ぶとか、子供の発想とは言え、これは面白い事です。各種の問題はこちらで。アルトは思うようにやってみてください」

「了解。次はやっぱり時代物と思うんだ。古すぎても面白くないので20世紀の日本の都市、東京とかな」

「東京の再現っという訳でないようすね。舞台ですか」

「レトロな下町な感じもあればなお好い」

「面白い、下町を塔にする?」

「ああ」


 直ぐにレンズが指示し、技術者によってサンプルデータが映される。

 東京の下町、この浅草、ここがなんだかんだ言って有名の為に何かと好かった。

 情報によりアルトが生み出した。

 10層に及ぶ下町の塔、まだエネミーはいない。


「下町と言えばカブや三輪車、出来るかな」


 レンズの質問に、オードバイのカブ、三輪車を創り出した。


「カブに関してはやはり郵便です」


 作られた郵便局の制服を着込んだ人が生みでで跨る。


「武器の方は手紙、ですかね」


 郵便職員が手紙を取り出して投擲、爆弾のように氷が作られる。


「いいですね。この方向性で行きましょう。次には三輪車、こちらの方はタクシー、武器の方はタバコでしょうね」


 タクシーの運転手が怠そうに現れる、懐から取り出した煙草の取り、吸ってから吐きこの煙が氷のブレスとなって凍て付かせるが、射程が短い為に特に問題はなかった。


「悪くない、まあ氷ですし炎はさすがに無理ですか」


 この煙草の作業の時にライターを都だし炎が付き、そのまま燈り消えてから吸い込んで、煙草を外してからブレスを吐く。


「マッチに変えてみてください」


 今度はマッチ、箱型の待つ力の作業をし、燈してからマッチを捨て、煙草を外してからのブレス。


「こちらに決定です。次は前衛と行きましょう。浅草と言えばチンピラです。後は警官です」


 二つが作られる、チンピラの方はステテコにシャツ、警官の方は夏服。


「チンピラはドス、警官の方は警棒ですね」


 持たされた二つの武器。

 動作の方も突撃、振り回しのドス、警棒の方は叩き付けるのみ。


「いいですね」


 次々と決めていき、10層の最上階のボスの所になる。

 これは歌舞伎役者となって、演目は義経千本桜。

 この話からサンプルが出され、最高傑作ではラスボスのようなので平凡な完成度のものとなる。これらを詳しく観察し、その他のデータもよく読んでから一つ一つ修正し、演出指導の担当者も加わって修正を繰り返していた。

 武器に関しては髪等、風景やなんやらも必要なので最上階のみ歌舞伎舞台、楽士の方もアルトの得意分野なので問題なし、黒子の方も問題なし。

 一度解散し休憩を挟み、実地テストに移った。


 生み出された下町の塔。入口の方はいかにも裏路地、進み通りに出る。

 一層目の乗り物系、動きは遅いが、徒歩よりはやや早い、性能の調整を行いDKのメンバーにより様々テストを繰り返し、ゲーム会社としても工夫がいる所には提案し修正を繰り返していた。人の動きに関してはアルトの得意分野なので修正はない。


 次に二層、チンピラと警官、動きの方はよく、チンピラと警官の修正も終えてから、二つの組み合わせも提案され、ユニークのティアなのでアルトも快く応じ、一組用の調整も行う。

 三層、四層と進み、調整を繰り返し、最上階のボス。

 細かな修正の他にも時代検証なども行い、黒子の方にも役割を与え、部屋のトラップの作動担当となる、楽士の方は義経千本桜の演目通り、時々ミスするルーチンも組み込み、DKのテスターによる調整も行い、ボスにはユニークな機能も与えた。

 ドロップに関してはコインだけでは攻略が余りに大変なので、相手の武器を奪った時に一個のみ使えるようになる。

 これらの纏めた情報からゲーム会社関係も何度も議論し、もう少し修正すべきところを厳しく提出した。

 修正を繰り返し、夕方近くになってのやっとの事の合格ラインに達して、広報の方が飛行団に提供した。


 青空中学校の試作公開が決定し、関係者も楽しみでいた。

 夕方の食事、時刻を気にする者が多く、予定の時間になりダンジョンが創造さる。

 零により打ち上げられた花火、星守りよって作り出された桜の出現で一日の楽しみが始まる。

 一般的には運営と呼ばれるDKとサポート、試作公開の下町の塔、集まるのは主にプレイヤー、一般の人達も少なからずいた。

 この学校の生徒たちも気になっていたらしく、ここに集まる。

 リアルのダンジョンに、準備も整うが、入口の方は拡張されれずに、複数が作られた。

 テスター達も狩り始める。

 アルトと忍者3名もPTを組んで狩る。

 一層の乗り物系は初心者用でもある様に、うま味が少ない、二層に駆け上り、二体一組のチンピラ&警官と戦う。


「うーし。じゃ」


【スペル:タイプ祭り:ロケット花火】

 巨大なロケット花火を撃ち込み、二体の耐久度を削り、忍者の三名が駆け、最初に柔らかいチンピラを襲う。

 チンピラの戦闘能力も高く、ドスを器用に使い攻撃を防ぎ、これを潜って風鈴の忍者刀が突き刺さり、アーツを使う。

【アーツ:タイプ忍者刀:月下】

 放たれたアーツの切り上げ跳躍によりクリティカルを受け掛けるが、チンピラは横転して避ける、そこに小波の忍者刀が追い打ちし、その背を使い駆けた姫野の忍者刀がチンピラの首を刎ねかけるもチンピラはドスで防ぐ、警官の方は組んでいるが助けないという風変わりの組み合わせなのだ。

