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04 お嬢様と元神童

「ねぇ、お前、なんと言った?」


 色々あったがなんとか入学を果たした次の日。あのあと早速仲良くなった4人は、皆でやったら怪退治も楽しいかも〜とか話していた。が、それを聞いていた大獅が早速任務を入れたのだ。いや、それはよかったのだ。今の今まで、皆ノリノリだったのだが…


「やから、S2級怪魔の退治お願い」

「はぁ?一年組にそれはありえないだろう!!しかも今年は人数が少ない上に半分がパンピー上がり!無理に決まってんでしょうが!!!」


 そういうライカに指をさされた勇翔と廻流はというと…


「S2級怪魔ってそんなに強いのか?」

「たぶんめちゃ強め。ファン界の階級ってたしか下から順にE級、D級、C級、B級、A級、S1級、S2級、S3級、U1級、U2級、U3級、US級だったと思うけど……あれ?言われてみれば普通くらいか?」

「んなわけないでしょ」


 そう突っ込むのはイダ。


「そうなのか?でも、階級的には真ん中くらいじゃん」

「だから、それが強いって言ってるんだよ」

「あぁ、良くわかんねぇ」

「廻流……はぁ、そもそもね、ファントは学生の間にS(スーパー)級になれたら万々歳なの。僕かってまだD級だし…んで、分かる?僕達一年組。僕やライカみたいにファント家系で生まれ育った人間も、一応階級はあるし任務もこなしていたけど、本格的なことはしていないから実質ファント1年生みたいなものなんだ。そんな!僕達に!S2級の任務を!与える先生(コイツ)は!馬鹿なの!」

「うわ、急にイダも怒り出したやん」


 当たり前である。


「んなの、死んでこいって言ってるのと同じだろうが!!」

「……なるほどな」

「げ、それ聞いたらめっちゃ嫌になってきたんだけど……」

「まぁ、人の話は最後まで聞くもんやで」


 大獅がちょっぴり殺気を発する。

 

「「すいませんでしたぁ!!」」


 昨日のせいで大獅の殺気は皆にとってトラウマだ。 それとは比べ物にならない程に弱い殺気とはいえ、怖いもんは怖い。


「元気でよろしい。…んで、怪魔退治の話やねんけど、S2級お願いする目的は、ボクが個々の実力を知りたいってのと、お前達に自分の実力を理解してもらうことや。今どこまでできて何ができひんのか。それを知るために相手は強めに設定してん。ほら、相手弱すぎたら全力出す前に倒してしまうやん。それやと意味ないんよね、今回は」


 昨日行った実力試験は名前に反して個人の実力が測れるものではなかった。では何故行ったかというと、入学者の中から規格外をあぶり出すためである。極々稀にいるのだ。入学時から既にS(スーパー)級やU(ウルトラ)級の実力を持つやばい奴が。例えば、大獅。彼はファン学に入学した時点でS3級だった。また、地位が低めのファント家系なんかはファン学に入学するまで階級が与えられない。そういった子供の中にもたまに規格外がいるのだ。この場合、本人も自身が規格外だということに気がついていない場合が多いので、まさに隠れ規格外。極端に強い殺気を浴びせることでそういった者をあぶり出し、把握することでやっと生徒達の教育方針をどうするかを決められる。先生も大変なのだ。ついでにその後のはあの三年がやりたがったからやらせただけ。意味は何もない。


「それに安心し。これは授業の一環やからボクもついていくし、いつでも助けられるところにおるから、お前らは絶対に死ぬことはないで」

「そ、それなら…」

「てなことで、時間ないしはよ行こか!いや〜変なとこで時間くってもうたわ」 

「は?待っ、ちょっ!」


◇◇


 そうして、大獅が運転する車に乗って森に来た一年組。


「…ん?森?」

「森だな」

「どっからどう見ても森だぞ」

「うん、森っ森」

「イダ、森っ森ってないやねん」

「めっちゃ森」

「そのまんまやな」

「で、任務場所って……」

「この森やな!」

「ゲ、森嫌なんだけど…」


 虫とか野生動物とかいるじゃん、と愚痴をこぼす勇翔。実は勇翔、前世の頃から蚊一匹殺せず、部屋の隅に蜘蛛の巣を見つけると泣き叫び、毛虫が出ると気絶する程の虫嫌い。森なんて入れるわけなかった。が、前世で虫嫌いがバレたとき盛大に揶揄われた記憶がある。今世ではイジメられないようにすると決めているためそのことを言えず、だが本気で無理なため、遠回しに伝えようとしたのだが…


「単独任務の時に任務場所が森やったらどうすんねん。断られへんで。そういうのは早めに慣れとくのが吉ってもんや。ほら、ボクここで観てるからはよ行き」


 勇翔の願いも虚しく、大獅によって森に押し込まれてしまった。


〔虫なんぞに怯えることないだろうが〕

(皆がいる状況で話しかけないでもらえます??応えられないんだけど…)

〔無視するな……シュン〕

(シュンじゃねえよ)



