#19 束の間の練習
翌朝、ハンスとシャルロッテはヘンドリック達と共に朝食を取っていると、ヘンドリックが改めて南のギルドの仲間について紹介していた。
ハンスとシャルロッテは一旦食べるのをやめて聞く姿勢に入った。
「んじゃ、改めて俺達のギルドにいる数少ない仲間を紹介するぞ。まずは、俺のことは知っていると思うが、このギルドの長だ、まぁ成り行きでだけどな」
そう言って自分の胸に手を当てて自己紹介をすると、丁度両端に座っていたイリーネとフーゴの肩をもって紹介をする。
「んで、この2人は、こっちがイリーネでこっちがフーゴだ。数少ないギルドの事務ができる者達だ」
2人は肩に置かれた手を払うとハンスとシャルロッテに挨拶する。
「よろしくね。私はイリーネ、昨日の夕食は一緒だったけどほとんど話せなくてごめんね」
「よろしく。俺はフーゴだ」
イリーネは優しそうな声で、フーゴは少し緊張した声色で挨拶をしていた。
それに答えるようにハンスとシャルロッテも挨拶を返す。
「よろしくお願いします。イリーネさん、フーゴさん。僕はハンス・アルカーバーです」
「私はシャルロッテ・ローデンヴァルト。よろしくお願いします」
続けてヘンドリックは、ここにはいない仲間のことも教えてくれた。
「それと、ここには全然帰ってこないが、3人ほどいる。彼らに会えばすぐにわかるだろう」
そう言い残して彼は、先に席を立ち、自身の部屋へと戻ってしまう。
残された4人が食事を続けていると、イリーネがハンス達に問いかけていた。
「家名があるのね……なのにこんな所へ来て何をしようとしているの?」
彼女の言葉からはうらやましさと共に、そんな者達がなぜここに来ているのか気になったようだった。
「それはですね―――」
それからハンスは、これまでの経緯とここに来た目的について説明する。
それを聞いたイリーネは悲しげな表情を見せる。
「そうなの……そんなことが……」
少し間が空いた後、キリッとした表情に変わったかとハンスとシャルロッテの手を取り、協力することを伝えてきた。
「私達にできることがあったら言ってね、できる限り協力するから!」
「あ、ありがとうございます」
それからも食べながら南の国のことや東の国のことなどを話し合いながら食事を終える。
一息ついていたハンスとシャルロッテに、先に席を離れていたヘンドリックが身支度を終えて帰ってくるなり、2人に声をかける。
「お前達、夕食の食材を取りに行くぞ」
「え?」
2人は唖然としていると、食器を片付けていたフーゴが驚いた拍子に食器を強くぶつけ、大きな音が鳴る。
「え? なんで?! 今日の当番は俺じゃなかった……ですか?」
「あぁ、だが、この2人にもやってもらいたいことがあってな。変わってもらおうかと思っていたんだが……だめか?」
ヘンドリックは頭を掻きながら、話をする順番を間違えたなと思いながら説得する。
「あ、いやだめではない……です。ただ、前に教えてもらおうとしていた罠の作り方を聞けないなって思っただけだから」
フーゴは以前に約束をしていたのか、少し名残惜しそうにしているとヘンドリックが提案する。
「なら今日この2人に教えることができたら、教えることを約束しよう」
その提案にフーゴは訝し気に眉を寄せる。
「その約束はあまり当てにならないってイリーネは言ってた。それに何を教えればいい?」
普段の行いからか、ヘンドリックの約束は当てにされていなかった。
それを聞いた彼は、肩を落としてため息をつくと、フーゴの元へと近寄る。
「そうか……? はぁ……2人教えるのはだな……」
「……?」
そこから先はフーゴにしか聞こえない声量で伝える。
「彼らに動物の絞め方を教えてやってほしい」
それを聞いたフーゴは、疑問に思う。
「なんでわざわざ?」
