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第65話 クランを作ろう

 ウチはブロワーマンに話があると言われ、ファミレスへと訪れていた。

 190センチオーバーな大男と、髪の毛が触手になった美少女が入ってきたので若干ざわついている。


 「どれにする?」

 「ウチこれかな」


 適当に安くて美味しそうなメニューを注文する。その待ち時間、ブロワーマンが口を開く前に、ウチが話を切り出した。


 「そういやブロワーマン、あの戦いのために1億円も使ったってマジなん?」

 「ガチだよ……って、誰にも言ってなかったのに何で知ってんだ?」


 ブロワーマンは目を丸くした。

 しかし、これを知った経緯はウチも予想外だった。


 「あの鉱山におるサドンってモンスターが『俺三千万円くらいで買われたんだよね凄くない?』とか()っとったで」

 「何ィィィィ!?」

 「お客様、他のお客様のご迷惑となりますので……」

 「あっ、すみません」


 店員にやんわりと注意されるブロワーマンだが、その顔は注意された時よりもかなり焦っていた。


 「えっ、あいつ喋んの?」

 「喋っとったんやけど。鉱山で力仕事してたんやけど」

 「……まあ喋るモンスターは普通にいるんだが。まあいいか。そうだ、俺は1億使ったが……後悔なんざしてねぇぜ」


 キリッとしたキメ顔。

 しかし、次の瞬間にはへにゃっとなる。


 「ただちょっと懐が寂しくてな……割り勘で頼む」

 「こっちも奢られるとは思ってへんわ。むしろウチが奢ったるで」

 「あざーす」

 「ご注文のハンバーグセットとレア・ステーキ、お持ちしました」

 「ありがとうございます」


 注文の料理が来た。

 ちなみにウチがハンバーグで、ブロワーマンがステーキだ。

 ブロワーマンの食べ方は、どこで覚えたのかと思うほど丁寧だ。堅苦しい作法というわけではないが、その気になれば完璧なテーブルマナーを使って食べられるのだろうか。


 「ウチと一緒にどっかのダンジョン行かへん? ウチとそれなりのダンジョンに行けば、結構な大金稼げると思うんやけど」

 「気持ちはありがたいが……今はちょっと忙しくてな」

 「あー、風雲団の件?」

 「ああ」


 ブロワーマンはここ最近、風雲団を手伝っているらしい。

 何でも、風雲団がオトンの働いていた『迷宮町第一資源鉱山』を買い取ったらしい。

 社長が自殺したり、モンスターが湧き出たりしたので鉱山としての価値が暴落。さらに利権を持っていたマキシマ・マテリアルが破産したので、そこを風雲団が買ったというわけだ。


 その経営などをブロワーマンは手伝っているのだ。ロハで。


 「向こうも困っとったやんけ。給料くらい貰いや」

 「いやぁ風雲団もメンバーが多くて運営が厳しいところがあるからよぉ、ちょっと貰い辛いんだわ」


 どこもかしこも世知辛いものだ。

 例えダンジョンなんてものがあっても変わらない。


 「……そういや、ウチに話あったんとちゃう?」

 「そうだ忘れかけてた。ソラ、クランを作るつもりはないか?」

 「クラン?」


 クラン。

 ある程度の等級に昇格した探索者なら作れる、パーティーよりも大規模の集団。基本的には、大型だったり強力なモンスターを相手にしているという。

 ウチは特に作るつもりも、所属するつもりもなかった。


 「何で急に?」

 「いやな、ソラくらいの実力でしかも美少女ともなれば大手のクランからも勧誘が来るかもしれないと思ってな。それこそ質の悪いクランなんていくらでもある。そういうのは協会に注意されてるが、無くなるわけじゃない。だったらソラがクランリーダーになっちまえばいいってわけだ」

 「なるほどなぁ」


 ブロワーマンなりにウチのことを考えてくれていたらしい。

 忙しいというのに嬉しい限りである。


 「よっしゃ、じゃあ作ってまうか」

 「クランってのはC級から作れるんだ。俺も一緒に行こう」


 料理を食べ終えたウチらは、さっそく協会へと行くことにした。




 ◇




 「あ、すみません。クランの設立ってB級からになったんスよ」

 「制度がァ! 制度が変わってるゥ!」


 いつの間にか制度が変わっていたようで、ウチはまだクランを作ることができなかった。


 「いやぁ、最近ペーパークランを作ってあこぎな商売をする輩が増えてるっス。それでちょいとハードルを上げたんスよ」

 「待てよ、B級からにしたら反発とか凄いんじゃないか?」

 「悪徳クランを一掃したらC級に戻るっス」

 「えぇ……」


 協会ってすごい組織だと思っていたが、意外と勢いでやってるのか?


 「まあソラさんはもうちょっとだけ実績あったらB級になれるんであんまり気にしなくてもいいと思うっスよ。具体的には協会からの依頼をクリアしたらそれでもうB級っス」

 「早いなぁ」

 「強い腕っぷしとそれをむやみに振るわない倫理観があればいいんスよ」

 「それができない奴がそれなりにいるからなぁ」


 まあ、強大な力を持つと使いたくなるのが人間だ。

 それが悪いこととは言わないが、犯罪をするのはダメだろう。


 「で、どんな依頼があるんだ?」

 「C級ダンジョン『危険な森』でメガクローってクマを何体か討伐してほしいんス。何か最近増えてて被害報告が……特に全身に傷があってデカい奴を倒してくれたら言うことはないっス」

 「よっしゃ、今からやるわ」

 「あ、めっちゃ申し訳ないけどオレちょっと用事あって……一緒にはいけないんだ」

 「ええんやで。ウチも久しぶりにドンと一緒に行ってくるわ」


 こうして次の行先は『危険な森』となった。

 しかし、相手はクマか……さて、今のウチがどこまでやれるのか。

 ウチは身支度を整えると、『危険な森』行きの探索者用バスへ乗り込んだ。




 【喋るモンスター】

 ・モンスターの中には、非人間型(犬やスライムみたいな見た目など)であるのにもかかわらず喋る者が存在する。

 声帯的に不可能であるはずなのだが、それを魔力や種族特性でどうにかしているらしい。


 【迷宮町第一資源鉱山の屑山社長の死について】

 ・オークションに出した魔剣『シェルブリンガー』がブッ壊された直後に暗殺されています。


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