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ブレーメン  作者: もちっぱち
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レッスンがはじまる

狼のアシェルは、ルークに教えられた

地図を頼りに

ボイスレッスン教室に向かった。


レンガで作られていた建物を見て、

心臓が高鳴った。


また壊したら、請求されるんだろうなと

ヒヤヒヤしながら、玄関の大きな黒い扉を

ガチャリと開けた。


目の前はだだっ広い防音室の中に入った。

全面鏡張りで、壁紙は黒かった。

モノトーンのインテリアになっている。

入り口にはスティックタイプの芳香剤が

置かれていた。



丁寧に置かれた1組のスリッパを

履こうとした。


視線が痛い。


モノトーンに同化して気づかなかったのか、

忍者のようになっていたのか

それとも気配を消すのが得意なのか

中に入るまでわからなかった。


鏡を背にこちらをじっと見ている。


ハシビロコウがまっすぐにただずんでいた。



「あ、あの〜。」



 視線を変えることなく、ずっとこちらを

 見てくる。


 返事を待たずに話し続ける。


「こちらにボイスレッスンの先生が

 いらっしゃるということで

 株式会社Spoonのルークさんから

 紹介されたんですが…。」



話を聞いているのか、視線を逸らされて

クラッタリングしている。

クチバシをカタカタ言うあのことだ。


「ボイスレッスンの先生って

 どちらにいらっしゃいますか?」


 その言葉を発した瞬間、バサーっと

 飛んでこちらに近づいてきた。


 アシェルの目の前に顔を近づけてきた。


 ピロンと頭の上に透明の

 青いディスプレイを表示させた。


『私がボイスレッスン講師の

 シャウトだ。』

 

 声には出さずに文字で表した。

 声を出せないにも関わらずと

 名前と相反している。



「あ、あの、アシェルと言います。

 よろしくお願いします。」


 自己紹介したにも関わらず、

 シャウトは姿を消した。


 壁のギリギリ近くまで飛んで行っていた。

 アシェルの目の前からかなり離れている。

 

 (なんだろう、この違和感。

  すごく絡みづらい!!

  本当に先生なのか?)



遠くに飛んだシャウトのそばに駆け寄ると

青枠の大きな透明ディスプレイが

現れて、突然、レッスンが始まった。

画面には声を発する時の基礎練習について

説明書が書いてあった。


一つは唇を閉じた状態でのリップロール。

『ブルルル』と話せるかという動画が

流れてくる。参考にリップロールしているのは、ハシビロコウではなく、なぜかひよこのルークだった。


配役が随分ケチっていた。


言葉を発せないシャウトは

黙って、目をつぶり、

時間が過ぎるのをただただ待っていた。



(いや、先生なら指導するでしょう。

 なにこれ、放置プレイ授業?!

 俺、どうしろと?

 ただ、この映像見るだけなら

 家でもできるけど。

 あ、今はまともな家がなかったな…。)



『この映像見ながら、練習して。』


ハシビロコウは白目を向いて、

頭の上にディスプレイを表示させた。


(いや、絶対、そんなこと考えてもないし、

 思ってないでしょう。

 なにこれ、あやつり人形?

 何でボイスレッスンなのに

 歌も歌えないハシビロコウなんだよ!?)


ブツブツと文句を頭の中で考えていると

サボっていると思われたのか、

また近くに飛んできた。


「はい、やります。

 自分で、やる気出して

 やりますよ。

 がんばります。」


 シャウトの顔が近い、鼻がヒクヒクなって

 アシェルの頭の耳がクニャッと

 小さくなった。


 何を考えているかわからない。


 カタカタとクラッタリングしている。


 ディスプレイに表示されたテキストを読破し、発生練習をして、声のウォーミングアップをした。


 シャウトは白目を向きながら

『そのまま続けて練習に励め。』


この表示された文字を打ち込んでいたのは

もちろん、シャウトではない。

遠隔操作でボスが通信を使って、

打ち込んでいた。


あくまで、ハシビロコウのシャウトは、

お飾りであって、本当に話すことも

鳴くこともできない。


 だから、表示された文字と顔の表情が

合っていなかった。


大体予測はついていたアシェルはそれでも

あてがわれたミッションに挑んでいた。


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