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星の魔力と探究者  作者: 早宮晴希
第2章 南の国編

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20/32

#20 救出作戦 前編

 翌朝、シャルロッテは全快したヘルムートに乗り、東の国にある学園へと急いだ。

「ヘルムート! 私のことは気にせずに全力でお願い!」

 彼女はハンスのやっていた魔法を見様見真似で行い、自身を守っていた。


 昼を過ぎた頃には、学園の上空にたどり着いていた。

「な、何とか帰ってこれたわ」

 ヘルムートは満身創痍な彼女をゆっくりと地面に降ろす。

「ありがとう、ヘルムート。行ってくるわ」

 軽くヘルムートを撫でるとジークハルトのいる学園長室へと向かう。


 学園長室には、ジークハルトと異変に気付いたローマンが駆けつけていた。

「何があったんじゃ? ハンスはどうした?」

「それが―――」

 ハンスが捕らえられたことを説明する。


「どうしますか、学園長。 私が行ってきましょうか?」

 ローマンはジークハルトに尋ねてはいるもののそわそわと準備を始めようとしていた。

「ふぅむ……お主だけで何とかできそうじゃが……しかしのぉ」

 迷う理由がわからなかったシャルロッテはジークハルトへの怒りを露わにする。

「どうして?! 何とかなるならローマンさんを連れて行ってもいいのでは?! ヘルムートに2人乗りすればすぐでしょ?!」


 彼女の勢いにたじろうとジークハルトは、謝罪するとともにローマンに許可を出す。

「すまなかった、シャルロッテよ。ローマンよ、行ってくれるか?」

「では、早速準備に取り掛かります」

 許可が出たローマンは残りの仕事を切り上げて瞬く間に準備を終える。


 ローマンは、小さな鞄を背負っていただけであった。

「では、行きましょうか、シャルロッテさん」

「はい! お願いします!」

 多少休むことができたシャルロッテは元気よく返事をすると2人はヘルムートの元へと急ぐ。


「多少重いかもしれませんが頑張ってください、ヘルムート」

 そう言ってローマンは2人の乗ったヘルムートを出発させる。


 ヘルムートは鳴き声をあげて一気に大空へと飛び立っていった。


 しばらく大空を飛び続け、南の国の領土へと入る。

「ヘルムート、速度を落としてください」

 ローマンがヘルムートに指示を出して頭を撫でると、それに従って速度を落とす。

 辺りを見下ろしてシャルロッテに今後の予定について話をする。

「今日はさすがに日も暮れ始めていますし、どこか休めるところで休みましょうか」

 ローマンの言う通り、地面を照らす光は赤みを帯び始めており、次第に暗くなり始めている。


「でも……ハンスが……」

 シャルロッテはそれでも諦めきれない様子であったが、ローマンにしがみ付く力は明らかに弱まっていた。


「調べることがありますし、運が良ければ同行してくれる者がいるかもしれません。だから……今日は私に時間をください。その分、明日は必ずハンスさんを助けましょう」

 ローマンの説得にシャルロッテは小さく頷く。


 ヘルムートに指示をして首都から少し離れた村へと降り立つ。


 それを見た村の門番が警戒して武器を構えていた。

「お、お前ら何もんだ?!」

「子供ずれで何の用だ?!」

 門番の2人は口々にローマンに向けて問いかけると、穏便に済ませるためにヘルムートから降りるや否や、両手をあげて抵抗の意思がないことを示し、事情を説明する。

「私達にあなた方と争いに来たわけではありません。ただ、ここに泊めてもらうことはできませんか?」


 門番の2人は、お互い顔を見合わせローマン達に聞こえない声で相談している様子であった。


 相談を終えると、ローマンに尋ねる。

「おい、お前らはギルドのもんか?」

「ギルドに? 私達はギルドに所属していません」

 門番の問いかけにローマンは、嘘はつかずに答える。


「そうか。だが、ただでは通すわけにはいかん。お前さんが持っている金を少し分けてくれりゃあ考えなくもない」

 門番はにやけ顔を隠しきれずにローマンに不当な要求を通そうとしていた。

「ならこれで足りますか? これで自由に付近の村にも行き来できるようにしてもらえると助かるんですが……」

 ローマンは、通貨の入った小さな袋を取り出して、門番の1人に手渡す。

「こ、これは?!」

「た、大金じゃないか!」

 手渡された門番が中身を確認すると、小さな袋には金貨がびっしりと詰まっていた。

 それに驚いた門番にもう1人の門番も中身を確認すると、同様に驚いていた。


