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星の魔力と探究者  作者: 早宮晴希
第1章 学園生活編
11/29

#11 港街①

 ハンス達が港街に着いた頃、港街のとある部屋で話す男女がいた。

 その部屋は研究室なのだろうか、研究材料と思われるものが雑多に置かれ、机には、古びた本が積まれている。

 1人はその部屋の主なのか、椅子に座りながら何か熱中するように机で作業をしていた。

 もう1人は、その向かい側で机に積まれた本を適当に手に取り、ぶつぶつと言いながら本棚へと片付けている。

「またこんなに散らかして……」

 熱中していてその声は、部屋の主には届いておらず、作業する手を止めることはなかった。

 しばらく本を片付けていると、突然に短く叫ぶ声が聞こえる。

「わからん!」

 その声を聞いて片付けていた手を止めて、叫び声のした方へと向かう。

 そこでは、椅子の背もたれに背中を預け、天を仰いでいる姿が見えた。

「やっと手を止めてくれましたね」

 小言のように天を仰いで座っている者へと話しかけると、顔をしかめて邪険そうに返してきた。

「邪魔しに来たの?」

「まぁ……そうなりますね。でも、貴女にとっては有意義なものになると思いますよ。なので少し話を聞いてもらえませんか?」

「仕方ないなぁ……それで?」

 少し考えたかと思うと、姿勢を変えて椅子の肘置きに肘を置いて、頬杖をついて話を聞こうとしていた。

 その様子を見て片づけをしていた者が話を始める。

「ここに住んでいるので知っていると思いますが、港の近くでモンスターが住み着います。そのことで協力をしてもらいたいのです」

「それで?」

「貴女の持っているもので、海に潜れるものがありましたよね?それを貸してください」

「はい?」

(あれを借りたいの……?まともに使えないのに……?)

 なぜそれが必要になるのかわからないまま腕を組んで考えていると、借りたいものがどんなものかを話し始めた。

「それって潜水艇ってやつが借りたいんだよね、でもあれって人が乗って海なんか潜れるようなもんじゃないよ?」

「はい、それです。まぁ普通には使えないでしょう。でもあの子なら何とかするかもしれないですし」

 それを聞いて顔をしかめて貸すことを躊躇っていた。

「まって、あんたが使わないの? それじゃ貸したくないんだけど……」

 それも想定済みなのか、表情を変えず条件を出してきた。

「なら貴女が貸すに値するか確認してみてください。それで貸しても良いのであれば、貸してあげてくださいね」

「そ、そうね。自分の目で確かめたら――ってここに来るの?!」

 うんうんと座って頷いて聞いていたが、返事をしている途中に気づいて驚いている。

 問いかけられたことに対して、少し考えたかと思うと、確証はなさそうに答えていた。

「そうですね……あまりはっきりとは言えませんが、貴女を頼らずにあのモンスターを駆除することは難しいでしょう。ただ、どういった形で貴女に会いに来るかはわかりません。」

「はぁ……私が巻き込まれることだけは分かったわ」

 深いため息とともに、姿勢を変えて頬杖をついて呟いていた。だが、その表情には好奇心ともとれる前向きな表情がにじみ出ていた。

「それだけわかっていただければ、十分です」

 返事を聞いて笑みを返すと、部屋から出ようと踵を返して扉のほうへと向かい始める。

 その背中に問いを投げかける声が聞こえる。

「ねぇ、あんたは、いつまでそうしているつもりなの?その話方といい――」

 振り返ると先ほどの笑みとは裏腹に、真剣な表情で答える。

「私のやりたいことをやっているだけですよ。最近は、面白い子が現れましたからね」

 それだけ答えると返事も聞かず部屋から出て行ってしまった。

(聞いたら不味かったかな……まぁいいや、作業でも――ってわからんままだった! ――よし、寝よう)