 アーツ等に対するルーチンも随分と修正され、これらの回避行動によりアーツ回避率は高い。

 アルトも近接を行うために駆けだし、警官に神器『祭り師』で斬り付ける。

 警官の方は軽く見切って避け、反撃の警棒で叩き、回避に成功したアルトが反撃を繰り出し、これが思う様な成功を収めず、反撃の攻撃がくる中、スペルを使う。

【スペル:タイプ魔法剣:光剣】

『祭り師』に噴出した高熱の刃、これを振るい警官に一撃を与えるも防御性能の高い警官は耐えきる。

 瞬間的なスペルの消滅で、警官が警棒を振るい、これをバックステップで避け再び光剣を使い一撃を与え、消えると警官の振るわれた警棒を避け、再び魔法剣を行う。

 これを細かく誘導し、機会に訪れに振るわれた瞬間に懐に飛び込み、光剣での一撃が胴を貫き、消滅した。

 忍者の小波、姫野、風鈴も削ってはいるが、警官よりハイスペックなチンピラには苦戦気味。

 ここで全体にバフがかかる。

 出雲の歌と踊り、神器『水鏡』により強化されたことにより、広域に渡るバフを行う。

 戦士達もPTに別れ狩り始める。

 薬師のレンズは観察し、改善項目の多さに溜息を吐く。

 風鈴の忍法により打ち上げられたチンピラに、姫野、小波の忍法の追撃に依って倒される。

 コインが落ちる。拾った風鈴が数えた。


「運がよかったわ。20枚よ」

「うっしゃ!」


 姫野の喜びの叫びに、小波も満足そうに頷いた。

 歩いていたアルトの前にコインが落ちる、上空を見ると消滅していくチンピラ。

 サツキPTが駆けてくる、基本的に拾った物勝ちなのだが、アルトは譲った。


「拾ったらさすがにPKよ」

「安心しろ困ってね」


 スターが拾うと数が増え、余りいい数字ではなかった様子でため息が漏れる。

 ワイバーンの方は別のエネミーを探し、このPTの新入りの姫も飛びながら手近な方に射る。

 少年もPTと合流し、三層を目指し駆け出した。

 さすがに生まれた頃から鍛えているので体力はある、ただアルトは駆けあがる階段の中で中々伸びない身長の方が気になる。14歳にしては大きい方の170cmとしても侍としては180cmは欲しいのだと思う。


「何考えているのダーリン?」


 前を駆け上がる風鈴が、振り向いて質問した。


「身長伸びないかなって」


 これに風鈴は優しく目を細めて、微笑し、艶やかな唇を動かした。


「14歳で170cmは大きい方よ」


 これに少年は答える。


「速く180cm以上になりたい」


 風鈴は意外そうな顔で笑顔に笑う。


「意外ですわ」

「俺は結局は侍だ。大きい方が強い事は重々承知、やはり強くなりたい」


 侍最強の少年でも更に空を目指し、修行したいみたい風鈴は感じた。

 黒一点の少年の右隣にいる小波、160cmの身長の背丈は14歳のにしては大きいが、戦士としては決して大きいとは言えず、それ故に男性に比べ体力に劣り、リーチの方に悩む事も少なくない。

 強くなりたいが、体格が大きくなれば似合う服も減る、14歳にしては大きい小波の体格もあり、年々の上がる身長に似合う服も減る、だが体力は上がる、悩ましい問題だ。

 反対側の姫野を見る、黒とピンクのロングのツインテールに、頭の方にはピンクのベレー帽、服装もピンク系が多い、いかにも女の子のような格好の相方は、忍者にしては半数はいる忍法系、特に称号が有る訳でもないが優秀な忍法使いだ。

 身長の方は160cm、これ以上伸びるのは勘弁とよく愚痴るのを聞く。

 階段を登り切り三層に入る。

 ヤクザと対峙する。


「叩くぞ」


【ロケット花火】を撃ち込み、一体のヤクザの巨大なロケットが直撃し花火らしく花咲く、三名も連携攻撃を行う。

 姫野の忍法。

【スペル:タイプ忍法:神雷の術】

 放った雷撃がヤクザに直撃し、二人が駆け出していた。

 接近を終えた二人がアーツを使う。

【アーツ:タイプ忍者刀:絶空】

 作り出された真空刃、この二つによりヤクザは回避できずに長ドスで防御しようとする。

 再び姫野の【神雷の術】が直撃し、強制的に防御がキャンセルされる。

【絶空】の真空刃が直撃し、ヤクザの武器の長ドスを根本から切断し、ヤクザの体にも届きそのまま切断しようとする、これにヤクザは耐えきる。


 そのまま近接を行い、忍者刀での突き刺し、ゼロ距離からの【絶空】を使い、切断した。


「ふう、中々強いです」


 戦い終え、ボーイッシュな女の子の小波がコインを拾う。


「21枚」


 割と高め、どうもランダムの確率が高めに動いている、少年がそんな事をするとは思えないが、ツキが回って来たらしい。


「クナイが買える」

「次に行くわよ」


 五層に向けて駆けだし、フロアを駆け、階段を上る。

 次には労働者、町工場のおっさん、スペルとアーツが狩り、6層目、工事労働者を狩り、7層目、飯屋の料理人を狩り、8層目、配達人を狩り、9層目、不良を狩る。

 到着した10層目の最上階。

 4名を確認したボスが動き、義経千本桜を舞い始める、楽士が音楽を演奏し始め、黒子がトラップを作動させるために動く。

 アルトの【花火大会】による怒涛の連続花火が直撃し始める、凡そ2000本の直撃に耐え続けるボス、三名も忍法を使う。

【スペル:タイプ忍法:白虎】

 神獣の白虎の吼える、天空より落ちる落雷、これにボスは耐えきる。

 ボスの最大の特徴この耐久度の多さは並外れていた。

 絶え間なく続くスペル攻撃にボスは耐える。

 半分に到達した事を示す楽士のミス。

 攻撃パターンが変わり、髪が伸びこれを振り回し始める。

 黒子がトラップを作動させ、ボスの周りが燃え上がる。

 絶え間なく続くスペル攻撃により、耐久度が1/3に追い込まれたボスの攻撃パターンが変わり怒り狂う様に暴れる。

 絶え間なく続く攻撃によってボスが消滅した。

 最上階が砕け、9層に落ちる。

 コインを拾った姫野が喜ぶ、ボスコインだ。


「帰還するっす」


 主君の言葉を真似るていう姫野。


 地上の中学校の校舎内、職員と生徒会が切り盛りするコインが通貨の露店、真っ先に来たのが祭り師の露店。

 特別に許可された祭り師専用の露店には、祭用のアイテムがある。


「うす」

「おう。稼いだが?」

「もち」

「で、なにと交換する」


 アルトは真っ先にお面を取る、数多い恩恵の有る祭り用のアイテムの中でも、お面の性能は高く、特にスペル関係のアシスト能力がずば抜けている。


「ボスコイン一枚だ」


 アルトが渡し、確認したプレイヤーがお面を渡した。

 狐の面を頭の横に付けてから、礼を言って忍者の方に向かう。

 三名が購入したのはクナイ、それも単なる投擲用の物ではない、忍法の性能を飛躍的に向上する消費アイテムだ。


 学食に行く料理人のプレイヤーが注文を受け付け、コインでの交換でお好み焼きを購入し、飲み物の方は迷った末にコンソメスープ。

 食べながら談笑し、これだけでも十分楽しい。


 □


 再び下町の塔の二層、お面を身に着けたアルトの火力は凄まじく、単発当たりの攻撃力が倍加した事で、仲間達も驚くような火力を誇る。何せやたらと硬い警官をスペルのみで倒し切った。祭り師の星守りも、この祭用のお面が是非欲しいと呟く。

