踊る社員
ジャンジャン! シャカシャカシャカ! カチャカチャ!
座っていた椅子から立ち上がれ、机の上登ってその上に立ち、リズムに乗って踊りだせ!
沈黙してた人も、饒舌な人も、太っている人も、痩せてる人も、女も男もそれ以外も、踊れ!
今ある命の喜びを知れ!今尚ある自由の重みを知れ!
そして喜んで踊れ! 狂った様に踊れ!全てに感謝しろ!
どうだ? 何かのネジが取れたか?
目から鱗は落ちたか?それか何か違うものが落ちた気がするか?
プライドか?自尊心か?そんなの君達に残っているとは思わないけどね。
なんで俺がこんな目に?いや、なんでお前ら程度の人間がこんなことに遭遇しないと言う確信が持てた?
自業自得じゃないのか?今ある現実は実は全て自分由来だぞ?
何か取れてくれよ? 頼みますよ?
ハハハ、涙が止まらない!
今だ理由も知らない人生を通して流れる涙は、今も止まらない。
「お前!こんな事をやって何になる?後から弁償してもらうからな!」
と何処かの「部長」と言う権利を得た、犬の様行いでな禿げて老いぼれてる猿がその愚かさを誇示してくる。
誰かの通告でも受けて駈歩で歩いてきたのだろう、手はまだドアの取手を掴んでおり、けど状況確認もせずまずは怒鳴ったアホである。
どういう人にはこう叫ぶ、
「黙れ!」
そして
バキュン!
あっさり禿げ猿は死んだ、一発で、「ドキュン!」とその頭上に穴が空き、彼の髪の毛の様に二度と帰らない者となった。
地面に倒れた汚い自分死体を眺め、驚く位なんにも感じない自分がいる。
淀んだ赤黒い血液が地面の窪みに辿って滲み出し、生きている証の鼓動はその生命と共に何処かへ沈んで行く。
彼の細胞の最後の嘆きが、ピクピクと言う、何とも気持ちの悪い動きに化した。
この世界で暮らしてた俺は、肉体でない何かがもう既に拳銃より強い何かに虐げられこの目前の死体より悍ましい物となったのだろう。
騒ぎ始める同僚たち、頭を抱えて泣く人もいればそのまま膠着する人もいる、その音は俺の耳を汚染し、風景は目を汚染する。
汚らしい、自分も、ここのいる全部も。
けど、ここにいる一人一人が望んだ結果がこの現実。
歓喜するべきだろう。
「踊れ!!!! 死にたいのか??!」
そしてまた踊りだす社員たち、誰もが体を揺らし、捻り、そして泣くよりも醜い顔をしている。
赤色と紫と黄色と灰色とグレーを混ぜたような、気持ちの悪い表情をシている。
ここでは優秀な人も、凡庸な人も、高学歴でも、経験豊かでも、先輩も後輩も肩を並べ各々のデスクの上で踊る、むしろ普段より公平な不現実さ。
滑稽な現実はいつだってどこにでもある、これは変えられない事実に過ぎなかった。
不満だと嘆いて欲しいと言って、手に入らないだろうと絶望していた物はいつも彼らと隣り合わせだった。
俺が今この時点で拳銃を持って来なくたって、拳銃に怯えるこの人達のざまはいつだって事実としてあった様に、ただ今まで起こらなかっただけにすぎない。
不自由なんてなかったんだよ、同僚達!
そしてなんて自由なんだ! 同僚達よ?
俺が拳銃をもって来なくっても君たちはその机の上で踊れた様に!
この現実は何1つとして、あなた達が欲しくなかった物は現れない!
そして次だ、
「漏らせ!」
「おい!それは流石に!何が目的なんたよ!勘弁し……」
バキュン!
