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第10:WHO星系、手紙の配達~其の7。祭り

 祭りの後、帰宅し、いつもとは違いアルトと愉快な仲間達も一緒、親御さん達は快く向かえ、金は面倒なので小学校に押し付け、適当に祭り代になっていた。


「シルト」

「なんだ親父」

「よい祭りだった」

「そうかい、ならよかった」


 地下に向かい、どうせ言ってくる面々なので向かう先はスペルの訓練場。

 本来は再現しないアルトではあるが、半分が全部を見たがったので小さく再現していた。

 見終わってから、効果が切れてきたので言う。


「効果切れ、もう無理」

「うん。満足」

「そうか、凄いポーションだった」

「教えて」

「まあ別にいいけど」


 ひとまず初心者用の基本を教え、全員が何度も指導を受け、星守りの方はやはり素質があって、直ぐにコツを掴んで行い始め、他の者も必死に行う。


「ログインもあるからこれ位でな、あー楽しかった」


 別れてから全員が直ぐにログインに向かう。

 朝方の雰囲気は一変し、子供のようなワクワクしている面々で、アルトとしても割と良い雰囲気に喜べる。


『アルト、姫、サツキ、小波、姫野がログインしました』


 現れた中、星守りが何度も零を制止するが止まらず、零が一つを押しつけた。


「今日は夏祭りだ。仕事は全て休止にする」


 非常に珍しい事ではあるが、幾らなんでもそれは無理と言おうとすると、察した零が怖い目で睨む、さすがにスペルマスターとの喧嘩は嫌なので従う様に頷いた。


「よし、祭りだ」


 連邦を巻き込み、夏祭り計画が行われる。

 巫女達は大忙し、長の出雲も、アルトの夏祭りの行いに、これバカをどうしようとかと考える、仕事を押し付けられる身にも成れと。

 祭りの準備に、連邦の全員が参加し、祭り用の場所の制作に薬師達が全員参加、巫女達にこき使われる薬師達であるが顔は明るく、薬師の長のレンズもいつも以上の笑顔だ。

 仕事の中止に、多方面より苦情が殺到すが、楽しみにする零が恫喝し、邪魔したら滅ぼすぞという、さすがにこれにはどこも引き下がる。

 他国では理解しにくい超祭り好きと思われた。

 丸一日かけて祭りの準備、休んでからの翌日の二日目。

 零によって祭りが開催され、アルトのスペル芸術が行われる。

 今回は地上には炎、上空には水、この中間に鎌倉全体を覆う楽士達、巫女達、戦乙女達、騎士達、兵士達、魔術師達、道士達、仙人達、戦士達、侍達、足軽達等々。

 一様に舞う、スケールの大きさに、これが連邦の祭りと知る、どこもかしこも仕事を辞めて眺める。

 一日中続いた祭りは終わり、三日目を休んでからの仕事に入る。

 仕事が終わった6日目、どこもかしこもよい笑顔で連邦を迎えていた。特に祭りが好きになった人達からは良くせがまれ、別にと言ってアルトが再現し、会議にはアルトは引っ張りだこ、一様に祭りにはどこもが楽しみにすることとなる。

 七日目。


「さあ今日は狩りだ」

「狩りですか?ボクとしてはスペルの」

「一日ぐらい休暇をくれよ」

「分かりました」


 半分の許可をもらい、サツキが作った料理を食べながら今日の狩場を探していた。

 食事の後に、アルト達は集まり、今日の狩場を考える。


「アーツが欲しいしな、かといっても生産も上げたい、事務の方も上げないと辛いし」


 ゲームと冒険命のアルトとしては武器系のアーツは重要、他の者からすればなぜ必要なのかが分からない、スキルの取得は一つ残らずスペルに振るべきだと強く主張していた。


「まず服が欲しい、祭り用の服が欲しい」


 冥夜の欲しい物は全員の欲しい物でもあり、アルトも欲しかった。

 地味で堅苦しい、この制服で祭りを出るしかなかった者達の嘆きは深く、誰も言わなかったが、誰もがこの制服は地味と翌日は呟く。


「服は高いっす。祭り用は死に程高いっす、防具なんて目じゃない高額っすよ」

「ああ。結婚式用の方が安いのです」


 忍者の二人は憤慨、足元を見られた連邦の全員が、狂都の服屋を恨んでいた。


「岩龍、あそこしかない」

「決まりですね。準備していきましょう」

「「応」」


 狩りに向かう、連邦の若者の多くが狩りに向かい、兎にも角にも祭り用の服が欲しいのは言うまでもなく、最重要は効率、生産の方は目標金額の大きさに嘆くも、働くしかない。


 ▽狂都近郊ベリーハード難易度『岩龍』


 服の購入金額を考える、途方もなく高い何せ億の単位、現在の装備金額は精々数百、万に見たらない資金では夢のまた夢、この為に狩るしかない。


 姫野の偵察が終わり、最高効率を考えた内容になり、効率狩りを行う。

 アルトの方はスペル芸術にガン振りのスペルなので、攻撃用が恐ろしく少ない、この結果、スペルの戦闘用に使えるものの中でも、何かと便利な魔法剣を得意とする。

 発見されていた鬼、姫が弓を構える、狙うは目、振り向いた瞬間に射抜き、5名が飛び出し、一斉に必殺の攻撃を食らわせる。

 最強の一般エネミーの鬼は、槍を振るってこれらを弾く、真正面はアルトが担当しの鬼の槍を逆に受け流して反撃の一撃も連続して打ち込む、他の者も必殺技の連続、それでも鬼の強さは尋常ではなく、5人の攻撃を受けてもなかなか減りもしない。


