プロローグ
「あら、お目覚めですか?」
まぶたを薄っすらと開けると少女に声をかけられた。
「えーっと、誰?」
と、正直に思ったことが声にでた。
「私は、ヒノカグツチともしますわ。ニノワ世界の女神です。」
「ハァ〜?」
正直に思ったことが声にでた。
えーっと女神?目前の少女はそう言った。
年齢は十代くらいで身長は約160㎝ぐらいか?スタイルはなかなかの巨乳で大変結構。赤色ロングの髪をサイドテールにしている。
整った顔付きでややツリ目がちな大きな瞳も赤色だ。
うん、物凄く可愛い!
名前はヒノカグツチらしい…ヒノカグツチ?火ノ迦具土!
「えーっと神話とかに出てくる火を司る?」
「嬉しです。存じて頂けたのは!」
可愛い笑顔で肯定された…
「私のことはひとまず置いといて下さい。所でご自身のお名前はわかりますか?」
そう告げられると、ん?名前?俺の?…あれ?…物凄く不安感が襲って来た目の前が真っ暗になりそうな…
「大丈夫です。落ち着いて下さい。」
優しく声を掛けられ安心感に包まれる。靄がとれたように思い出す。
黒田 式 (クロダ シキ)37歳 独身 工場勤務
何故か悲しい記憶の様な気がした…独身の部分に…
落ち込んでる様だったのだろう…いや落ち込んでいるのだが…心配そうにこちらを気遣いながら優しい目で見つめられた。うん、可愛いな!よし、俺はまだ闘える。
「有難う色々と思い出して来たよ。」
そう伝えると正に花が咲くと言った様に笑顔を見せてくれた。そしてお互いにと言うか俺がそこそこ落ち着いて話せる様になった所で色々と説明してくれた。
今の状況?
ここは神域の空間。俺は魂と幽体の状態でいる。
何故か?
仕事の帰りに交通事故により肉体を失った為。
この後は?
相談しだいで決めて良いらしい。
…俺は思案する。これはアレか紳士の嗜みとして普段から親しんで来た小説や漫画のヤツかなと。
「色々と質問してもよろしいですか?」
どう見ても年下としか思えないが女神だと言うし状況もアレなので敬語で伺いを立てると、何と無く驚いた後に納得した様な微妙な顔をされた。何かしたかなと思うと…
「流石ですね。日本の方は理解が早いです。」
?何がと思った所で質問したかった事を軽く先に説明してくれた。
この後について。
想像通り異世界転生しませんか?と言う事。
転生先。
女神様が現在司るニノワ世界。
ファンタジーですか?
ステータス、レベル、スキル、魔法等の補正がある世界。
何かチート的なものは…
加護等、要相談。
ここまで聞いて厨二すら患った事のある心いや、魂が即決した。
「お願いします。」
女神様は喜びながら了承してくれた。
そして今度は詳しく色々と説明を受ける。
まずニノワ世界とは日本の神話で語られた八百万の神々によって造られた世界。神、精霊が人々に近く中世的なファンタジーらしい。弥生的なイメージかな?
当然ながら獣や魔物が跋扈し生と死が日本よりも身近である。
人種も多様で様々な亜人も存在し共存している。多数の国と文化で彩られた世界だということ。
そして、ここからが重要な事だった。どうして俺は選ばれたのか?説明を受けて大変ショックを受けた。
まず、現在の地球と言うか俺の生きていた世界は神々が初めて創造した世界で簡単に言うとテストケースらしい…
西洋東洋問わずあらゆる神々が手を入れた世界。正に混沌。
「確かに神話に宗教…無限にある気がする…。」
結果、外に魔力や精霊等が存在出来なかった世界。しかしながら生命の内には膨大な力が蓄えられた状態。
「使えないからね…。」
何にせよ初めて創造した世界、生命。愛着もあるし勿体無いと言う事で新たな世界に招待しようとした事らしい。
人選はランダムで他の神々が創造した世界にも比較的日本人は選ばれやすい。適応と応用力が高いとか…
「紳士が多いからな…coolJapan…。」
とは言え選ばれたのは偶然だからこそ有難いなと心底思う。世界のバランスの為多くは選ばれないとの事なので。
「ここまでの説明でお心変わり等御座いませんか?それと疑問等?。」
やや心配そうな面持ちで確認された。
うん、大変可愛い。
「心変わり等ありませんとも」
元気よく応えた。…それはそれとして質問はあるなとして
ニノワの世界には日本神話の神々しかいないのですか?
八百万も居りますので…寧ろ余っているぐらいらしい。
俺以外の転生者はいますか?
先達は数名居りましたが…行く時代にはいないらしい。
使命もしくは制約や禁則事項等は?
自由に生き思うままに…寧ろ世界に刺激をあたえて世界成長を促して欲しいと。
「チートも貰えて自由にしていいとなると良からぬ事とか考えそうですが…世界の破滅とか…。」
不意に沸いた考えが正直に声に出た。
すると女神様は軽く困った顔をしながら
「正直な方ですね。ですが大丈夫ですよ。今の地球ならともかく私達が近い存在である世界では浄化作用が、かなり強く働きますから。」
諭される様に言われ慌てて否定した。俺はしませんよと…
わかっていますよ信頼していますからと 微笑まれた。…
守ろうその微笑みを!実際何も始まってないのに心に強く刻む…
そして本題。
正式に転生する為、色々と決めましょうか?
