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合わせ鏡の刻印  作者: 黒糖ナイン
6/8

5 初めての味方

何とも気まずい数分を堪えきった棗が戻った頃には、既に恵は天蓋(てんがい)の下で寝息を立てていた。


部屋の片隅に立つアリアが、小さな声で「入浴の後、間も無くお休みになりました」と教えてくれる。


呑気なものだと一つ溜息を吐いて、棗はアリアに促されるまま浴室へと向かう。


「お二人の世界では湯浴みは一人でするものだと伺っております。ごゆっくりどうぞ。」


広々とした浴槽に恐縮し、早々に入浴を済ませた棗が寝室へ戻ると、アリアの姿は既に無かった。


「……うーん、やっぱり未来の皇妃サマとは扱いが違うんだろうか。」


複雑だなぁ、と首を捻りながら、棗は空いている方のベッドに潜り込む。


「……【鏡の巫女】は、一人だけ……か。」


色々マズそうだなぁ、と毛布の下で丸くなる。


「とにかく、恵と口裏合わせなきゃ。明日は早起きしないと……」


ふあ、と欠伸が漏れる。


目まぐるしい展開に追われ疲労が溜まっていたようで、棗は間も無く眠りに付いた。







「棗が【鏡の巫女】ってこと、内緒にするぅ?何でー?」


寝惚け眼を擦りながら、恵は不思議そうに首を傾げた。


「声でかいよ、恵!しー!」


「もご、ご、ごめん……でも、何でまた内緒だなんて……」


そんなにあの外人さんと結婚したくないの、と笑い混じりに問い掛ける。


呑気な笑顔に棗はどこか理不尽な不満を抱くが、真実を明かす必要は無いと思い直し笑ってみせる。


「……そんなとこ。とにかく、私の事は内緒の方向でお願い。」


「う、うん……でも棗、大丈夫なの?首の痣とか、髪の色とか……」


ぐ、と棗は言葉に詰まる。


「た、多分……」


「……髪、伸びてきたら根元黒くなっちゃうよね?」


「う。」


「メイドさんのお仕事するって言ってたけど、アリアさんみたいに髪くくったら首筋丸見えだよね?」


「ううっ……」


重苦しい沈黙が部屋に蔓延した。


「……さ、最悪の場合は逃げる、しかないかなぁ……」


「どんだけ嫌なの!?」


はぁぁ、と二人の溜息が重なった。


のろのろと制服に袖を通しながら、棗は苛立たしげに首筋を掻く。


「化粧品とかでちょっとは隠せないかな。」


「あー、コンシーラーとかあれば出来るかもね!何で通学鞄も一緒に来なかったんだろ、私持ってたのにー!」


「こっちの世界にそんな洒落たものがあるかどうか……くっそー……」


とりあえず、と髪で出来るだけ隠れるように撫で付けながら、棗は口を尖らせてぼやき続けた。








控えめなノックに応えて朝食を腹に詰め込んだ少女達は、食後の紅茶を啜りながらアリアに問いを投げかけた。


「あのう、私、昨日アーノルドさんに侍女になるよう言われたんですけども。」


「はい、伺っております。ナツメさんの侍女服も既に用意してありますので、後程お持ちしますね。それと、髪を纏める紐は何色か用意させましたのでお好きな色を選んで頂けます。」


