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星の魔力と探究者  作者: 早宮晴希
第2章 南の国編

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#27 想定外

 ハンス達は、投光器の設計について、話し合い、形になった頃には、3日経っていた。

「やっと形になりましたね」

 そういって、シームルが描いていたものを机に置く。

 それには、木の根を使った部品とただの木の板で作られるその周辺部品に大きく分けられており、それぞれに魔術(スペル)が書き込まれることが書かれている。


 魔術(スペル)は、ハンスが部品ごとに描きこむ内容を分けて描きだしたものも机に置く。


「僕は、本当にこれだけでいいのでしょうか?」

 木の根を使った部品を作成する部分だけを担当することに、戸惑いがあった。ほかの部分にも魔術(スペル)が描きこまれる予定であり、その部分を魔術(スペル)を知らない人に任せることを不安視していた。


「その部分は特に加工するのに手間暇が掛かりますからね。それだけでも同等以上の大変さだと思ってもらって問題ないですよ」

 シームルは盗用を防ぐために複雑な加工を要することを指摘し、それだけでも大変な作業であると伝える。

「それならいいのですが……」

 ハンスにとってはまだ心残りがある雰囲気だったが、それ以上は何も言わなかった。


 それから毎日、木の根を使った部品を作成する作業を始めた。

「ハンス! これってどういう内容が書かれているの?」

 その隣には、当然のようにシャルロッテが座り、一緒になって作業していた。だが、いることで作業効率が2倍になるかと言われるとそうでもないようだ。

 聞かれたことにハンスは必ず丁寧に答えている。その影響で明らかに一人で作業しているよりも作業速度は遅くなっていた。


 木の根を使った部品の構成は、木の根を一定の大きさにしたものと、それを組み合わせて囲うために作られた木の板に分かれる。

 それぞれに魔術(スペル)を刻む必要がある。それに加え、盗用防止用に木の板を開けた場合に焼失するような仕組みも組み込んでいる。それもあって、向きや内容に問題があると、焼失では済まない可能性がある。