「へへっ、どうぞどうぞ、自由にしていってください。 後で他の村にもすんなり入れる手形も渡しますんで! ゆっくりしていってください!」

 彼らでなくても大金に思える額をあっさり手渡したことで媚びを売るような態度へと一変する。


「ありがとうございます。 ではまず、宿に案内してください」

「私が案内します!こちらへどうぞ」

 門番の1人が先導する形で、ローマン達は宿に案内される。


 宿の前にたどりつくと、宿の前で待たされ、門番が先に中へと入る。

 何やら事情を説明しているようで、少しすると宿の扉が開き、中から門番が手招きをしている。

「お待たせしました。どうぞ中へお入りください」


 宿の中に入ると、大慌てで動く従業員達の姿が目に映る。

「これは一体……?」

 ローマンはただ泊めてもらいたかっただけのはずであったが、彼らは、普段では使っていないであろう高価な敷物や置物など接待するための準備をしている様子であった。


 ローマンが固まっていると宿の主であろう人物が、高価そうな装いに着替えていたのか奥から出てきて彼の元にやってくる。

「どうぞお越しくださいました。この宿で一番の部屋をご用意の準備をしております。今しばらくこちらで食事でもしてお待ちいただけますか?」

「ありがとうございます。では、食事を2人分お願いします」

 宿主の接待具合を気に留めることなく、ローマンは待っている間に食事をとるために用意をお願いする。


「承知いたしました、2人分ですね。こちらでお待ちください」

 2人は席に案内されると、宿の主は厨房へと向かい、指示を飛ばしていた。


 席に座ったシャルロッテが口を開く。

「なぜあんなにお金を渡したんですの?」

 その疑問に対してローマンは、微笑んで答える。

「こういった対応される方が、色々楽でしょう? 多少目立ちますが、それも今回は利用しましょう」

「目立つのを利用……?」

「明日になれば、分かりますよ」

 含みのある答えにシャルロッテは気になっていたが、ローマンは説明することはしなかった。


 その後、食事を終えるころには部屋の準備が終わり、他の村でも行き来できる手形と共に部屋の鍵を受け取る。

「では、この鍵をお渡ししますね。部屋で休んでいてください」

「ありがとうございます、ローマンさん」

 ローマンは部屋の鍵だけ渡すと、宿を後にする。


 部屋へと向かった彼女は、寝床へと腰掛け仰向けに倒れこむ。

「明日のために休まないと――――すぅ……すぅ」

 自身の思っていた以上につかれていたのか、すぐに眠りについてしまう。



 救出の準備をするシャルロッテ達であったが、ハンスは檻の中でロルフと一晩かけて情報の交換を行っていた。

 ロルフは外にいる友人の話を聞けてうれしかったのか終始にこやかな表情でここで得た情報を話してくれた。


「今日、これから起こることについて話すぞ」

 ロルフは先ほどまでのにこやかな表情から一変して真剣な表情へと変わっていた。

 ハンスもそれにつられて固唾を飲んで聞いている。

「まず、俺達は彼らの王女と王様に合うことになる。俺がそうするように彼らを誘導したからな」

「それはどうやって?」

「簡単な話さ。彼らの王女はすごく好奇心が旺盛な者でな。人間の殺し方を実演するから会わせてくれって言ったら許可がでたわけだ」

「そんな簡単に会えるものなんですね」

 ハンスはすごく不用心な王女だなと思いながら続きの話を聞く。


「それは俺が前々からいろんなことを教えていたからだな。多少なりとも信用してくれたんだろう」

 だが、ハンスは王女と王様を殺すことに意味があるのか気になっていた。

「でも王女と王様を殺しても何か変わるんですか? さっき聞いた話では、社会を作っていると聞きましたが……」

 ロルフは深く頷き説明をする。

「もちろん、彼らの社会では、王女と王様は絶対だからな。ゴブリンからするとオークも絶対だろうけど。ただ……」

 彼らが構成する社会の最上位を殺してしまうことで統制が取れなくなるだろうとロルフは考えていた。


 ロルフは彼らの社会の仕組みに違和感を覚えていた。

「なぜ王女と王様が2人いるのかがわからん。2人いて統制なんて取れるものなのか」

 その違和感にハンスは何気なく答える。

「2人はつがいなのでは? それならどちらかだけが統制を取っていれば問題ないかと」

 それを聞いたロルフは顔を横に振って否定する。

「いや、それだとおかしいんだ。王女の姿は確かにオークやゴブリンのような見た目をしているんだが、王様に至っては、体を隠していてわかりにくいが、オークのような肌ではなく、俺達のような人間の肌だった」