 薬師のレンズも改善可能な項目も増え、今後の修正を増やした。


「お祭り完了」


 一確のみの時の台詞を言う。


「忍法行くっす」


 クナイを使う通常の神雷の術とは比べようがない強力な雷撃が警官に直撃する、更に姫野が使う、神火の術により警官の足元から火柱が爆発し炎上、警官の二回で倒し切った。

 忍者の中でも、忍法を極めている姫野の忍法は強力だった。


「討伐完了っす」

「次は巻物が必要ですわ」


 巻物系は忍法の能力を上げるアイテム、クナイとは違って高価な物だ。

 小波も忍法を使い試すが、どうしても四回という数字だ。

 風鈴も使うが小波と同じぐらいで、いかに姫野が強力な忍法使いかわかる。


「姫野って凄かったんだ」


 サツキは愕然とする、あの警官を二回で倒し切るキャスターは強力だ。

 いつもはバカみたいな口調の女の子だが、優秀な忍者だ。

 狩りも始まり、コインを手にしてから直ぐに露店に向かう。

 アルトPTは前衛担当の風鈴の小波、後衛担当のアルト姫野に編成し直し、1確の為にひたすら狩る、目指すの巻物。

 狩ってから巻物を買いに行く。

 忍者のプレイヤーが感心した様子で巻物を見せる。

 姫野は悩む、攻撃力を上げるべきか、それとも回数を上げるべきか、直撃後のボーナス狙いにすべきか、困った末の相方を見る。


「ボーナス」

「分かったっす」

「やはりDEFダウン」

「もちっす」


 軟化の巻物を購入した。

 再び下町の塔の二層、狙う警官に忍法を使い、防御力低下を起こしたのちに前衛の二人が狩る、非常に硬い警官が豆腐の様にスライスできたのは素晴らしかった。

 より狩り易くなってのひたすらの狩り。


 遊んだ後の午後8時の終了、DKは集まり帰還してからの夜食を食べる。

 それぞれのアイテムを見る。

 貴重なボスコインと交換可能な祭り師の祭用、お面、鉢巻、法被等のデザインの物、この中でも超強力な消費アイテムもある、花火だ。祭り師達のメインの火力スペルの花火系を遥かに凌駕するもので、これを星守りは欲しいが兎にも角にも高い。


 夜食の後の修正開始。

 星守りはティーラ達と交渉しPTに加わる。

 見た目に反し情熱家で、意外と火力好きの星守りは単発の攻撃力は非常に高いが、数をこなせるかと言えば懐疑的、アルトのような数特化の祭り師ではないからだ。


「まさか組むとは」

「よい、こいつは信用できる」


 空手家の二人も祭り師は目指しており、故郷期待を一身に背負う。

 星守りのような優秀なキャスターが高じて祭り師となる、この為にキャスターたちは一人残らず祭り師を目指し、祭に魅せられていた。

 空手家の中でもスペルの使える者は、やはり目指しており、今からでも練習を開始す者しかいない、故郷の琉球の王府からもサポートの話は多く、様々な芸能者の祭用のアシストは多い。


「カチャシー行くぞ」


 基本的な踊り、生み出されたスペルにより警官に怒涛のコンボの挟撃、これでも倒し過ぎれず、星守りの祭が使われる。

【桜祭り】によって生みでた桜が警官を圧殺し完全に叩き潰し掛けるが、警官は耐える。

 このしぶとさだけにはどこの愚痴りたくなるようなレベルだ。

 様々なスペルを使い何とかしようするが、兎にも角にも耐久度と防御力が凄まじく、余りのしぶとさに星守りの切り札を使う。

【百花繚乱】によって生み出された幾万の華、花火系の中でも特に優れているスペルで有り、色取り取りの華が沸き起こり、警官に怒涛の攻撃を食らわす。

 だが警官は耐える。

 辟易するほどの頑丈さだ。


「近接に行きますよ」

「おう」


 三名が駆ける、近接に臨む一直線の正拳突き、ノックバックする警官に南風の下段蹴りが決まり、警官の足が微かにヒビが入る、接近し終えた星守りの神器『囃し』による冷静な一撃が警官の喉に届きかけるも、ギリギリで警棒が届きそうになり、魔法剣を使いこれを強制的に切断した。


 何とか倒し終える。


「硬いです」

「辟易するぜ」

「しぶとい」


 侍や空手家もこの頑丈さだけは嫌だった。


 修正仕事を終え、夜の10時。

 くたくたになっての就寝なのだが、誰も休まない。

 若者たちは、祭り師の指導をアルトより受ける。

 色々と工夫するも、至難であり花火系の一つをとっても祭り師が編み出したスペルなので、普通のキャスターでは発動すら無理、姫除けば使える様になるが、姫の方は祭り師は目指していない珍しい若者でもあり、目指すのは巫女の中でも夢の歌姫、これになりたくて努力していた。

 大人達も祭り師の事には興味があり、見学する者が多い。

 スペル芸術の極みである祭、この奥深さに魅せられない者は少ない。

 多芸なアルトのサービス精神も発揮され、楽団、ダンサー付き、大人達も美味しく酒が飲める。

 夜が更ける


 □


 翌朝、テントから起きてギルドの№2の星守りは素早く仕事、終えてから一つの依頼に目が留まる。

 連邦の芸能界からの依頼、一つ祭を依頼したいと。

 考えた末に、アルトに持っていく。


「若」

「おう」

「こちらを」


 見せられた依頼書、十分過ぎるほどの内容であり、請け負うか相談に出した。

 集められての会議、祭り師と候補たちにも経験はどうしてもいるとはわかるが、計画の事もあり、中々出来ないが、冥夜が父に頼むと快く了解された。

 移動に関しては星渡たちが輸送し、東京の郊外に広がる会場に来る。

 連邦の全てから集められた芸能者達、内容を確認し、1時間の練習を見せられたアルトが再現する、数万人かも知れないが、アルトは一つの都の日常を再現できるために特に負担でもない。