いつの間にか「様」じゃなくなってら、と嘆息しつつナツメは苦笑いを浮かべる。


「……ええと、髪って纏めないとダメですか。やっぱり。」


「え?」


キョトン、とアリアは目を丸める。棗の顔をまじまじと見つめ、やがて何かに気付いたようで眉を顰めた。


「……もしかして、そちらの世界では女性が髪を纏めることは禁じられていたりするのですか?」


「……じ、実はそうなんですよ!」


儲けとばかりに棗は頷いた。


こうなったら自棄である。


「どうしましょう、それであれば髪は下ろしたまま……ああ、でもそれでは仕事に差し支えるかも……」


まあまあ、とアリアは心底困ったように呟いた。


罪悪感が覗くものの、背に腹は変えられないと棗は開き直ることを決めた。


「どうしてもダメなんです、髪を纏めたりなんてしたら私気絶しちゃうかも……」


「そ、そんな!そこまで頑なに禁じられているなんて……」


「……棗、あのさ。」


何かアホらしくなって来た、と恵は両手でティーカップを支えたまま溜息を吐く。


「何かな!恵!」


「私は髪を纏めるのよりも、項が見えるのの方を何とかすれば良いと思うんだけど。」


「へ?」


かちゃ、と音を立ててティーカップを置くと、恵はアリアに向き直る。


「ねぇ、アリアさん。侍女服のブラウスの部分って、タートルネックに出来ないのかな?」


「たー、たーとるねっく、ですか?」


困った顔のまま、アリアは首を傾げた。


「うん、こう……顎のすぐ下の辺りまで襟があるような。どうしても髪を纏めなきゃって言うんなら、それでも代用できるんだけど。」


その手があったか、という顔をしている棗に、たまには私もやるんだから、と得意げな顔をしてみせる。


「もしかして、詰襟(つめえり)のことでしょうか……?」


「ああ、それそれ。そんな感じのがあれば。」


うーん、と本格的に首を捻ってしまったアリアを見つめて、二人の少女は息を詰める。


「……あの、侍女服ではそのようなデザインの物はないんですけれども。」


けれども、という語尾に棗は食いついた。


「けれども?」


僅かに言い淀んで、アリアは言葉を続ける。


「従者の服……男性の物でしたら、詰襟になっていた筈です。」


「あ、じゃあそれで!」


すこぶるアッサリと応えた棗に、アリアの目が益々丸くなる。


「あ、あの、でも、男性服ですし……良いんですか?」


「うん、別に。あ、でもサイズあるかな?」


「ええと……多分、大丈夫だと思います。最悪、針子(はりこ)に仕立てて貰えれば……」


アリアの戸惑いを他所に、二人はこれで全ては解決したとばかりにはしゃぎ立てた。


「わー!棗、男もの着るの!良いなーカッコいい!」


「学祭の時の学ランみたいなもんだよねー、あー良かった。それなら問題無さそう。」


「あの時も似合ってたし、見るの楽しみー!」


随分とあちらの世界の常識は奇妙なものだわ、とアリアは心中で呟いた。


「それでは、そのように神官長様にお伝えして参りますわね。お許しを頂き次第準備をして参りますので、もうしばらくお待ち下さい。」


「お手数かけます、アリアさん。」


いえ、と柔和な微笑みを残して、アリアはワゴンを押しながら部屋を後にした。


「……っし、これで当面!なんとか!ね!」


「ホント必死だねぇ、棗。」


苦笑いの恵に肩を竦めて見せ、棗は笑って返す。


「ホント、必死だよ。」


バレたら死ぬんだからねぇ、という本音はごくりと飲み込んだ。













然程の時間は掛からなかったようで、アリアは間も無く戻ってきた。


入り口で礼をして、上げた顔が視界に入るなり棗は嫌な予感を胸に抱いた。


「もしかして、お許し出なかったんですか?」


アリアの表情は曇っていた。


「いえ、神官長様の許可は問題なく降りました。」


「あれ、そうなの?じゃあ問題ないんだ?」


恵の言葉にも、アリアは頷かない。


「いえ、あの……神官長様は、問題なかったんですけれども……」


皇帝陛下が、と続いた言葉に少女達は顔を見合わせる。


「……しまった。そもそも何の為に侍女になるのかをすっかり忘れてた。」


「えっ、何それどういうこと?」


頭を抱えた棗の言葉に、アリアはようやっと頷く。


「はい、あの……やはりそういう趣味なんじゃあないか、と……」


大変ご立腹であるとのことだった。


「違うんだー!!そういうアレじゃないんだー!!」


「な、棗落ち着いて!深呼吸して!!」


「あああの、でもあの、お許しは頂きました!頂きましたので!!」


それならまあ、と棗は顔を上げる。


「お、おいおい誤解は解いていこう……っていうか恵は割かし乗り気なんだから勝手に解けるよね!解いてよ!?」


「ちょ、ちょっと棗ってば……」


恥ずかしそうに頬を赤くする恵を尻目に、棗はアリアに向き直った。


「アリアさん、それで着替えは……」


「あ、ええと、従者の方が今持って来てくださると……」


アリアの言葉が終わるのを待たずに、ノックの音が響いた。