「なんつう強さだ」


 攻撃を受け掛けたアルトが引く、そこの追撃の槍が続くが、姫の狙いすませた弓から放たれた矢が鬼の片目を貫いた。この一瞬に他の者も最大限の必殺技を使う、しかしダメージが通り難い、未だに70%のHPがある。

 微量に回復していく鬼のHPに、ひたすら必殺技を使い削るしかない。

 真正面を担当するアルトも冷や冷やする、当たれば一撃で即死、直ぐにセーブポイント送りだ。

 全員が秘奥義を使いまくるが、それでもと倒れる事すらない。

 疲弊する一方だが、そこに援軍が現れる。

 薬師の長のレンズ、巫女の長に出雲だ。

 出雲が舞う、全体に圧倒的なバフを与える舞、戦士達への最高峰の支援、剣舞の舞だ。

 レンズはニコニコとした笑顔で、薬を投擲し、5名を癒していた。

 攻撃が通り始める、今までかすり傷すら追わなかった鬼が初めて手傷を負い、出血していたが、攻撃を行い過ぎて十兵衛の刀が壊れ、鬼の攻撃に十兵衛は戦闘域を離脱した。

 この刹那に鬼が飛び跳ねようとするが、姫の弓の矢が鬼の喉を射抜き、初めて鬼がノックバックする、この瞬間に全てを叩き込み、アルトも最大限の魔法剣で叩き切る。

 十兵衛が後方支援切り替え、高速にスペルでの射撃を行い鬼のHPを削る。

 更に出雲が歌う、戦士達への最高峰の援護歌、抱擁の唄、HP・MPの両方が回復し始める、レンズが笑顔で薬を製造し、それを鬼に投擲、被弾した鬼の能力が激的に下がる。

 トドメに切り替わり、一旦離れてからの集中砲火、鬼は被弾しながら咆哮する。

 鬼のレッドのHPが急速に回復する、デバフ効果も瞬間的に回復、他のバフ効果も打ち消し、ここに姫が鬼の口に矢を射抜き、咆哮を遮断する。

 再びのトドメの攻撃、鬼は目障りな姫に突撃するが、十兵衛が笑いながら足払い、そのまま貫き手での一撃で鬼の首の半分を切り裂く、忍者達が追撃を行い怒涛の雷撃が何十と直撃し、鬼が初めてバテステを受け感電による止まる。

 その間に冥夜が跳躍し鬼の片目を目掛け刀を突きさし、鬼はこれを受けて消滅した。


『戦闘完了。PT鬼狩り、PT巫女&薬師、戦闘経験値を全員に等分、コインを全員に当分、ドロップ相手はラストアタックに等分、VIPは姫、お疲れ様でした』


 戦士達が吼える。

 雄叫びで喜びを表し、雄々しい戦士達だ。

 舞と歌を止めた巫女、薬師の方も消費した物を計算し、軽くメモした。


「やあ。相変わらず強いね」

「レンズ、出雲、感謝するぞ」

「いいのよ。私達も効率狩りをしたいけど優秀な戦士なんて少ないし」

「当座の間は共闘を組もう、その方が増加するからな」

「ええ」


 二人のPTと共闘し、共闘PT鬼狩りを結成した。

 出雲が姫を見てにこりと笑う。


「腕がまた上がった、よい結果よ姫」

「うん。出雲も相変らず見事です」

「暇だったからの、訓練していたら、いつの間にかにね」

「レンズも」

「いい、戦士を癒すのが僕らの仕事です。それが薬師の誇りだ」

「しかし、装備が悪すぎた」


 冥夜も深刻に思う、一体を狩るに足りる装備がなければどうにもならないと。


「狂都に戻りましょう」

「異論はない」


 一度戻り、ドロップは全て薬師のレンズに渡す、受け取ったレンズも調べ、笑顔のまま一つの武器を取る、鬼の槍、これが壊れた物、これを詳しく調べ、時々知り合いにも連絡し、対抗するためにあれこれ手考える、他にも防具、こちらの方の性能は信じられない性能であったが、壊れたために特に役には立たない。


「随分とまあ、確かに強い筈です」

「なんだ」

「性能がですが、笑えるほど強力なものです。これを防ぐための防具の値段を考えたらとても間に合いません。他にもこの防具、単なる防具ではありません、一種のパワードスーツです。しかも笑えるほどの強力な物、特に防御性能に関しては最高峰です。リアルに持ち帰り是非に量産したいものですよ」