 ロルフが見たことある王女と王様の姿は、緑色をした肌の王女と人間の肌をした王様であった。


「異種間での交配だってあるだろうが、普段の関係性からしてあまり考えずらいものだな」

 2人は唸りながら考えても推測の域を出なかった。


 そして諦めたロルフは、話の続きに戻る。

「今日起こることの続きだが、王女と王様にあったら武器を2本もらう。それから攻撃開始だ」

「何か合図はありますか?」

「そうだな……俺達が殺し合いを始める合図に合わせるとするか」

 ロルフの提案にハンスは頷く。


 それから少し経つと、2人は王女と王様に合うために檻から連れ出されていった。



 翌朝、大穴の外では、ローマンにヘルムート、シャルロッテが先頭を切って入口までたどり着く。

「ふぅ、入口までの相手は、片付きました。あとは、中に押し入るだけです」

 大穴の入口までに少なくない数のゴブリンやオークがいたものの、それをなぎ倒したにもかかわらずローマンは疲れを見せることはなかった。

「ここからが本番です。準備はいいですか?皆さん」


「「おぉー!」」

 返事をする声は幾つも重なり大きな音となっていた。

「ほんとにこんだけ集まるなんて……」

 シャルロッテは大勢がここまでついてきたことに驚いていた。


 昨日、シャルロッテが眠りについた後、ローマンの元に首都から派遣された者達が来ていた。

 それをローマンは、金の力を使いついてくるように説得をしていた。

 その結果、30人程度がローマンと共についてくることを選択した。


「彼らもお金に飢えていたということでしょう」

 首都から派遣された者達の中には、ギルドを抜けた者達が大半だった。

「ここを制圧することが出来たら、それぞれに言い値を渡しましょう」

「「おぉおおおお!!!」」

 ローマンは通貨の入った袋をチラつかせながら仕事の内容と報酬を伝えると、大きな雄たけびが巻き起こる。


「では、お願いします」

 ローマンが合図を送ると、ついてきた者達は、我先にと大穴に入っていった。


「だ、大丈夫なの?」

 その勢いに圧倒されたシャルロッテは顔を引きつらせてローマンに視線を送っていた。

「彼らなら少なからずやってくれるでしょう。どれだけが生き残るか分かりませんが」

 彼らのことを生死を問わない言い方をするローマンに、抗議の声があがる。


「それはさすがにひどいんじゃないかい?」

「え? 誰?!」

 自分たちのほかに人が残っていたことに驚いたシャルロッテが勢いよく振り返る。


 そこには、男女2名が残っていた。

 男性の方がローマンに対して尋ねており、女性は暇そうにそっぽ向いていた。


「彼らは自分の私欲のためにギルドから離れていった者達です。そう言われても仕方ないでしょう?」

「生きるのにお金がいる。だから仕方なかったことだよ」

 言い改めることなく、さらに追い打ちをかけるローマンに男性は苦笑いを浮かべながら、彼らのことを擁護していた。


 彼は、まだ名乗っていなかったことを気にして、手短に自己紹介を始めた。

「すまない、僕達まだ名乗ってなかったね。僕はカイ、魔法士をしている。こっちはニコラ、狩人をしていて、僕達はギルドに所属している数少ないメンバーだよ」

「あなた達でしたか。私は、ローマン。こちらは、シャルロッテ。東から来たものです。今はここに捕らえられた彼女の婚約者を助けるためにこうして赴いています」

 彼らのことを事前に調べていたのか、ローマンも簡単に紹介を済ませる。

「そう……その年で婚約者ね。うらやましい。僕なんて―――はぁ」

 カイは、シャルロッテを羨ましそうに見た後、ニコラに向けて肩を落としてため息をつく。

「何? 挨拶は終わった? 早くいかないと獲物が取られちゃうよ?」