俺はキタキターと思った。紳士の嗜みは正にこの時の為!藪蛇を突かず慎重に…と。
まず、頂ける加護とは?
女神様が司る火と鍛治。火炎魔法の適正。習得、威力上昇、耐性の大幅な補正。鍛治スキル適正。習熟補正。
要相談の部分は欲しいと思うスキル。能力。
…ここだ。取り敢えずは欲しいと思った事は言っておこう。言った後でデメリットは譲歩すればいい。
まずは全魔法に対する適正。
やはり魔法と言うのは憧れるからな…
鍛治も出来るなら鉱石に付いても詳しくなりたいから収集と鑑定が出来る様に…
後は…考えろ俺れ!!嗜んできた知識を今ここに!!
…うん!駄目だ…俺の知恵ではこの程度……クソっ
後悔の念は非常にあるが諦める。出来ればこの要望が通ればと願いつつ伝えると、分かりましたと。…その他に必要な事は此方で付け足すとも…いや、マジ女神…あ女神様でした。
「それでは加護と能力については此方として、転生先の生活についてですが?ご要望はありますか?。」
う〜ん。自由にして良いと言う事なので…裕福な家庭の三男坊ぐらいでと、考えもそこそこに要望を伝える。
「わかりました。では少々お待ちください。調整してきますので。」
女神様がフッと消える…俺はこれからの新しい人生に想いを寄せる。生きていた頃はコレと言った不満もなかったし残した親族にも交通事故となれば保険が発動するだろう。
以外にドライだな俺。
一人暮らしの部屋にはパンドラの箱PCがあるが……過去は過去。今は今の精神で行こう。
そう息巻いていると、この空間を強大な圧迫感が支配する。
何事かと思うとともに声が掛けられる。
「懐かしい匂いがすると思ったら…お前は地球、それも日本人か?」
と凄まじいイケメンそれも如何にも強者という雰囲気を纏った二人の男がいた。
「あっハイ。」
これしか言えなかった…
「いきなり来てそんな大声を…驚くではないですか…すみませんね。」
もう一人のやはり超絶イケメンに謝罪された。
「いえ大丈夫です。」
これしか言えなかった…確かに驚いたのだが…
少しの沈黙の後、先に声を掛けたイケメンが笑いながらいや〜日本人とか久しぶりでな、つい懐かしさが溢れちまったっと済まんと謝られた。
一考する…この神域、空間にフツーに入って来られる存在。完全に神様。うん、無礼はダメ!絶対!
「初めまして。この度ニノワの世界に転生します。黒田 式ともうします。不束者ですがよろしくお願いします。」
緊張しながらも挨拶をし名前を伺うと教えて頂けた。
「これはご丁寧に。ニノワ世界を司るタケミカヅチと申します。」
「オウ、己はスサノオだよろしくな。」
おっお〜…big name…静かに感動していると
「ん?わからねーか?」
と声を掛けられ、慌てて答える。
「いえっ…大変失礼しました。存じております。雷神様と三大神の一柱で有られますよね。お会い出来大変光栄に思います。」
いうや否や大声で笑ってくれた。いや〜気に入ったと。
ニノワ世界は女神信仰で男神の信仰薄いのだと…知っていてくれる日本人に久しぶり会えたと。
随分と機嫌を良くした神様達はことも投げに加護を与えてくれると言う。あれ?大丈夫のかな?良いのかな?と思っていると…楽しくやりなと言った感じでフッと消えられた。
う〜ん。良しとしよう。悪い様にはならないはず。寧ろ良事の筈だと思い込む。未来の自分に丸投げだと落ち着いた頃に女神様が戻って来た。
「お待たせしました。」
優しい笑顔と声。
今更ながら思う事があった。いや先程スサノオ様、タケミカヅチ様にお会いしたからこそ思い至った。ヒノカグツチ様は女神なんだよな〜イメージが違う様な?うーむ…
「私たち神にとって性別とはイメージで如何様にもなりますわ。拘りが強い方々は自ら固定されますが…似合いませんか?。」
「いえっ物凄くお似合いです。可愛いです。好きです。」
正直に思った事が声にでた。…おかし〜な〜享年37の大人だったのに感情の制御がイマイチ…と言うか顔にも声にも色々出すぎだーっと思っても後の祭り…平謝りだと一も二もなく行動を起こそうとして……
「あの、有難うございます。その、凄く嬉しいです。」
…それは正しく福音だった…清らかで、暖かく、それはあまりにも福音だった……。
我が一生に一片の悔い…今から始まるわ。すげー楽しみだわ。…よし逝きかけた精神を抑え込むことに成功。
「で、でわ今より転生を行なっていただきます。」
「はい。お願いいたします。」
「それでは、新たな世界で良き人生を…シキ様に八百屋の祝福あれ。」
凛とした声に身が震える。感謝とお礼を伝えようとしても声が出ない…ならば心の中で精一杯の……………。
意識が途絶え光の中に消える。
「またお会いしましょう。」
優しい響きが聞こえた………………………………………。