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第十三話 召喚! ……してしまった。

 MLOを始めて四日が経った。

 土曜日である今日は学校が昼に終わる。直帰して昼食、学校の予習復習に3時間を費やし、その後1時間ほど攻略サイトに目を通してからMLOにログインした。

 本日の予定はダンジョン探索ではなく、『図書塔』での勉強だ。


 ――というのも。

 学校での水島たちとの会話から、俺の『やらなければいけないこと一覧(リスト)』の中で、優先順位を一気に上げたものが出来たからだ。




   ◆○★△




「――そういやカラムスは……じゃなかった。真鍋は、もう試験受けた?」


 一昨日の一件から、水島や太田、飯倉の3人と学校でよく話すようになった。

 3時限目と4時限目の間の休み時間。タブレットPCでMLOの攻略サイトや兄ちゃん寝る掲示板を見ながら、MLOについて軽い雑談をしているとき、隣の席に座る茶短髪の少年・水島洋太がふと思い出したというように言ってきた。


「え?」

「おお、そうで御座ったな。どうで御座った?」

「あれを初見で受かったらーマジヤバだよねー」


 俺の席の前に立つ天然パーマの太った男子・太田吉秋(AN:切満邪露(キリマンジャロ))と、水島の席の前に立つボサボサ頭の何処か眠たげな線の細い男子・飯倉正也(AN:フェリシアーナ)が興味津々といった視線を俺に向けた。

 水島の言った試験とは、十中八九、MLOの『魔術試験』のことだろう。


「えと、まだ受けてないけど……」

「おいおい。試験は土曜日で切り替えだぞ」

「切り替え?」

「試験は内容問わず、一週間に一度しか受けられないのは知ってるで御座るよな?」

「ああ」

「日曜から土曜までを一週間としているからー、今日を逃すと試験を受ける機会が一回なくなるんだよー」

「……ああ、そういうことか」


 どうやら、受けたその日から一週間は次の試験が受けられない、ではなく、日曜から土曜までの一週間で一度しか受けられないというシステムのようだ。


「俺らは月曜に受けて全員落ちた。あっはっは」

「甘く見過ぎて御座ったなぁ」

「所詮はゲーム内のテストだろー、って感じだったねー」


 そう言えば、俺が初めてMLOをプレイした日にそんなことを言っていたな。


「真鍋には期待している! 見事受かってオレたちに攻略法を教えてくれ!」

「おま、どんだけで御座るか」

直接的(ストレート)過ぎー。もっと遠回し(オブラート)強請(ねだ)れー」

「うっせ! お前らだって同じこと考えてたくせに!」

「…………」


 ――ふむ。試験か。


 タブレットPCに映し出された攻略サイトの試験のページに目を運ぶ。

 魔術試験は、自分が今までに受けた講義の科目毎の試験、そしてそれらを総合した進級試験とが在る。前者では試験に合格すると高位付加情報(タグ)を貰え、後者では自分のクラスが上がり、受講できる講義が増える。そしてどちらにおいても試験での点数に応じてステータスが上昇する。

 どちらも一長一短。現実世界で一週間に一度しか受けられないというのだから、自分の目的を見直して、それに合った試験を選ぶ必要がある。


「ちなみに、水島たちが受けたのは何の試験なんだ?」

「ん、オレら?」

「それがしらは二回受けて」

「一回目が『進級試験』で~、二回目が『ルーン魔術概論』~」

「ははっ。どっちもボロッボロだったな」

「進級試験で『あれ? 選択問題だけじゃないの?』と思い知らされて、いきなり総合テストは無理があったかと、二回目に単科目のルーン魔術の試験を受けたで御座るが……」

「超イミフだたー」


 水島たちからは試験の内容を思い出せる範囲で教えて貰った。

 最初の数問は魔術に関する選択問題、そのあとは記述問題が続くという。選択問題はググれば分かるものばかりだが、記述問題は自分で考えなければいけない。この『自分で考える』というのが彼らから言えばネックなのだという。ゲームシステムのことと言うよりは学校のテスト的な試験内容に思考拒否反応が出ているとか。