 そのような繊細な部品であるため、ハンスから気になることや分からないことは必ず聞くようにシャルロッテに言っていた。


 しばらくして、作業場に入ってきたのはシームルだった。

「そちらは順調そうですか?」

「予定通りの数はできています」

 作業の進捗状況を聞いたシームルは満足そうにうなずくと、ほかの部品について状況の説明をしてくれた。

「そちらが順調で何よりです。こちらも手先が器用な者達に依頼していて、幾つか試しに作ってもらったものを持ってきています」

 そういって2人の前に部品を広げる。


 その部品を軽く見るだけでも、明らかなミスをしている場所があったり、彫りの深さにムラがあったりとあまりいい出来ではなかった。


 それを見た2人は少し困った表情をしていた。

「シームルさん、これだとまだこちらの部品を組み合わせるのは……」

「やはりそうですか……」

 出来を先に見ていたシームルは想定通りの反応だったようだ。

「この調子で続けてもらえればある程度精度は確保できると思いますが、何か問題はありそうですか?」

 作り始めてから日が浅いからだけなのか、ほかに問題がないかハンスの意見を聞こうとしていた。

「もうちょっとよく見てみます」

 そういってハンスは手に取り、隅々まで部品のすべてを確認した。


 最後の部品を置くとシームルが先に声をかける。

「どうでしたか?」

「この先ずっとその人たちに作ってもらうことになりますか?」

 質問に答える前にハンスが質問を投げかけてきた。さすがに毎回このような確認をしなければいけないことを想像すると別の方法がないかと模索したくなる。


「もし、長期的に売れたり、大量に生産し始めたりすると、新たな者達に作ってもらうことになりますね」

 答えているうちにシームルがハンスの質問の意図を理解する。

「ハンスさんの聞きたかったことは、これと同じようなものがまた作られるかどうかですね?」

「そうなんです。もし、そうならないようにできる方法があるならと……」


 そういってハンスは思考を巡らせていると、シームルが自身のこれまでに得た知識から伝える。

「方法ならありますよ。型を作ってしまうんです。そうすれば、大きな差はでないでしょう?ただ、この方法は、農具などの金属部分に使われています」

「え、じゃあ木の板には使えないってこと?溶かしてなんて無理よね……」

 シャルロッテでも金属を溶かして型に流し込んでいることぐらいは知っていた。


「型ですか……」

 ハンスは考えるだけでは無理そうだと思い、本に手を伸ばそうとしたがシームルが止める。

「今すぐにとは言いません」


 シームルは今後の予定について改めてハンスに伝えた。

「分かりました。では、ハンスさんには、今までの作業に加え、型の作り方について考えておいてください。必要なものがあれば今まで通り言ってくださいね」

「はい、できるだけ早くできるようにします」

 それを聞いたシームルは、次の用事があると作業場を去っていった。


 一息ついた2人は、椅子の背もたれに体を預け、天井を見上げながら会話する。

「できそう?」

「あの本によると、物体に対して影響は与えられますからね。少なからずできなくはないと思います。ただ……」

「ただ?」

 続きの言葉に詰まるハンス。

「ただ……僕は知らないことが多すぎるんです」

「仕方ないじゃない、少し前に学んだばっかだし、いきなり難しい本を読んでいるわけだしね」

 暗い声色で話すハンスにシャルロッテは励ましの声をかける。


「じゃあ私が作業を1人でするわ!その間に本を読んだり色々試してみたら?」

 ハンスの作業を肩代わりすることを提案するが、ハンスは天井を見ながら頭を揺らして提案を受けなかった。

「ありがとうシャル。でもそこまでしなくても時間はありますよ。いつもこの作業以外の時は読んでいますし」

「確かに」

 そういってシャルロッテは口を尖らせていた。



 それから一か月後、2人でしていた作業にスクルドが加わり、3人で作業していた。

「どうっすか?調子は」

 ハンス達の様子を見ていたブルーノはいつものように作業場の入り口から声をかけていた。ブルーノは決して作業場には踏み込んでこなかった。

「昨日と変わりませんよ」

 最初こそちゃんと返していたが、今ではそっけない返事だけしていた。


 時々持ってこられる部品は、日を追うごとに精度が上がり、今では魔術(スペル)の模様もハンス達とそん色ないどころか、それ以上の出来になっている。

 それを見てきたハンスは、焦り始めていた。それを感じ取っていたシャルロッテはスクルドにも作業するように頼んでいた。



 それから数日たったある日、本の中にそれらしい記載を見つける。

「これだ!」

 うれしさのあまり、普段上げない大きな声をあげてしまった。

「何か見つかった?!」

 それに驚いたシャルロッテが駆け寄ってくる。

「はい!見つけました!」

 ハンスが持っていた本は、4巻の兵器について記載されている本だった。そして開いていた頁は、兵器の量産について書かれている部分だった。

「このあたりです!」

 ハンスは嬉しそうにシャルロッテに見つけた個所を指す。

「どれどれ……ん?大量生産するためには常に同じ品質を要求される。それを実現させるには、材料から完成までに如何にして人の手を介さないかを考えなければいけない……?そうして生まれたのがこれらの鋳造技術だと……」

 読み終わったシャルロッテがハンスの顔を見る。

「確かに書いてあるのは、今私たちが直面していることと似ているわね」

 続きを読もうとしたがその先には、びっしりと魔術スペルについて記述されていた。それを見たシャルロッテはそれ以上、読み上げる気も、理解する気も薄れていった。なぜなら何一つ理解できそうになかったからだ。