「来たようですね、受け取って参ります。」


足早に部屋を出て行ったアリアを見送りながら、恵は手を振って顔を仰ぐ。


「彼氏にしても良いかな、とは思ったけど、結婚はホント解んないし……大体、まだ一回顔見ただけなんだからさぁ……」


「それ私のセリフだけどね。一回顔見て彼氏にしてもオッケー☆なんてとてもじゃないけど私にはできない芸当だわ。」


「だってイケメンだし。悪い人じゃなさそうだし?」


どこがだ、と棗は嘆息する。


「私アレに殺されかけたんだけど。」


「ご、誤解じゃん?運命の人が何処の誰とも知らない女に誑かされてると思ったらこう、ついカッとなっちゃうとか……あるじゃん?」


「運命の人ってアンタ……」


呆れを通り越して引きつつある棗の気持ちを知ってか知らずか、恵は照れ臭そうに笑ってみせる。


「……いや、正直なところね?何かこう、キュンと来るっていうか……赤い糸繋がってますよ、って言われたらああやっぱりね、ってなる感じ?」


要するに、恵自身もあの翡翠の目を持つ男に惹かれているということだ。


「……アンタが幸せなら良いけど。別に。」


「えへへ、ありがと。何とか棗にも優しくしてくれるよう、私からも頼んでみるね?」


そりゃ楽しみだ、と棗も笑って返した。


「……ところで、アリアさん遅いね?」


「うん?……そうだね、どうしたんだろ。ちょっと見てくるね。」


私も、と立ち上がりかける恵を制して、棗は扉に向かった。


ドアノブに手を掛け、薄く扉を開くと、声量を抑えた言い争いのようなものが聞こえた。


「そんな、一体何をお考えになっているのです!」


「申し訳ないが、僕にもあの方のお考えは汲み取り切れない。しかしこれは王命だ、心苦しいのは解るが僕らにはどうしようもない。」


「でも、それではナツメさんが……あの人が、余りにお可哀想です。」


「……必要最低限にする事は誓うよ。大丈夫、こう見えて結構器用なんだ。」


「……ディーノ…」


不穏な会話に棗は眉を顰める。


奇妙なポーズで固まってしまった彼女を不思議そうに見つめて、恵は声を上げた。


「棗、何で外出ないの?ドア、開かないのー?」


よく通る声は、そのまま扉の向こうにも届いてしまった。


「……っ、ナツメさん!?」


「え!?」


廊下に居る二人の声が大きくなり、棗は肩を縮こまらせて首をすくめた。









「髪を?」


今にも泣き出しそうなアリアの傍らに立った青年が、棗の問いに頷いた。


素朴な雰囲気の彼は、申し訳なさそうに眉を下げて短く刈った紺色の髪を片手で掻いた。


「従者の服を着るのであれば、見っともなく伸ばした髪を短く刈れと。……失礼!皇帝陛下のお言葉そのままであります!」


言葉の途中で剣呑な目付きになった恵に気付いた青年が、大袈裟なほどに怯えた様子で姿勢を正す。


「見っともない、ねぇ……いやまあ、確かにあんまり頓着してないんだけどさ。」


「棗の髪は綺麗だもん!」


はいはい、と聞き流して、棗は肩に垂れた薄茶色の髪を一束摘む。


「まあ、それが条件なら構わないけど。えーと、ディーノさん?でしたっけ。」


「はい。」


なんでしょう、と小首を傾げる青年につられて、棗も同じ方向に首を倒す。


「髪、切るので。ハサミ貸してください。」


それ、とディーノの手元を指差す。


従者の服を持つ手とは逆のそれに、銀色の鋏が握られていた。


「ああ、いえ。僕が切りますよ?こう見えても器用で、」


「お断りします。自分でやります。」


「えっ」


きょとん、と目を丸めたディーノの袖口を引っ張って、アリアが慌てたように口を開く。


「だから、あちらの世界では女性の髪はとても神聖な物だって言ったでしょう!気安く異性が触っちゃ駄目なんです!」


私そんなこと言ったっけ、と棗は内心首を傾げながらも神妙な顔を崩さない。


「で、でも、自分で切るなんて難しくないかな。毛先がバラバラになっちゃうと思うんだけれど。」


「あ、それなら私が切るよ!私も手先は器用だしっ!」


はーい、と恵が手を上げる。


「み、巫女様にそんな事させる訳にはいきませんわ!わ、私が切るのでは如何でしょうか?」


「ええと、申し出はありがたいんですけど……」


「だーから私やるってばー!ほら、それ貸してよ!」


恵が鋏に手を伸ばすも、それを持つ手はすいと引かれて持ち主の頭上高くに上げられる。


「いけません、巫女様!万一貴女の手に傷でも付けてしまったら僕が死にます!」


勘弁して下さい、とディーノは情けない声を張り上げた。


「ナツメさんが良いって言うなら、ご自身で切って頂いて結構です!流石に客室じゃ鏡も心許ないでしょうし、三面鏡のある部屋へ案内しますので!」


「はーい、それでお願いします。」


「ちえっ、美容師ごっこしたかったのに。」


唇を尖らせた恵に苦笑いと一礼を贈って、ディーノは廊下の奥へと歩みを進めた。


「それでは巫女様もお召し物を変えましょう。衣裳部屋へご案内致しますわ。」


「え、私も着替えるの?このまんまでも良いのに。」


