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第十話

ようやく十話を投稿できました。

見てくださってる方ありがとうございます。

さて、十一話からは毎週金曜更新になります。頻度が落ちる理由としてはいくつかあるのですが、とりあえず一話一話をもっと密度がある話にしていきたいので!!

これからも応援お願いします。

「師匠おおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」




その瞬間。




キースさんが言い終わるより早く、


小さな影が一直線に飛び込んできた。




「ぐはっ!?」




さっきまで場を支配していたキースさんが、真正面から体当たりを食らって一歩よろめく。




「ちょ、待っ……! いきなり飛びつくな!!」




「だって師匠が全然来てくれないじゃないッスかぁぁぁ!!」




元気いっぱいの声が、ギルド中に響いた。




キースさんの胸元にしがみついていたのは、小柄な女の子だった。




ぴんと立った獣耳。


腰のあたりから伸びる、ふさふさの尻尾。


陽の光を思わせるような、明るい色の髪。




ぱっと見た印象は、可愛い。


とにかく、それが最初だった。




「訓練場で待ってろって言うから待ってたのに全然来ないし、やっと来たと思ったら接客が入っただの何だので放置するし、見に来たらなんか面白そうなことになってるし! もう何なんスか!!」




「 お前が新技できたから見てくれって勝手に押しかけてきただけだろうがっ……!」




キースさんは額を押さえながら、心底うんざりした声を出した。




そのやり取りを見ながら、僕はふと気づく。




(……あれ?)




もう一度、意識を向ける。




近い。


すぐそこにいる。


それなのに――




(この子も、マナの匂いがしない)




キースさんと同じだ。




目の前であんなに騒いでいるのに、


魔法使い特有の気配が、まるで感じられない。


僕が目の前の2人に釘付けになっていると




その隣で、姉さんが別の意味で固まっていた。




「……きゃ」




「?」




「きゃわ……」




ぽつりと呟いたかと思うと、


次の瞬間には両手を胸の前で握りしめて、ぷるぷる震え始める。




「アトラ、見て。耳。しっぽ。え、待って、可愛すぎない? ちょっと撫でたい。いやかなり撫でたい」




「姉さん、声が漏れてる」




「だってしょうがないじゃない! あんなの反則よ!!」




キラキラした目で獣耳の少女を見つめる姉さんに、僕は小さくため息をついた。




その間にも、少女はキースさんの腕にぶら下がったまま、ようやくこちらに気づいたようだった。




「ん?」




くりっとした目が、僕と姉さんの方を見る。




「お、新人さんッスか?」




「……たぶん、そういうことになるのかな」




僕がそう答えると、少女はぱっと表情を明るくした。




「へぇー! なるほどなるほど! だからこんなに騒いでるんスね!」




そして、キースさんの袖をぐいぐい引っ張る。




「師匠、この人たちずいぶん強そうな新人ッスねー?」




「誰が師匠だ」




「え、師匠は師匠ッスよ?」




「やかましい」




短く言い返しながらも、キースさんは少女を振り払わない。


その様子を見る限り、本当に顔見知り――というより、かなり近い関係らしい。




さっきまでの殺気立った空気など気にも留めず


少女はにこっと笑って胸を張った。




「初めましてッス! リィナって言うッス!」




元気よく名乗ってから、


ぱっと僕たちに向かって片手を振る。




「よろしくッス、新人さん!」




その笑顔は人懐っこくて、


場違いなくらい明るかった。




でも。




その明るさの奥にあるものが、


周囲の空気をまた少しだけ変えた気がした。




キースさんは、深く深くため息をつく。




「……よりにもよって、お前まで来るか」




「いいじゃないッスか。なんか面白そうだったんで!」




「面白そうで来るな」




「無理ッス!」




言い切る少女――リィナさんを見て、


姉さんが僕の袖を引っ張った。




「ねえアトラ」




「うん?」




「可愛い」




「それはもう、さっきから分かった」




「あと、なんか……強そう」




その言葉に、僕は小さく頷いた。




「うん。たぶん、すごく」




マナの匂いがしない。


でも、弱いわけがない。




むしろ逆だ。


キースさんと同じ種類の、けれどまた少し違う圧が、この人にはあった。




リィナさんはそんな僕たちの反応を楽しむみたいに笑ってから、


キースさんの顔を見上げた。




「で、師匠。この人たちどうするんスか?」




「今まさにその話をしてたとこだ。」




「なるほどなるほど。でも並の実力の人じゃ相手はつとまらないと思うッスよ?」




「お前がそう言うってこたぁ……」




その時だった。




後ろで、誰かがぽつりと呟く。




「……拳聖」




空気が、変わった。




ざわめきが広がる。




「おい、あれってまさか……」


「史上最年少で"七聖"入りしたっていう……」


「いや、でもこんなとこにいるわけ……」




僕は、目の前の小柄な少女を見た。




姉さんも、ぴたりと動きを止めている。




キースさんは、面倒くさそうに頭を掻いたあと、


諦めたように口を開いた。




「……紹介しとくか」




そして、親指で隣の少女を指す。




「こいつはリィナ。この世に七人しかいねぇ『七聖英雄(グランシャリア)』の一人――今代の“拳聖”だ」

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