「道理で」

「鬼本体も最悪な能力です。あの咆哮、あれは危険すぎる。姫がいなければ永遠に勝てません、幾つかの幸運もありましたが、まあ最初にしては上出来です」

「他にもあるかも知れんな」

「データが少ないので何とも、ただ鬼が単なる戦士とは限りませんから」


 厳しい事であった。あの能力でスペルを使われれば星守りか零を呼ぶしかない。

 冥夜が星守りを呼ぶ、スペル芸術の訓練中であったが、内容を詳しく聞き、さすがの星守りも尻込みしかけていた。

 何せこれだけの戦士の攻撃を防ぐような能力に、強力な武具、驚異的な特殊能力、これを知って戦えというのは酷であった。

 アルトからも説得し、星守りが急いで現れる。

 直ぐにレンズより話を聞いて真っ青に顔になる、本人が思った事はよく勝てたなと。


「これは装備の強化なくして無事に勝てる保証は全くありません。幸運が続いて来る保証はなのですら」

「ああ。効率狩りに参加してくれ」

「ええ。いくら俺でもこれは厳しいです。もし複数なら絶対に手は出さないでください」

「あーやっぱり」

「ダメです。無茶です」


 星守りの言葉に、戦士達は渋々に頷いた。

 装備の強化、優先すのは姫、次の出雲、最強のアタッカーの星守り、薬師の方も優先度は高く、後方を終えてから、戦士たちは考え、どう考えても防具は無理、装飾品と武器に切り替え、物理か、魔法かのとなるが、この両立に専念し、それぞれの得意分野の特化が採用されていた。

 鬼の資金に値するコインは凡そ1万、他のエネミーに比べて最高効率を誇る資金の多さだ。しかもドロップを売れば最低でも1万、合計2万の金額、これが一体の値だ。

 9名としても一人3000近く、共通による10%の増加、効率よく狩りを勧めるのなら一日で何十万と稼げるエネミーなのだ。


 整えてからの再び、忍者二人が直ぐに動き、ダンジョンを探り、鬼の居場所も探り、宝箱も確認し、他のトラップも確認した後に帰還し伝える。

 鬼は基本的に兵士級、この兵士級も落ち足軽、足軽、足軽頭の三階級、この上位に指揮官級、落ち武者、侍、侍頭の三階級、最上位にボスの侍マスターがいる。

 現在の判明しているのはこれ位で、能力などは全て未解明。

 倒したのは最下層の落ち足軽、その一体に過ぎない。


 一体に狙いを絞り、接近し姫が狙撃準備に入る。

 戦士達は武器を握り飛び出す準備、星守りも必殺のスペルの準備に入る。

 薬師のレンズは観察、適切な薬品の考えながら、この強力なエネミーの性能も探る。

 巫女の出雲は舞と歌のタイミングを考え、バフとデバフのどちらを取るかも考える。

 鬼が振り向くところになり狙撃された矢が片目を射抜き、戦士達が飛び出し、星守りのスペルが放たれる、収束し始めるエネルギー、出雲が舞う、同時に歌い、強力なバフを掛ける。薬師のレンズは良いタイミングに、一つの薬品を取り出し調合を開始。

 最速の忍者の二人が左右からの挟撃、同時に投擲用のクナイを投げ付け、鬼はアーツを使いこれを防ぎ、真正面からの侍3名が、左右と真正面から斬り付け、アルトを除き離れる、タゲを取ったアルトは直ぐに誘導し、一直線のなった所に星守りの収束していたエネルギーが直撃し、鬼を吹き飛ばしHPをガンガン削る。

 忍者二人も忍法による攻撃を行う。

 侍の三名もスペル攻撃に切り替え、ひたすら攻撃する。

 鬼が咆哮を行う、このモーションに入ると姫の弓から矢が飛び、鬼の喉を射抜き遮断、星守りのスペルが途絶え、アルトがタゲを取る為に駆け出し、他の者も駆け出し、近接を行う。

 鬼が目障りな後衛に向けて駆け、姫の弓から放たれて矢が鬼の片目を射抜き、両目を防がれた鬼は、雄叫びを上げ矢を抜き取り、更に咆哮し回復しようとするが、放たれた矢が鬼の口の中に入り遮断。

 戦士達が秘奥義を放つ、最大の必殺技を使い5人でレッドゾーンにまで落とし、ここで星守りのスペルが放たれ鬼の足を固定するが、鬼は単なる足踏みで破壊、星守りは別のスペルを使い束縛しようとするが、単なる動作一つで破壊する。

