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星の魔力と探究者  作者: 早宮晴希
第1章 学園生活編
8/29

#8 襲撃

 鐘の音が鳴り響く中、櫓で望遠鏡を覗いていた若い男性が、慌てた声で近くにいた年配の男性に声を掛け、手に持っていた望遠鏡を渡す。

「リーダー、草原を埋め尽くすほどの昆虫型のモンスターです! これを」

 受け取った望遠鏡を覗くと、そこには大きな角を持ち甲殻に覆われた6本足のモンスターが土煙を上げてこちらに向かってきてるのが見える。地を這うものと空を飛ぶものが混じっていた。

 それを見て唸るような声をあげる。

「うぅむ……、こんな桁外れの群れを見るのは初めてだな……」

「彼らの主食は木や草ではなかったのですか?!」

「そのはずだがな、何かに追い立てられているのか……。ならやることは街に進路を向けている奴らだけでも狩るしかなかろう。」

「全部を狩るには人手が足りませんからね……」

 二人でやり取りをした後に、年配の男性が北の防衛に集まったものの、数の多さにたじろいている者達へと指示を飛ばす。


「お前ら! 街に向かってくるものだけ狩れ、それ以外は無視だ。 できる限り進路をふさぐように狩っていけ!」

 聞いていた者達は各々に声を上げ、持ち場に戻る。

 指示を飛ばし終えると、不安げなため息を漏らす。

「果たしてこの人数で足りるのか……」

 街の防衛として配置されていた人数が100人程度、その中でも防衛線へと配置できたものは50人前後であった。対する相手は、千はゆうに超えるだろう。


 しばらくの間、少しずつ大きくなってくるモンスターを固唾を飲んで見守る。


「よし、そろそろだな……、弓と魔法で飛んでるやつを狙え! 攻撃開始!」

 その声を聞くや否や、向かってくるモンスターへと次々に矢と魔法が放たれる。


 当たったモンスターは奇声を上げて次々に地面に落ちる。地を這っていたモンスターはそれを乗り越える様に進み、思っていたほど進路を反らすことができずにいる。

「くっ……、前衛! 攻撃開始! 後ろへは通すなよ!」

 今か今かと待っていた前衛が指示を受けて動きだす。


「ここから先は通さんぞ!」

 人より2倍ほどある大きさのモンスターへ向けて切りかかる。

「せいっ!」

 剣を頭に向けて振られたモンスターは避けることもなく攻撃を受け、息絶える。

「これなら……」


 次々に切りかかり、モンスターを狩っていく。

 だが、ふいに倒したモンスターを乗り越えて覆いかぶさるように進んできた。

「うわぁ!」

 身構えていると動けずにいると突然、モンスターが吹っ飛び、ほかのモンスターへと激突して息絶えていた。

「早く下がれ!」

 吹っ飛ばした者が叫び、下がれるように足止めしていた。

「す、すまない……」

 慌てて下がって立て直す。


 徐々に前線が街へと近づいていく―――。


「このままでは……」

 後方で指示を出していたものが険しい表情で呟く。

「状況は?!」

 さらに後方から声を掛けられ、慌てて振り向くと、そこにはフリッツ・アルカーバーの姿があった。

「今は何とか持ちこたえているが……、このまま続けば確実に街に入られるだろうな……」

 暗い声で話していると、フリッツが助力を申し出る。

「私も手伝おう。前線が維持できればいいか?」

「そうだな。よろしく頼む」

「了解した」

 フリッツが前線の最後尾へと向かい、前線の様子を見て魔法を使い始める。

「足止めをしようとしてたようだな……なら!」

 青白い光がモンスターに向けて次々と向かっていく。最前列にいたモンスター達は次々に凍り始める。

 凍り付いたモンスターを乗り越えて向かってくるモンスターにも魔法が当たり、徐々に壁が高くなる。

「もう上らないか」

 モンスターが壁を上るのを諦め、迂回して進み始めるが、それらにも魔法が当てられ凍り付き、モンスターの壁がいくつもできた。

 前線で戦っていた者達は、壁ができたことで進行速度が遅くなった群れを相手に押されることはなくなっていた。