 練習と再現を繰り返し、サポート達もデータを集め、これを使ってのとあるプランが提案された。

 芸能祭、この塔であった。

 練習の片手間に再現し、多芸なアルトも有って芸能関係者も助かる。

 祭り師の候補達も、仕事と訓練に励む。

 ここに一組の少年たちが現れ、サツキが激高し大鎌を取る、周りが慌てて止めた。

 アルトが挨拶した。


「ようジョーカー、アケチ」

「久し振りだ」

「懐かしい話だな」

「指揮と演奏に来た」

「助かる」


 芸能にも伝える、各所に指揮者が集められる、犯罪者のエリートの怪盗、この初代のジョーカーは、宇宙でも屈指の指揮者で、宝探しの片割れで行っている。

 アケチの方は演奏家、楽器なら何でもできるが、特にギターが好みなのでギター職人でもある。二人は泥棒でもあるので、サツキのような細工師たちからは唾棄の如く嫌われる。

 ジョーカーの指揮により、品質はさらに高まり、アケチのギター演奏も加わりさらに高まる。

 プレイヤーも集まり出し、歌と楽器と踊りの申し子達が集まって協力した。

 祭り師候補達も、とんでもない事になったと言った所だ。

 地球の人々が楽しみにする芸能祭、予定の時間の前になり、祭り師たちの中でも花火を担当する零が、知り合いの花火職人たちと話し合って決めた花火を行う。

 地上から一つ一つ打ち上げられる花火、この練習も有って好い結果となる。

 また舞台の方はアルトが作り、氷によってつくられた巨大なコンサートホールが舞台だ。


 予定時間の前、巫女達の中でも舞姫に指揮される舞師、歌姫に指揮される歌師、楽器を担当する楽士、これらのサポートも整い、建築家たちのデザインも決定されてこれをアルトに提案される。

 作られた舞台、珍しい事に一つの都が再現され、芸の細かいアルトの芸も有って関係者も面白がる、色々な修正案もあって細かい修正を繰り返し、建築家たちも面白いので城を提案、アルトが快く了解し城を作る。

 どんどん整い、これらは全てライブで公開され、朝から大変な祭りもようだ。

 氷の為に色があれであったのがネックだが、それ故に圧倒的なスケールとなるので特に色は塗られなかった。

 芸能関係者も、空に何かあればという事もあり、アルトが作り出した鳥達、これに星守りが桜を創り出し、氷と桜の都が完成し、細かい修正も繰り返され、花火職人たちも担当する花火の方も修正を繰り返し、品質向上をひたすら行う。

 この祭り師の行うスペルの価値に、様々な人々が魅せられる。

 囚人たちにも見せられているので、大変な人気を呼ぶ。

 建築家たちも色々と議論し、とある仕掛けが考案された。

 氷の巨人、これと戦う炎の巨人だ。

 楽しくなってきたアルトは快く了解し、これを再現、これらの修正も行われた。

 他にも必要だと強く要求するゲーム関係者によってつくられた鬼武者、竜騎士の戦い。

 近くに湖を作り、ガレー船の艦隊を生み出し、これらにも修正が繰り返され、霧が出来るので薄い霧も作られる。

 スケールが際限なしに大きくなる一方なので、纏めも星守りも悩み、一つの総合的なテストが行われる。

 空軍より強い要求がありゼロ戦が作られ、上空での編隊飛行が行われた。

 陸軍も戦車と騎馬隊が、という要求が有って加えられる。

 テストの他にも試行錯誤と修正が繰り返され、ある程度の完成に至る。

 全容を把握するための機械が大至急に作られ、機械関係者達もかき集められて作られる。

 夕方、全体的な修正案が提供され、アルトの方もこれを読んで映像なども理解した後に修正し、この後の練習と修正が起こる。

 音響担当の人達も大忙し、音の総合的な調和も考えるので、難しいとしか言えない。

 細かい修正の繰り返し、最初に比べれば圧倒的に良く、ライブを見る人々も楽しめる内容で、囚人たちもこれには色々と話も出る。

 暗くなるので、アルトに要求が回り、朝方のような光となる。

 今までにないスケールに、働く人々も楽しそうだ。

 全容を把握するための機械が完成し、これで何とか上が集められ見せられる。

 兎にも角にもスケールが大きく、芸の細かいアルトの事もあり、全容を把握した上層部は全体修正案を素早く纏める。

 建築家たちも水と霧には橋がいると強く主張し、都の周りに作られる。

 この祭りの楽しい準備に、あちらこちらの拘りが反映され、完成していく中、楼閣がいるという事で星守りにも要求が回り、全体の桜を増加し調整していた。

 花火の方にも修正が回る。

 候補達も大忙しだ。

 サツキは細工師の最高峰のイーニャの細工師の為に、美術総指揮を担当し、星守りの補佐にはジョーカーとアケチが担当、報道の方も大変過ぎる為に、何かありませんかと頼み、アルトが移動に便利な車を作り、これによって移動が画期的に良くなる。

 今度は車のメーカーの人々が招集され、この車の修正を担当した。

 一つの舞台の修正も繰り返し、働く人々も大変の為に、ひとまず休憩になる前にアルトが全体を癒し、多芸なために助かった。


 エルフ達からも協力が提案され、これに了解し、星渡たちの中でもエルフが呼ばれ、これを修正も行う、一つの都を創り出すために、必要なのは人と土地。

 既にあちらこちらもこの祭りには国家プロジェクトとなる。


 □


「ちょっとバカ1号」

「なんだよ」

「なんでこいつがいるのよ!?」


 サツキのような細工師たちの宿敵に泥棒組、ジョーカーとアケチは特に気にもせずに弁当を食べる。

 上層部もサツキの腕前やらなんやらは良いが、兎にも角にも扱い難いのに頭は猪、なのだが腕前の方は地球最高峰、よくトラブルを起こす問題児、サツキの担当者は冷や冷やする事が多く、医者も待機する事が余りに多過ぎて担当の医者も居る様になった。

 姫が仲裁し、友人の頼みで我慢している様子のサツキ。

 このために姫とサツキはワンセットなのだ。


「若、こちらを」


 見せられた修正案、各種の映像もあって分かり易く、説明文も分かり易く纏められ、難しい言葉は排除されていた。

 原稿案も文芸家たちが担当し、連邦にとってみても楽しみで仕方がない為にどこもかしこも協力には応じた。

 全体の修正案、この中でもサツキの細工がどうしても必要だった。


「サツキ」

「なによ」

「舞台の細工を頼む」

「・・分かったわよ」

「今は休もう」


 たっぷりと休んでから、仕事に戻る。

 サツキの腕前は何処もが認め、細工の事に関しては一つの文句すらない、見事な細工の大量生産も可能なの為に、装飾関係者はサツキの味方だ。

 武装探偵学園よりサブカルチャーの者が提供され、各種の支援当たる。

 整い始める、ホテルの方もアルトが作り出し、何かと重宝するために祭りには欠かせない人材となる。

 翌日も有って、全体修正が繰り返され、報道担当者はこの放送が大変、普通に映る範囲にはない巨大な都の、この全体映像でも難しいのだ。

 機械関係者も頭を捻るが難しい。

 祭の舞台の、高い品質にはどこも文句がないが、巨大すぎるのも考え物で、今後の改善点となった。

 服装の方も祭用に何百と修正されていた。

 テーマは祭りと調和、これらの総合指揮を取る星守りでも、至難過ぎる巨大な祭りだが、出来る者が居ない為に教わる事も出来ず、助言すら難しい。


 完成していく中、映像関係者より集められた情報をモデルに映像加工も繰り返されていたが、機械が適応していない為に、この道具制作を強く要求していたが、技術者たちも難しい過ぎてどうしようもないと強く言う。