 暴れるために近付けない中、姫の弓から放たたれた矢が、鬼の防具の隙間を縫い、左手の小手の隙間に突き刺さり、鬼が痛みからは槍を離し掛ける。

 この刹那に星守りの最大の拘束が行われ、鬼の瞬間をとらえ成功した。

 再び最大の攻撃で鬼の首に攻撃が集中し、冥夜の刀がついに刎ね抜いた。


『戦闘完了。共闘PT鬼狩り。戦闘経験値を全員に等分、コインを全員に当分、ドロップ相手はラストアタックに等分、VIPは姫、お疲れ様でした』


 戦いの終わり、薬師が回復用の薬を渡し、星守りもふさげているような鬼の能力には文句しかない、非常識過ぎるほどの能力には、アルトの方がまだ常識的過ぎる。


「化け物目、なんという強さか」

「ナイスです」


 姫に褒められ、星守りは涙した。

 戦士達も息が絶え絶えの息切れ、非常識すぎる戦闘能力には驚かされた。


「普通の者では話にならん。まさしく論外だ」


 冥夜もあんな強さには単独で戦うのは論外、これだけの戦力ですら一体を狩るので限界。

 小波も姫野も息が絶える、全力戦闘をこんなに続けたのは生まれて初めてだ。


「二代でも呼ぶ?」

「いやさすがに」

「あのPTがいれば随分と楽っすよ」

「そうだが、色々と」

「わかたっす」


 次の目標に移る前に休む、薬師の方も何度もデータを観察し、星守りの方も助言する。

 薬師のレンズが思案した後に星守りに提案した。


「兵器は作れるかな」


 言わんとすることは分かるが、幾ら星守りでもそれを単独で行えと言われても難しい、アルトのような制御力がない星守りには困難なので、かといってもアルトにはスペルによる打撃力がない、かといってもこのままではとも思う。


「制御ができない、若のような力があれば可能だが」

「ああそれはまあ、後輩の方は論外で」

「零でも困難なのです」

「マスターでも?」

「訓練はしているのですが、強いて言うのなら若のような力があれば可能なレベルです」

「は~仕方ないよね。諦めよう」

「力及ばずですね」


 巫女二人も力が足りない事は自覚していた。

 戦巫女の弓師としての最高峰の姫、舞姫、歌姫の二つの称号を持つ出雲でも足りない。

 数ではない、質の面で大きく劣る、これを他の者には無理であるし、幾ら何でも強いというレベルではない、一体で一軍を倒すような猛者たちが苦戦する、その戦闘能力は筆舌を尽くしがたい。


「弓が欲しいです」

「ええ。必要になりました。これで最下層のレベルとは、舞の扇が要ります。他にも服と、飾りと、必要な物ばかりです」

「難しいです。上手く行きません」

「いえ、姫の矢が射抜かねば結局は苦戦の末に撤退でした」

「うん。でもあれと単独では戦えません、普通のPTじゃ全滅するだけの戦いです」


 二人も困難過ぎる鬼には手を焼いていた。

 侍達も兎にも角にも装備が欲しい、最低でも神話級の装備が欲しい、実家の蔵から持ち出したくなるが、ここはゲームの世界、どうやっても持ち込めない。


「どうしたものか、何かないか十兵衛」

「無理です。数を揃えても結局は攻撃力不足、にっちもさっちもいきません」

「せめて神話級の一つでもあれば」

「あればいいです。せめて脇差の一つぐらい、贅沢は言いません、虎徹程度でもいいのです」

「無理だろうな」


 姉妹の会話に、アルトも父親に頼む事を考えた。どうしようもない強さに、これは根本的に鍛え直さねばならない、明らかに実力不足だ。


「帰還するぞ。このままでは全滅する」


 誰もが頷くしかなかった。

 そこにサツキ達が現れ、サツキがアルトを見ると駆け出して捕獲した。


「よしGet」

「どうしたよ」

「共闘OK?」


 アルトも素早く計算し、他の者もこれならと頷く。

 共闘し、三個PTになって落ち足軽を狩りに行く。

 見付けた所にいた鬼の落ち足軽、まずは狙撃、星守りのスペル攻撃、出雲のバフ、薬師の方も準備していた薬を取り出し、戦士達は突撃準備。

 鬼が振り向く刹那に要られた矢が突き刺さり、作戦が開始される。

 薬師のレンズが作った薬を地面に流し、立ち込める香り匂いが苦しむ。

 最速の忍者の三名が攻撃し、離れながらのクナイの投擲、その後の忍法、侍の三名の攻撃を受ける、そこに斧槍を持つ戦士が一撃を食らわせ巨大な鬼を地面を舐めさせる、そこに細工師の大鎌が鬼の首を刎ねようとするが、鬼は横転し避ける。


