第一話
第一話から第十話まで毎日更新します。
初めての作品なので温かい目で見てもらえればなと。
――出会いは、雨降る森の中。
寒かった。
雨に濡れたせいもある。腹が減っていたせいもある。
でも、それだけじゃない。
心まで冷え込んでいたんだ。
せめて雨をしのごうと、森の奥にある大きな木を目指して歩く。
その根元で――僕は見つけた。
ひとりのニンゲンを。
眠っているようだ。服はところどころ破れているが、息はしている。
(……ちょっとだけ。ほんの少しだけ……)
僕はそっと、彼女のマントの中へ滑り込んだ。
「あったかい……」
⸻
「……ん」
うっすらと瞼を開ける。
(また、あの夢か……)
彼女と出会った最初の日。
最近この夢ばかり見る。
(……やっぱり、探しに行きたいな…)
胸の奥で、ずっとくすぶっている。
彼女――魔女の痕跡を探したいという気持ちが。
どこかに、ほんの少しでもいい。
彼女が生きていた証が残っているかもしれない。
……もしかしたら、今も新しい魔法を生み出して、どこかで生きているかもしれない。
(あの人は、そういう人だったから)
できないことでも、できるまで挑み続けて、笑ってるような。失敗を恐れず、何度でも。
「…話してみるか。」
と呟いたところで――
「――あら? 今日はもう起きてたのね、珍しいじゃない。アトラ。」
枝葉の隙間から顔をのぞかせるのは、姉さん――キャトラ・フェーレース。
両手を腰に当てて、ちょっと意外そうな顔。
「うん、夢見ちゃって。」
「偉い偉い。でもご飯が冷める前に来てくれるともっと偉い!」
「はいはい、今行くよ……」
ため息を吐きながら、掌を木の幹にかざす。
魔力を練り、風を纏う魔法を起動。
足元に一瞬だけ淡い緑色の魔法陣が浮かび、ふわりと体が軽くなる。
そのまま、木の上から地面へ――
風に乗って、静かに着地した。
「魔法、ほんとに綺麗よね……」
キャトラが、ちょっと見惚れたような声でつぶやく。
「姉さんだって使えるじゃん。俺より魔力量多くなっちゃったし。」
「そうかもしれないけど、魔力操作ならアトラの足元にも及ばないもの!」
そう言ってから、姉さんは僕の袖をつかんでぐいっと引っ張る。
「ほら、行くわよ。ご飯冷めちゃう!」
「今日のご飯、なに? 魚? 魚がいいなあ」
「……あんたほんと、魚好きよね」
キャトラが笑って振り返る。
「魚が好きで、昼寝も好きで……って、あんた猫みたい」
その言葉に、僕は思わずピタリと足を止めた。
――ギクッ。
(……猫、か)
口元に浮かぶ笑みをごまかしながら、僕はそっと、キャトラの後ろをついていく。
姉さんは知らない。
僕が昔、魔女の飼い猫だったことを。




