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第九話 予習だいじに

 ログイン2日目。

 帰宅して本日の復習と明日の予習を済ませた俺は、18時にMLOへログインした。再び世界を鳥瞰したような場所に出たが今回はチーシャは現れず、ただアップデートや次回メンテナンスなどの情報、課金メニューなどが表示されていた。

 それらに一通り目を通してから【LOG IN】と表示された光るサークルの上に移動すると、パァァと全身を光が包んで視界が白く染まる。

 気付けば、昨日ログアウトした場所へと転移していた。


「……」


 2回目だというのに、やはりこの魔術学園の神秘的な古城という佇まいのリアルさと、違和感や不自然さを感じない魔法的なライトエフェクトに驚きと感動を覚える。今一度自分の服装――黒を基調としたブレザー型の制服にケープのようなフード付きマントを見やった。まるでテレビで見た海外の大学の制服のような。

 俺自身が、まるで物語の登場人物にでもなったかのような出で立ち。


 ――なるほど、そうか。


 これが『異世界体験型シミュレーションRPG』というもの。

 このRPGでのロールというのが魔術学園の生徒、というわけか。


「……ならば」


 さっそく自分の役割をプレイしますか。

 まずは事務棟で講義の手続きだ。

 俺は石畳の通路を歩き出した。




   ◆○★△




 昼休みに水島たちから聞いた話の内容は『ルーン魔術』の取得方法についてだった。これは攻略サイトにも記載されていることで俺も放課後に確認した。


「――え~、ルーン魔術というのは……え~『文字記号』を用いた魔素変換方法で行使する魔術の一種である。え~ルーン文字と呼ばれる縦線と斜め線のみで表される記号文字はその一字一字に様々な意味を持ち、え~基本的にその文字を物や肌に刻んで魔力を注ぎ込むことで、え~効果を発揮するので、ある」


 ルーン魔術を扱うためには【ルーン魔術概論】の講義を受ける必要がある。これは【魔術実践基礎】を2限目まで受けた後に受講出来るようになる。

 1限目までしか受けてなかった俺は、まずは【魔術実践基礎(2限目)】を受けて【事象操作】タグを取得した。


「え~、ルーン文字には、え~3つの使用方法が、ある」


 水島たちとは、現実世界の時間での20時に待ち合わせをしている。

 19時に一旦夕食のためにログアウトするとはいえ十分に時間はある。その時間を使って、前回の反省点を踏まえて十二分に準備しておくことにした。


「え~、そのひとつはルーン文字を単字で使用する方法で、え~記号単体に込められた意味と、え~その記号を刻む物とを組み合わせて、え~効果を設定するというもので、ある。え~これは長時間効果が持続するものが多く、え~基本的に戦闘前に、え~発動させておくと、よい」


 現在は【ルーン魔術概論】を受けている最中。御茶○水博士のような髪型の初老の講師ドトール・ウェバンが担当している。


「え~、ふたつめは【オーディンのルーン】と呼ばれる使用方法で、え~特定の物と特定のルーン文字を組み合わせて特殊な効果を発揮するもので、ある。え~有名なものでいうと、え~【勝利のルーン】というものが、ある。え~戦いと勝利の神テュールのルーンという上矢印ような記号【↑】を、え~剣の(つか)の上に刻んで始動キーの後に『テュールテュール』と唱えることで、え~約10秒ほど身体能力が跳ね上がるというもので、ある」


 ドトール講師の聞き取りづらい説明を入学説明会で貰ったノートに纏める。形状はただのジャポ○カノートだが、開けばPCのような画面とキーボードが拡張現実(AR)として現れるので、使い方はほとんどノートPCと変わらない。


「え~、三つめは、ルーン文字を組み合わせて単語を作り、え~それを物や肌へと刻む方法である。え~発動時は単語の意味の効果をもたらすが、え~刻む物によっては文字単体の意味の効果も付随する。え~これにはマイナス効果を出す場合もあるので注意が必要で、ある」