「やるじゃない」


 サツキは褒める、恐らく初めてではないが数少ない敵を誉めた。

 ワイバーンもまさか全力の攻撃で潰れない奴が居るは思わず、召喚を使う。

【召喚:タイプ従者:バハムート】

 現れた巨大な竜、鬼に向け攻撃し、鬼は素早く攻撃を防ぎ、槍のアーツを使いバハムートを倒し、ワイバーンは怒気をはらんだ顔でさらに召喚を行う。

【召喚:タイプ従者:斬鉄剣】

 現れた巨大な剣、巨剣は一直線に鬼に向かう、鬼はアーツを使いこれを防ごうとするが、貫通し鬼の防具の一部を貫きかけるも、その前に巨剣が砕ける。


「落ち着きなさい、冷静に撤退するわよ」

「ああくそ」


 二人が撤退する、残る者は攻撃を再開、アルトの誘導で星守りのスペル攻撃が直撃、戦士達のスペル攻撃も重なり、怒り狂ったワイバーンが切り札を使う。

【召喚:タイプ武具:神具】

 召喚された神話級の武具を纏うワイバーン、激昂に任せ鬼に斧槍を振るう、しかし攻撃を受け長も鬼はアーツでこれを防ぐ、ワイバーンも認めたこの強さを。


「こいつは失礼したね。中々強い、うん気に入った殺そう」


 戦士の礼儀を行う、最大の力で叩き潰す。

 サツキもレシピスペルを使う、幾条にも現れた結晶、サツキの指輪に力を集め、星守り以上のエネルギーを撃ち込む、これを鬼が防御アーツを使い遮断した。


「うそ、冗談」


 スターが飛び跳ねる。

【忍法:タイプ召喚:白虎】

 現れた白い虎、咆哮を上げて巨大な雷撃を行う、さすがの鬼もこれは防げなかった。

 距離を詰めたスターに鬼は危険と判断し、槍を投擲し掛けるが、ワイバーンの斧槍がこれを妨害し、接近し終えたスターが秘奥義を使う。

 全MPを撃ち込む、鬼のMPに直撃し、鬼が失神する。

 全員の攻撃が始まる。

 全力攻撃により鬼が消滅した。


『戦闘完了。共闘PT鬼狩り。戦闘経験値を全員に等分、コインを全員に当分、ドロップ相手はラストアタックに等分、VIPはスター、お疲れ様でした』


 さすがはレドの娘達、最強揃いばかりだとアルトは思う。


「ふむ。悪くない敵であった」


 スターの珍しい感想、ワイバーンも武具を解除し適当に座る。


「まさかね。世の中は広いなぁ」


 ワイバーンの感想に、サツキも強く同感だった。


「あたしのあれを防ぐ奴が居たなんて、これは修業がいるわ」


 故郷の者に一撃で倒せなかったと言えは、怒られる事は間違いなしだ。


「戻るぞ、全員が実力不足、装備不足の準備不足だ」


 誰も異論はなかった


 □鎌倉


 帰還してから軽い情報交換後、アルト達は今後の方針を決める会議を開く。


「あれは化け物です。我々が苦戦すると聞いた零の顔は、ひとまず場所を聞いていましたので、教えておきました。恐らく封鎖でしょう」


 星守りの苦笑に、他の者も同じ様に苦笑、リーダー役のアルトは思案していた事を伝える。


「ログアウトとしてから、アーツだ。これを取得に行くぞ」

「異論はない」

「秘奥義級ですからまあありしますが、耐えられますか?」


 取得するしかないアーツは、もう武器の耐久度限界を突破するものしかない、下手したら戦闘中に武器が壊れる、これは避けたいが、避けられそうもない。

 姫の方は厳しい顔で、愛用の弓が有ればなと思わずにはいられない。


「職人もいる、どうにかしよう」


 冥姫の言葉にうなずく、星守りも久しぶりにスペルの取得を行うしかないようであり、その難しさは至難の中の至難だ。

 その後の解散、アルトは久し振りの訓練を行う。

 アルトは侍の中でも刀剣を得意とし、スペルも得意とする、この中でも魔法剣を得意とし、これ中心に鍛え、この魔法剣に関しては地球でも屈指の腕前であるが、この為に武器は厳選されてもまだ足りないレベルの物しか耐えられない、集まるエネルギーに武器が素材の限界に達し壊れるので、仕方なしに扱う技を落とすしかなかった。

 星守りも同じで、扱え力に耐えられずサポートの武器が壊れてしまう、ボクサーのハードパンチャーが自らの拳を痛めると同じで、結局全力が出せない為に訓練すらできなくなってしまい、アルトは芸術で鍛え、星守りは道具に頼らないスペルを求めた。

 どんな時でも悩みは絶えず、違ったやり方でも、二人は常に道具がない中で鍛えるしかなかった。それ故にこの話はプレイヤーの中では有名な話で、何人もの職人が挑むが、結局は耐えられなかった。

 素材を求めあちらこちらに出向くも、結局は耐えられず、なにが有っても耐える事の出来ない為に二人は道具を手放すしかなかった。

 連邦ではこの手の話は多く、優れていたための不幸であった。

 姫の方は優れた弓師ではあるが、より耐えられる筈もなく愛用の弓が現時点の限界で有り、エルフの最高峰の職人が作ったとしても、似たような結果になった。

 これを連邦の悩みとよく言われる。

 侍の最高峰の二人も、忍者の最高峰の二人も同じ道を辿るしかなかった。

 これをどうにかできるのなら、当に連邦の悩みは解決していた事になる。

 この為に素材の関しては連邦のレベルは遥かに進んでおり、鉄を黄金に変えるというほどのレベルに達していた。


 訓練の中、昔に比べ遥かに腕前は上がっていたが、結果としては上がった為にまた厳選されるとになる。この鼬ごっこには常に頭が辛い。

 それに対しワイバーンの武具召喚、恐らく誰もが渇望するような術に、聞かなかった者達の自制心に礼を言いたいとワイバーンは短く言っていた。

 結局、道具の問題の為に訓練すら辞めざるに終えなかった者達、これが連邦の悩みだ。


 □


『アルト、姫、サツキ、小波、姫野がログアウトしました』


 リアルに戻り、親達に話した。

 父親は難しい顔で居たし、この問題は常に連邦を悩ませ、常に付きまとう問題の為にこの優先的な素材、耐えられる器としての性能、様々な技術を基に開発され、道具の進歩と人の進歩が両立される事は常になかった。