 ちなみに、進級試験の方には筆記試験が合格点ならば実技試験もあるという。


「まー、試しで良いから受けてみればー?」

「図書塔にて色々と参考になる書籍が多数置かれているという話で御座る。……まあ、それがしらは活字アレルギーで御座るからして……」

「別に絶対受けろって言ってるわけじゃねーけどな。試験受けないでダンジョンに行くんだったら声かけてくれよな」

「ああ、わかった。ありがとう」


 ――魔術試験、か。


 今日を逃せば一回試験を受ける機会が減るというのもあるが、一体どのような試験なのか、それは俺の好奇心を刺激していた。

 やらなければいけないこと一覧(リスト)にはもともと入っていたが、この瞬間に『魔術試験を受けること』の優先順位が上がった。




   ◆○★△




 図書塔。

 講義棟から階段を上って降りてを繰り返し、通路を少し歩いた所にある巨大な円柱尖塔。中はかなり広く、それ以上に天井が高い。壁という壁を覆う本棚と、それを埋め尽くす星の数ほどの大量の書籍。各所に宿木のように階段や梯子が延びている。

 何処か神秘的なその光景には、感嘆と共に若干の眩暈を覚えた。


 それから俺は入口に設置してある案内板を確認してから、一通り閲覧可能な一階を見て廻った。ノービスクラスの俺では二階より上の階へ行けないのだ。

 現実世界の俺の家の近くにある蔵書数十万冊を超える図書館の数倍は広い一階には、科目毎などの専用コーナーというようなものはなく、全てランダムに本棚へと収まっている。なので自分が見たいものは端から順に探していくしかなく、俺も見回っているついでに気になったものは手に取ってキープしておいた。

 全体的に魔術や魔法といった大雑把なカテゴリではあったが、書籍のジャンルとしては様々だった。日本語だけではなく、英語やドイツ語など外国語で書かれた論文や参考書もあれば、絵本や図鑑、小説など軽く読めるものもある。流石に外国語の本は俺ではまだ読めない。英語なら辞書を使えば何とかなるかもだが……。


 ――取り敢えずは、今まで受講した講義の日本語の参考書を使って復習をしよう。


 そう考えて各科目の参考書を探していく。本棚の背表紙を斜め読みしつつ、ロア女史の【魔術概論基礎】、バクター講師の【魔術実践基礎】、ジェネル講師の【魔術戦闘基礎】、カストル女史の【属性論】、ドトール講師の【ルーン魔術概論】などの参考書を見つけていった。


「……【冒険技術】の参考書が見つからないな」


 最初に決めた目標を達成しないと次へと進むことに抵抗感がある俺は、目的の最後の一冊とて見つからないことには勉強を始められない。細かいことでも妥協が出来ないのは悪い癖だと思っているのだが、性格というものは簡単には変えられない。


「――ん? またか」


 本棚を探している最中、時々目につく本があった。ほとんどの書籍には背表紙にタイトルが書かれてあるのだが、稀に何も書かれていないものがあるのだ。本の大きさや背表紙の色やデザインに統一性はないが、何か気になる。

 俺は目の前の本棚にあるタイトル無き一冊の本を手にした。ノートPCくらいはある大きさを感じさせないほど軽く、茶革のカバーの重厚な感じの本だった。


 ――なんだ? ページが一ヶ所しか開けない?


 他のページは開けそうで開けない。唯一開けた最初の方のページには、六芒星を囲う円に何やら様々な記号が書かれたものが描かれていた。


「これは……」

「【喚起(かんき)の書】ですか。運が良いんですね」

「え!?」


 突然、後ろから聞き覚えの無い声が聞こえた。

 驚いて振り向くと――


「ごきげんよう」


 黒髪ストレートロングのメイドさんが、ニッコリと挨拶をしてきた。




   ◆○★△




 図書塔には本棚だけではなく、それを読むための長机や椅子、他にも奥の方に個人用と複数人用の自習室が設置されている。

 俺は今、個人用自習室を借りていた。六畳ほどの室内には幅広の机と椅子が一組だけある。俺は机の上に集めた本を置いた。


 ――【喚起の書】か。


 突如現れた正体不明のメイドさんは戸惑う俺にこの本のことを丁寧に説明してくれた。説明が終わると貞淑な仕草で一礼して去っていったので、何がしたかったのかはイマイチよく分からなかったのだが。