 一応、関係者とその家族などに試作公開、これらの集まった感想などの情報を纏め全体修正に加える。

 全体修正が行われた昼間、バージョン2の方は何やら親しみ易くなり、全体的な角ばった形から、丸みを帯び好い感じな感想が増えた。


 下水などもアルトによって直ぐに整備され、この効率の良さに建築家たちも楽し過ぎた次々に修正案が浮上する。


 繰り返された後の休み、3日目、全体修正案第3弾も完成し、修正された。

 試作公開も行われての感想集め、動物が欲しいという声が上がり、直ぐに試作される。

 主に日常的な犬や猫、これらの膨大な作業もあってサポート担当の関係者は苦心する。

 中間的な報告も上がり、参加する関係者は凡そ10万名、このサポートにも数十万名、一つの祭を作るのは大変過ぎて筆舌を尽くし難かった。

 何せどこも経験がない為に、どうしたらよいのかか判断できない。

 多芸なアルトも万能ではない為に、このサポートも欠かせない、これらのサポートの人達を支えるサポートもいる、結果的に連邦でも経験がない巨大な物が完成していき、芸能祭なのだが、祭というべきものだ。

 四日目の全体修正案第4弾、地形の方にも変更が及び、ガレー艦隊の方にもやっとの事で修正が及ぶ、戦闘の方もあり、再現されまくり大変な労力の元で完成していく。

 五日目、全体修正案第5弾、桜も修正され、エルフ達により細かいな木工細工が作られて、星守りが修正し、エルフ達もこの星守りの万能振りには感心していた。

 6日目、全体修正が完成し、やっとの事で明日からの開催が行われる。

 アルトのサービス精神で、関係者の為に祭りがおこなわれる。

 酒を飲む大人達も、一つ仕事が終わりつつある夏に、今後の事もあって今年の夏は特に忙しいとなった。


 7日目の朝方、足利により予定の時間に説明文が纏められて、放送は一つの局ごとに担当が決まり、これらの複合的な放送となる。

 地球放送が行われ、この日は休暇となっての映像の楽しみを見る。

 各国の石頭の司令部も、仕方ないので休暇を許可した。


 複合放送によって全体が分かり易くなり、祭の為に専用の複合テレビが作られる事となる。


 祭り師達と候補達も、一つの仕事が終わり、特別に酒が許可された。

 子供には贅沢なとは言えない為に、ビールと日本酒などが提供された。

 祭に、絶賛が巻き起こった。


 飛空市のDKの本拠地に戻る。

 サポート担当者も喜んで、ダンジョン作りに反映させる。

 エルフ達もこれには協力し、サポートに加わる。

 氷の塔の方も修正され、バージョン2となった。

 サポート達も一つの計画が浮上した。

 都が作られるのなら、これを舞台としたものが作れる、丁度良い飛空市に作ろう。

 警察より苦情も届き、エネミーの警官が嫌われ過ぎると不満が来る。

 イメージが悪化した警察も大変で、しぶと過ぎる警官にはどこからも文句が多かった。

 これを受けてサポート達も一考、警官のイメージなどもあってこの改善に動く。


 氷の塔の方も改善から調整が繰り返され、ユーモラスの動物系に対し、凶悪な人型系には修正が多く、特に群れに関しての修正が多過ぎて困る位だ。

 氷の塔の最強エネミーの鬼、攻略法の確立によって改善されるも、凶悪な戦闘能力に関しては何処からも苦情が多い。操るのがアルトの為に普通の侍では勝ち目がない。

 アルトも鬼に関しては文句が多いが、仕方なしに少しの公開に踏み切った。

 簡易的なステータス、及び様々な技能レベル、この簡易ですら凶悪の一言。

 学生では話にならない、本職の軍人でも精鋭レベルがやっと戦える、ただ英雄達には大変好評で、この鬼に関しての様々な事に超上級者用となった。

 バッシグ型のみとなっているが、アクティブ型も考案され、色々なデザインの中でも攻撃的なイメージが優先され、決定したのは巨大な獣。

 9層限定のアクティブに、DKもサポートも悩む、何せ9層に上がれるだけの参加者は圧倒的に少ない。この悩みにプレイヤー達も協力し、アクティブ開発が始まる。

 そうやって試行錯誤を繰り返していた


 8月17日。

 氷の塔の試作が行われ、テスター達も大変に戦う、調整によってイージー向け、ノーマル向け、ハード向け、ベテラン向けの四段階の能力が追加され、個人の強さによって変化する、一般的な意味での固定型ではないので、戦うのも大変。

 プレイヤー達の他にもエルフ達も大苦戦、強さによって変化する変動型は強過ぎた。

 昼間に修正され、休んでからの試作に望み、マシになっても強い。

 イージーに関しては文句なしに好評、ノーマルに関してもまあ好評、ハードに関しては強過ぎるだろと文句が多い、ベテラン向けは英雄達に大変な人気、変態級のベテランたちは放置し、バードの改善に移る。

 軍の陸軍もこれには協力し、侍達の中でも精鋭が集まる部隊が派遣された。

 この精鋭達でもハードの強過ぎる能力には不満ばかり、英雄たちは余裕で倒すために精鋭達も強くは言えなかった。

 一時的に下町にも移り、こちらの試作も有って楽だなと言った好印象が多かったが、英雄たちは大不満、弱過ぎると不満を述べて改善を要求。

 変態の英雄向けにも作り、ベテラン向け用の機能も加えた。

 いい感じにまとまり、サポートのゲーム関係者も、もう少し武装面の方がと言った事もあって、武装面の改善が行われた。


 そうやった翌日の8月18日。

 青空中学校での学生向けの試作テストが提案され、生徒会も性能の方に少々困るような所が多いと不満を述べ、DKもサポートもこのテストを行い、一般学生向けにも意向を向ける。