 部屋に残っているものは、話相手がいなくなったことで作業に戻ろうとしていたが、行き詰っていたことを思い出し、そのまま椅子で眠り始めた。


 *****


 二手に分かれてから少し経ったハンス達は、周りを見渡しながら歩いていた。

 するとふとカルラがつぶやく。

「……静かな場所ね」

 人はまばらにいるものの小波の音が聞こえるぐらいで話声がほとんど聞こえなかった。

 カルラに答える様にハンスが話しかける。

「やっぱりモンスターの影響なのか、それとも今の時間帯は、いつもこんな感じなんでしょうか……?」

「うーん……」

 カルラとハンスが首を傾げていると、近くを通っていた女性が、珍しそうに声をかけてきた。

「あら、この辺りでは見ない子ね。こんなところでどうしたの?」

「え? あ、王都の方から来ました。えっと……」

 カルラが答えたものの、どこまで話していいのか迷っていると、驚いたかと思うと申し訳なさそうにしていた。

「そうなのね、王都から……ごめんなさいね、いつもはこんなに静かじゃないんだけど、あのモンスターが現れてからこんな感じなのよ」

 そう話す彼女は、海の方へと視線を送る。そこに、カルラは詳しい人がいないか尋ねる。

「そうなんですね。あのモンスターについて知ってる人はご存じですか?」

 不思議そうにする彼女は、少し間をおいてその人物の居場所を教えてくれた。

「うーん……そうねぇ、彼なら知ってるかしら……、名前はねルーカスっていう船長をしていた人なの。たぶん、今なら造船場にいるんじゃないかしら」

「ありがとうございます。私達はこれで――」

 カルラが礼を言って切り上げようとしていたが、彼女は造船場まで案内すると言ってきた。

「場所わからないでしょ?私が案内するわ。 ついてきて」

 彼女に先導されながら、彼女は話続けていた。

 その後聞いた話では、その場所はこの港唯一の造船場であることや合間に小話を挟みながらも丁寧に教えてくれた。


 そして、ついにたどり着く。そこはほかに比べて忙しなそうな音が聞こえてくる。

 目の前には、ひと際大きな建物が建っており海側は、大きく口を開けるかのように壁がない。そこからは、作りかけの船だろうか、足場と思われる柵に囲まれているのが見えている。

 ハンス達は、その建物を見上げて驚いていた。

「大きいですね。もしかしたら学園の建物より大きいのでは……?」

 誰に問いかけるわけでもなくハンスがつぶやく。思いつく大きな建物の中で、一段と大きい学園の建物。その建物よりも大きく見えていた。

「あ、いたいた。 あそこで海を見てる人が、さっき言ってたルーカスって人よ」

 建物に視線を奪われていると、案内してくれた彼女が、建物の傍で海を見て黄昏ている人影を見つけて、探していた人物だと伝えてくれた。

 その声を聞いてハンス達は視線を黄昏ている人影へと向ける。そこにいたのは、帽子を深くかぶっており、隙間から見える髪は、白にも銀にも見える髪色をしている。服から覗かせている肌は、日に焼けて黒に近い茶色になっていて、筋肉質な大柄であり、横顔は老いが感じられる男性であった。

「彼に話してもらえるようにお願いをしてみるね」

 そんな男性の元へと彼女は案内すると、そのまま親しそうに男性へと話しかけていた。

「ねぇルーカス。ちょっといい? この子たちの話を聞いてもらえないかしら?」

「ん? あぁいいぞ。ちょうど暇をしていた所だ」

 話しかけてきた彼女へと顔を向けて潔く承諾していた。

「じゃあ、後はお願いね。私はこれで失礼するわ」

 それを聞いた彼女は、それだけ言い残してその場を去っていった。

 立ち去るのを見送ると、ルーカスは場所を変えようと提案してきた。

「ここで話のもなんだ、ちょっと場所を変えないかい?」

「えぇ、分かったわ」

 カルラが頷きながら返事をすると、ルーカスが造船場の中へと歩み始める。

「その中で話を……?」

 追いかけながら質問をすると、簡単に説明をしてくれた。

「あぁ、この中にな、ちょうどいい部屋があるんだよ」

「そうなの……」

 半信半疑のままついていき、造船場の中へと入る。すると、遠くからルーカスの姿に気づいたのか、駆け寄ってくる人影が見える。近くまで来ると、手に持っていた板とペンを邪魔そうに息を整えていた。