 ……なるほど。

 言葉だけでは荒唐無稽な印象しか受けなかったが、文字として見ると内容がスラスラと頭に入ってくる。


 ひとつめの【ルーン文字単体での使用方法】は長時間効果の持続する魔術らしい。これはフィリップたちの言っていたルーン魔術の基本とも言える使い方だ。例としては、【危険から身を守る】という意味を持つ、4本指の鳥の足跡のような形の記号【防御のルーン】を盾または防具に刻み、始動キーの後に【ルーン・アルギズ】と、ルーンの名称を唱えることで一定時間防御力が上がる。

 効果時間は発動時の消費魔力によって変化し、消費魔力を1ポイント上げる毎につき1分間、効果時間が延長される。最初に消費魔力【30】で発動させれば30分間は効果が持続する。10秒で1ポイント魔力が回復すると考えると全快まで5分。つまり魔力満タン状態から25分間は防御力がアップしているという計算になる。

 効果は同じルーンを重複させることで増大していくが、肌には刻める個数がレベルによって決まっており、5レベル毎に1つ増える。装備やアイテムには【ルーン文字用スロット】が設定されていて、基本的にその分しか刻むことは出来ない。


 ふたつめの【オーディンのルーン】という使用方法。どうやらこれは北欧神話に登場する主神オーディンにまつわる神話や伝承にて伝えられるルーン魔術のことのようだ。一瞬から数秒間ほどの時間しか効果が持続しないことといい俺が現在扱っている西洋魔術の呪文詠唱に似ているが、相違点としては、特定のルーンを刻んだ特定のアイテムを用意する必要がある代わりに簡単な詠唱で済むという点だろう。


 三つめの【ルーン文字で単語を作る使用方法】は、要するにルーン文字それぞれに対応するアルファベットをみて、古ノルド語または別の言語(アルファベットに対応している言語。英語や仏語等)の単語を作り、その単語の意味と文字単体の意味の組み合わせが効果となって現れるというもの。

 古ノルド語で刻まれたルーンは強力だが、その分消費魔力も大きく、また現代では対応する単語が不鮮明というデメリットが存在する。

 プレイヤーの多くは英語の単語で代用するらしい。例えば【高速化】という意味の【FASTER】を、靴などの装備にそれらのアルファベットに対応するルーンで刻めば移動速度が増加する。


 対応するルーン文字はこんな感じ↓だ。


【FASTER】⇒【財産:F】【神:A】【生命力:S】【軍神:T】【馬:E】【騎乗:R】


 刻む物によっては、これらのルーンの意味の効果が上乗せされる。それがプラスに働くかマイナスに働くかは実際にやってみないと分からないという。

 ちなみにこの使用方法では文字を刻むと同時に効果が付随して半永久的に持続する。デメリットとしては、物の場合は一度刻むと二度と変更出来ないという点。肌の場合は常時魔力を消費し続けるという点で、体内魔力が【500】で【FASTER】の消費魔力が【40】の場合、常に40引かれ続けるので実質体内魔力は【460】ということになる。


 戦士系の戦闘スタイルを目指す場合は、体内魔力を犠牲にして身体能力を上げることがセオリーとなっているようだ。


「え~、これにてルーン魔術の概要説明を終了する。え~これで諸君らはルーン魔術を行使できるようになったわけなのだが――――え~実際に使う際には【ルーンストーン】が必要なので、ある」


 ――そう、これだ。


 この【ルーンストーン】というものが、今回のダンジョン探索のキモだ。

 ただ扱い方を知っているだけではルーン魔術は使えない。ルーン文字を自分自身で手に入れなければいけないのだ。

 今回、水島たちと行く約束をしているのは、ルーン文字取得専用のダンジョンらしい。攻略サイトによると、未だ全てのルーンを手にした者は確認されていない、とのことから非常に難易度の高いダンジョンであることが予想される。

 昨日取得したタグと、本日新たに取得したタグで、即時戦力になる新呪文を考えたほうが良いだろう。

 そんなことを考えながら講義内容をノートに纏め終わると同時、講義終了の鐘が鳴った。




   ◆○★△




 勉強というものは予習と復習からなる学習を向上心を持って行うことである。

 今回の場合で言うならば、ルーン魔術やこれから行くダンジョンの情報を事前に調べ、準備しておくのが予習。ダンジョンで得たルーンストーンをもって魔術を組み上げるのが復習ということになるだろう。