「昨日の戦いの痕跡を見て彼らには殺意がない……というよりは、殺すこと自体してこなかったんだろう。だからこれぐらいはお節介かもしれないがな」
ヘンドリックは2人に視線を向けながら、説明をするとフーゴからため息が漏れる。
「はぁ……それは俺達にしたみたいに慣れさせるためってこと?」
フーゴの肩に手を置いてヘンドリックは頷く。
「ああ、そういうことだ。頼めるか?」
「わかっ……りました。少し準備するので待っててください」
フーゴは返事をすると急いで支度を始めた。
その間にハンスとシャルロッテにフーゴが夕食の食材を取りに行くのに同行することを伝える。
そのついでにヘンドリックは別の用事があると言ってどこかへ出かけてしまう。
しばらく待っていると、フーゴが支度を終えて2人の元へとやってきた。
「じゃあ、出発していいか?」
「あ、はい!」
待っている間に支度を終えていたハンス達はフーゴの後を追いかけるようについていく。
「行ってらっしゃい。気を付けて」
その様子を建物の外で箒を使って掃除していたイリーネは見送る。
黙々とあるくフーゴについていくハンスとシャルロッテ。
しばらく歩いていると森の入口へとたどり着く。
森の中を見ていると奥には木々の隙間から山の斜面がちらちらと見えていた。
森へ踏み込む前に振り返り、2人に注意を促す。
「足元、あぶないから気を付けて」
「はい、気を付けます」
返事を聞くと頷き、森へと進み始めた。
シャルロッテがハンスの服を引っ張り何やら黙々と歩いているこの状況について気にしていた。
(ねぇハンス、もう少し話できないかしら?)
(あまり話すことがなくって……考えてみます)
進み続けると、緩やかな坂から急な斜面が現れ始めていた。
フーゴは慣れた足取りで少し進んでは、2人がついてきているか振り返って待っていた。
「こんな険しい場所で何が取れるんですか?」
不慣れな足取りで追いかけるハンスは、フーゴに尋ねる。
「このあたりは、モンスターの被害が少ない。だから、動物がいる」
「動物がいるなんて……」
「野生の動物なんていないと思っていたわ」
2人は野生の動物がいることに驚いていた。
モンスターが現れてから動物も大きな被害を受けており野生に生息はしていないと、2人は教えられていた。
「彼らも進化している……んだと思う」
フーゴは向かう先に視線を送りながら、ぼそりとつぶやく。
その視線の先には、山の中腹には珍しい平坦で穏やかな風景が広がっていた。
「こんな所があるなんて……」
「穏やかでいいわね」
2人はその風景に見とれていると、フーゴが平坦な場所へと繋がる獣道を指差している。
「そこは、だめだ。こっちが目的地だ」
「え? ここにならたくさんありそうなのに……」
シャルロッテは不服そうにつぶやくとフーゴがそれに答える。
「そこは動物達の場所だから、俺達は入らない」
「そうなのね、なら仕方ないわ」
そういうことなら仕方がないかとシャルロッテは納得する。
獣道へと向かうと、罠が幾つか仕掛けられているのが見える。
そして一つの罠には興奮して逃げ出そうと暴れている小さな動物が捕らえられていた。
「このあたりはウサギ一匹だけか」
そう言ってフーゴは罠に掛かっているウサギへと近づく。
フーゴが近づいてもウサギは気にも留めずに逃げ出そうと暴れている。
「ハンス、俺は、お前に教えるように言われている。だからまず手本を見せる」
フーゴがウサギを抑え込み、ハンスに手本を見せようとしていた。
「わ、分かりました」
ハンスは固唾を飲んでフーゴの手元を見る。
フーゴは短剣を取り出しウサギの首に躊躇なく切り込みを入れる。
ウサギは、少しの間もがいたかと思うと、ぱたりと動かなくなった。
「どうだ? できそうか?」
フーゴは動かなくなったウサギの足を縛りながらハンスに確認する。