「さすがに一気に魔法を使いすぎたか……」

 疲れの色が見え始めたフリッツが少し後ろへと下がる。


 *****


 一方、時計塔へと昇っていたハンス一行は、備え付けられた望遠鏡で様子を見ていた。

「あの魔法は……アルカーバー教官のようですね。そのおかげで状況はよくなりましたが……ん?あれは……」

 状況を伝えつつ、望遠鏡を覗いていたローマンが何かに気づいた。

「ローマンさん、どうしました?」

 覗くのを止めて、ハンス達へと向いて最後に見たものを伝える。

「群れの中に数倍大きなモンスターが向かっているのが見えました。アルカーバー教官が作った壁も壊されるでしょう」

「そうなれば残りの群れは……」

「なら! 私たちが何とかしましょう!」

 ハンスが心配そうにする中、ミアが元気よく提案していた。その提案を聞いたローマンが致し方なしといった口調で指示を始める。

「分かりました。このままだと私達も危ないですからね。では、カルラさん、ミアさん、シャルロッテさん、ハンスさんはここに並んでください」

 ローマンの指示された場所へと移動しているとローマンに指示されていないテオが問いかける。

「ローマンさん、僕は……?」

「貴方には、私と一緒に万が一に備えていてもらいます」

「万が一?」

「はい、街に入ってこられた場合、私一人では皆を守れませんからね」

「分かりました!」

 にこやかに返すローマンに、納得した様子でテオが下がって鍛冶屋の店主とキールの元へと向かう。


「この後はどうするの?ローマンさん」

 配置についていたカルラがローマンを急かす。

「私が、魔法の狙う場所を順番に指定します。そこに爆発の魔法を目一杯の一発を打ち込んでください」

 それぞれ返事をして魔法を放つ姿勢に入る。

「では行きますね。私が放った魔法の場所にお願いします」

 そう言ってローマンが魔法を放つ。

「カルラさん!」

「ミアさん!」

「シャルロッテさん!」

「ハンスさん!」

 名前を呼ぶたび、魔法を放ち場所を指示する。

 それに続いてそれぞれ魔法を放つ。


 ローマンの放った魔法がモンスターに当たり、のけ反ると続いて飛んできた魔法がその周辺を巻き込んで大きな爆発を起こしていた。

 爆発の大きさはバラバラだったものの、進路上にいるひと際大きかったモンスターを倒すのには十分だった。


 *****


 頭上を魔法の青白い光が次々と通り抜け、氷の壁の向こう側で爆音とともにモンスターがはじけ飛んでいるのを目撃したフリッツは呆気に取られていた。

「―――っ?! あの魔法の威力って……ハンス達か! 後で礼を言わないとな……」


 休んでいたフリッツがまた前線の最後尾へと向かい、魔法を使おうとしていると、空にまたしても魔法が横切る。

「まだ放つのか?!」

 1つ、また1つといくつも通り抜けていく。

 放つ姿勢のまま唖然として眺めていると、明らかに街への進路上以外の場所へも魔法が放たれていた。

「もしかして街に向かうモンスターはほとんどいなくなったのか……?」

 放つ姿勢を止めて、踵を返して指示を出していた者の元へと向かう。


 近づくと先に浮かれた声で話しかけてきた。

「おぉ、アルカーバー教官! 先ほど物見役から連絡があってな! 貴方と誰かかはわからん者が放った魔法のおかげで何とかなりそうだぞ!」

 軽く流してフリッツが戻ってきた目的を伝える。

「そうか……ならよかった。それで櫓で望遠鏡を借りてもいいか?」

「いいぞ! 今なら教官がいなくてもなんとかなりそうだしな!」

 礼だけ述べて足早に櫓へと昇り、望遠鏡で状況を確認する。


「街への進路上はだいぶ数が減ってるな」

 そう呟く中も時計塔から魔法が放たれていた。

 学園側を見てみると、そこでも防衛が行われている様子が見えた。

「あっちは大丈夫そうだな」

 やることのなくなったフリッツが腕を組んで考え込む。

(前線は問題なさそうだし、ハンス達の元へ向かうべきか―――)