 中学生の平均的に身長は男子が160cmぐらい、女子が150cmぐらい、DKのテスター達は長身な分類に入り、強いかもしれないが戦い難いという不満が多かった。

 これを受けサポート達も動き、アルトもチェーンしたタイプを提案。

 試行錯誤を繰り返し、18日での中学生モデルも幾つか作られた。

 翌日の19日、纏められた情報を元に氷の塔、下町の塔の調整が行われ、纏まった二つの塔の試作公開が行われる。

 青空中学校の学生たちも、悪くないと、よくなった事が好評で、8層までの一般エネミーの方も改善案が纏められ、再びの調整を受ける。

 鬼を除いた調整を済ませ、鬼の方もベテランたちは喜々して戦い、一般人からすれば正気じゃないレベルの戦いを見学させられてた。


 翌日の20日。

 中学校の生徒会も下町の方はマシであるが、氷の方はまだ不満が有ったので提案。

 ゲームレベルの調整も繰り返され、一般中学学生用の対応モデル、暴走族タイプが作られた。性能からすればそれほど強くはないが、乗り物に乗っての群れが戦い難いタイプだ。

 大きさも調整され、全高は155cm、全長は100cm、族のモデルに関してはゲーム関係者より改善されていた。

 翌日の21日、調整を終えた後の氷の塔バージョン2が公開され、各学校に現れる。

 まだ試作段階の下町に関しては青空中学校に作られ、試作の為に全部変動型なので、どこもかしこも苦戦。

 DKのテスター達のアルトPTも苦戦。

 二層のチンピラ、警官のコンビの組み合わせの調整も多く、両方とも前衛タイプ、ドスのチンピラと警棒の警官、様々な改善によってハードに関しての調整もあり、恐ろしい回避率と防御技能で忍者三名の攻撃も時々ミスる。

 アルトの火力があるから何とか倒せるぐらいの難敵だ。

 警察より選ばれた機動隊の特殊部隊も対戦、その強さには舌を巻き、何せ銃の射撃を避けるという、信じられない能力がある。

 一般警察官も対戦するが、兎にも角にも強い、恐ろしい回避能力、防御技能の強さには不満しかなく、銃弾を見切ったり、避けられない筈の爆弾すら回避する。

 警官のキャスターたちも戦うが大苦戦、防御性能の改善が提案されたのは言うまでもなかった。

 一般学生たちも、1層ですら改善を受けるも、変動型の為に能力に合わせて変化する、この為に苦戦する、中々倒せない事で効率は激減、不満しかなかった試作だった。


 翌日の22日。

 一般向けの一層、この改善も行われ中学生も戦うが、乗り物でも壊す事すら難しい、この妨害の為にスペルを使う、壊されてから降りてきた郵便職員、凶悪な手紙爆弾を投げつける、これにはどこもかしこも不満、反則的な爆弾をひたすら投擲してくる。

 調整も行われ、もう一つの攻撃能力の手紙手裏剣、こちらの方は直ぐに改善されたので問題はなかったが、手紙爆弾が最強の攻撃、この頻度を恐ろしく下げる事となった。

 次にタクシーの運転手、煙草ブレスが強過ぎる、食らえれば冷たすぎて悲鳴が上がらない方が変な温度、この改善も提案され、煙草ブレスの他にも飲料水が追加され、これによる鈍器攻撃が行われるのがこちらは良好だった。

 乗り物の方も改善され、速度は徒歩位、大きさも改善、奪った使う為にも色々な改善が行われる。

 一般枠の侍と忍者も、奪おうとしたが、凶悪な爆弾やブレスが使われるので困っていた。

 そこで乗り物の方の改善、乗り易くなり、見た目の方もよくユーモラスになっていく。

 女子にも人気がある三輪車、見た目も改善されて、よりデザインの変更もあっての操縦性の改善もあって、やっとの事でまともになった。

 男子の人気のカブ、ただ郵便職員は強い、奪うと爆弾を使い追いかけ回されて、結局は返却するしかない。


 乗り物系は奪うと攻撃パターンが切り替わるので、見た目に反した強さを誇る。

 エルフ達も戦うが、奇妙な乗り物は破壊も簡単であるはずだが、強さに変動するために高速で回避する、これにはエルフ達も唸る。

 プレイヤー達もスペル等で妨害し、後に射撃武器で破壊、降りてきた所に近接が戦って破壊。PTを組まないととても倒せないレベルだ。

 この結果、救済枠が提案され、見た目もユーモラスなロボットが作られた。

 乗り物系であるが、武装は格闘用のアームのみ、能力は最低レベル、奪うと激怒した能力向上、操縦する兵士がヘルメットを捨てたら危険、腰から抜いた軍刀が非常に凶悪なレベルで襲ってくる。

 普通に戦えば楽に勝てるが、奪うと酷い目に遭う。

 乗り物系の情報も纏められて飛行団に提供され、奪わなければ倒せるが、奪うと極端に強くなって襲ってくるので、一般にもこれは公開した。

 乗り物系の第4弾、騎馬警官、警官たちはうんざりした顔で戦い、意外に倒し易い事が好評だったが、奪うと警官の武器のサーベルが変化、数mはある巨大な刀剣で攻撃される。

 奪ったらすぐに返却し、逃走するしかない。

 これは飛空市の鉄則となる。

 次に二層のチンピラと警官、強力な防御性能にはどこも不満、警察も戦うが、途方もなく強い為に、どうにもならない。

 性能を恐ろしく下げたタイプによって、一般枠も何とか戦えるぐらいになり、警察も改善されて喜ぶ、軍の方も能力が極端に下がってまともになったと安堵。

 テスター達も戦い、倒し難いぐらいに落ちる。

 アルトの耐久度テストも有って、花火大会に耐える耐久度は改善された。

 武器の方もチンピラのドスも改善されてナイフとなり、より戦い易くなる。

 警官の方は警棒の方は楽過ぎると不満が起こり、追加されたのが手錠、近接に望む前衛達への対抗機能、手錠で固定し警棒で殴る。この凶悪な改善の為に前衛達は戦う。

 アルトの多芸な能力も有るが、エネミーに関してはサポートが増加し続けた。


 23日の試作公開。

 朝方より多くの参会者が集まる。

 この23日には関係者も集められ、多くの参加者がテストを受ける。

 警察や軍の訓練生たちも参加し、このゲームには興味しかないが、その凶悪な能力も轟く様なもので、改善されても戦々恐々。

 DKも戦い、アルトPTも乗り物系と戦う。

 見た目も可愛いロボット兵、後衛担当の二人が使う。

 花火系の基本的なロケット花火、一直線に直撃するも装甲から耐えきった。

 姫野の神火の術もこのロボット兵は耐えきるも、巻物のボーナスによりDEF低下、前衛が近接を挑む。

 前衛が接近する前にアームが放たれる恐ろしい速度に加速したアーム、風鈴と小波はこれを回避し前進、そこにアームより妨害のサブアームが飛び出したがこれも二人は回避。

 完全に接近を終えた二人が狙うのは、アームとボディの付け根、これに忍者刀を突き刺し、真空刃を生み出すアーツの絶空を使い切断。

 二人はそのまま後方に飛び抜け、空中で忍法を使い、ロボット兵の弱点の後部に有りっ丈の火力を叩き込み、破壊した。


 消滅し、コインが落ちる。

 姫野が拾い、ランダム性能からリアルラックが分かる運命の分かれ道。

 基本的な数字より上、ひとまずホッとした。


「ふっ私は幸運っすよ」


 前衛担当の二人も、アルトも傍に来て数字を見て、ホッとしていた。

 次の相手、騎馬警官。

 アルトの【ロケット花火】により花火の直撃を受けても耐えきり、姫野の【神火の術】を受けても耐えきり、前衛担当の二人の接近に騎馬警官は腰からサーベルを抜き、1mしかないような刀剣を振り上げる。