 それは通常の科学ではなく、スペルによる問題、スキルによる問題も絡み、科学技術の勢力では解決しようがない問題であった。

 スキルにより技術基盤を持つ連邦は、どの勢力に比べてもこの点は優れているが、それでも解決できず、スペルに最も優れた竜とエルフも取り合うが、投げ出さない者の方が恐ろしく少なかった。

 連邦の悩みは政府も真剣に取り組むが、難しいのが本音だった。


「・・・レドかロウなら可能だ」

「・・・」


 上がった名前は、錬金術師としては世界でも最高峰の二人で、二人が作り出す素材を求めなかったところはない、それ故に二人はこれを隠すしかなかった。

 尽きぬ悩みでもあって、二人は常にこの面倒とは関わらない。


「諦めろとは言わないが、まだ難しい」

「そうか、まあ別の分野でも伸ばす」


 スカオはなんと言えばよいのかが分からない、伸びる素質があるのに問題に故に伸びる事は出来ない、この連邦に付き纏う問題にどうしようもないものでもあった。

 5名が地下に戻り、親御さん達は懐かしい友人に一つ依頼した。


 レドによって現れたロウ、プレイヤーのロウは久し振りにもかかわらず、暇そうに水を見ながら話を聞いていた。


「天才ゆえの悩みか、連邦の悩みだな。まあどうにかはできる」

「・・・」

「それを何に使う?もう戦は終わった」

「勝手かもしれないが、あの子達に先を与えたい」

「先か、先の果てにより使える物がなくなるのが果たして幸せか、より不幸になるだけだ」

「だとしてもこのまま悩み続けても何の意味もない」

「・・・分かった。シルトには色々と借りもある」

「一つ見て欲しい物が有る」


 見せられた映像に、ロウは映像を凝視ていた。


「シルトの行いだ」

「・・・だが彼奴は侍だ。芸術家ではない」

「それは重々承知している」

「・・・やれやれ他の者も呼ぶしかないか」


 五人を呼ぶ、アルトの知人のロウに、挨拶し、ロウが皮肉の言葉を送る。


「侍の芸にしてはあれだな」

「趣味だ」

「・・・」


 ロウとしても見たくなった、その限界が、その報酬というのなら何の問題もない。


「なら手伝ってやるよ」

「珍しいな」

「暇だからな、他もの者も呼べ、どうせスキルでの大量生産なんで簡単だしな、ただし条件がある」

「言え」

「使うのなら限界を示せ」

「了解」


 プレイヤー達の協力があり、ひとまず素材の問題は解決し、残るは開発となる。

 どのみち大量生産できるプレイヤーの為に、最高峰の素材、これを得ての素材限界に達していた者達への道具が作られた。

 特に星守りのサポート武器、アルトのスペル芸術用の道具、姫の弓と矢は最優先に行われる。


 □


 完成した物を受け取る、アルトと愉快な仲間達も受け取り、直ぐに確かめる。

 アルトのスペルの力に耐える器、デザインは刀で有り、攻撃面では魔法剣の特性に該当し、特殊機能の面ではスペル芸術用の物となる、名前は祭り師、世界でも最初のスペル芸術用の器だ。この点はレドの兄である開発者が直々の調整し、新しい分野の誕生に賛辞の手紙を送っていた。


 連邦の悩みが解決し、アルトは祭り師を握り、同じ悩みを持つ巫女達の歌と舞と共にスペル芸術で表していた。

 世界中に流される映像、アルトの祭り師が生み出した幻想的な世界、いつもなら4個が限界、この祭り師により数十倍に上がっていた、この為に今まで不可能であったことも易々と出来る様になって、一人で一つの都を生み出し、この日常を創り出していた。

 アルトのテーマは日常、これが最も好きなテーマであり、このテーマに沿って様々な事をしてきたし、祭り師によって生み出された人々、動物、建物、雲、雨、一つの都を形成する全てが現れる。


 半日にも及ぶこの映像に、賛辞の言葉が多かった。

 帰宅してからのログイン。


『アルト、姫、サツキ、小波、姫野がログインしました』

『神器開放、全情報に追加、調整を終えました』

『祭り師は限定支給されました』


 支給された祭り師、最高の刀を持つ、それは単に攻撃面ではなく、スペル芸術に重視されて調整された物、正しくお祭り用の物だ。


「ひとまず仕事か」

「あんたバカ」

「なんだよ」

「祭りに決まっているじゃない」

「仕事もいるだろ」

「はい祭りに賛成」

「私もっす」

「あ、あの祭りに賛成」


 全員が裏切る、最近裏切られる事が増えたとアルトはつくづく思う。

 フレンドチャットで伝えると、既に準備が始まっていた。

 仕事もあれなので、祭り師を使い祭り用のスペルの開発などを行う、そう言ったトレーニング用やスペル開発用等もある、攻撃性能や防御性能の戦闘系ではないので、特に問題はないらしい。