 大獅もシツも許さねぇ。そう決めた勇翔の顔は青白かった。だって虫いるんだもん。


「ん?ちょっと止まって」 


 森に入って数分したとき、イダが急に声をあげた。


「どうした?」

「…これ、二手に分かれたほうがいいかも」 

「理由は?」

「A級くらいの怪魔が2体いる」 

「事前情報と違うじゃねぇか」 

「黙れ下僕1。何も違わない。おそらく任務対象の先天魔術が分裂するものなのだろう」 


 下僕1と呼ばれた廻流は少し不服そうな顔をしながら、頭の中にある疑問を解決することに努めた。


「先天魔術ってなんだ?」

「「…………はぁ?」」


 ライカとイダがハモった。勇翔は苦笑い。いや、勇翔とて先天魔術という言葉を詳しく習ったわけではない。大獅の質問のときに答えなくて済んだのもそのためだ。だが、大まかには理解している。魔術は一般人でも知っているはず。なら、言葉の並びから分かるだろう。先天的持ちうる魔術だと。


「……ファントは魔術を使い怪妖と戦う。その魔術には先天魔術と後天魔術の二種類があるのだ。先天魔術は産まれたときから無条件に使える魔術のこと。後天魔術は練習し習得したら使える魔術のことだ」

「なるほど…理解した。ありがとな」 

「パンピー特典で教えてやったまでだ」 

「じゃあ、イダは索敵できる先天魔術ってことか?」

「そうだけど……なんで後天魔術じゃないって思ったの?」

「!たしかに、その可能性があったな」

「えぇ…」


 三人は理解した。黒土廻流は馬鹿なのだと。


「うんうん、馬鹿は純粋で可愛げがあっていいんだよな〜」

「ん?なんだ下僕2、お前弟か妹でもいるのか?」 

「いや、ずっと一人っ子」

「じゃあさっきの発言何…」


〔はぁ、早く怪魔を探せよ〕

「あ、忘れてた」 


 勇翔、内心ダラダラ。シツの言葉に返事をしてしまったのだから。シツの声は自分にしか聞こえない。周りから見たら、一人で話している変人にすぎないのだが…


「あ、たしかに。俺が話を中断させたからだ……すまん」

「そんなの誰も気にしてない。それより怪魔退治だ」

「だね、早くしよう」


 内容が内容だったため、どうにかなった。


「チーム分けどうする?」

「パンピーを分けるのは確定として、問題はどっちがどっちと組むかだな……おい、下僕2。お前は会話の内容から怪妖退治をしたことがあるとみた。その時、何級を相手にしていたか分かるか?」

「何回かやったことあるけど……たしか一番高いのでB級だった気がする」

「えっ」 

「はぁ!?パンピーでB級とかありえない!!ファン界で生きてきた私がB級なんだぞ!!」

「と言われましても……」


 そこでライカがふと思いついた。


「なら、お前らパンピーだけでA級を倒してこい」

「…それはさすがに、」

「なんだ下僕1?下僕2が言っていることが本当なら2人で協力すれば倒せるだろう?たとえ無理でも先生が助けに入ると言っていたし、そもそもこれは負ける前提で与えられた任務だぞ?」 

「…分かった。やってやる」

「ちょっと、勝手に…」

「ここから東に700mくらい行ったところに1体いる。2人はそれを倒してきて。僕達はもう1体の方に向かうから」

「了解、いくぞ勇翔」

「えっ、あ、ちょっと!!」


 勇翔はしぶしぶながらも廻流を追いかけた。


◇◇


「ねぇお嬢。なんで2人を組ませたの?さっき自分が言ってたみたいに、パンピーだけでA級を相手なんて、無茶すぎるよ」

 

 2人の姿が見えなくなった後、イダはライカに問うた。だが、その言葉に怒気はない。


「それを咎めなかったお前も同じ気持ちだろう、元神童?」

「………」 

「………」


 沈黙が続く。


 少しした後、イダが歩き始めた。それを合図に、ライカは話し始めた。


「下僕2の言っていたことは本当だ。お前もずっとファン界にいたのだから、それくらい分かるだろう?」

「……うん、そうだね。……だから、許せない、でしょ?」

「…あぁ。………私達はずっとファン界で生きてきた。産まれたときからずっと、強いファントになるために訓練を受けてきた」

「………」

「そんな私がB級なんだぞ!!!なのに、あいつは!!……死から離れたところで平穏に生きてきたあいつが、私と同じ…?ふざけんな!!」


 ライカの本心。


「………悪いけど、君の方がまだマシでしょ?僕が我慢してるんだ。そんなにキレんなよ、我儘お嬢」


 イダの本心。


「はぁ?ガキの頃に持て囃されまくって調子に乗った結果それ以上成長せずに落ちこぼれたのはお前だろう?私は違う。ずっと努力してきた」

「噂ばかり信じ込むなよ。知った風な口して、恥ずかしいと思わないの?ファントとして」

「努力をしていればいまだにD級なんぞありえない。結果は正直だからな」

「人にはな、限界ってものがあるんだ。僕はそれが人より早く来ただけだ。努力しても超えられなかった。自分の価値観で語るなよ」


 本心のぶつかり合い。


ドォォォォン


 止まることを知らなかったそれを遮ったのは、怪魔(任務対象)だった。


グガァァヴ!!! 


「チッ!お前、索敵できたんじゃないのか!?」

「お嬢のせいで集中が乱れてたんだよ!!」 


 言い合ってはいるが、さすが産まれたときらファン界で生きてきただけはある。ライカは背中に身に着けていた弓矢を構え、イダは右手を怪魔に向けた。


「『属性付与(エンチャント)火属性(フレイム)

「後天魔術16番『ヨハネ・ド・チレ』」


 





 

 


 










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