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雨と傘と恋心  作者: 閃天
12/17

雨宿り

 大杉君と別れ、私は足早に正面玄関へと急ぎました。実の所、私は友達を待たせていました。怒っていないか心配です。玲子ちゃんは優しい方なので、怒っては居ないと思いますが、万が一と言う事もあるので。

 出入口付近で、携帯を弄っている玲子ちゃんが居ました。遠くから隠れて様子を窺います。見た感じ、怒ってはいないようですが、ここは慎重に行かなければなりません。


「スーッ……ハァーッ」


 深呼吸です。心を落ち着かせ、いざ行かん。と、意を決した瞬間、目の前に顔が現れました。


「遅いよ。杏ちゃん」


 玲子ちゃんです。とっても笑顔です。そして、私にデコピンしました。


「はううっ……。痛いです」

「痛くないでしょ。それに、傘はどうしたのかしら?」

「……傘?」


 はて? 何の事でしょうか?

 首を傾げますと、今一度玲子ちゃんのデコピンが額を弾きました。非常に痛いです。

 潤んだ瞳で玲子ちゃんを見つめると、小さなため息を零し、


「杏ちゃん、傘を取りにいったんでしょ? 違う?」

「…………あっ」


 そうでした。私、傘を取りに行ったんでした。しかしながら、持ってきたと思っていた傘は教室にはありませんでした。きっと、何処かに忘れてきたんだと思います。良くある事ですから。


「今の『あっ』は、完全に忘れてたわね」

「うううっ……。違うんです。忘れてたじゃなくて、忘れてきたんです」

「……」


 玲子ちゃんが凄い呆れた様な目で私を見ます。いつになく厳しい視線です。


「杏ちゃんは、その性格直さなきゃダメよ」

「はううっ。努力はしてるんです。でも、でも――」

「わかってる。分かってるわよ。杏ちゃんは努力してるんだよね。ただ、それが活かされてないだけだよね」

「それって、私が馬鹿だから?」


 潤んだ瞳で見つめると、玲子ちゃんが目を逸らしました。


「それより、どうしましょう?」


 玲子ちゃんがそう言います。流石に雨に濡れて帰る程、度胸がありません。風邪はひきたくありません。それは、玲子ちゃんも同じ様で、困った表情を見せたまま黙り込んでしまいました。


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