 カイのため息もむなしく、ニコラには一切伝わっていなかった。

 それよりも中に入りたそうにそわそわしていた。


「はいはい、じゃあ僕達も行こうか。君達は後から来るのかい?」

 大穴に向けて歩を進めながらローマンに尋ねる。

「いえ、せっかくなら一緒に行きましょうか」

「そうかい」

 4人は足並みを揃えて大穴を進んでいく。


 大穴の入口付近から感じていた、不快な臭いが中に入るさらに濃くなっていく。

 それも奥から流れてくる風に乗ってやってくる。


「これは血の臭い……? それ以外にも、腐ったような臭いまで……」

 シャルロッテは鼻を押さえて険しい表情をしていた。

 奥からは、悲鳴や金属がぶつかる音や、何かを叩きつけるような音が響いてきている。

「そうでしょうね。ここには、かなり前から人の死体があるみたいですし」

 火の灯りを頼りに2人して周りを見渡していくと、真新しい死体と、体が白骨化し始めている死体があったりと入り混じっていた。


 一本道を進む間に、カイは2人に話かける。

「そういえば、彼らの生態をどこまで知っているんだい? 僕達の知っていることなら教えるよ」

「それはありがたいですね。ぜひ教えて下さい。私達が知っていることは、彼らが人間を襲うということですね」

 ローマンはカイからの情報提供をありがたく受け取る。

「そうだねぇ、どこから話したものかな……」

 それからカイは、彼らには社会があり、ゴブリン、オーク、王女と王様の順で階級が決まっていることや彼らの主食は人間ではないことを教えてくれた。


「彼らの主食は人間ではない……? それなのに人間を襲うなんて……」

 カイの話を聞いたシャルロッテは驚いていた。

「それを知った時は僕も驚いたね。じゃあ、何のために人間を襲うと思う?」

 カイはシャルロッテに悲し気な笑みを浮かべて尋ねる。

「それは……服を奪うため?」


 彼は、それを聞くと頷く。

「それも1つだろう。でも彼らは人間を狩ることを楽しんでいる。いわゆる娯楽の1つになっていることかな」

「えぇ?! そんな理由で人が殺されているの……?」

 シャルロッテは、驚くもそれ以上に怒りと悲しみが込み上げていた。


 しばらく分岐のない道を進んでいくと、大きな広間にたどりつく。

 そこら中に、オークやゴブリンや金に釣られて入ってきた者達、連れ去られた村人の死体が転がっている。

「ここは何だったのかしら? 死体しかないわね……」

 その場所には、灯り以外何もなく、奥に進む道が3つに分かれているだけであった。


「どの道にハンスさんはいるんでしょうか」

 ローマンはそれぞれの奥の道の入口に立って調べている。

「どこからも風は来てますし、その風からの臭いもどこも同じですね」

「どの道へ進めばいいのかしら……」


 2人が悩んでいると、カイは3つの内、左の1つを指指す。

「この道のはずだよ。変わってなければ」

「なるほど、それがここに調査に来ていた人の情報ということですか」

「まぁね」

 そんなやり取りをしつつ、左の入口を進んでいく。


 その道を進んでいくと、一際大きな扉が奥に見える、広い空間へとたどりつく。


 そこでは、先にたどり着いていた者が戦った痕跡が残っている。


「あぁっ!!」

 シャルロッテが気づいた頃には、最後の1人が頭をつぶされる瞬間であった。


「あれは……オークにしては大きいな……」

 体を血で赤く染めたオークが握っていた人を投げ捨てると、4人へと睨みつけてくる。


「ココハトオサナイ」

 オークは言葉を発すると、その場で仁王立ちをする。


「さて、僕達も仕事をしないともらえないかもしれないからね。準備はいいかい?ニコラ」

「いつでもいいわ」

 カイとニコラは一歩前にでる。