 ――まずは予習だ。


 ルーン魔術の使用方法は粗方理解した。

 ダンジョンについてだが、ログインする前に見た攻略サイトではあまり詳細な情報は載っていなかった。一般的には19個までルーン文字しか確認されていない、くらいしか目新しい情報はなかった。これについては経験者である水島たちに訊いたほうが良いかもしれないので、現状は保留。

 新呪文については学校での休み時間などを使って色々と考えたものがあるので、後で学園地下迷宮に行って試してみるとしよう。


 ――取り敢えず、今は……。


「へい、らっしゃっせー!」

「寄ってらっしゃい、見てらっしゃい!」

「ポーション安いよ! いっぱい買ってくれたらオマケも付けるよー!」


 スティカレーア学園城下部にある商業区に、俺は来ていた。

 城内というか、城下町のような場所に大きな商店街があるような感じだ。NPCやプレイヤーが開く木造店舗や露店が所狭しと雑多に並んだこの場所は日々その規模を広げている。

 道具屋、薬屋、武器屋、服屋、魔具屋、鍛冶屋、酒場、代書屋、派遣屋、貸金庫屋、理髪屋、股袋屋など、様々な看板が建てられた店を見て廻る。道具屋といってもいくつもあるので何処に何が幾らで売っているのか、何処の店の方が素材を高く買ってくれるのかなどで判断するらしいのだが、今は情報が全く無い。全部を廻る時間は流石にないので、今回は様子見も兼ねて適当に入った店で済ませるとしよう。

 10分ほど歩いて廻り、個人的に雰囲気が気に入った店へと入った。


「おや、いらっしゃい」


 まずは身に纏う装備、ということで【武器・防具屋】と書かれた看板の下のドアを開いて、十六畳ほどの縦長で小さめの店内へと足を踏み入れる。入口の脇の水瓶には何本もの杖が刺さっていて、両脇には棚が並び、剣や盾、杖や魔導書、衣服に胸当て等と分類別されている。

 一番奥がカウンターになっていて、丸眼鏡をかけた線の細い青年――NPCのようだ――が来店した此方ににこり微笑みかけてきた。


「此処は入学したてのノービス学生さん向けの店だよ。本日は何をお求めだい?」


 そうか。自分のランクによっても店が変わってくるのか。

 今回はたまたま自分のランクに合った店だったが当然違う店もあるだろう。これは早々に各店の情報を集めた方が良いか。


 ――ふむ。するべきことの項目に追加しておくか。


 定期的に時間をとって商業区を廻り店の詳細を調べること、とノートを取り出してとりあえずメモっておいた。

 ……よし、それでは本題にいこう。

 本日は昨日のクエスト報酬で得た資金を基に、自分の装備を整えようと思ったのだ。


「えと、武器と防具を一通り揃えに」


 青年店主の問いに完結に答えて、店内を見回す。

 まずは……武器か? しまったな、何を基準に買えばいいのかが分からない。

 武器と一口に言っても、フィリップたちの持っていた指揮棒のような小さい杖から一般的な魔法使いのイメージそのままの腰ぐらいまである長さの杖、片手剣や儀式用短剣、そして魔導書という種類のものがある。


 杖は魔術効果の増大。片手剣は物理攻撃力上昇で魔術的効果は無し。儀式用短剣は魔術効果と物理攻撃力が少ーしだけ上昇。

 魔導書は…………置いてあるのは一種類だけのようだな。


 ――さて、どうしようか。


 本当ならば、今後目指す自分の戦闘スタイルに合った武器を選ぶべきなんだろうが、まだ決めかねている俺はどうするべきか。

 呪文主体ならば杖か? しかし前衛がいつもいるならばともかく、一人でダンジョンを探索することを視野に入れるとしたら剣も使えた方がいいか?


