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トレント襲来

「もうすぐポイントAですね!」


 飛空艇の窓に表示される文字にもすっかり慣れたようで、セレスティアが楽しげに教えてくれた。


「だね。今日も黄金リンゴのヨーグルト、楽しみだな」


 と言いつつ、眼下の樹冠を臨む。今日も美しい緑だと感じ入っていると、異変に気付いた。


「なんか、枝の一部が異様に膨れてないか?」

「あ、確かに」


 エレノアも目ざとく異変を察知した。


 上陸し、膨らみに近づく。


 すると、突如として膨らみは人の形を取り、白い鎧を纏った戦士が現れた。


「あなたは……」


 どうやらセレスティアの知り合いのようだ。まぁ、この白い鎧には、俺も見覚えがあるけど。


「ルーライ教会聖八武天が一角、トレント族のアデオダトス殿ですね」


 トレント族ということは、いわゆる樹人か。歩く樹木が何の用だ?


「巌の聖女様に覚えて頂けていたとは、光栄ですね」


「私は聖女の地位から下りました。もう、私のために働かなくて良いのですよ?」


「何を戯けたことを」


「え?」


「お前を殺さねば、次代の【巌の聖女】を擁立できないのだ」


 そういうことか。全く、聖女の近衛騎士が聖女を消すために動くようになるとは、世も末だな。


「ルーライ教会の総本山、シグニフィカティウムは既に陥落した。もう一人としてお前を崇める者はいない。私はイザニコス派から次期聖女を出すため、戦うのみ」


「じゃあ勝手に聖女を名乗ればいいんじゃないの?」


 身勝手な言い分に、俺は思わずそう言い返していた。


「【巌の聖女】の権能は前任者が死なねば受け継がれない。私が欲しいのは聖女としての祖の能力だ」


 そういうことか。


「清々しいほどにクズだね。どれ、俺が手ずから相手してやるよ」


「いや、ここは私がやるよ、クロード。さすがにこの扱いには、我慢ならない」


 俺が重い腰を上げたというのに、エレノアはそれを差し置いて名乗り出た。よほど怒り心頭と見える。


「元剣聖エレノア・アイレスフォードか。相手にとって不足はないな」


「どうかな」


 エレノアは抜剣し、名剣レディレイを構える。


「相手にするには過分だったと、後悔することになるぞ」

「言ってろ」


 刹那、アデオダトスの剛腕がエレノアに迫る。


 だが、その太い腕は瞬時に根元から刈り取られていた。目にも留まらぬ剣技。さすが剣聖と言ったところか。


 足元からも、触手のようにうねる枝が何本も生え、エレノアを刺し貫かんとする。

 が、さすがは元剣聖。速い。全てを回避し、根元から切り落としてみせた。枝の先端に鋼鉄の鎧を纏わせ、攻撃力を上げていたようだ。だが、当たらなければ意味はないな。


「【エクスプロードエッジ】」


 エレノアはアデオダトスの右目に剣を突き刺し、切っ先から爆炎を放った。


 樹人とはいえ要するに木材。内側から焼かれてはひとたまりもないだろう。


 だが、さすがは歴戦の近衛兵。火の回った部分を捨て去り、無事な部分だけ切り離して逃げ出した。さすがの判断の早さだな。


「聖八武天の質も落ちたね。最近のはこんな腑抜けしかいないの?」


 もう逃げるとは、根性が足りないな。聖女を殺すんじゃなかったのか?


 戦場で相対した聖八武天のメンバーは、それなりに強く、気骨もあった。東方まで攻めてきたので、俺たち一族で迎撃したやったこともあったな。もっとも、その時攻めてきた奴らは皆殺しにしてしまったので、こんな雑魚しか残っていないのかもしれないが。


「俺たちに喧嘩売っといて、逃げられると思ってるの?」


 俺は右掌を広げ、【蔵造り】の異能を発動させる。


「【四刻満ちれば将倒れ、六刻満ちれば国滅ぶ】――【四刻剣】!」


 たちまち剣の形をした【蔵】が錬成される。文字通り、周囲の魔力を四刻(8時間)に亘って吸収させた剣だ。まともに食らえば人間など、数十人単位で消し飛ぶ。


 剣を振るうとともに、溜め込んだ魔力が解放され、爆炎が樹冠を覆った。


 アデオダトスの悲鳴が聞こえる。


 聖八武天なら強力な防具も持っているだろうし、トレントの再生力なら生き残れるだろう。


 そう。


 奴には生きて帰ってもらわなければならない。


《クロードの飛空艇に近づけば、タダでは済まない》という情報を持って。


 できれば、神聖なる世界樹の樹冠でボヤ騒ぎなど起こしたくはなかったが。


「あーあ、せっかくの黄金リンゴが台無し。でもまぁ、何個かは焼きリンゴとして残っているみたいだし、いっか」


「呑気だねぇ」


 エレノアがそんな指摘をしてくるが、いちいち深刻になっても仕方がないだろう。


「もう、私の味方はいないのですね。皆が私の命を狙っている」


 セレスティアは落ち込んでいるようだ。


「それは地上での話でしょ。空の上は自由だ。それに今は、俺たちという味方がいるじゃないか」


「そう……ですね。空に居場所があるなら、それでいいのかもしれません」


「それでいいことにしちゃいなよ。あ。っていうか、教会に航路が割れてるってことは、ルート変更しないとじゃん。面倒くさいなぁ」


 俺おそらく世界樹の樹冠に立ち寄っていること以外はバレていないはずだが、「ポイントA」は別の場所に変更だな。


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