「は、はい……やらないといけないことは分かりました。でも……」
ハンスは戸惑いを残す返事をしていた。
「次にいこう」
そう言ってフーゴは縛ったウサギを担ぐと次の場所へと向かう。
更に獣道に沿って歩いていくと、暴れているような草木に触れる音が聞こえてきた。
「こっちは大きそうだな」
フーゴはそう言って木陰に隠れながら様子をうかがう。
「グギギ」
罠に掛かっていたのは、動物ではなくハンス達が対峙した緑色をした者であった。
「こんなところになぜゴブリンが?! それに一匹だけでいるなんて……」
フーゴが驚いていると、罠に掛かり足を怪我しているにも関わらず、地を這って逃げようとしていた。
「ゴブ……リン?」
ハンスとシャルロッテは聞きなれない名前に顔を見合わせてお互い確認する。
2人共、顔を横に振っていてその名前に聞き覚えがなかった。
「奴らを生かして帰すわけにはいかない」
そんな中、フーゴは短剣を取り出したかと思うと、そのゴブリンに向かって歩み寄る。
近づくと、彼は馬乗りになり逃げられないようにする。
「ナ、ナンダオマエハ?! ハナセ!」
馬乗りになるまでゴブリンはフーゴのことに気づかなった。
彼は暴れられる前に手足を切り付けゴブリンを無力化する。
「2人共こっちに」
フーゴは木陰に隠れたままの2人に近寄るように合図を送る。
寄ってきたハンスに短剣を差し出す。
「これで止めを刺して」
血が付いた短剣をハンスは恐る恐る手に取る。
「この首元をそれで切ればいい」
そう言ってフーゴはゴブリンの頭を押さえて首を動けなくさせる。
「ヤメロ! ヤメテ! マダシニタクナイ!」
ゴブリンは命乞いをずっとしている。
「こ、これで首を切る……切れば、止めを刺せる……」
ハンスはぶつぶつと言いながらゴブリンの首元に短剣を当てる。
「ヤメテ! コロサナイデ! マダイキタインダ! ナア!」
言葉がわかるが故にその命乞いの意味を解ってしまう。
「う……これをこのまま力を入れれば……」
だが、どうしてもそれ以上力を入れることができずにいた。
「仕方ない」
フーゴはそれだけ言ってハンスの持つ短剣をハンスの握る上から掴み首へ切りつける。
「グガアアアアア! アア、ア……アアァ……」
その断末魔を聞きながらハンスは初めて吹き出す血しぶきの温かさに浸っている。
「あぁ……この手で……」
肉が裂ける感触を残す手は震えている。
「近くで休んでて」
それだけ言ってフーゴは茫然とするハンスから短剣を取り上げると、近くにいたシャルロッテの元へと背中を押す。
「あぁシャル……」
虚ろな視線を送るハンスを心配そうにシャルロッテは声をかける。
「ハンス……彼らは人間じゃないのよ、言葉を話せたとしても彼らはモンスターなの。だから……」
「そう……ですね。この手で……」
血の付いた震える両手を見ながら返事をしている。
少しして実感が追い付いてきたのかハンスは吐き気を催す。
「うぅ……近くで……吐いて―――」
言い終わる前に彼はその場から急いで離れていった。
「あまり遠くには行かないでね!」
その背中にシャルロッテは遠くに行かないように伝える。
そうしているとフーゴが、険しい表情でぶつぶつと何かを呟いていた。
「なぜ助けなかったんだ? 彼らならこれぐらい外せるだろうに……」
その様子に気づいたシャルロッテがフーゴの元へと近寄る。
「何かあったんですの?」
声をかけるシャルロッテに返事をしつつも、死体となったゴブリンの体を観察していた。
「彼らは集団で行動しているのは知っているか? 助け合ったりもするから、こうして罠にかかると助けてもおかしくないんだけど―――ん? これは……」
うつ伏せになっていた体をひっくり返すと、腹に当たる部分に異様なものが見つかる。
「これのせいで捨てられたのか」
