「パンがなければお菓子を食べれば良いじゃない」と言う強キャラのお姫様の話
昔々、ある王国にお姫様がいました。
その姫様は毎日遊び歩き、城に呼ぶ友達は日に日に増え、自分を美しく磨く事に沢山のお金をかける事で有名な姫様でした。
国民は姫様の贅沢三昧を羨ましくは思っていましたが、それ以外に王の統治に不満も無く、国も豊かでしたので誰も文句は言いませんでした。
そんなある年の秋の事。
星占い師が「来年は皆が飢える」と預言をしました。
皆がそれを笑い飛ばしました。何故ならその年はとても豊作で誰もが冬の蓄えをたっぷり用意でき、飢える事など無かったからです。
姫様も笑いましたが、その占い師を首にするのは可哀想だからとそのまま城に住まわせました。
秋の終わり。姫様は南地方のオリーブを買い占めました。
「オリーブ油を塗ると肌が潤うの」
確かに姫様の肌は艶々でした。
寒い冬。姫様は北や東の異国へ旅に行きました。
「雪遊びとか色々教えて貰ったわ。友達も増えたの」
雪解けの季節には北地方に遊びに行きます。
「うちの国の北地方ならまだ雪だるまを作れるわね」
春。異様な程に花が咲き乱れる年でした。
「蜂蜜が豊作よ! 有りったけ買いなさい! 蜂蜜パックに蜂蜜風呂!」
姫様は益々、艶々テカテカでした。
夏。酷く暑く日照りが何度か有ったかと思うと、早すぎる秋が来て一気に冷え込みました。
人々はその時初めて占い師の言葉を思い出しました。
今年は稀に見る麦の凶作となったのです。
やがて、その日食べるパンにも困る者が出てきました。その話を聞いた姫様はこう言い放ちます。
「パンがなければお菓子を食べれば良いじゃない」
その言葉がどんなに残酷か! と家来は驚きと怒りに震えます。
……が。
「私の蔵から蜂蜜の壺を全部出して頂戴。それと北の地方に植えた甜菜がもう収穫できる筈よ。砂糖で干菓子を作り、民に配れば少しは飢えをしのげるでしょう」
「?! いつの間に」
「北の異国で色々と教わり種も貰ったの。オリーブ油と引換に今度果物の林檎も届く予定よ」
「友達とは……取引相手だったのですか」
「東の友達も手土産のオリーブ油を気に入ってね。今度大量に乾燥豆と米を送るから、油をくれって言ってたわ。そろそろ届く筈よ」
すぐに東の国から食糧が届きました。姫様は豆を砂糖と蜂蜜で煮込み、米を撞いて丸めるようコックに命じます。
「これは東の国のおはぎというお菓子ですって」
おはぎの美味しさに民は震えます。
そして家来は姫様に震えました。
彼女の頭上にオリーブの冠の幻を見たからでした。
オリーブの木の花言葉は「知恵」と「平和」。
そしてギリシャ神話のヘラクレスが樹木の生えないオリンピアの地に、持ってきたオリーブの木を植えた……という伝説から、古代オリンピックの優勝者にはオリーブの冠が与えられていたそうです。
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