「うーん……」

「お悩みかい?」

「――え?」


 突然、青年店主が話しかけてきた。


 ――驚いた。NPCから話しかけてくることもあるのか……。


「もしよかったら、予算さえ提示してくれれば此方でおススメの装備を教えてあげるよ?」


 なに、そんなサービスがあるのか。

 思ったより悩みそうだし、此処は頼んでみるか。


「……それじゃあ、1000(デーラ)で」

「それは防具もこみで?」

「防具を入れるんだったら、2000Dで」


 昨日のクエスト報酬や素材の買取りで所持金は4000ぐらいある。この後は道具関係を揃えるとすれば精々半分程度の金額で収めたい。


「でしたら――――此方なんてどうでしょう」


 NPC店主は一歩も動かずにカウンターの下から装備一式を取り出した。


 ――四次元カウンター……?


 明らかに異次元な出来事に引きつつも出された装備を見る。


・白紙の魔導書

・茶革のチョッキ

・学生ローブ

・硬革の指貫グローブ


 防具類はこの店では下から二番目くらいのランクか。

 武器は、この店に唯一ある魔導書のようだ。


【白紙の魔導書】

■ステ窓の【魔術タブ】【魔術構築タブ】とノートの機能を扱え、それぞれに記録された情報を共有する。


 ――む、どういうことだ?


 魔術効果に関係する特性は無し。ただ単に学生証とノートの機能を足しただけのもの……なのか? それを装備することでなんの意味がある?


「店主」

「なんでございましょう?」

「この【白紙の魔導書】を薦める理由は?」

「ああ、それは…………カンペ用ですね」


 ――カンペ用!?


 なんなんだ、それは……。


「入学したての初心者(ノービス)さんたちは、まだ詠唱に慣れていない方が多く――――ぶっちゃけ呪文を覚えられないんですよね」


 店主が言うには、様々な用途に使用する呪文を次々と登録していけば、とんでもない数になる。それらを何も見ずに戦闘時など場面局面に合った呪文を詠唱するにはかなりの場数を踏む必要がある。だが、それまでは戦闘中でも呪文を見れたほうが楽といえば楽だろう。


 ――だけど……。


 それならば学生証で事足りるのではないか?

 わざわざノートの機能と情報共有を追加しなくても――――


「……あ」


 もしかして、そういうことなのか?

 なるほど。そのために、なのだったら理解出来る。

 これが出来るならば、確かに諸々とデメリットを相殺しておつりがくるかもしれない。


「店主、これを貰おう」

「はいー、毎度ありがとうございます」


 チャリーン、という音と共に視界端に【-1900D】という表示が浮かぶ。

 そしてカウンターの上に置いてあった装備一式が消えて俺のバッグの中へと収まった。


 ――どうせだから此処で装備しておこう。


 俺は学生証を開き、ステ窓を表示させた。

 装備画面で各部位をタップ、新装備を選択してドロップ。


「よし、っと」


 画面を見直して漏れがないか確認し終え、ひとつ頷いた。




/--------------------------------------/


学生名:カラムス

レベル:4

クラス:ノービス

体 力:130 / 130

魔 力:586 / 586


所持金:1763 (デーラ)



基礎能力

+++++++++++++++++++++++++++

精 神 力:16

魔素変換力:0.102魔力/毎秒

魔術抵抗力:59

魔 視 力:25

魔術 知識:67

魔具 知識:18

歴史 知識:46

神魔 知識:4

+++++++++++++++++++++++++++



装 備

+++++++++++++++++++++++++++

主武装:白紙の魔導書

副武装:無し

服 装:ノービス制服

上半身:茶革のチョッキ

背 中:学生ローブ

右 腕:硬革の指貫グローブ

左 腕:硬革の指貫グローブ

下半身:無し

 足 :革靴

装飾1:無し

  2:無し

  3:無し

+++++++++++++++++++++++++++


【魔 術】【タ グ】【持 物】【魔術構築】

【クエスト】【学 友】

【各種設定】【ヘルプ】【ログアウト】


/--------------------------------------/




   ◆○★△




 その後、道具屋へ行きポーションを買えるだけ買った俺は、待ち合わせ時間まで学園地下迷宮1階で呪文の試し撃ちをしていた。非攻撃的(ノンアクティブ)モンスターであるアサルトロップイヤーは大人しいので練習としては良い的だ。


「ふう。…………!?」


 何十匹めかのウサギを倒したその時、部屋の中心に大きな黒い渦が生まれた。


 ――あれは……!