 それからというもの、本を読み解くことに注力し、理解を深めるために実際に試してみたりと今まで以上の忙しさで過ごしていた。

「やっとできた!」

 そう声を上げたのは見つけてから2週間後だった。


 作業場には、失敗作の残骸が転がり、足の踏み場がないほどになっていた。

「できたの?!」

 ハンスの声を聞いたシャルロッテが作業場の入り口から顔を覗かせる。

 シャルロッテ達の作業はハンスが記述を見つけた日から数日後には、作業場とは別の場所で作っていた。

 その影響で食事をする場所がなく全員が困っていたことをハンスはまだ知らない。


「これを見てください!」

 そう言ったハンスの手には、綺麗に模様が彫られた部品があった。

「すっごく綺麗ね! それでこれを作ったやつはどれなの?」

 綺麗に彫られた部品も気になるがそれを作ったものを見てみたかった。だが、傍目には同じようなものがいくつも並んでいて、本人以外分からない状態だった。


「あ、これでです」

 そういってハンスが手を置いた。

 ハンスが手を置いた場所にも魔術スペルの模様が書かれており、見渡してみると、いたるところに模様が刻まれていた。


「どれどれ……うん、さっぱり分からないわ」

 軽い気持ちでシャルロッテが読み解いてみようと模様を見始めたが、そう時間が掛からずに諦めていた。


「お、今日は何か進捗があったんすか?」

 いつものようにやってきたブルーノがいつもと違う雰囲気を感じ取っていた。

「ついに言っていたものが完成しました」

「お、早速、シームルに報告してきた方がよさそうっすね。色々向こうは向こうで問題が起きてるらしいし早いほうがいいっすから」

「では、お願いします」

「はいよ」

 来て早々にシームルの元へと向かっていった。



 しばらくして二人が帰ってきた。

「呼んできたっすよ~っ」


 そんなブルーノの後ろからシームルが出てきて挨拶する。

「お久しぶりです。ブルーノから完成したと聞きました」

 ハンスはそれに頷いて作った物へと案内する。

「これが完成したものです。これで作った物がこれです」

 ハンスに渡されたものをシームルが品定めをする。


「確かに職人が作ってくれていたものと大差ありませんね。どんなものか作っている所を見せてもらっても?」

「はい!」

 返事をしたハンスは、木の板を所定の位置に配置すると、魔術(スペル)にある円の内側に手を置く。

「始めますね」

 そういうと、青白い光が円の周囲へと広がっていく。最後には、木の板まで青白い光が到達し、彫刻したい形になっていく。

 そう待たずして青白い光が消えていく。消えた後の木の板には、しっかりと模様が彫り込まれていた。

「終わりました」

 ハンスは配置していた木の板をシームルに渡す。

「なるほど、これはかなりすごいことです。ほかのことでもこれがあれば色々と改善されそうな……」

 この木材加工の革命的な技術によってシームルの頭には、これまでに培ってきた内容が一新されそうな勢いで様々な改善案が浮かんできていた。


「すいません、色々と考え込んでしまいました」

 我に返ったシームルは、疑問に思ったことを尋ねる。

「確かにすごい技術ですが、これは誰なら使えるものですか?念のため」

 今の動作を見るに魔力を使って動作していることは分かっていたが確認のためにシームルは質問する。

「魔力を扱える者ならできるとは思います。魔法士ならだれでもできるはずです……たぶん」

 実際は作ったばかりでハンスにも誰が扱えるのかはまだ分からなかった。


「私でもできるってこと?」

 シャルロッテが興味津々に割り込んできた。

「できるはずですよ。特に難しいことはしないです。ただ、魔力を送ってあげればいいだけです」