【喚起の書】とは、悪魔や天使などを召喚できる魔法陣の描かれた書物の総称であるという。呼び出される対象は様々だが、現在では悪魔、天使、精霊、妖精、幻獣が確認されている。

 どの本で何が呼び出されるかは完全にランダム。しかも、一度召喚すると同じプレイヤーは同じ本では二度と召喚出来ないという。

【喚起の書】にて呼び出されたものは、呼び出した者が特定の条件を満たしていれば契約を持ちかけてくる。契約には『貸与契約』と『召喚契約』の二種類があり、前者は悪魔や天使などの力を借りて魔術を行使出来るもので、後者は魔力を消費して戦闘時や非戦闘時などに契約したものを召喚することが出来るものである。


 ――無論、どちらも相応の代償は支払うらしいが。


「だが……それでも魔術の幅が広がるのは魅力的だ」


 俺は魔法陣のページを開いて、そこに両手を置いた。


「【我、魔の法を紡ぐ】――」


 始動キーを発声して三秒後、ページに置いた両手の触れている部分が赤く鈍く光る。その赤い光が徐々に浸食するように魔法陣を染めていき…………完全に全てが赤く染まったその時、部屋が暗くなったと思ったら、魔法陣が眩く光輝いた。

 そして――――


「!?」

「フッ…………フハハハハ! 我輩、降臨である!」


 腕を組んだ全身黒タイツの変態が現れた。


「…………」

「フハッハハ! 貴様が我輩を喚んだ者か!? ――ってコラコラ。ちょ、本を閉じないで!? 閉じちゃらめー! らめぇなのぉ……!!」


 ――今回の召喚は失敗したかもしれない。


 渋く低い声音で情けないことを叫ぶ変態を見ながら、俺は心底そう思った。




   ◆○★△




「フハハハハハ! では改めて、我輩は悪☆魔である! 名前はまだ言えん!」

「…………」


 狭い室内で全身黒タイツのマッチョ男と2人きり。軽く拷問だと思う。


「ふむ――――。ほう、なるほど。条件は満たしているようだな!」


 じろじろと俺を舐めるように見て関心したように頷く変態悪魔。


「フハッ、よかろう! 我輩と契約する資格ありだ!」

「すみません。お断りします」

「何故にホワイ!?」


 だって変態と契約するのは抵抗があるし……。

 それに、俺は契約書類関係は全て読み通してからサインするタイプだ。


「…………まず、契約した場合の此方のメリットと、それに伴う代償を教えてくれ」

「なぁ~んでそんなに嫌そうに言うんだよぅ!」


 そんな外見で駄々っ子のように言わないでくれ。


「気を取り直して……フハハハハ! 我輩と契約するとだな!」

「契約すると?」

「なんと!」

「なんと?」

「大気中に漂う魔素(マナ)や魔力の流れを視認出来るようになるのだ!!」

「…………え? それだけ?」

「フハ! 無論それだけではない!」

「ホッ。よかった……」

「更に――――物質中の魔素(マナ)や魔力の濃さも分かるのだ!!」

「…………」

「ふっふ~ん」


 腕を組んでドヤ顔をする変態悪魔。


 ――さて、どうするか。


【喚起の書】らしき本は幾つか見付けたので他のものを召喚出来るといえば出来る。しかし、この本で契約できるのはこの悪魔だけだ。契約しなければ一冊勿体無いことをすることになる。

 ならば、この契約の利点を突き詰めて、出来ることなら契約したい。


「フハハハハ!」


 ……この悪魔の外見は置いておいて。


 思考しよう。この契約についてを。


 ――大気中の魔素(マナ)が視認出来る。

 ――物資中の魔素(マナ)の濃度が分かる。


「それに何の意味がある?」

「フハハハハ! モンスターは魔素の集塊より生まれる。つまり! 魔素の濃い方角にモンスター在りということだ!」


 ダンジョンなどで進行方向に敵が居るかどうか分かるということか?