その腹は、紫色に変色して這いずってついた傷とは思えないものであった。
「それって……あざが出来たから捨てられたってこと? それだけで捨てられるんなんて……」
シャルロッテは悲し気にゴブリンの仰向けに横たわる姿を見ていた。
フーゴは這いずっていた痕跡の長さを観察する。
「あまり長くない……だとしたら、彼はまだ捨てられて間もないかもしれない。早く離れよう」
フーゴが結論付けた答えを声に出す。
「え?! だとしたらハンスが危ないじゃない!」
それを聞いたシャルロッテは慌ててハンスが向かった先に走り出す。
「今逸れるのは危ない!」
フーゴも後を追ってその場を離れる。
「ハンス! どこ?!」
ある程度進んだ先で大きすぎない声量でハンスを呼ぶ。
見渡してみても人影は見つけれれない。
「シャルロッテさん! これを見てくれ」
フーゴがしゃがみ込んで地面を見て呼んでいた。
そこにはハンスが吐いたであろう痕跡が残されていた。
「ここにハンスが居たのね。でも周りには誰もいないわね」
「こうなったのは俺のせいだ……」
フーゴはしゃがみ込んだまま俯いて後悔を口にしている。
「こうなってしまったのは私のせいでもあるわ! だから、そんなこと言っている場合じゃないわ!」
フーゴを無理矢理立たせシャルロッテは今やるべきことを見据える。
「フーゴさん! 彼らはどういった習性があるの? ……例えば、餌は持ち帰るとか」
「あ、あぁ……彼らなら人を捕まえると自分達の住処に連れて帰ることが多いな。それに、聞いた話ではすぐには殺さないとも聞いた」
シャルロッテの気迫に押されたフーゴは、我に返り彼らの習性について知っていることをシャルロッテに共有する。
それを聞いたシャルロッテは、若干ではあるものの安心していた。
「そうなのね、ここで殺されることはないのね」
「でも急がないと危ないのは確かだ。だから早くマスター達に伝えに行かないと」
フーゴはいち早くヘンドリックに伝えに行こうと提案する。
「そうね! でも彼らの住処は分かっているの?」
「それなら分かる。彼らの住処は一つしかないから」
フーゴは住処についてはよく知っているようであった。
「なら、早く知らせないと!」
2人は急いで帰路につき、その日の夕暮れには、拠点へと帰ってきて起こった出来事を伝える。
「俺がもっと事前に察していればこんな事には……だから俺も助けに行きたい!」
「それを言い出したら俺が気づいていればこんな事にはならなかったということになる。ハンスを助けてやりたいのは山々なんだがな……」
2人の出来事を聞いたヘンドリックは、悩ましそうにしていた。
その悩みは現状、解消されるようなものでもなかった。
「助けに行きたいんだが、なにせまともに戦えるものが今ここには、レイしかいない。一人だけであの住処を制圧するのは無理がある」
彼はシャルロッテに助けにいけないことを伝える。
「戦わなくたってハンスだけ連れて帰れればいいじゃない!」
ヘンドリックの言い分にシャルロッテが反発する。
困った表情でヘンドリックは頭をかいて説明する。
「そうも言ってられないんだ。彼らの住処はあの山にあいた大穴だ。 うちのメンバーが調査に行った情報では、中は一本道が入口から相当続いていて、バレずに侵入することは難しいらしい」
「そ、そうだったとしたら、他に出入口はないの?!」
それ聞いたシャルロッテはそれでも納得できずにほかに出入口がないかと食い下がる。
「今の所は見つかっていない」
ヘンドリックは一言、発見できていないことを伝えた。
「そんな……じゃあ、どうやってハンスを助ければ……」
シャルロッテは手助けを得られそうになく、さらには潜入も難しいということで、ハンスの救出は絶望的であった。
「なら私だけでも助けに行くわ!」
自棄にも似たことを言い出して、拠点から飛び出していこうとしていたシャルロッテを、出入り口でイリーネが止める。