「一度やってみてもらえますか?」

 シームルもシャルロッテにお願いをする。


「じゃあ、ここに木の板を置いて……ここに手を置けばいいのね」

 見ていた通りに準備をして円の中に手を置き、魔力を送る。


 ハンスの時と同様に青白い光が発光すると、先ほどと同様の木の板が出来上がっていた。

「うーん少しクラクラするかも……」

 シャルロッテはフラフラとした足取りで近くにあった椅子に腰かける。

 この症状は、魔力を使いすぎた際に起きる症状だった。だが、その症状について知らなかったシームルは、ハンスに説明を求める。

「これはどういうことでしょうか?」

「魔力を使いすぎるとよくなる症状です」

 シームルは納得すると急いで水を取ってきてシャルロッテに手渡す。

「ありがとうございます……シームルさん……」


「すいません、シームルさん。誰でもと言いましたが、今のを見るにだいぶ限られそうです」

「魔力を多く必要とするということは理解しました。ですが、私には誰がこれを扱えるのか判断できませんね」

 現状では、数を製造するということではハンスしか扱えないだろうという結論に至った。

「改善しなければいけないですね」


「一旦それについては、職人がある程度やってもらえますから追々に考えるとし、少し話しておきたいことがあります」

 シームルが何か話したいことがあるとのことだった。

「この投光器についての価値についてです。簡単に言うと、現状、一般には受けそうにないということでした」

 投光器の売り上げについて不安があるらしい。


「まず、今までに作ってもらった分は順調に売ることができました。なぜなら、必要そうな人へ売り込みに行ったので当然です。ですが、それだけでは、どうしても売り上げに不安があります」

「うーん……?」

 問題点についてあまり理解していないハンスが声を漏らす。


「まず明かりの必要性についてですね。街にいる多くの者は、夜なると自宅や室内にて過ごします。明かりについても多少あれば問題ないならもっと安価な明かりがあり、中々目新しいものを買おうとはしません」

「なら外に出る人達ならいるんじゃない?」

 シャルロッテは街から出る人になら売れるのではないかとシームルに尋ねる。

 それにシームルは首を横に振り、説明を続ける。

「最近の情勢として、モンスターの襲撃が少ないのはご存じですね? それ故に盗賊が幅を利かせるようになっていて、夜に明かりを持って出歩くのは自殺行為だと言えます。なので最近では夜外に出る者は商人でもほとんどいないようです」


「え……じゃあこれ以上作ってもほとんど売れないの……?」

 ハンスの隣で聞いていたシャルロッテがハンス以上に動揺していた。

「となるとこの作った物もいらなくなるかもしれないんですね」

 ハンスは悔しそうに数週間掛けて作った物を見つめる。

「申し訳ない、私がもっと調査していればよかったですね」

 シームルも申し訳そうにしていた。


 そんな状況でもシームルはすべてを諦めたわけではなかった。

「ですが、その技術はすごく革新的です。ほかの事へと使ってみることを提案したいです」

「それでまた売れなかったら」

 ハンスは疑心暗鬼になっていた。

「今回は新しいものを作るのではなく、既存の木製部品に対して使えないかということです」

「何か違いが……?」

 シームルは自信をもって答える。

「もちろん、全く違います。そうですね……わかりやすいものでいくなら、馬車などに使われる車輪で考えてみてください。これは必須の部品でありながら結構交換しなければいけないんです。これを半額で車輪が手に入るとなったら……どう思いますか?」