 フェリシアーナのような斥候役が居ればいいが、一人(ソロ)でダンジョンに行く場合にルーン魔術との併用すれば使えるかもしれない。


「それに! 物質中の魔素が見れるということは、秘められた道具の力を見通し易くなるのだ!!」


 つまり、アイテムの鑑定に役に立つと言いたいのか?

 まだ【鑑定初級】タグしか持っていないので、能率が上がるというのならそれも確かにプラス要素だ。


 ――少しでも足しになるのなら……。


「フハハハハハ! ほーら契約したくなってきだろう!?」

「……」


 すごく、契約したくなくなってきたのだが。


「……それで、契約の種類と代償は?」

「フハハ! 今回は『貸与契約』ということになる! 『召喚契約』を結ぶにはまだ貴様では資格と我輩の好感度を満たしておらん!」


 資格というのはレベルか能力値(ステータス)か、はたまた別の要素が足りていないということか? 好感度の方は知らん。

 まあ、この全身黒タイツ悪魔を召喚するのは正直お断りしたいくらいだからそれはいいんだけど。


「我輩の求める代償は『クワトロホーン・エアレーの螺旋角』を10本だ! フッフッフ、入手場所は教えんぞ! それを調べることも契約者としての――」

「あ、それなら持ってるな」

「…………」


 そんな空気読んでよ、みたいな顔で見られても。

【クワトロホーン・エアレー】は、学園地下迷宮8階に出現する4本角の山羊型モンスターだ。捻じれた4本の角を根元からドリルのように回転させながら突進してくる。昨日ウィントたちと探索で倒した分のドロップアイテムが確かまだ鞄の中にあったはずだ。


 ――うん。確かにあるな。


 インベントリに収納してあるアイテム一覧からそれがあることを確認した。


「で……契約とやらはどうやるんだ?」

「むむ? それは我輩と契約したいということか? 『貸与契約』しちゃいたいんですよーということか!?」


 凄く否定したいけど。物凄く拒否りたいけどっ。ものすっっっごく、この変態を拒絶したいけど……!

 それでも、契約魔術で出来ることが増えるというのは如何とも捨て難い。




「………………………そう、だ……っ」




 痙攣するほど拳を握り締めつつ、俺はなんとか肯定の言葉を紡いだ。


「わっほーい! 契☆約! 契☆約! KE・I・YA・KU!! フゥゥゥゥ!!」


 ――って、どんだけはしゃいでるんだ……。


 全身黒タイツの悪魔は、不思議な踊りを踊り始めた。


「……そろそろ先に進んで欲しいのだが」

「わっしょーい! ――っと、フハハハハ! 我輩としたことがついハッスルしてしまった! 許せ!」


 放っておくと何時まで経っても踊っていそうなので突っ込んだ。

 踊りをやめた悪魔は腕を組み、此方を睨んで凄味を出してきた。後ろから『ゴゴゴゴゴ……!』という効果音が聞こえてくる。


「では、契約の儀を始めよう。……フハッ」


 ――何故笑った……。


 悪魔は右手の掌を突き出してきた。すると、ポンッという音がして、そこから紫色に輝く羊皮紙が俺の目の前に現れる。


「フハハ! 契約内容をよく読み、最後に人差し指でサインを書くのだ!」


 羊皮紙にはこう書かれていた。


 ―【契約書】―――

 契約者____は、悪魔■■■■と以下の契約を締結する。

 ・悪魔■■■■は契約者に対し、能力の第一段階《魔視の眼》を無期限に貸し与える。

 ・契約者は代償として悪魔■■■■に、『クワトロホーン・エアレーの螺旋角』10本を渡す。

 ・上位契約の更新を行う場合、契約者が資格を満たした状態の時に悪魔■■■■が連絡を入れる。

 ・契約を破棄する場合は、契約書を破り捨てることを以て契約破棄とする。


 以上、この契約を証するため、本証二通を作成し、署名のうえ各一通を保有する。

 ―――――――――


 簡易化した文章だ。すぐに契約書の中身に目を通したが、文面や契約内容以外の点で色々と突っ込みどころが多かった。


「幾つか訊きたい」

「フハッ。言ってみろ」

「まず…………『悪魔■■■■』って何だ」


 契約書で伏字て。契約書だぞ? 正式な書類だぞ!?