 そうこう考えていると前線から雄たけびのような歓声が上がっていた。

 櫓から降りようとしていると、下にハンス達が見上げて手を振っていた。

「僕たちの魔法は見えましたかー?」

 櫓から降りたフリッツがハンスの頭を撫でまわしながらお礼を述べる。

「やっぱり、お前たちだったか……。よく見えたよ、ありがとう」

「とおさま! もうやめてください!」

 手を振り払うようにハンスが離れる。

「戦っていた場所を見に行ってもいいかしら?」

 不意に横からフリッツに話しかけたカルラが目を輝かせていた。

「なぜだ? 見ても楽しくないぞ……?」

「私達もいずれそこで戦うかもしれないのよ? 見てても損はないわ」

「それもそうだが……、だがこんなことはめったにないぞ?」

 渋々ではあったもののカルラ達を連れて前線の戦っていた場所へと歩み始める。


 そこではモンスターの死体を片付けていたり、止めを刺していたりと目にするもの耐えない光景が行われていた。

「うぅ……これが、戦場ですの……?」

 シャルロッテが口元を抑えて震えた声で呟いていた。

 聞いていたフリッツが頭をかいて答えている。

「そうだぞ、これが戦いだ。こうなるから連れてきたくなかったんだ……」

 そんなことはつゆ知らず、カルラとミアは片付けをしている様子をまじまじと見ていた。

「このモンスターの構造ってこうなってるんだね」

「本で見るのと違うわね」

 解体していた者は気まずそうに解体を続けていた。


 ハンスは氷の壁についてフリッツに聞いていた。

「これは、モンスターを凍らせたものですか?」

「そうだな、モンスターの通り道を防ぐために作ったんだ」

「なるほど……」

 フリッツが作った氷の壁も少しずつ解体されていき、北への見晴らしがよくなっていった。


「ん? 何かが走ってきているな……」

 見晴らしがよくなった先から何かが走ってきているのをフリッツが目撃する。

 徐々にその姿が大きくなり、何者かが判明する。

「あれは―――熊型のモンスターか?!」

 その姿は、熊のような体格に加えて角が生え、体からは青白い光が漏れている姿をしており、そのモンスターも何かから逃げている雰囲気であった。

「あいつが逃げ出すなんて北の森に何がいるんだ……? ん?」

 フリッツが眉間に皺をよせて戦闘態勢に入ると、熊型のモンスターの背後に大きな火の玉が向かってきているのを見つける。

 後ろを気にしながら逃げるモンスターが必死に逃げるも火の玉に呑み込まれてしまう。通り過ぎた後にはモンスターは跡形もなくなっていた。

「な?!」

 モンスターに当たったにも拘らず、勢いの衰えない火の玉が街へと向けて進んでくる。

「私に任せてください」

 呆気にとられるフリッツを横目に前へ出るローマン。

「何をする気だ?!」

「街から逸らします!」

 それだけ残して火の玉へと飛び込む。

(あっちなら被害はなさそうですね!)