「安いに越したことはないですね」

 それを聞いたハンスは、売れそうな気がしてきていた。

「実際はいきなり半額の車輪を売るのは得策ではないですが、確実に他より安く売れますし、数を作れるので複数の顧客を抱えることができるでしょう」


 そんな話をしているとそれなりに時間が過ぎていた。

「シームルに来客が来たっすよー」

 難しい話から逃れるようにブルーノはほかの部屋にいたが、来客が来たことをシームルに伝えるために作業場へと伝えに来た。

「あぁ、もうそんな時間か……この話は考えておいてくれないか?それにさっきのできたものはあくまでも一つの部品しかできないだろう?残りの分も頼む」

「え、あはい!」

 出かける準備をしながらハンスに言いたいことを言って来客とともに去っていった。


「言いたいこと言っていったっすね」

 ブルーノが作業場へと入ってきて椅子に座る。

「作ってたやつ俺にも触らしてもらえないっすか? どんな感じかやってみたいっす」

 断る理由もなく、ハンスは準備をする。


「どうぞ」

 そういって円の真ん中に手を置くように促す。促されるままに手を置いたブルーノは何も起きないことに不思議そうにしている。

「あれ?何も起きないっすね」

「そんなはずは……」

 試しにハンスがやってみると正常に動作する。


 そして一つの答えにたどりつく。

「ブルーノさんは、魔法を使ったりできますか?」

「え?そんなことできないっすよ。あ、まさか使えないとこれってできないやつっすか?!」

 当たり前だと言わんばかりにできないと言い張るブルーノであった。


 そんなブルーノであったが、至極まっとうな意見を言ってのけた。

「魔法が使えないと使えないとか不便っすね。俺みたいなやつは結構いるんすよ、魔法使えないやつ。それに投光器が誰でも使えるって話見たいっすけどこれは無理なんすか?」

 作業場に置かれていた投光器をつけたり消したりしながらそんなことを言っていた。


「確かに! それと同じように木の根から魔力を送れるようにしたら少しは負担を減らせるかもしれませんね!」

 ハンスは技術の再現ばかりに気を取られていてそのことをすっかり忘れていた。

 すでに魔石で同じようなことをしていたのを思い出し、近くにあった紙に魔術(スペル)を描き円の真ん中に張り付ける。


「それじゃあ、ここにこれをもってさっきと同じように手を置いてみてください」

 ハンスは、木の根を渡し先ほどと同様に手を置くように促す。

「これでほんとに俺でもできるっすか?」

 即席にできるものなのかと不思議そうにしながら言われた通りに握った手を置いてみる。


「おぉ!光りだしたっす!」

 ブルーノはそのことに驚きながらそのまま待っていると、ハンス達がやっていた時よりも早くに光が弱まっていった。

「ん?これで終わりっすか?」

「ちょっと待ってくださいね、できたものを見てみます……これは、途中で終わってますね」

 ハンスが確認してみると、木の板は途中まで彫刻された状態だった。


「だとすると魔力の量がさらに必要ということですね。なら木の根の量を増やしたらできなくないですが、そもそも必要量が多いのが原因だから見直しは必要だし……どこから見直すか……」

 ハンスは状況を分析しながら改良について考えるために走り描きで作った設計図を見ながらあーだこーだと言いながら新たに書き直そうとしていた。


「俺、もう行っていいっすか?」

 ブルーノはシャルロッテにその場から立ち去りたそうに聞いていた。

「ええ、もういなくなっても気にしないと思います」

 シャルロッテは呆れたようにハンスを見ながらブルーノに答える。


「じゃあ俺は先に失礼するっす」

 小難しい話を聞きたくなかったブルーノは小声で言うとそそくさとその場を去っていった。


 シャルロッテはハンスの様子をしばらく見ていたが、ふと外を見てみると日が暮れ始めていることに気づく。

「そろそろ夕食の準備でもしようかしら」


 そうして作業場には机に向かってぶつぶつ言っているハンスだけが残った。


 時間が経ち、夜中に目が覚めたシャルロッテは、ハンスの様子が気になり明かりをもって作業場へと向かう。

「あ、明かりがついてる」

 作業場からは明かりが漏れていた。それに気づいたシャルロッテはそっと入り口から中を覗く。


 ハンスは机に突っ伏して寝ていたが、自分で使うように改造した投光器だけが煌々と光っていた。

 シャルロッテはハンスに毛布をかけてあげるが、この明かりの消し方がわからなかった。

「これってどうやって消したらいいの……?」

 寝ぼけた頭で色々探してみるがよくわからなかった。そのため投光器に分厚い小さな布を巻き付け強引に暗くした。

 若干ハンスの顔が険しい顔から変わった気がしたが薄暗くてよくわからなかった。


 様子を見て満足したシャルロッテは自分の寝床へと戻っていった。


 翌朝、ハンスが目を覚ますと、かけられた毛布に気づくと同時に投光器に巻き付けられた布に心底驚いたらしい。

 それからハンスは、その投光器には簡単に明かりを消したりできるように魔術(スペル)を調整したという。

 その改造した投光器に気づいたシームルが目をつけ、それでまたどこかに売れないか思案していた。


 そしてそれが、思ってた以上に売れ、当初売ろうとしていた投光器よりも売り上げた。その要因として、職人や書類仕事などの内職をする者たちに好評だった。何せ、蝋燭などの明かりに比べ、光量があり、明かりの揺らぎが少なく、燃料が魔力のみということで費用も抑えられる。

 だがそれは、彼らの仕事を長時間可能にしてしまう結果となった。それ故に最初は喜ばれはしたが、次第と雇用主に対する不満も増えたという声が聞こえてくるようになった。

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