 現実世界だったら、正直バカにされているとしか思えない事態だ。


「フム。すまないが、それには訳があるのだ」

「訳? それはどんな?」

「我輩ら悪魔は、自身の名にこそ『真の力』を持っている。故に、他者に名を教える場合は我輩らが真に認めた者……つまり、『召喚契約』をした者だけなのだ! 分かってくれたか!?」


 召喚契約をするまでは名前は教えられないとということか。

 まあ、実害があるわけでもなし、それならそれでもいいのか。


「じゃあ次は、この『第一段階』とはなんだ? 『上位契約』というものと関係があるのか?」

「フフハ! その説明がまだだったな! 貸与契約は契約者の力量に合わせて段階分けされている! 全部で三段階だ! 召喚契約に必要な資格とはまた別の要素を見るからな!」


 今の俺の力量では第一段階の貸与契約しか出来ないということか。

 そして、契約書の内容によれば、段階を上げられる状態になれば悪魔の方から連絡をしてくると。


 ――なるほど。理に適っているシステムではあるな。


「じゃあ、最後の質問だが」

「ばっち来いィ!」

「……。契約破棄をした場合の此方のデメリットは?」

「フヒ! 契約破棄をすると、同じ悪魔と再契約する場合に代償がより高い物を求められる! それに【喚起の書】で喚べる確率もかな~り低くなるぞ!」

「……? それだけか?」

「ウム。それだけだ!」


 悪魔との契約という割には、契約破棄の際に対するデメリットが小さいな。

 ああいや、ゲームだったらこれぐらいで丁度いいのか。あまり酷いデメリットにしても顧客(プレイヤー)に気に居られなければ商品(ゲーム)として意味が無いからな。


 しばしこの契約についてを反芻した後、俺は悪魔に向け口を開いた。


「――分かった。此処にサインすればいいんだな」

「おお! ウム、そうだ! サインすると持ち物の中から自動的に代償アイテムが我輩に引き渡されるぞ!」


 悪魔の返答に無言で頷き、宙に浮かぶ羊皮紙の右下の欄に、人差し指で【カラムス】とサインした。

 途端、一層強く光ったと思うと、シュルシュルと羊皮紙は自動的に巻かれてポンッと音を立てて消える。

 目の前に、メッセージウインドウが表示された。


【『貸与契約書No.001』を取得。】

【悪魔■■■■に『クワトロホーン・エアレーの螺旋角』10本を支払いました。】


 これで俺は――


「フハハハハ! 契約完了だ! これより、貴様は我輩の契約者となる! 我輩のことはミスター・《V》とでも呼んでくれ!」


【『魔術構築画面』に『契約魔術』の項目が追加されました。】


 悪魔の高笑いと共に、俺は契約魔術を使用出来るようになった。




   ◆○★△




 自習室の椅子に座り、俺は元より予定していた試験に向けての勉強を始めていた。

 あの後、ミスター・《V》と名乗ったあの全身黒タイツの変態悪魔は、なにかと話題を出してきては会話を長引かせようと必死だったので、既に用の済んだ俺は問答無用で【喚起の書】を閉じて変態を還した。実際に役に立つかはまだ不明だが、思わぬところで契約魔術を取得、そして経験できたのは良かった。


 ――それはそれとしてだ。


 今日中に試験を受けることを考えれば勉強の時間は少ない。実際、どのような問題が出るのか過去問のようなものがあればよかったのだが、それも無い。分からないことだらけだが効率良く進めていかなくては。

 まずは講義の再復習からだ。その後は、習った魔術が現実世界ではどのように扱われているかも確認してみよう。幸い図書塔にはその手の資料が多い。

 夕飯や風呂、就寝時間を考えれば、現実時間で22時頃に試験を受けるのが理想か。


 ――さて、試験対策を詰めるとしようか。

悪魔や天使などと契約する方法は多くあります。

【喚起の書】はそのうちのひとつです。

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