 火の玉へと近づいたローマンが火の玉を蹴り飛ばす。

 すると、西の森へと火の玉が進路を変える。

 森の木々を焼きながらしばらく進み、クレーターの壁へと衝突すると大きな爆発が起こったのが見えていた。


 その様子を唖然として見ていたフリッツが、おもむろにローマンへと問いただす。

「何したんだ? ローマン君」

「はい? 街から逸らしただけですが……」

「いや、その逸らした方法をだな……」

「え? 蹴っただけですよ?」

「あー、そうかい! 助かったよ! ありがとう」

 詳しいことを聞けそうになかったフリッツが諦めて礼だけ言って話を終える。


「何があったんだ?!」

 慌てた様子で近寄ってきたのは指示を出していた年配の男性だった。

 フリッツが事情を説明すると真剣な面持ちをしていた。

「そうか……、なら北の森を調査しないといけないな。ギルドにクエストの申請をしなければな……」

 ぶつぶつと言いながら街へと去っていった。


「さて、私達も街に帰ろうか!」

 フリッツが眺めていたカルラを強引に引っ張り、フリッツの後をハンス達が続き、その場から去っていった。


 *****


 陽も沈み暗闇が広がり、灯りが付き始めた頃、ローマンが予定していたお祝いをするお店で集まっていた。

 ハンス達とフリッツに含め、鍛冶屋の店主とキールも参加していた。

「俺たちも参加してよかったのかい? フリッツの旦那ぁ」

「これからハンスが世話になるからな」

「もらった金だけで十分すぎるんだがなぁ……」

 腕を組んでため息を漏らす店主。


 ローマンが2つある机の真ん中にグラスを持って立ち、挨拶を始める。

「あんなことがあったにも関わらず、このお店で予定通りお祝いができたことをうれしく思います。本日は、ミアさんのゴールドへ昇格とハンスさんの新たな魔法の命名に加えて、モンスター撃退のお祝いにもなりますね。では、乾杯!」