 同じ祭り系の物を持つ星守りと零と合流し、飛行団の祭り用の神社に集まった。

 祭りの三種、アルトの器のデザインは刀の祭り師、星守りの器はデザインは刀の囃し、零の器はデザインは杖の花火師、全部祭りにちなんだ名前の器だ。

 訓練希望の者も集められ、アルトが指導、時間がもったいないので、花火をバンバン、作られた楽士達の演奏、巫女達の舞と歌、お祭り騒ぎとなる。

 一人で担当出来るので、巫女達も大助かりで仕事が捗った。

 星守りが考えた桜、この専用スペルにより作り出された桜が常に揺れて花弁が舞う、零の考えた花火、花火芸術に作られたこの打ち上げ花火により、祭りらしくなる。

 アルトの方は得意とする日常から、人を担当し、生み出された人々による祭りを行う。

 鎌倉全土なので、期限はMPが尽きるまで。


「これ凄く好い」


 サツキも大はしゃぎ、スターもワイバーンも同感であった。

 神社での訓練の中、時々の休みに露店にいき三人は遊びまくる、特にサツキは細工師なので、作品と交換する為に何処からも歓迎される、またサツキに見いだされた細工師も何人がいるので、こちらの方も祭り用の細工師に頭を捻る。

 丸っきりの子供のサツキではある、しかし二人が失った子供らしさをサツキは持っていた、もしかしたらサツキと居れば取り戻せるかもしれないと二人と思う。


「しかし、凄い夏休みだね」

「急展開し過ぎて少しな」

「少し?随分と変わったよ。という変わった事しかない」

「うむ。まあ時代が変わったのかもしれないな」

「変わったよ随分と変わったよ。変わり過ぎだよ」

「平和で良かったというべきか」

「うん」


 二人の会話に、サツキは面白いと思った物を見付けお面をかぶって遊んでいた。

 そこに姫と護衛の二人が来る。

 サツキの友人の姫を見付けるとサツキが飛びついて抱きしめる。


「よく来たわ。遊ぶわよ」

「はい」

「二人もGOGO」


 護衛の二人は偶には良いかと思いついていく。


 神社では侍の二人が好い時代に酒を飲む、神器によって悩みは解決し、今は祭りを目指し色々と訓練中で、二人の目指すのは剣舞、ただの剣舞では楽しくないので色々と考案中で、誉の方もこのスペル芸術に魅せられ夏休みを申請し許可されていた。


 この為にスペルが使え者は一人残らず訓練中、訓練すれば少しぐらいは芸になるというのが言い分で、偶には良いと言って冥夜が許可し、何せどこにもないアルトが切り開いた分野なので、これは記念だと言って許可したのだ。

 アルト派ではスペルの使える者を中心に研究中、どこもこれは使えると判断し幼い者まで訓練が言い渡され、面白いので大人気、大流行の真っただ中だ。

 同盟でも密かに研究中、面と向かって言えないが、つまらない地味な訓練よりは人気があった。

 政治家たちもこれが楽しみ、つまらない話が多い政治の中で、これならコストの面でもよいし、人件費も安いし、場所も取らないし、なにを取ってもよい、しかも音楽までできるのなら許可しない筈もないが、中には頭の固い者もいるためにこっそり行う。


 そんな準備の一日が過ぎ、翌日の朝方、丸一日が持つポーションを飲み、お祭り。

 零によって開催が公開され、星守りが作った桜、これらがすべて中空に浮かび花弁を舞う、この周りに楽士と巫女が行う。

 そこにあるロッカーが来る、アルトに提案し、ウィ・ウィル・ロック・ユーが演奏される。

 戦いのようなので、アルトに大うけ、じゃあやろうという事になり、これを1時間で考え、敷き直しを行い、祭りは祭りでも騎士達の祭りに切り替わり、欧州に大うけ。

 ジェストの光景が再現され、貴族から王様まで勢揃い、民衆もいる為に凄まじいお祭り騒ぎ、これには新しいやり方にあちらこちらで大うけ、日本連邦に偏り過ぎていたなと政治家たちも喜ぶ。

