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思春期クエスト

作者: 音無やんぐ

 僕は、小さな疑問がつい気になってしまう性質(たち)だ。少しでも腑に落ちないものを見つけると、その答えを知りたくなってしまう。

 みんなはどうなんだろ? 好奇心は猫だけの特権じゃないよね?

 とりわけ僕は何か気になるもの見つけると、クエストを発見したような気分になるんだ。

 謎解きのゲームを楽しむ感覚だ。


 もしもカギのかかった宝箱があったら、僕は開けようとせずにいられない。

 誰だって目の前にそんなものがあれば、気にはなるよね?

 そもそもカギ穴なんてあるから、開けたくなるんだと僕は思う。本当に開けられたくなければ、カギ穴の場所は秘密にすべきだ。これ見よがしにそんなものがあるから、こじ開けられてしまうんだ。

 ドアでも金庫でも、わざわざ目立つ所にカギ穴がある。僕にはそれが理解できない。


 先週の水曜日の事。学校の教室で、見てしまった……。

 僕は中学二年生なんだけど、教室でスマホを落とした時の事だ。

 床に落ちたスマホを隣の席の女の子、阿古屋さんが拾ってくれたんだ。その時、かがんだ彼女の胸元を僕はつい覗いてしまった。セーラー服の襟の隙間からちらりと見えるたおやかな胸の曲線に、視線が吸い寄せられてしまったんだ。

 それは好奇心というよりかは、……その、思春期という奴だ。ホントご免なさい。

 でもその時僕は見たんだ。彼女の胸元に鍵穴が付いていたんだ。

 人間にカギ穴が付いてるって? 有り得ないよね? 僕もそう思う。だから気になって気になって。それでちょっと怖くなって。でもそのカギを開けたらどうなるんだろうって、その事が頭から離れなくなってしまった。


 日直の仕事で遅くなって、独りで自転車置き場にいたら不意に後ろから声を掛けられた。


「これ、君のよね?」

挿絵(By みてみん)

 振り返ると阿古屋さんだった。

 てっきり自転車のカギを落としたと思って差し出す僕の手に、その柔らかな手が触れる。

 だげど彼女が渡してくれたのは、真鍮製の古風なカギだった。持ち手に繊細な模様が彫られていて、それこそ宝箱でも開けるような、綺麗なものだった。

 自転車に合う訳がない。

 でも僕には分かった。理由は分からないけど直感した。それは『あのカギ穴』のカギなんだって。

 何故かドキドキして、少し震える手で僕はそれを受け取った。


「うん、僕のだ」


 そしたら彼女が僕の耳元に口を寄せて囁いた。


「使い方、分かる?」


 分からないけど、きっと僕は答えを見つける。

1000字縛りですが、ルビ振ったり、挿絵入ったり、してます…………。

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