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星の魔力と探究者  作者: 早宮晴希
第2章 南の国編

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23/32

#23 流されるままに

「入るためにはこれをつけてもらう必要がある」

 そう言ってハンスらに手錠と顔を隠すためであろう布切れを渡してきた。

「これをつけないと高い入場料を払うことになる」

 彼らは仕方なしに手錠をはめる。

 ハンスは片腕が包帯で巻かれていることもあり、不格好な形でつけていた。


「魔法を使うのは禁止だ」

 ハンスは魔法で浮かせていた本を見る。

「え、じゃあこれは……」

「2人に運んでもらう」

 そう言うと一緒にここまで来ていた2人に本を持つように説明を始める。

 その2人はあまりいい顔をしていなかったが、命令には逆らえないのか本を持とうとハンスの元にやってきた。


「これを運べばいいんすね」

「2人で持つには重そうな……」

 ハンスが2つに分けた本を持ち上げる。


「お、おもっ!」

「これはきついな」

 正直な感想とやせ我慢がにじみ出る感想を吐いてはいたが何とか持ち上げられた。


 そうして先導する者とハンスら4人は手錠をはめられ布切れをかぶり、その後ろでは2人が重そうな本を担いだ一行が歩き出す。


 南の首都の入口へと近づいた一行は門番に止められる。

「ちょっとまて、彼らは?」

 門番は防衛隊の一員だということは分かっているようで確認する内容は、誰を運んでいるかだった。


「事件の容疑者だ。証拠を隠されては困るからな、こうして連れてきたわけだ」

 それに対していつも通りに先導する者は返しているようだった。


「そうか。なら通っていい」

 そこは本来であれば、多額な入場料を取られる所だが……よく使う理由なのか、特に怪しまれることなく入ることができた。

 手錠をかけられ歩く様を布切れを頭から被されてはいたが、初めて経験することにハンスとシャルロッテは、不安以上に物珍しさが勝っていた。


「こんなこと経験することはあるんでしょうか」

「ないほうがいいに決まっているわ。こんな感じに観られるのね」

「視線だけでも嫌そうにしているのが分かるものなんですね」

 2人は被された布の隙間から周りを見渡しながら並んで歩いていた。


 和やかに話すその後ろには、隊員が今にも落としてしまいそうなほど疲弊してついて歩いていた。

「はぁはぁ……あと少し……そっちは大丈夫か?」

「もうダメかもしれないっす……」

 持ち始めて10分程度しか経っていないがすでに体力の限界が来ていた。


 そんな話を耳にしたハンスは振り向き手伝うことを申し出る。

「やっぱり、僕が支えましょうか? 落とされるのは困るんですが……」

「す、すまない……あまり話しかけないでくれ、今にも……うわっ!おととと……」

 本を持っていた1人がそう言っている間にも躓いてバランスを崩す。


 すかさずハンスは崩れかけている本に背中を当てて支える。

「あまり無茶はしないでください。目立たない様にしますから」

 そう言って背中に触れている本に魔法を使う。


「お、おお! だいぶ軽くなった!」

 ハンスが浮かせていた時よりも青白い光は目立っていなかった。

「こ、こっちも頼むっす!」

 もう1人もハンスの近くにふらふらと寄ってくる。

「最初から言ってくれれば……」

(少しの間軽くするだけならこれで大丈夫かな)

