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第六話 イチャイチャとバックストーリー

水色と白色のタイルが広がる風呂場の扉を開ける。


「ここが浴槽だ」

「おー!! これ水の魔法が放てるぞ!!」

「それシャワーだよ──って俺に掛けるなぁ!!」


 スズランがシャワーの蛇口を思いっきり捻り、それを俺に向けて放つ。

 水の光線が心臓部に当たる。

 いや、水とは言え、殺意が高い。心臓部を狙うな、暗殺者か?

 ……冷たい感覚を覚える。


 よくも制服を……こっちもやり返してやる。

 手桶を握り、熱いお湯を入れて水の斬撃を彼女にぶつけた。魔王に10のダメージを与えた!!


「熱いのじゃ!! このぉ!!」

  

 スズランも乗り気な顔をして、再びシャワーを発射する。

 ったく、急に始まったなこりゃ。

 でも良い、面白い。とことん付き合ってやろう。


 *


 水合戦が終わった後、スズランの魔法によって服を乾かした。

 魔法って本当に便利だ。  

 

「なるほどのぉ。大体、この家の間取りは把握したのじゃ」

「……やっぱりあの世界の魔王城と比べてめっちゃくちゃ小さいよな」

「まぁ、そうじゃな。でもこれもこれで悪くない」


 海月兄さんとの話の後、俺とスズランは家の間取りについて説明をしていた。

 冷蔵庫や水道の蛇口、数多くの驚きが彼女を襲いながらもワクワクの表情を変えずにいた魔王である。


 ところどころ「魔導具かの!?」、と言っており、面白い反応が色々見れて面白い。

 あの世界は西洋ヨーロッパの時代だから、電気を使って動く機械がある今の時代はどれも彼女にとって新鮮なのだろう。


 しかし、まぁ、魔導具とスズランが言った通り、あの世界も言うて、水道や自動ドアとかを魔法によって自動で動かして使う技術──魔導具と呼ばれる物が活躍していたから、魔物がいるところを除けば、似ている感じがする。

 

「この世界は平和なのじゃな」

 

 スズランがリビングに置かれているテレビに向かってゆっくりと歩み、目を細めて呟く。  

 テレビにはニュースの映像だろうか、子供達が公園を笑顔で走り回る姿が映し出されていた。


「まぁ、それなりには平和だよ」

「そうか……」

「……俺はあんまり知らずにプレイをしていたが、そもそもあっちの世界ってそもそも何で人間と魔物が争ってたんだっけか」


 あのゲームって確か前置きも無く始まるものだから、いまいちバックストーリーがわからないんだよな。

 俺の問にスズランが重く口を開く。

 

「単純じゃよ。わらわの家族──先代の一番古い魔王が魔物を創り、世界へ放ったんじゃ。元々はわらわの家系は弱小国家の王族で、突然発生した自然災害に作物が不作になり、多くの民が泥沼へ落とされてしまったのじゃ。そこで困った先代の魔王──原初の魔王に人間として覚醒した魔王が始めたんじゃ」

「そんな過去があったのか」

「うむ、お主にとってあの世界は本のように創り物の世界かと思っておるが、わらわ達は普通に生きているんじゃよ」

「……スズランは魔物をバンバン倒していた俺を恨んでいないのか?」

「全然恨んでないぞ。あの世界にいる魔物はわらわ達から見てみれば、全く違う存在って言う認識じゃからな。自我を失い、見境無く人間を襲う者、アイツは生きていない。生物と言うのが怪しい。つまり、わらわ魔族は二つあり、自我を持ってるやつと持ってないやつがいるわけじゃな」

「へぇ、自我を持っている魔物は人間見つけても、『ひゃっはー人間だぜー』って襲わないの?」

「まぁ、大体はそうじゃな」 


 彼女の目線が俺の目元を見つめる。

 そう言えば、魔王スズランってゲームで会ったりしても、一切、街を破壊したりしてなかったような。


「わらわ達がお主達に本当に申し訳ない気持ちを持っているのじゃ。わらわの魔族が勇者のいる街達を侵略してしまったのじゃから」

 命の重さは一番わらわが知っているのじゃ


 ふと記憶を蘇らせてみる。

 そう言えば、スズランって街にやって来た時とか人を襲ったりしていなかったよな。

 

「……てか、スズランってあの街に来ていた理由って」

「わらわは世界中に散りばめられた魔物を止めるために動いてたんじゃよ。魔力で創られた偽物の存在である魔物を消したいんじゃ」

「そうだったのか」

「だから、早くあの世界に戻りたいのじゃ」

「でも……帰り方が全く──」

『分からないんだよね』『分からないのじゃ』


 声と顔を合わせて、同じ言葉を放つ。

 音の波長が絡み合い、シンクロする。


 ゲームの世界でも、あの世界は生きている……か。

 ゲームのストーリーでは知り得ない魔物側のバックストーリーがあるとは、思いも知れなかった。


 ていうか、このゲームを作った人がこんなことを知ったら、目ん玉が飛び出る程、驚くだろうな。


「現実に貴方の作っているゲームのキャラクターが内にいます。証拠は魔法が使えますよ」、って言ったら凄いことになりそうだ。


 ……そんなこと言ったら、ゲーム会社だけじゃなくて世中が大混乱になるか。


 …………ゲーム会社……あれ、あのゲームの制作会社って何処だっけか。

 そもそもスズランの登場しているゲームソフトとの出会いって記憶に無いんだよな。


 気づいたら、コントローラーを握ってスズランと遊ぶのを毎日していたというか。

 不思議だな。


 疑問に思い、スマートフォンを起動してゲームの名前を検索する。


 えぇと、ゲーム機器のRG-45のソフト、「この魔王が倒せないのだ!!」、制作会社と。

 画面を巧みにタッチして検索してみるが、結果は残念何も無し。

 ……ったく、またかよ。


 何で制作会社が無い?

 結果から考えるに、このゲームのは個人制作したゲームだったってことか。


 前に説明したことがあるが、RG-45と呼ばれるゲーム機器では、ゲーム制作会社の配布しているゲーム制作ソフトを使って個人でゲームで制作できる。

 そしてその作ったゲームソフトは自由にRG-45で遊べるのだ。


 ゲーム会社が作った説と個人が作った説の二点のパターンとインターネットに一切情報が無いから、これは個人が作ったゲームなのだろう。


 スズランがこの世界に帰す方法……正直に言えば、そんな超常的で非日常的な現象をどうにかするなんて無理があ──


「──ご飯だよ」


 綺麗な低音の声。

 スズランと俺が後ろを振り向いてみれば、白色のエプロンを着ている海兄さんが立っていた。

 両手に別々の料理が乗せられたお盆を持っていおり、香ばしく食欲を誘う匂いが鼻腔を擽る。


 すると、横にいたスズランがキラキラと目の色を変えた。

 じゅるりと言う音を口元から垂らす。


「お腹空いたのか?」

「うむ!!」

「普段は色々と強がりなのに、食事は欲望のまま行動をするのだな」


 ……詳しくことはまた後でスズランと話し合ってみるか。

 ゾンビのように食べ物の匂いに釣られてフラフラと歩くスズランの後ろをついて行く俺であった。 

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