 それに合わせて仁王立ちしていたオークも戦闘態勢に移る。


「僕がけん制するから、一発入れて戻ってきて」

「分かったわ!」

「じゃあ行くよ!」

 そう言うとカイは、火の玉をいくつか放つ。

 その火の玉がオークへと命中すると黒煙が広がる。


「クッ」

 オークはその黒煙を振り払おうと手を振り回す。


「一発目! いただき!」

 黒煙を利用して懐に潜り込んだニコラは短剣を腹部へ一撃を入れる。


 だが、オークには傷一つつかず、慌ててニコラがカイの元に戻ってくる。

「普通あれでも通るよ?!」

「確かにね。それに黒煙のために放った魔法も攻撃にもなるはずだけど聞いてなさそうだね」


 その様子を後ろで眺めていたシャルロッテがローマンに助けないのか尋ねる。

「私達は見ていていいんですの?」

「まぁ、彼らが諦めて助けを求めてきたら助けましょう」

 ローマンは静観を決め込んでいた。


「弓で目を狙えるかい? 足止めは僕がするよ」

「任せて!」

 ニコラが弓を構えるとカイが魔法を放つ。

 今度のは、オークの足元へと飛んで行く。


 オークは避けようと横に回避行動をするが、それに合わせて魔法の軌道も変わる。

「ナニ?!」

 驚くオークの足元に放った魔法が直撃する。

 すると、オークの足は地面に沈み込む。


「今だよ!」

 カイの合図でニコラは弓を放つ。


 オークは気が逸れていたこともあり、矢の軌道を追うことができずにいた。

「グアア!」

 オークが気づいた時にはすでに眼前へと迫り、眼に矢が刺さる。


「ついでにこれもくらえ!」

 カイは火の玉をオークの顔へ向けて放つ。

「ガアアア! アヅイ!」

 守ること叶わず、オークの顔に火の玉が直撃し、炎に包まれる。


「ニコラ! さらに追撃! 喉元だ!」

 短剣に持ち替えるとニコラはオークの喉元に向けて最短距離を進む。

「とどめ!!」

 ニコラの掛け声とともに喉元に突き刺す。

 突き刺さったものの、引き抜く前にオークの手にニコラの腕が捕まれる。


「ヨクモヤッテクレタナ……」

 炎に包まれたまま片目でニコラを睨みつける。


「ニコラ!」

 名前を呼ぶカイであったが、その距離では何をするにも間に合わない。

「貸しですからね」

 声が聞こえたかと思うと、影が横をすごい勢いで通りすぎる。


「くそっ!放せ!」

 腕を握られて宙づりになっていたニコラは必死に抵抗するも、オークは殴りかかろうと拳を固める。


「っ……!? あ、あれ?」

 振りかぶった瞬間、当たる寸前で拳が止まる。


 オークの拳を片手でローマンが受け止めていた。

ローマンからは僅かながら、青白い光を纏っていた。

「着地に備えて」

 ローマンはそう伝えると、喉元に突き刺さっている短剣を抜き、オークの腕をいともたやすく切り落とす。


「きゃっ」

 ニコラは慌てて着地し、カイの元へ撤退する。


「はは……なんて強さなんだ……」

 カイは乾いた笑い声をあげていた。

「私じゃ傷すらつけれなかったのに……」

 ニコラは力量の差を見せつけられて落ち込んでいる様子であった。


「オマエ……!」

 ローマンが受け止めた状態から握りつぶそうと拳を開く。

「では、トドメとしましょう」

 早業の如く、オークが掴むよりも早くローマンが拳を突き立てる。


「ゴハッ!」

 腹部に直撃したオークは埋まっていた足が抜けて大きな扉へと吹き飛ばされていった。

 大きな音と共に扉へとぶつかったが扉は一向に開く気配がなかった。


「あれでも開かないんですね……」

 ローマンは不思議そうに首を傾げていた。

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