第43話 決闘前の作法
今回は短いです
「使え」
ロドリゲルから投げ渡されたのは、水平二連式のソードオフ・ショットガンだった。もちろん、中折れ式。
ショルダーストックはなくされ、代わりに木製のピストルグリップが取り付けられている。
ホルスターから引き抜いたそれは無骨で飾り気が全くなく、むしろ古臭い。あらゆる技術の衰退した、世紀末的な雰囲気を醸し出この銃には、不思議な魅力があった。
「ウチがか? トーシロやぞ」
「お前ほど体幹がしっかりしている者はそういない。ならば、狙いを定めて撃つだけでいい。お前にはそうする度胸もある」
ウチはゆっくりとショットガンを構える。
両手で持つという長さでもないし、重量もウチにとってはあってないようなもの。
ならば片手撃ちか……うん、何も問題ない。むしろしっくりくる。
「良い構えだ。『ウェイストランド』を思い出す」
「ふん、S級ダンジョンか。じゃあS級の実力、拝ませてもらおか!」
じろりと静かににらみ合う。
が、まだお互いに撃たない。まだその時ではない。
ロドリゲルが口を開いた。
「決闘はフェアでなくてはならない。隠しだてするつもりはないので最初に言っておく。この弾丸の名は『銀の弾丸』」
「銀の弾丸?」
アンデッド……取り分け吸血鬼や、狼男なとに効くとされる弾丸だ。総銀製なのでもちろん値が張る。
「対アンデッド用の、市販されているような代物ではない。正真正銘のアーティファクトだ」
アーティファクト……それは、ピーキーな効果を持っていることを意味する。
「こいつにはアンデッドを葬る効果も、追尾性も貫通力もない。ただ、『想いを乗せる』だけだ。俺は絶対的な『殺意』を乗せた。お前を一撃で殺すために」
「何ぃ?」
「俺は一発で急所に当てなければならない。だが、急所に当たれば死ぬ」
今この瞬間、誰もいないコロシアムは、どちらかが死ぬまで出られない空間と化した。
「俺も、その銃とその距離ならば、どこに当たろうが一撃で死ぬだろう。お前が鎧袖一触のもとに撫でるだけで死ぬ。フェアでない真似はしない」
「おもろいやんけ……」
一撃死VS一撃死。
逃れられぬ死闘が始まる……