 これにアラブより提案を受け、ベリーダンスも追加、多芸なアルトに中国やインドもこれは良いと更に追加、という訳で祭りは一日続く。

 翌日は後片付け、仕事も行い、会議の方もリクエストは受け、会議の上空に祭り、音楽付きなので若者としても楽しめる、堅苦しい軍歌よりよっぽと好いと。

 この結果、祭りネタはよく話が弾む。

 ちなみにアルトは中学生の年齢であるが、異星の事もよく知っているのでの再現も快く受け、これを紹介していたのでどこも喜ぶ。

 敵の同盟としても祭り師の事だけは、特別に自由な出入りを強制的に許可した。

 石頭の司令部は猛反発したが、兵は知らん顔、政治家たちも決まった事だの一点張り。

 この為に祭り師と呼ばれた三名は、オファーが激増した。


 □


 7日目、狩りの日、集まった共闘PT、岩龍にいき、祭り師と決定している呼び名の三名は、攻撃用ではない為に困るが、変更は絶対にさせないというサツキに困る。

 零の方は適当に言って逃げ、アルトは逃げようとしたが捕獲され、そんな若を助けようと星守りも併せて捕獲された。


「変更したらPKよ」

「横暴だ」

「そうです横暴すぎます」

「細工の一つを進呈」

「はっ了解しました」

「仕方ないか」


 イーニャの細工師の細工が、もらえるのなら悪くないと、二人は納得した。

 作られた細工、花火をイメージしたようなブレスレッド、性能は随一、神器に匹敵する様な性能に、二人もこれならと納得していた。


 そうやって落ち足軽を狩る。

 サポートを得た星守りがスペルを使う、強制的な固定、体そのものを固定され、祭り師を持ったアルトが、幻想的な祭り用のスペルでトドメを指すが、丈夫な鬼の為に倒しすきれず、MPを大きく使い、他の者が狩る。


「攻撃力が相変らず不足しております若」

「難しいね」

「やはり修業が要ります」

「全くだ」


 優秀なキャスターのアルトではあるが、攻撃力が今一つ足りないのがネック。

 星守りのスペルは零に匹敵するために、攻撃をすれば全部を破壊、支援に回せばオール支援、万能的なキャスターは頼りになるが、現在の祭り師としての修行が優先されている。

 非常に楽になった狩り、次に移り。

 日本連邦が誇る巫女、舞姫、歌姫も神器を得て最強のバッファーになり、圧倒的な舞と歌を使うバフを行う。

 これによりDEXまでのバフを得た弓師、姫による狙撃も楽になり易々と貫通するので生き生きした顔で鬼を釣って集める、その後に飛んで逃げ誘導。

 忍者達の忍法により鈍化、次に妨害によるデバブ、後に侍、戦士、細工師で狩る。

 そうやって狩り、次のランクに上がる。

 兵士級の足軽、全能力が上がっているとしか思えない、そもそも体格も2・2mと10%向上、手に持つ槍も立派な物に変わり、兜まで身に着ける。


「若訓練です」


 星守りが固定し、アルトがスペルを使う。

【スペル:タイプ祭り:花火大会】

 花火の連続攻撃、鬼に直撃するが、アルトのネックにより中々削られないが命中率は100%の、数も半端なく、コンボ数も既に1000発を超える。

 花火の本数は2千本、それでもHPは50%が残り、アルトのMPはすっからかん。

 薬師の方が用意していたポーションを受け取り飲む、ブースト用もあるが、星守りが修行にならないと頑として許さない。


「二千本か、出来たらもう少し本数が伸びる方がよいな」

「攻撃力です。単発当たりの攻撃力を上げてください。それだけで十分なのです」


 周りとしては中々愉快になったなと。

 修行が終わり、舞と歌、弓による狙撃が始まり、戦士達による攻撃が始まる。

 足軽の鬼が戦士達に咆哮する、一撃で吹き飛ばされかけるが、素早い星守りのスぺルにより無力化、突撃する中、忍者三名により近接、神器の忍者刀により切り裂かれ、三名が背後に飛び跳ねて回りながら空中でクナイの投擲、侍の二人が鬼の首を狙うも細工された槍で防がれる、戦士による斧槍の一撃が鬼の槍を砕き、後ろから飛び出した細工師の大鎌が一閃し鬼の喉を切り切り裂いてのクリティカル。

 背後に回っていた三名によりバックアタックによる集中攻撃、準備を終えた侍の二人の支援系の強化系統による、最大限の強化を終えた後の神器による同時攻撃。

 戦士のワイバーンの準備が終わり、召喚された巨大な槍が鬼を貫く。

 細工師のサツキの方も、上空での準備を終え、放たれたレシピスペルによる結晶化を受け鬼の表面を覆う全ての防具が砕ける。

 アルトが再びスペルを使う。


【スペル:タイプ祭り:桜祭り】

 幻想的な楼閣が鬼から生える、そのまま根を締め付け鬼をそのまま圧殺し掛ける。

 鬼が特殊能力の咆哮を上げるモーションに入り、待っていた弓師による狙撃に依っての遮断、更に攻撃が続く。

【スペル:タイプ祭り:記念祭】

 幾万もの刀剣が現れ鬼を貫いていく。

 中々倒れないのはアルトのスペルは兎に角も攻撃力が足りない、星守りの一撃をアルトは何度も行っても、そのダメージでも及ばないのだ。

【スペル:タイプ祭り:凱旋門】

 現れた戦乙女、この光輝く剣が鬼の喉を貫いて、やっとの事で消滅した。


「しぶてぃ」


 アルトのずば抜けたところもあるが、星守りとしては微細でもいいから攻撃力が伸びて欲しい、それだけでも圧倒的なキャスターとなる。


「少しぐらい柔らかくてもいいじゃないか」

「ダメです。修行こそ優先すべき事です」


 そうやって祭りは続く。

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