一つのコップ
とある雑貨屋で、
「これカワイイ♡」
琴音がマグカップを前に笑顔で話す。
『ん?良いんじゃないか?』
どれ、と覗き込み賛同する男性。
「これにしよ!」
琴音はピンク色のチェック柄が入ったマグカップを手に取り、足取り軽くレジへと向かうと、
「お願いします!」と、店員にそれを渡す。
『次は割るなよ(笑)』少し笑いを帯びた声に重なって
[ありがとうございます〜。ご自宅用ですか?]
と、店員が言う。
琴音は笑顔で「はい!」と答えた。
可愛らしい紙袋を受け取り、雑貨屋を後にする。
時計をチラと確認した男性は、そろそろ休憩しようかと考え、優しい声色で琴音に話しかける。
『少し休むか。そこのカフェ入るぞ。」
と店に向かった。
店の前に行き、看板のメニューを見ながら、
幸せそうに「美味しそう」と目を輝かせる琴音。
「苺食べたい。」琴音はそう言いながら店内へと歩く。
『苺好きだな〜』男性がそう言うと、琴音は少し微笑んだ。
店内に入ると店員がこちらに気がつき話しかける。
[いらっしゃいませ〜!お好きなお席にお座りください。]
二人が窓側の席に向かい合って座ると、店員が水の入ったコップとおしぼりを置く。
[お決まりになりましたら、ベルでお知らせください。]
軽く会釈をすると、店員は[失礼します。]とキッチンへ戻って行った。
琴音は嬉しそうにメニューを広げて、
「何にします?」
「青司さん。」
目の前の男性に問いかけた。
用意されたコップは、"一つだけ"だった。