「そんなことをしたって無駄死にするだけよ! もっと他に方法がないか探しましょ?」
「ほか……ほかって何があるの?!」
「そ、それは……」
荒れるシャルロッテの言葉にイリーネは後ずさる。
「まてまて、お前ら。方法ならなくはないんじゃないか? まぁすぐには助けに行けないが」
2人の言い争う合間にヘンドリックが割って入る。
「何があるの?」
一旦飛び出していこうとするのは止めたシャルロッテはヘンドリックに尋ねる。
「お前さんの学園が計画しているんじゃなかったか? 俺らのギルドへの人材の派遣をな」
「え? でも、学生だけだとあまり変わらないんじゃ……」
「そんなことはない。それに、ここに来るまでに護衛が付くものだろう? 彼らも併せて向かえば助け出せるだけの戦力にはなるんじゃないか?」
あまり期待していなかったシャルロッテにヘンドリックが説明を付け加える。
「そう……ね。でも助けに行けるまで1週間以上掛かってしまうんじゃ……」
「まぁ、そうなる。だが、それが一番確実だぞ」
ヘンドリックはそれ以上言わずに、シャルロッテの判断に委ねていた。
一方、シャルロッテと別れた後のハンスは、体を揺さぶられる感覚で目を覚ます。
「ん……ここは?」
(確か、吐いていた時に後ろから殴られたような……)
頭の痛みを気にしながら、上体を起こして周りを見渡す。
そこは、木で作られた檻に入れられており、周囲の材質は土や岩のようであった。
「洞窟……?」
真っ暗ではなく、火で作られた灯りを頼りに周りを見渡せるものの薄暗く、一方から常に緩やかな風が吹いていた。
遠くからは、話し声のような音と水が滴るような音が聞こえてくる。
外ばかり気にしていたハンスに一人の男性が声をかけてきた。
「よぉ、お前さん! 新顔だな! 俺のこと気づいてなかったろ?」
陽気に話しかけてきた彼の見た目は、村人とは言えない体格であり、髪と髭は伸び放題で薄汚れていた。
「誰?」
「俺はロルフだ! よろしくな!」
その人物はロルフと名乗っていた。
「えぇっと……ハンスです。よろしくお願いします」
ハンスは流されるまま挨拶を返していた。
「おう! それでハンスはどこから来たんだ? 雰囲気的に……南の者じゃないな?」
ハンスを観察するように全身を見渡してロルフが尋ねる。
「え、分かるんですか?!」
ロルフの観察眼に驚いていた。
「あぁ、何となくだけどな! それでなんで来たんだ?」
ハンスはここに来た経緯を話す。
話していたハンスはフーゴとの出来事を思い出して、また吐きそうになっていた。
「ふむ、なるほどな。ハンスはマスター達の世話になっていたんだな。 フーゴが元気そうで何よりだ」
ロルフは頷きながら、小さく微笑んでいた。
(彼が言っていた3人の内の1人なんだ……)
ヘンドリック達のことを知っているようであった。
「ここで何をしているんですか?ロルフさん」
ハンスが檻に閉じ込められている理由を尋ねる。
「ん? 俺か? ここで、彼らの行動を観察しているんだ。最近はこうやって隔離されて困っているんだけどな」
ロルフは飽きれたように両手を開いて、ため息をついていた。
「ということはここが彼らの住処なんですね。 いつからここに?」
ここがあのゴブリン達の住処であることを察したハンスは、ロルフがいつからいるのか気になった。
「俺はな……10日?……あれ? もっとか? なんせ陽の光なんて全然見ていないからな! どれだけ立ったかわからん!」
ロルフは首をひねりながらいつからいたか思い出そうとしていたが、結局曖昧なままで長い間居るということだけが分かった。
(すぐに殺されないなら逃げだすことはできるかもしれない……)
それを聞いたハンスはすぐに殺されないのであろうと思い、安心していた。