「そちらのお召し物も大変お似合いですが、一日中着たきりでは何ですもの。巫女様の為にご用意したドレスが沢山ございますから、お好きなものを選んでいただけますよ。」


「……ドレス?」


ぽかん、と口を開けた恵に、アリアは満面の笑顔ではいと頷いた。














此処です、と示された部屋は、棗が今まで見たどの部屋よりも質素な扉の奥にあった。


「……あれ?」


部屋に一歩踏み入れて辺りを見回してみる。


あまり広くは無い部屋の中央に椅子が一脚置いてあるだけのシンプルな造りだ。


「……ディーノさん、鏡なんか無いですよ?部屋間違えたんじゃ……」


「うん?いや、間違ってないよ。それよりさ、ナツメ。」


突如砕けた口調に疑問を感じて振り向こうとした棗の動きがぎこちなく止まる。


「いった……!」


「薬品か何かで色を変えてるのかい?これ。凄いね、向こうの技術って。」


「……え。」


突っ張るような感覚は、恐らく後ろ髪を纏めて引っ張られているからだ。


じゃり、と音を立てて髪が擦られる。


「ふむ、上から色を乗っけているんじゃなくって、寧ろ色を抜いた感じ?それとも染物みたいな原理かな?」


「いだ、ちょ、待っ……引っ張らないでよ、痛い!!」


「あれ、ごめん。」


痛がるって事はやっぱり地毛なんだね、と付け足してディーノは手を離した。


「……やだな、そんなこの世の終わりみたいな顔しなくたって良いじゃないか。心配しなくても誰にも言いやしないよ、【鏡の巫女】様。」


にこり、と人懐っこい笑顔でそう言い切る青年を見上げて、棗は絶句する。


髪色が地毛ではない事に気付かれた事もそうだが、今の動作で首筋の刻印が見えなかった筈は無い。


咄嗟に首筋を押さえて後退する棗に向かって、ディーノは躊躇いなく歩を進めることで距離を縮めた。


「だから、誰にも言わないったら。何をそんなに怯えているんだい?」


「だっ……な、何で誰にも言わないのよ……」


「何で?」


ふむ、とディーノは考え込むような動作をして見せた。


「……ふ、二人居ちゃマズいんでしょ?【鏡の巫女】って……」


「……神官長に吹き込まれたのかい?」


もう一度、ディーノが笑って見せた。


不思議なことに、先程と何も変わらない笑顔なのにも関わらず、棗は異常なまでの嫌悪感を胸に覚える。


「気にすることは無いよ、アレは只のおとぎ話さ。たかが女一人が増えた所で世界に影響することなんて何も無い。残念ながらそのおとぎ話を妄信する馬鹿しかこの世界には存在しないんだけどね。」


「え……え?えっ、いや、何……」


わざとらしく溜息を吐いたディーノが、棗の二の腕を掴む。


「心配要らないよ、全部自分が……うん?いや、俺だったっけ?……んん、どうにも窮屈だな。」


「え?」


棗の腕を握る手とは逆の掌で、ディーノは自身の顔を覆った。


「ペルソナ」


低い囁きと同時に、ディーノの掌が淡い光を放つ。


ぱきん、と何かが割れるような音を立てると同時に、ディーノの顔が変化した。


「えっ……え、ぎゃあああああ!!」


「うルさいナァ、ちょット、まッて……いたた。」


骨の砕けるような音を最後に立てて、ディーノの手が顔から離れていく。


「ああ、スッキリした。あの顔、地味だから気に入らないんだよねぇ。設定上仕方が無いんだけどさ。」


「ぐ、グロっ……ベキベキ言ってましたけど!どうなってんの!アンタ誰!!」


素朴ではあるがどこか愛嬌のある顔立ちだったディーノの面影は、棗の眼前に立つ男からは一切合財消え失せていた。


妖艶とも言える切れ長の目を細めて、男は笑う。


「ディーノだよ、此処ではね。今のはちょっとした魔法さ。僕にしか使えない特別な魔法だけど。」


「こ、此処では?魔法?え?」


「長い話は好きじゃないんだ。僕は君の味方、それで良いだろ?可愛そうなシンデレラの味方、魔法使いのお兄さん。今はそういう認識で居なさい。」


解ったね、と理不尽に近い距離で囁かれて、棗は思わず頷いた。


「……っていうか、シンデレラってこっちの世界にもその話あるの?」


「おとぎ話は好きでねぇ、色々聞きかじっているんだ。君も知ってるお話があるなら教えてよ、髪を切ってる間にでもさ。」


促されるままに椅子に腰掛け、半ば呆然とした棗の眼前に、鏡が浮いた。


「ほわぁっ!?」


「一々驚かない、これも魔法だからご心配なく。さて、君の懸念は晴れたも同然なんだから僕が切っても構わないね?」


「え?」


鏡越しに、ディーノが片目を瞑って見せる。


「まさか本当に他人に髪を触らせちゃいけない決まりがある訳じゃないんだろう?」


「…………お手柔らかにお願いします。」


ついでに刻印も魔法で隠してあげるね、と告げる男の片手に握られた鋏をちらりと見て、棗は深い溜息を吐いた。


疑わしいことこの上ない相手だが、今は味方と思うことにしよう。


そう決めてしまえば、後はディーノに身を任せるしかすることがなかった。

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