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リリーがいない世界の後のちょっとしたお話

シルベリア家の令嬢であり、かつて婚約者だったリリー・シルベリアが立ち去った後のパーティーの様子はとても賑やかで、皆「おめでたい!」と意気揚々となっていた。


「ルイ様っ!」


ピョン!と抱きついて可愛らしく上目遣いをしているユリアンを見て、ルイ王子は微笑む。


「ユリアン、リリーがいなくなった後すぐに何処かへ行ってたが何処へいってたんだ?…まさか…あの悪役令嬢のところか?」


「違うわっ!私一人で彼女を追いかけるなんて……とても怖いもの…。席を外すしたのは…その…お手洗いへ。もう!女性にこんな事言わせないで」


ぷくぅっと頬を膨らませてる姿がまた可愛いらしいと、ルイも周りにいた者も頰を赤らめて笑っていた。一人の太った貴族がルイ王子に話しをする。


「これで我が国も安泰ですな!今この国の王は病で伏せられております故、ルイ王子、貴方様が次期王となるのが待ち通しいですよ」


「ベルダス伯爵、まだ気が早いよ。…でもそうだね。そろそろ次の段階も必要だけどね」


そうルイ王子は自分の隣りにいた愛するユリアンの肩を寄せて額にキスをしていた。


「ル、ルイ王子様…!みんなが見てます」


「構いやしないよ。君が次期王妃なのだから」





「ルイ」


一人の金髪姿の女性が彼の名前を呼んだ。この国の王妃で皆、頭を下げる。


王妃はルイ王子の元へ行き、彼に尋ねた。


「……これは一体どういうことです?リリー令嬢と婚約破棄?シルベリア家には話しをつけたのですか?」


「はい、シルベリア当主には既に話しをしました。《我が家には娘などいませんから気にせずに》だそうです」


「…あら、そう。なら問題はなさそうね!よかったわ。3大貴族であるうちの1つがシルベリア家ですから、その家がこの結婚に異議を唱えられたら、後々面倒だもの」


ホッとする王妃にルイ王子はニッコリと安心して下さいと微笑む。王妃はルイ王子の隣にいたユリアン令嬢に声をかけた。


「息子を、ルイを大切にしてちょうだい」


「…うふふ、はい!」


パーティーにいた皆はワアとお祝いモードだった。これから幸せになるだろう、次期王と王妃に祝杯をあげようとしたその時、バン!!!と強い風が吹き荒れ会場の大きなドアが開いた。


「な、なんだ!?風!?」


ルイ王子はドアの方を見ると、黒いマントを羽織っている銀髪の青年がびしょ濡れで息がしていない状態のリリーを抱えて現れた。



「……異議アリ、だよ。ルイ王子」


「貴様は……リオン・シルベリアか!?留学していた筈が何故ここに」


「……まず、聞く事はそれ?俺に手紙を送っただろう。それに今なんとも思わないわけ?俺が誰を抱えてるか、見えてないわけ?……リリー姉さんは死んだ…湖に溺れて!」


シルベリア家の義理の息子のリオンが現れたのと、悪役令嬢リリーの突然の死に会場はまたもやざわざわと騒ぎ始めていた。



「て、手紙?何をいって…リ、リオン!い、いくらお前が反対しても私達は結婚するぞ!」


「あ、あのう!リオンさん!はじめまして、だよね?あのね、あのね、私達愛し合ってるの!だけど、君のお姉さんが…私に…酷いことしてて…ぐすっ」


「…あぁ!可哀想なユリアン!辛い思いを口にするのはとても辛いだろうに!」


ギュッと優しくユリアンを抱きしめるルイの姿を会場のみんなはパチパチと拍手をしていた。そんな中リオンだけは冷めた目でユリアンを見つめる。ユリアンは目が合ったリオンに、頬を赤らめながら、彼に微笑みかけた。


「……なるほどね。ルイ王子…俺は今《シルベリア当主》だ。その馬鹿女との結婚は反対だ。後で後悔はする、これは最後の警告であり、幼なじみとしての情け、はあるわけないけど……夢から覚めると地獄が待ってるよ」


「ば、馬鹿ですって!?あ、ちょっと私を無視しないでよ!?」


「は!?シルベリア当主…としてだと!?今のシルベリア家の当主は…」


クスッと笑いながらリオンはルイ王子に説明した。


「我が両親は残念な事に、不運にも《事故》に合って動けなくなってしまったんだ。だから、俺が今のシルベリア家当主だ」


固まるルイ王子にユリアンは腕をぐいぐいと引っ張り文句を言っていた。


「ルイ様ルイ様!リオンってこ!酷いです!馬鹿だって!私の事!」



リオンはルイ王子を睨むと、ルイ王子はそのただ寄らぬ殺気を感じ、ブルブルと震えていた。


「リオン…これはだな」


「お前とは話しはしたくないし、顔も見たくない。だが忘れるな、シルベリアを…俺を敵にまわした事を」



リオンはパチンと指を鳴らした。



そしてルイ王子を睨み、くるりと会場を出た。

リオンがいなくなった後、ルイ王子は腰を抜かしてしまっていた。ルイ王子だけではない、ユリアン意外全ての者達も腰を抜かしていた。


「……私は…何故…なんてことを…」


ルイ王子は自分の手を見つめ直し、隣りにいたユリアンを見て、すぐにリオンを追いかけようとしたが、既にリオンは去っていた。


ルイ王子は頭を抱えて、倒れこみブツブツと何やら言っていた。




リオンは森の奥深くに行き、沢山咲いている白い花の場所へと立っていた。もう目を開ける事のない義理の姉であるリリーを大事そうに抱え、リオンは彼女をずっと見つめていた。


「…リリー姉さん…ごめん…もっと早く気づいてあげれば……リリー姉さん………ッ……リリー……本当にごめ……辛い時…そばにいてあげられなくて………ごめんなさい……」


そう涙を流し、ギュッと冷たい彼女を抱きしめていた。静かな森の中ではただ彼の啜り泣きだけが響いていた。






現在夕方、お父様とお母様とタコパー?というタコヤキのパーティーをしている。パーティーと言ってもお家でセバスチャンが作ってくれるのだけど、やはりセバスチャンも立派なタコヤキ魔法使いなのね……くるくると不思議な魔法道具でタコヤキを作ってくれている。


「……真斗。大変だわ」


「……何が?って、まてまて。なんで一気に3個食べようとしてるんだよ?」


「タコヤキ、なのに…この一つだけタコさんが入ってないわ。これは…セバスチャンは私が立派な魔法を使えるか試しているのかしら…」


「…いや。違うと思う…黙って一個ずつ食べろよ」


あら、食べてみたら、タコがなくても、美味しいわ。自分が思っていたパーティーではないけれど、とても楽しいタコヤキパーティーな夕方を過ごしていた。

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