また一発で人は死ぬ、自分の命を怠惰に弄ばれた物は、死んだ様な物何だから、何1つ変わっていない。
同僚がまた一人無くなった、25歳になる男、家には妻も子もいる。
25年かけて妻も子を作り、様々な資格を取り最終的にここに至った人である。
顔もよく、身長もそこそこ高い、けど自分が不自由だといつも嘆いていた、そして今鉛に負けた。
さて、こいつの25年は一体何の為にあったのだろうか?
無実の女を孕ませ、無実の子供を父親無き子にさせる為だったのか?滑稽な現実だ。
さて、彼は一体どんな怠惰に負けて俺に殺されたのだろう?それは一体本当に俺が殺したのだろうか?
ポチョン
水滴が滴る音、誰からの尿が机に垂れ、そして机から地面に落ちる音。
最初に漏らしたのは死んだ男の隣にいた女、しかし命令したから漏らしたのか、本能のままなのかは知らない。
「遠藤さん……」
女が漠然とした顔で机から落ちた男の死体を眺めて呟いた、その目に映る感情には世間からの言う罪であった。
その彼の最後はある女子供を泣かせるかも知れないが、ある女は罪から開放され、生まれるべきでなかった子供は生まれないことによって親の罪を背負った苦しみの人生から開放された。
一人漏らせば、もう一人、死にたくない故の恐怖の同調が始まる。
小さくないオフィスに強いアンモニア臭が漂う、そして何かの固定観念の外れる音が聞こえた様な気もしる。
「止まれと言ったか?」
何とも言ってないのに同僚達は踊りだす、自分の尿の上で「ピッチャピッチャ」と音をさせながら。
言わなくてもできた、”良い従業員、良い人達”だ。
別に誰も自分のツボを脱いて下に尿をしちゃ行けないとは言ってないのに、ましては踊れとも言ってないのに、全員が理解シたつもりで服従した。
あー 臭えー、なんで漏らせなんて命令したんだけっけ?
結局これを弱い者が弱い者を虐めてるだけ、後から来る警察も弱いものが先に来る。
何にしてんだっけ?
ていうか、なんてこいつら拳銃を持っただけの俺に従っているの?見てわかる様に六発だけだぞ?
なんでこれが違法なんだろう?銃より強いものはあるじゃん?
「後言い忘れてたんだけどさ、お前らにさ最初付けた足首の奴覚えてる?あれ爆弾、踊らないと踊りを止めたその1分後に爆発する爆弾。警察とかが下に溜まっているけど、警察が来ても踊らないと死ぬよ。」
俺は微笑みながら言った、そしてオフィスのカーテンを開け、窓も開け、拳銃を外の警察達にぶん投げた。
最初は多分爆弾かなにかだと思って素早く警官全員避難してたが、後々戸惑いながら動いてた。
連絡をしてる素振りを見する警官立ち、空のヘリはこっちをレンズを向けひたすら映すだけ。
そして警察が押し寄せるのに時間はそう掛からなかった、全員が束になってもう既に跪いている俺を更に地面へ叩きつける、だた俺はその前に自分を鎖でオフィスの柱に繋いでいた。
横には状況を見ても尚ブルブルと震えながら踊っている社員達。
どうしても最後までこの場を見たかった。
五分程立つと、社長と警察のお偉いさんらしき人はオフィスに入ってた。
二人ともまず地面に抑えられている俺を睨みつけ、後にまだ踊っている社員達に顔を向けた。
「事情は承知しました、この警察署長の名に賭けて皆さんは助かると保証します、爆弾処理班は後三分に到着するそうです、その時まで後ちょっとの辛抱です。」
警察署長は踊る社員にその後も様々なコミュニケーションを取り続けながら、周りの警察に合図を送る。
そして社長はその場からすぐ離れた、しかしその前にこう言った:
「皆さん踊り続けてください、この場合爆破して損害が出た場合損害賠償請求はそちらに行く可能性がありますので。」
俺はニヤリと笑った。
ハハハ!拳銃より強いものなんていっぱいあるじゃないか?!
なのに拳銃にはいやいや服従し、違法だと駄目だと語る!
滑稽。