 軽く小言を言いながら本に軽く触れて同じように魔法を使う。

「ほんとに軽くなった! ありがとう!」


 ハンス達を先導していた隊員は呆れた様子で本を持っていた2人に厳しく接する。

「お前ら……明日から訓練内容は変更するからな」

「そんなぁ」


 そんな奇妙な光景を作りながらも彼らの本拠地へとたどりつく。


 部屋の準備が整うまで応対室へとハンス達は通される。

 ついでにスクルドの服の用意もしてくれるとのことだった。


「しばらくここで待っていてくれ。多少不便はあるだろうが何かあったら言ってくれたらいい」

 そう言って先導していた者は次の仕事があるのか立ち去っていった。

 一方、本を持っていた2人は机に本を置くや否や、地面へ大の字に倒れこんでしまう。

「はぁ……さすがに休憩させてくれ……」

「ぜぇぜぇ、軽くなったとはいえそれでも疲れたっす……」


 そうしている間に辺りを見渡して何かを見つけたローマンは準備を始めた。

「応対室と言うこともあって色々ありますね。皆さんの分お茶を用意しますね」

 この部屋には人をもてなす為の用意が見受けられた。


 ローマンが皆のいる場所へ運んでいくといの一番にお茶を取り一気に飲む本を持っていた2人。

「おぉっと」

 それに驚きつつも平然とほかの者にも配る。


 先ほどまで倒れこんでいた2人は一息つくと、興味本位に1人が本について聞いてきた。

「この本には、何が書かれているっすか? 表紙だけじゃ何のことか分からないんすよね」

「お、おい! そんなこと聞いてどうする!」

「いやぁここまで運んできたんで気になるじゃないっすか」

「ま、まぁそうだが……」

 もう1人は止めようとしているが彼も興味があるのか強く止めようとはしていなかった。


 ハンス自身もそこまで詳しくはない。

 そんなこともあって返事をするにも曖昧な返事をするしかなかった。

「その本には、今は存在しないことが色々書かれているらしいです」

「そうなんっすね! どれどれ……」

 それを聞いた1人が本を適当にめくって読んでみようとした。

「は、はぁ……なんなんすかこれ? 全く理解できないっす」

 そう言って険しい表情で中身を指してハンスに向けて問いかける。

 彼がめくっていた本は最後に当たる本であった。

「今の僕でも分からないと思います」

 ハンスも中身を知らなくても同じ反応をするだろうと想像できた。

「そんなもんなんすね! 俺が特別読めないわけじゃないんすね!」

 地味な前向き具合に皆和やかに笑っていた。


 そんな空間を壊す者が扉を開けて入ってきた。

「こんな所で待たせてすまない。……なんでお前達までここにいるんだ?」

「た、隊長!」

「こ、これには訳が……」

 2人は必死にただ単純にさぼっていた訳ではないことを弁明する。


「分かった。だが、もう十分休んだだろう、次の仕事へ行くといい」

「は、はい! 失礼します!」

「失礼しまっす!」

 2人は慌ただしく部屋を去っていった。


 隊長は椅子に座るとスクルドに服の用意ができたことを伝える。

「隣の部屋に服の用意がある好きなものを着ると言い」

 そう伝えられると彼女は服を取りに隣の部屋に向かう。


 彼女の帰りを待つ間、ハンスとシャルロッテへ向けて問いかける。

「お前達、南のギルドの者達と接してみてどうだったか?」

「どうって……すごくいい人たちだと思います。見ず知らずの僕達を助けてくれましたし」

「そうそう! 初めてあった時からずっと助けられっぱなし」

 2人の感想を聞いた彼は、大きく息を吐いて安堵している様子だった。

「そうか。昔から変わってなくてよかった」


「なぜ貴方がそんなことを?」

 ハンスはギルドとどういった関係なのか分からずにいた。

 その問いかけには「全員そろったら話す」とだけ言ってそれ以降は口をつぐんでしまった。


 しばらくしてスクルドが新しい衣装に身を包んで帰ってきた。

「ハンス! これどう? 似合う?」

 そう言ってハンスの前でひらりと回って見せる。

 その衣装は動きやすくもありながら露出は控えめな雰囲気で、この国の気候にはちょうど良い感じであった。

「似合っていますよ」

「そう? それは良かった!」

 ハンスの一言が嬉しかったのかにこにことした表情のまま、ハンスの隣へと当たり前のように座る。