「「かんぱーい!」」

 それぞれグラスを突き合わせて音を鳴らす。


「私もあちらの席が良かったですわ……」

 シャルロッテがぶつぶつ言いながら飲み物を喉を鳴らして飲みこむ。

「まあまあ、でもローマンさんと一緒だから普段聞けないことが聞けるかもしれないよ?」

 なだめる様にシャルロッテへと言いながら席に戻ってきたローマンへと視線を送る。

「私の事で良ければ、話せる範囲で話しますよ」

 そう言いながら席へと腰かける。


 一方、もう一つの席では、アルカーバー家と鍛冶屋の店主とキールが集められていた。

「そういえばハンス。魔法を使っていたのはハンスだけか?」

 フリッツが昼間にあった出来事を思い返していた。

「いえ、僕だけではありません。カルラ姉さんと、ミアさん、シャルロッテ(シャル)さんも使っていました。大半は僕でしたが」

 そう言いつつ料理を口に運ぶ。

「ローマンさんがいなかったらどこに放っていいかわからなかったわ」

 話を聞いていたカルラが割り込んできた。

「そうだったのか、ローマン君は一体何者なんだ……」

 フリッツの中でローマンの謎が深まるばかりだった。

「そうだハンス、新しい魔法ってどんなものなんだ?」

 話題を反らしたフリッツがハンスに魔法について尋ねていた。

 口に頬張っていた料理を飲みこむとハンスが説明を始める。しばらく聞いていたフリッツが目を見開いた。

「そんな使い方があったのか……。それって私でも使えるのか?」

「もちろん使えますよ」

「帰りに教えてくれ」

「分かりました! とおさま」

 嬉しそうに答えるハンスを目の当たりし、フリッツは穏やかな表情をしていた。


 しばらく料理を食べたり、他愛もない話をして時間が過ぎていく―――。


 学園への帰り道、ゆったりと余韻を楽しんでいる。

「お腹いっぱいだぁ」

 カルラは膨れたお腹を押さえて満足そうに呟く傍らで、ハンスがフリッツに魔法について身振り手振りで教えているのを微笑ましく眺めていた。


 *****


 次の日、ハンスとローマンが学園長に呼び出されていた。

「街での出来事は大体把握しておる。ハンス君達が加勢してくれたおかげで街への被害がほとんど出なかったようじゃ。わしからも礼を言わせてくれ」

 学園長であるジークハルトが頭を下げて礼を述べていた。

「いえ、僕たちはローマンさんがいなければ、あそこまでうまくできなかったと思います」

 ハンスがローマンを見上げていると、ローマンが口を開いた。

「指示はしましたが、ハンスさん達に力があったからこそです」

 ジークハルトは満足げな表情をしていたが、おもむろに真剣な表情に変わり、ローマンを見ていた。

「そうかそうか。それでローマンよ、やはり北の森について何か分かったかのう?」

「正体までは不明ですが、何かがいることは掴めました。ただ、危険度としてはAランクは有しているかと」

 ジークハルトは蓄えた髭をさすりながら遠い目をしながら答える。

「それほど強力な何かが現れたのかのぉ……、ここ数年、モンスターがおとなしかったことと、何か関係があるかもしれんのぉ……」

 ここ数年、モンスターによる被害―――もとい、モンスターの出没が著しく少なかった。


「もしかすると、北にモンスターの餌場となる場所があるのかもしれませんね」

 ローマンが推察したことをジークハルトへと伝える。

「餌場……か。普段数匹で群れを成していた昆虫型のモンスターがあれほど集まるとなると植物に関するものかのぉ」

 ジークハルトは険しい表情のまま髭をさすり続けている。


「その昆虫型のモンスターは植物の何を栄養としているのでしょう?」

 ぽつりと呟かれた言葉に2人して声を発した者へと顔を向ける。

「確かに。植物を食べていることは周知の事実でしたが、実際は何を養分としているのか……」

 ハッと思いついたように思考にふけるローマン。

「今すぐわかることは少ないじゃろう。わしからもギルドへ説明しておいた方がよさそうだのぉ」

 ジークハルトがまた髭をさすって話すのを聞いいたローマンが、ハンスへと説明をしていた。

「ハンスさん。北の森についてですが、元々、調査はできていない場所でもあるんですよ」

「本にも調査に行ったものが帰ってこないようなことが書かれてましたね」

「はい、そうです。調査にいっても多くを持ち帰れずにいます」

 学園に入る前に読んでいた本に書かれていたことを思い出したハンスが呟くと、そのことは事実だったことがローマンにより告げられる。


「……人手不足のギルドが優秀な人材を派遣するとは思えんのぉ」

 普段より暗い声色をしたジークハルトがため息交じりに独り言を言っていた。

「なら僕たちが―――」

 ハンスが言い始めるのを力強い声で遮るようにジークハルトが答える。

「だめじゃ。お主らはまだ学生じゃからの」

「でも……」

 そう言いかけた時にはすでにジークハルトは首を横に振っていた。

「今の君たちが浴びている周囲の評価を伝えるぞ」

 ハンスが小さく頷くと話を続けた。

「今や、ギルドだけでなく国からも高く評価されておる。それもあって学校を止めさせてまで引き入れようとする輩もいるぐらいじゃ」

「そんなこと一度も……」

 聞き覚えのない話を聞いたハンスが不思議そうに呟く。

「わしが断っているからの」

 ハンスの呟きに短く返すと話を続けた。

「わしとしては、学園でしっかり学んでほしいからの。だから……」

 悲しそうに話すジークハルトを見たハンスが遮るように伝える。

「分かりました、学園長。僕達が必要となったら遠慮なく言ってください。それまでは大人しく学園で生活しています」

「すまないのぉ……」

 ハンスの言葉を聞いたジークハルトは弱々しく答えていた。


「今日はもうよいぞ。呼び出してすまなかったのぉ」

 思いつめた様子のジークハルトがそれだけ言って俯いていた。

「では、学園長。我々は失礼しますね」

 ローマンが一言添えて、部屋を後にする。


 部屋から出ると聞き耳を立てていたのか、協力者達が扉から少し離れて立っているのを見たローマンが声を掛ける。

「皆さん、聞いていたのですか」

「あはは……、気になっちゃって」

 ミアが気まずそうに答えていた。

「それで、私とミアはその調査に参加できるの?」

「少なからず、ハンスさんが卒業するまではないかと」

「あ、そうなの……」

 カルラはローマンの答えを聞いて残念そうにしていた。


 それから数日後、学園内でギルドから褒賞を送る式典が行われた。珍しいことにギルドの長が自ら褒賞を送っている。

 対象者はフリッツを先頭に、防衛に当たった者達とハンス達であった。

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