 放たれた氷の波、跳躍して回避し、騎馬警官は迎撃の為にサーベルを捨て腰より拳銃を取り出し、二人に向けて射撃、これを二人は忍者刀で弾き、落ちながら接近を終えてアーツを発動、【絶空】により空中から放たれた真空刃が騎馬警官を切断した。

 アルトがコインを拾い沈黙、数が少なかった。

 三名も近寄ってみる、沈黙。


「これは間違いだ」


 リアルラックの低い事が判明し、三名はアルトには拾わせない事が迅速に決定した。

 このゲームで判明したリアルラック技能、幸運と不幸。

 幸運の方はリアルラックが高い方、不幸の方はリアルラックが低い方。

 スターも気になっていたらしく、卒中武器を壊すのは何故なのかと、そこで三名に頼みこの調査を依頼していた。

 アルトは多芸かもしれないが、あまり良くない種類の技能が判明した。

【不幸】と【武器壊し】の二つだ。

 武器壊しの方はどういう訳か存在する、武器を使えば運悪く壊れる確率が高い、前衛はどうしても担当できない技能だ。

 このマイナス技能にはあらこちらが関心を寄せる。

 またプラスの技能、アルトの【カリスマ】、姫野の【忍法】、小波、風鈴の【忍術】と言った本人を構成する素質のような技能の数々。

 冥夜や十兵衛の【剣豪】、マイナス技能の【モテない】、星守りの【スペル】、マイナス技能の【モテ過ぎる】等も確認されていた。

 プラス技能に比例して、マイナス技能も強くなる傾向にあり、この二つは常に寄り添う関係にある事が判明してた。

 逆にプラス技能しかない例が姫の【超幸運】だ。

 マイナス技能しかない例は確認されず、このらの中間報告には連邦も愕然としていた。

 何せまことしやかに噂される様なものが判明し、これらの調査にダンジョン計画は使われる。

 基本的にマイナスが強ければ、プラスも強い事は常識になりつつあり、これらの判明した中での統計により分類される。

 異例なまでのアルトの技能はプラス技能【武器心得】【カリスマ】【スペル芸術】【祭り師】【迷宮創造】等のレアな技能ばかり、マイナスの方も【不幸】【武器壊し】【人生戦い】【貧乏くじ】【貧乏】等の歓迎出来ないものが多い。

 アルトの腹違いの姫【超幸運】【弓師】が判明していた。この【超幸運】はマイナス技能を打ち消す効果らしく、持っているのはまさしく幸運の塊だ。

 アルトは英雄と言える様な能力と功績ではあるが、デメリットのマイナス技能も多く、本人もそれを非常に気にしており、これだけは公開できなかったが、余りの多さに悲鳴が上がらない方が変なぐらいの数が有った。

 対して姫の方はまさしく幸運の方だった。


 □


 8月24日。

 偶の休暇、自宅に帰り5名に戻る。

 親達も帰っており、朝食を食べてから報告を呼んだ父親が息子を呼ぶ。

 父親としても心配になるようなマイナス技能の多さ、個人にとってみれば不幸なモノばかり、親や周りにとってみても不憫でならない様なものばかりしかない息子に、父親も改善の為の指導プランを提案した。