 もちろん、シャルロッテとは反対の場所である。

 そうせざるを得なかったのはシャルロッテが片方を押さえて譲らなかったからだった。


 全員がそろったことを確認した隊長は、改めて話を始めた。

「全員そろったな。まずは俺のことを話そう。それから今日は簡潔に内容を伝えるからその後は好きに休んでくれ」

 彼は自身の紹介を始めた。

「俺は、第三防衛隊隊長のヴィルヘルムだ。一応言っておくが、元ギルドの長だ。よろしく」

「それでさっき聞いてきたんですね」

 ハンス達は先ほどの問いかけに納得できた。


「よろしくお願いします。僕はハンス、こっちはシャルロッテ」

「よろしくお願いします」

 それから順番にローマンとスクルドも挨拶を交わす。


「ローマン?どこかで聞いたことがあるような……」

 ローマンの名前を聞いた時、ヴィルヘルムは首を傾げてどこで聞いたのか思い出そうとしていた。

「きっと気のせいですよ。似た名前はいくらでもいますから」

 ローマンは気にしない様に不敵な笑みで諭す。

「そう言うことにしておこう」


 そうしてお互いに挨拶を交わすと、ヴィルヘルムは本題に入る。

「まず君たちにやってもらいことを伝えよう。それは、君たちが作った商会が来年の国家運営選出戦に参加し、上位に入ってもらうことだ」

 重要な内容であることは分かる。だが、ハンス達はいまいち状況が呑み込めていない。

 何せ、その場にいた者の内3人は国の内情に詳しくなかったからだ。

「そんな大事なことに僕達が参加するということですか? それに商会を作るなんて……」

「私達には売るものなんてないと思いますが?」

 ローマンだけはある程度事情を知っているのがすでに内容を詰めていこうとしていた。


「売るものがないのは知っている。だからできなかったら罪人か破産をすることになる。君達には断ることができないのだろう?」

 この国では、罪人や破産など問題を起こした場合、程度によって期間が分けられるが、強制的な労働を課されることになる。


 自分達がここに来てしまったことで自身が人質となってしまっており、ここから出るためには何かしら罪状が付くことになる。

 これを断ったとしてもこれ以上の待遇は望めないと判断したローマンは仕方なしにヴィルヘルムの話に乗ることとなった。

「分かりました。その話、受けましょう。ただし、3か月の猶予はください。その間に売れるものがないか話します」

(そのまま話が進むとは思えませんが、できるだけ準備期間を作らないと……)

 大幅に猶予を設けたローマンだったが、それは大きく削られる。

「3か月の準備期間は長すぎる。1か月だ。その間は俺達が支援しよう。それを過ぎたら自分達で工面してもらうことになる。監視の目に引っかかるからな」

 第三防衛隊が関与していることを悟られたくないこともあり、ヴィルヘルムは1か月の支援しかできないとのことだった。


 置いてけぼりを食らっていたハンスはぼそりと呟く。

「この先何をさせられるんでしょうか……?」

 その声にヴィルヘルムは国の生い立ちと現状について説明してくれた。


「お前達は知らないんだな、俺が知っていることを教えてやろう。

 そうだな……この国は元々小さな集団が幾つもあって小競り合いが多かったらしい。それをある人がまとめ上げて今の国の基となる国ができたわけだ。

 それから月日が経って国の在り方が変化してきた結果、今は、商人が国の実権を握るようになった。

 一人の商人だと批判が多くなることから複数人で多数決を取って国の方針を決めようということになったんだ。

 じゃあどうやって決めるのか? それは、初代の商人が、考えた集金と富の自慢も兼ねた闘技大会が開催されるようになった。そこで上位10名の闘技者を雇った商人が国の方針に関われるという内容でだ。

 そんな内容で選出された上位10名の商人たちによって東西を分断し関税で儲ける国となったわけだ」

「それで壁が作られていたんですね」

 ハンスはこの国に来た時にみた光景を思い出す。


「最近の上位は、大きな商会が占めていて新参が入ることは難しい。だが、商会が大きかろうと強い闘技者を雇えれば上位に入ることは可能なんだ。だからあの巣穴を生きて帰ってきたお前達を選んだということだ」

