殺人事件です
ガツン。
鈍い音。
飛び散る血。
一時は逃げ出してしまいましたが、戻ってみるとトンデモナイ状況に。
流血する大杉君。ひ、ひひ額が――大変な事になってます。わ、私どうしたらいいのでしょう。神様。
慌てます。慌てています。もう大混乱です。
こんな状況で非力な私に何が出来るでしょうか。慌てていますと、横を二人組みの男の人が走り去っていきました。あの方々は、先程まで大杉君を囲んでいた方々。一体、何があったのでしょう。凄く怯えた顔をしていた様に見えましたが――気のせいでしょうか。
ちょこっと角から顔を出し、様子を窺ってみます。何やら状況が変わった様で、井上君が腰を抜かしています。
あれれ? 怪我をしているのは大杉君なのですが、どうして井上君の方が圧倒されているのでしょうか?
疑問に首を傾げていますと、妙な奇声と共にバタバタと逃げる様な足音が聞こえました。何事でしょうと覗いてみますと、流血した大杉君だけが倒れていました。
キャーッ! さ、殺人事件です。私は、犯罪の目撃者です。
慌てて駆け寄ります。まだ息があるかも知れません。
「だ、大丈夫ですか?」
呼びかけてみますと、僅かに眉が動きました。まだ息はあるようです。流石に校内で殺人事件など起こるはずがありません。少しがっかりです。べ、別に期待してたわけじゃないんですよ。ただ、警察の事情聴取と言うのを、間近でみたかっただけなんです。
そんな事よりも、今は手当てが必要です。保健室に運ばなければ……私一人でですか?
それは無理ってモノですよ。体力の無い私にどうやって……。しかし、火事場の馬鹿力と言うのが在ります。ここは力の限り頑張らせていただきます。
「しっかりしてください。今、保健室に連れて行きますから」
彼の体を持ち上げ様と、腕を引きます。
「……う~っ。……お、重いです」
やはり私の力では全くピクリともしません。これは、考え方を変えなければ――と、閃きました。
簡単な事だったのです。保健室から救急箱を借りてくれば、全て丸く収まります。と、言うわけで、保健室に行ってまいります。戻ってくるまで、動かないで下さい。心でそう呟き、急ぎ足で保健室へと向いました。
保健室には今日も誰も居ません。保健医の先生はいつも何処に行っているのでしょうか。疑問も残りますが、今はそんな状況では無いので、救急箱を借り保健室を後にしました。
戻ってみると、相変わらずグッタリとした大杉君の姿が。血を流しすぎたのでしょうか。輸血が必要なら、救急車でも――。そう思いながらもガーゼで止血します。傷は思ったほど浅い様で、救急車の心配は無さそうです。ガーゼを固定する為、何重にも包帯を巻きました。自分でもビックリする位上手に巻けたと思います。
意識を失って十分位でしょうか、ようやく大杉君が目を覚ましました。