 少年の方は非常に気にしていた、不幸の塊のようなマイナス技能の多さ、この改善もあっても、多過ぎる為に改善計画の使う時間も多過ぎて改善できないのだ。

 この効率を優先したプランも提案されるも、アルトのプラス技能のせいでどうしても時間がない、父親も最低でもこれだけは改善しろと提案した。

 アルトの最大のマイナス技能【恋愛不可】、これを突破した結び付こうとした風鈴に姫野や小波のプラス技能には父親も評価していたし、これを押したいとも思う。

 しかしアルトは渋い顔。


「頼むから改善してくれ」


 父親としても心配でならない。


「・・・嫌だ」


 息子の抵抗に、父親は切り札を考えたが、まずは通常戦力。


「最近の緊急メンテもあるし、暇だろ」


 アルトは鼻で笑う、父親はこの息子のマイナス技能には問題しかないので切り札を使う。


「お前のゲームや冒険の楽しみはあるだろう」

「おう」

「そこでだが、恋愛不可を改善できたら褒美を出そう」

「・・・」


 息子の方は懐疑的な顔で居たし、悩むという事ではなく、どうせなと言った顔だ。


「POに祭り師装備を追加しよう」

「・・・ちっ」


 息子が折れた事に、父親としてはまず安心、一度受け入れればこの息子は改善するために努力するからだ。

 二人を呼ぶ。

 メタルグレイのショートヘアー、鼻頭の絆創膏、口元まで覆うワインレッドのロングマフラー、露出の多い服装、忍術使いの忍者の小波。

 黒とピンクのロングツインテール、ピンクのベレー帽、小生意気そうな顔、ピンクなどの多い女の子ファッション、忍法使いの忍者の姫野。

 二人のスカオは伝えた。


「詳しくは話せないが、息子が恋愛不可を改善すると」

「マジっすか!?」

「ありがとうございます団長!」


 二人は泣いて喜ぶ、アルトの方は面倒だなと言った顔でいた。

 面倒そうにする少年に、姫野が抱き着く、小波は次らしい。

 怠そうな顔の少年は、面倒くさそうに姫野の頭を叩く、抱擁を離した姫野が離れて、小波が抱き着き、同じ様に怠そうに面倒くさそうにする少年が頭を叩く。

 女の子に抱き着かれているのにこの顔、同世代とは比べようがないほどに普通じゃないため、羨む事が多いと言われがちだが、羨まない事も多いのが、この少年だ。

 父親が知る絶世の美女に、押し倒されても何も感じない息子なのだ。この改善のために大変な苦労をしたのは言うまでもない。

 何とか第一歩を踏み出した。


「デートするっす」

「デートしましょう」


 二人の大変に期待する輝いた眼、尻尾が有ればパタパタと振り切れそうなぐらい動いていそうな顔、対して少年の方は心底怠そうで、面倒そうな顔で思案中。

 父親としても、支援にデートスポットの方を出し、二人に聞く。


「初デートも」

「初めてじゃないっすよ」

「一度しました」


 意外な事、最近は多いが、二人の変身の日だった制服事件の日だと、直ぐに気づいた。


「ふーん。シルトがね」


 父親としてもじっくりと聞きたい。


「最初は誰かね」

「私です」

「なるほど、まず感想は」

「幸せ過ぎて言う言葉がありません」

「で、客観的にみれば」

「上手なエスコートでした。代金は全て主君持ちでしたが」

「ほう」


 意外な事が多い最近、息子が意外に経験豊富で、しかもお金が有ったとは意外な事だ。

 次に黒とピンクの髪の姫野を見る。


「次は姫野だよね」

「凄かったっす」

「どう凄かったのかね」

「超高級レストランにいったっす」


 意外な事の多い最近、更に意外な事が判明し、息子の方を見るが、何か色々と隠していることが多いようだ。相変わらず中々尻尾が出ない息子であった。


「そうか、シルトがね。なるほど、色々と隠し事が多いようだな」

「面倒だから話さない」

「・・・まあいい。今日はデートをして来い」

「分かったよ」


 二人が喜ぶのは言うまでもない。

 そこに黒髪ポニーの巫女服の少女が来る、アルトの実の母親の夕霧だ。

 顔は笑顔の標準ではない、明らかに不機嫌、部屋の空気が一転し、怒気すらも孕む夕霧が口を開く。


「話は聞きました」


 夫の方は危険な状況に困惑し、夕霧の方は息子を見る。


「デートしたそうですねシルト」


 息子の方は怠そうな顔で頷いた。


「ピローテスはどうするのです」


 面倒臭そうな顔の息子、母親の夕霧は退く気はなかった。


「妥協しましょう。ピローテスとデートしなさい」

「・・・」


 いやそうでも、何の変化もない息子を見て夕霧が言う。


「何が不満なのです」

「不満しかない」

「なら何が妥協できます」

「彼奴の事だ。結婚というだろう」


 真剣にアルトの事を考えているピローテスを読んでいたらしい。


「彼奴の事だ。家庭が欲しいというだろう」


 息子の嫌いな事を望むようであるが、退く事は出来ない夕霧は言う。


「そうでしょうね」

「結婚、家庭、子供、時間だけが減る」

「なるほど、確かにシルトの不満しかないようですね」

「彼奴には借りがあるが、そこまでの事をする気はない」

「・・・なるほど。シルトの義理堅さも」

「挑発か?」


 笑う息子に、母親の方は思案していた。


「いいでしょう」


 息子の問題に一応退いた。


 □


 星を渡りWHO星系の主星に来て、このイーニャに来る。

 レドの自宅に、内部に入り工房にいる姉妹に声をかける。


「ピローテス、話があります」


 レドの長女のピローテスは、作業を止めて席を立つ。

 工房の後ろにある自宅、この中間にある通路の広場に来る。

 ピローテスの方は168cm、ダークエルフタイプの褐色の肌の凛々しい美貌の女性、スタイルは相変わらずの豊満、腰に下げるのは細身の剣、着込むのは錬金術師の服装。

 夕霧は切り出した。


「あの子は、自分の時間が大切なようです」


 ピローテスは特に言わない。


「結婚を望みますか?」

「望む」

「家庭を望みますか」

「望む」

「子供を望みますか」

「望む」

「あの子はそれら全てが嫌だそうです」


 ピローテスには変化はない。


「急がないで、恋人候補から始めませんか」

「ああ。急ぎ過ぎたようだ」

「ええ」

「私には時間がある」

「あの子はそれ程なさそうです」

「・・・人の時間は短い」

「確かに」

「大人になるまでは待ってみる。よいか夕霧」

「幸いです。ではこれ位です。お大事に」


 □


 サツキの元に現れたアルト、冷たそうな目に顔で言う。


「手紙を届けに行く、準備してくれ」


 サツキも分かった、楽しく愉快な日々も終わったようだ。

 アルトが渡る、今度はスターの元。

 冷たそうな目に顔、スターも分かった。


「手紙を届けに行く、準備してくれ」


 次に現れたワイバーンの元、同じ様な目に顔で告げる。


「手紙を届けに行く、準備してくれ」


 三名に告げてから一度戻る。

 自室の部屋、用意していたとある物を取り、再び渡る。

 現れたアルト、飛行団の人事部の長は、全てを悟った。

 アルトが渡し、渡った。


「辞表か」


 何かが有った。アルトを決定的にする何が有った。

 上手く行っていたというのに、なにが有ったというのか。


 部屋に戻ってきたアルト、最後の準備の為に刀を取りに行く。

 現れたアルト、冥夜も十兵衛も初めて見るアルトの顔に、終わった事が分かった。


「刀を取りに来た、準備してくれ」


 二人も準備する。

 底冷えするかのようなアルトの放つ空気、ただ冷ややかに見る目、近くにいた足利の侍大将は、一変した少年の横顔を見る。

 容姿以外の天賦の物を持ち、この地球の戦争回避、スペル芸術の祭と迷宮の創造。

 全ては上手く行ったいたが、この少年を決定的にする者が有ったらしい。

 楽しみな少年を決定的にした理由は分からない、しかしそれに足りる理由が出来た。

 足利の侍大将は友人に連絡した。


「スカオ」

『・・夕霧が急ぎ失敗した』


 こうなってはどうにもならない、星渡に束縛など何の意味もない、いつでもどこにでも行けるのに行かなかった理由が有ったのに、それを覆す失敗をした。

 これを他が補えることはない。

 もうどうにもならない決定的な事だ。

 冷え冷えとした少年は、準備の出来た二人を連れて渡る。

 サツキの元に来る、準備の終わったサツキ、近くには姫がいた。


「待っています」


 姫の言葉にアルトは何も変化はない、冥夜と十兵衛を連れて渡り、その先はイーニャ。

 再び渡ってからサツキを連れて渡る、次にスター、ワイバーンと続く。

 一つ工房にアルトは踏み入れる。

 他も続き、中にはアルトの知り合いの女性がいた。


「手紙の配達に来た」


 それだけを言うと渡り冥夜と十兵衛を連れて戻る。

 サツキも、スターも、ワイバーンも、少年の変わりように溜息しかない。

 羽の生えた女性は、席を立って工房に回る。

 奥の工房より姉妹が現れる。

 長女のピローテス、次女のティア、三女のコマリ。


「まあ何が有ったのやら」


 サツキはそれだけを言ってから近くの椅子に腰下ろし、スターもワイバーンも座る。

 話を聞くために姉妹と女性も傍による。


「何の用だ」

「あたしはサツキ、忍者がスター、戦士がワイバーン、全員レドの娘よ」


 四人とも驚いていたが、長女のピローテスが疲れた顔で去る。

 次女のティアが挨拶した。


「ティアです」

「ええよろしく」

「こちらがコマリ、羽がある方がピュシー」

「そう。疲れたから休むわ」

「はい」


 疲れた顔の三名がティアに案内された向かう。


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