 そう言ってローマンの顔を見る。すると彼は首を傾げていた。

「たったそれだけでなぜ私達を選べるんですか? ほかにもまともな人がいるでしょう」

 もっともな理由だった。何せほかの国に属していて面識もついさっき初めての人物を選ぶ必要があるのか。


「そのことだが……」

 その話になるとヴィルヘルムは口が重たくなる。

 少しの沈黙の後、話すことに決めたのか前置きを添えて話をしてくれた。

「このことは誰にも話さないでくれよ。

 この第3防衛隊を支援している商人……俺の雇い主でもあるんだが、その者は情報通のようでな。お前達を気に入ったらしい。理由は知らないが」

 その商人という者がハンス達を選んだということだった。情報通と言うことでハンス達の素性も知っているからこそなのかもしれない。


「その商人の名前は?」

 ローマンは神妙な面持ちで商人の名前を尋ねていた。

「ああ、名前はだな、ヒューキと名乗っていたな。一代でセーグ商会を片手で数えられるほどまで大きくしたんだから大したもんだ」

「ありがとうございます」

(ヒューキにセーグ商会……一度調べてみる必要がありそうですね)

 礼を述べると考え事をしはじめていた。


「長い間、話してしまったな。詳しくは明日聞いてくれ。失礼する」

 ヴィルヘルムは長く話してしまったことを申し訳なさそうにしながら去っていった。


「いろんな話がありすぎて頭が痛いわ……」

「ほんとですね……」

 ハンスとシャルロッテは言いあいながら座っていた椅子に姿勢を崩していた。

 スクルドは話に興味がなかったのか一切の反応を見せなかった。



「失礼します」

 丁寧な声と共に部屋の扉が開く。

「部屋の準備が整いました。そちらにご案内します。それと、洗濯と風呂場の準備が整っております。そちらも後でご案内します」

 その案内に連れられて部屋の外へ出る。


 そこから向かった先は、建物の外だった。

「部屋ってどこの部屋へ?」

「着いたら説明します」

 はぐらかされたままついていくこと数分、そこは明らかに一等地とでも言うべきだろうか。人でにぎわう大通りが近くにあり、その通りにも警備をしている者が見張っており治安も良さそうに見え、何をするにも不便なことはなさそうな場所であった。


「こちらです」

 そういって大通りから脇道に逸れてすぐの場所に2階建ての少しさびれた雰囲気がある建物の前で立ち止まる。


「ここが? ずいぶんと立派な建物ですね」

「こちらが丁度空いておりました故、案内させていただきました。4人で住まうには十分な大きさかと」

「はあ……そうですか」

(ここに住まされるということなのか? それよりもハンスさん達を休ませてあげないと)

 住まうという言葉に引っかかるがそれよりも早く休ませてあげたかったローマンは話を進めたかった。


「建物内を案内します」

 そうして扉を開けて建物の中に入っていく。


「2階に各自の部屋を用意しております」

 2階へと案内される途中、一階にあった部屋の札が見えた。

 作業部屋、風呂場、休憩場、厨房とこの建物で生活ができるような造りとなっていた。

 2階へと上がると、部屋が6つあり、どれも同じ造りの部屋で簡素な生活ができる程度の家具が用意されていた。


「お好きな部屋をお使いください」

 そう言われて各々部屋を選び、そう多くない荷物を置くと、風呂場へと案内された。


「今日は事前に準備していますが、明日からは自身でお願いします。使用方法はこちらにまとめていますので参考にしてください」

 そう言って2枚の紙をローマンに渡してきた。

 1枚は、建物の設備について書かれており、もう1枚は、生活に必要そうな店を書き出してくれていた。

 どれも分かりやすいように絵がついていてぱっと見でどうすればいいか分かりやすい。


「ありがとうございます。……これがあると分かりやすいですね」

「明日、朝に詳細をお伝えする者がこちらに来ます。それまで自由にお過ごしください。では」

 粗方伝えると彼女は、小さく頭を下げると立ち去ってしまった。


「せっかく用意してもらっていますし、順番に風呂場を使いましょうか」

 2人で入っても十分余裕がありそうな大きさだったため2組に分かれて風呂場を使うこととなった。

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