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第81話 他の探索者との共同作戦

 「――時に皆様、『個人(プライベート)迷宮(ダンジョン)』というものをご存じでしょうか?」


 探索者協会の広いホールで、会議が行われていた。

 物々しい武装をした探索者達。ウチもその中の一人として、受付嬢の話を聞いていた。


 「いわゆる未発見ダンジョンの一つです。ご存じの通り、現存するあらゆるダンジョンは探索者協会の管理下に置かれており、ダンジョンを発見した際には報告義務があります」


 ダンジョンは、いつどこに現れるか分からない。

 マンモス団地が丸々ダンジョンになった例もあれば、アリの巣がダンジョン化したこともある。

 だが、そのどれも発見すれば例外なく通報する義務があり、直ちに探索者協会の職員や探索者が送り込まれ、管理下に置かれる。

 まあ、あまりにもショボいダンジョンはそのまま潰されることも多いらしいが。


 「個人迷宮とは、自分の家などの敷地内に発生したダンジョンをあえて報告せず、ダンジョンや産出される物資を私物化することです。また、モンスターを討伐することで身体強化が起こります。つまり、危険物を多く所有した危険人物が野放しになるということです」


 『個人迷宮』の問題は後を絶たない。


 こっそりとダンジョンへ入り、戦って宝物を得る。

 そうして力を得てから探索者になり、無双しながら高ランクへの道を駆け上がろう。


 探索者協会は絶対にダンジョン管理を民間へ委託しない。自分の敷地なのにどうして。おかしい。お役所仕事な協会に腹が立つ。許せない。


 ダンジョンを利用して自身や仲間を鍛え、無敵の軍隊を作ろう!

 発覚した頃には国家転覆も夢じゃない戦力が出来上がっているぞ!


 欲望、悪意、思想……人間の持ちうるあらゆる感情が、人々をダンジョンへ駆り立てる。

 それが罠とも知らずに、あるいは理解していても、何の後ろ盾もなくダンジョンに身を投じてしまうのだ。


 「調査の結果、被害者の一部が個人迷宮を利用していた人物である可能性が高いとされます」


 ホワイトボードに張り付けられた写真。

 そこに載っているのは、まだ年若い少年少女だった。高校生くらいだろうか、ウチや虎の穴とそう変わらない年齢だろう。

 しかし、猛禽類のような眼光が、写真を通してこちらを見透かしているようだった。


 「その首謀者と思しき人物が、この庭渡(にわたり)侘玖真(たくま)。以前から協会が個人迷宮の容疑で調査を行っていた矢先、彼の住宅から半径1キロほどがダンジョン化しました」


 ホワイトボードに資料が張り出される。

 住宅、ビル、商店、映画館、駅の一部、クラブ……半径1キロの距離にそれらがすっぽりとおさまっていた。


 「広範囲にわたるダンジョン化のため、こちらの方で探索者のパーティーを振り分けさせていただきます。また、クランメンバー同士での行動を希望された方はクランで行動していただいて――」


 会議は一旦の区切りとなり、探索者達は休憩に行ったりしている。

 ウチらは別にクランメンバーでの行動は希望していないので、恐らく別々になるだろう。




 ◇




 メンバーの振り分けはくじ引き……などではなく、それぞれの適性を審査した結果だった。

 ブロワーマンは前衛だらけのパーティーへ、ガーランドとグレゴールは魔法使いの支援を受けられる所へ、K2とラプターはバランスのいい場所。


 「おお、虎の穴は同じやったか」

 「みたいだね」


 ウチと虎の穴は同じパーティーだった。

 クランメンバー同士だというささやかな配慮か、割と強い前衛二人だから組ませやすいのか。


 「どんな人が来るんだろうね」

 「まあ後衛やろな」


 そうだね、と虎の穴が言うと同時に、誰かがやってきた。

 職員に連れられてやってきたのは、若い男女だった。その内の女性の方が、軽く手を挙げた。


 「ハーイ、あなた達が仲間? ずいぶん可愛らしい子達ね!」


 快活な笑みを浮かべる、やや背の高い女性。

 恐らくモンスターの革製であろう軽鎧を着ており、腰には杖とショートソードを差している。

 魔法使いだろうか、前衛として戦うにはやや不安の残る装備だった。


 「ども」


 短くそう言った男性。

 黒いフード付きの外套を着こんでおり、口元はマスクで隠している。

 背には古風な作りの年季が入った弓を背負っており、矢筒には無数の矢が入っていた。


 「よろしくお願いします。僕は虎の穴マコト、そしてこっちが……」

 「諸星ソラです。こいつはドン」

 「ジャア」


 ウチらは早速あいさつした。

 すると、女性は笑みを深めた。


 「マコトちゃんに、ソラちゃん、ドンちゃんって言うのね! 私は石動(いするぎ)琥珀(こはく)、魔法使いよ、よろしくね!」


 女性は、石動琥珀と名乗った。

 それを見た男性も、口を開いた。


 「村雨(むらさめ)影郎(かげろう)です。基本は弓を使いますが、一応前衛もできなくはないです」


 男性は村雨影郎というらしい。

 それに対し、琥珀さんがまあ、と驚いたような顔をした。


 「もしかして、噂の『和製ロビン・フッド』ってあなたのこと?」

 「わせ……まあ、はい。そう呼ばれることもありますね」


 影郎さんは異名を持っているのか。

 異名とは、何か他の探索者が呼び始めたあだ名がいつのまにか定着したという身も蓋もないものだ。


 「魔法使いと、アーチャーについていただけるなんて心強いです」

 「そう言ってくれると嬉しいよ……あー、ここに集められたってことは皆B級なんだろう? 対等な立場なんだ、敬語はナシにしよう」

 「そうで……そうだね、うん」


 もしかしたら、影郎さんは敬語を使うのには慣れていても、使われるのには慣れていないのかもしれない

 それにしては、なんだか緊張の度合いが大きいように思えるのだが。


 「ところで、君達の役割は? 虎の穴さんは剣士ってことは分かるが……」

 「ソラちゃんも魔法使い……かしら? その、格好は……」


 もはや完全に感覚がマヒしているが、ウチは水着でほっつき歩いているようなものだ。

 おまけに、下の方はダンジョンで手に入れたパンツを履いている始末。


 「ウチも前衛や。この拳で全部粉砕したる。格好はスキルの兼ね合い、というかデメリットや」

 「そ、そうなのか……」

 「前衛二人なら安心ね!」

 「ジャア」

 「あ、ドンちゃんにも期待してるわよ!」


 どうやら二人はウチの格好をなかったことにしてくれるらしい。


 「それより、作戦前に親睦を深めましょ! お互いのことを知ればきっと連携も上手くいくわ」

 「あ、うん!」

 「せやなぁ、お互いのできることもっと知ろうか」


 コミュ力が高い琥珀さんが中心となって進行してくれる。

 彼女がウチらの側にやってくると、逆に影郎さんはサッと少し離れた。具体的にはドンの横へ。


 「ドンちゃん……ドン君か? ……ドン、君はコモドドラゴンだからアレだが、女性陣三人に男一人ってのは辛いものなんだ」

 「ジャア、ジャアッ」

 「そうか、そうだよな……えっ? マジ?」


 影郎さんが驚いたようにこちらを……特に虎の穴をまじまじと見る。

 ウチらも何事かと見返すと、彼は口を開いた。


 「え、虎の穴さんって男子だったの!?」

 「え!?」

 「あ、あはは……僕男なんです」


 琥珀さんも驚愕する。

 まあ、美少女にも見えるからなぁ、虎の穴は。

 そんなウチらを、ドンはあくびをしながら見ていた。



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