 つい昨日のことだ。嫌でも覚えている。

 予想通り、再びあのゴツイ腕が渦から伸びてきた。――――兎顔の巨漢、ライカンスロップイヤーだ。


「……っ」


 思わず逃げそうになる足をグッと踏み留まらせる。奴に苦い思い出があり、かつ今は俺一人だ。数で押すことも出来ず、助けてくれる仲間も居ない。

 だが、既に俺は、あの時の俺ではない。たった一日、されど一日。


 ――見ろ。これが今の俺の力だ……!


「【我、魔の法を紡ぐ】……」


 ライカンスロップイヤーとの距離は20m程。奴の感知範囲からは逃れているようだ。つまり、先手が打てる。


「【掌前の虚空に生じし火の玉よ、風を含みて熱く燃え滾れ――――」


 突き出した掌の前に、人の頭より二廻りほど大きな火の玉が生じる。

【風属性初級】タグ取得により扱えるようになった風、つまり大気の流れを取り入れることにより、火の玉に酸素を十全に取り込ませ、より高温なる炎へと昇華させる。


「――其の身を槍と化して()く疾く回旋し――――」


【粗製成形】により炎の形状を槍、というか人の腕ほどの太さの杭のように変形させる。形とは、その物質の特性を表すという。槍という形状には刺す、貫くという特性が在る。つまり、【火属性】に【貫通属性】を上乗せしたのだ。

 更に【事象操作】【事象速度】により高速自転運動を追加。そして、


「――(まなこ)に映る敵へ、颯然と飛び出せ】!!!」


 風を切って飛び出した炎の槍は自転も相まってジャイロ効果を発揮する。ジャイロ効果により軌道が安定。軌道の安定は速度を生み、回転は貫通力を生む。

 ……これが、今の俺の最高の一撃。




 ゴオオオオオオォォォォォォオオオオオオオオオ!!!!




 旋転する炎の槍は高速を以てライカンスロップイヤーへと突き進む。


「ギュ? ――――パグォッ!?」


 先日の火の玉とは速度が桁違いの炎の槍。

 奴が感知して回避行動をとる前に、奴の胸を貫き穿った。




   ◆○★△




 ――行ける。


 俺の研鑽はしっかりと通用した。

 5人で苦戦した相手を、一人で倒すことが出来た。


「…………ふ、ふふっ」


 なんなんだ、コレは。にやけるのが止められない。

 あのウサギ顔マッチョ男を一撃で屠った瞬間。凄く、凄く気持ちよかった。爽快感が段違いだ。


 ――これがMLO。これが、ゲーム……。


 やばいな、確実にハマっている自分が居る。

 いや待て。適度に己を諌めないと大変なことになるぞ。そうでなくとも俺は集中すると廻りが目に入らなくなるタイプだ。これが勉強だったらまだいいが、ゲームに……というのは色々な意味で駄目過ぎるだろう。


 ――それに、今の一撃とて何発も撃てるものじゃないしな。


 呪文が長すぎるうえに、内包する要素も多い分、消費魔力が半端無いものになっている。必須消費魔力だけで【110】もあるのだ。魔力全快状態でも5回が限度だし、連続で使えばすぐに何も出来なくなる。状況によっては一度の戦闘で一回撃てればいい方だろう。


「ん?」


 ピリリリ、ピリリリとアラームが鳴った。ステ窓の各種設定画面でセットしていたのだ。

 水島たちとの約束の時間まで、ゲーム内時間で一時間を切った。そろそろ切り上げて一度事務棟に寄ってから待ち合わせの場所へと向かおう。

 俺は迷宮の出口へ向けて足を踏み出した。

主人公は 『俺TUEEE』 を かみしめた


P.S.

古ノルド語に関する資料が全然無いです(>Д<。)

書店を探すかなぁ……。

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