「――はぁはぁ、ルーカスさんじゃないですか。まだできてないですよ? 今日も来て…ボケたんですか?」

 ルーカスはムッとした表情で駆け寄ってきた人物の頭を両手でがっしりと掴み、睨みつける様に伝えている。

「そんなわけないだろう。昨日も来ていたが……、ボケてはいない!」

 頭を掴まれたまま何しにきたのか尋ねていた。

「じゃあ何をしに来たんですか?」

「部屋を貸してくれ、この子達と話をするんだ」

 そう伝えると掴んでいた手を離す。掴まれていた頭を抑えながら聞き直す。

「いてて――部屋を……?」

「そうだ」

 ルーカスの傍にいたハンス達を見て邪険そうにあしらおうとする。

「遊び場にするんなら貸せないなぁ」

「そうか、じゃあ君達、彼に話の概要を教えてやってくれ。俺もしらんしな」

 そう言ってルーカスはカルラに何を話すのかの説明を求めてきた。

「分かったわ。簡単に話すと、あの海のモンスターを駆除しに来たの。そのために実際に見た人と話をしようとしていたの」

 カルラがそう伝えると、2人してカルラ達を見て真偽を疑っている。

 無理もない、子供とみていた者達が海を荒らしているモンスターを駆除しに来たと言っていたからだ。

「この街にいるギルドメンバー(あいつら)も匙を投げだすようなやつらをねぇ……」

 駆け寄ってきた者がぶつぶつと言っていると、ルーカスが再度貸してもらえないか尋ねる。

「そういうことだから、少しの間部屋を貸してくれないかい?」

「……わかった。でも片付けなきゃいけないから少しこの辺りで待っていてくれ」

 それだけ言い残して駆けだしていった。


 ルーカスは、一息ついて船を見上げると、カルラ達に船について話をしたがっていた。

「ふぅ――貸してくれるようでよかった。それで、この船について聞きたいかい?」

「じゃあ、聞かせてもらうわ」

 待っている間、することがないこともあって、カルラ達は話を聞くことにした。

 造られている船の周りを歩きながら、意気揚々と話始める。

「この船はな、漁をするためにいろんな仕掛けがあるんだ。一番肝心なのは、『鮮度』だ。だから船の真ん中に大きな生簀を用意している。仕組みは知らないが、水が魚を逃がさずに入れ替えられるらしい。ほかにも、網を巻き取る仕掛けや、籠をすぐ放り込める仕掛けなんかもあるぞ」

「へぇ……すごい船なんですね」

 カルラ達は、話のほとんどを理解できなかったが、すごく凝った造りをした船なのであろうことは分かった。

 話をしていると、途中でルーカスが感傷に浸っていた。

「だろう? 前の船も良かったんだがな……あのモンスターに壊されちまった。その時乗っていたやつらも何人かやられてしまったからな……」

 どう声をかけていいか迷って黙々と話を聞いていると、遠くからひと際大きな声が聞こえてくる。

「おーい! 部屋の準備ができたぞ!」

「じゃあ、続きは部屋で話そうか」

 それに気づいてルーカスは、歩く方向を声のした方向へと向きを変える。


 部屋の中へと入ると、机に人数分の椅子が用意されていた。

 カルラ達と向き合う形でずっしりと椅子に座りこむルーカスがカルラ達に自己紹介を始めた。

「改めて、俺の名前はルーカスだ。話してた通り、船長をやっているもんだ。でもあんまり畏まった話方は嫌いだから気軽に話してくれ」

「私たちのことは、私はカルラ、彼はハンス、彼女はシャルロッテと呼んでください」

 それに応える様にカルラが返すと、ルーカスは本題について話すように促してきた。


「それで君達はどんなことを聞きたいんだい?」

「では、まずは、モンスターの特徴から聞こうかしら」

 そう言ってカルラが持ってきていた紙を机に並べる。

 ルーカスは、机に置かれた紙を一枚、また一枚と手に取りまじまじと見ていた。

「ふむ、ここに載っていないようなことを聞きたいということだな?」

 ルーカスが確認するとカルラは小さく頷く。

「ここに載っていないようなことか、うーん……」

 ルーカスがぶつぶつと言いながら紙を見ていると、ふと思い出したかのように、カルラ達に伝える。

「そういえば、襲われて海に落ちた時、こいつが伸びている元を見たような気がするな」

「そうなの?! それってどんな感じだった?!」

 その言葉にカルラが食いつく。その勢いに押されて、ルーカスの姿勢がのけ反る。

「あ、あぁまて、今思い出すから。――確か、一か所に3本の線が集まっているように見えたな。実際、あのモンスターは3体いるようだし、間違いないよ」

「一か所から伸びている…か」

「もしかして本体はその集まっている所では?」

 カルラが考えに耽っていると、ハンスが口を挟む。

 そのことにカルラも同意はするが、何か引っかかる部分があるようだった。

「そうね、そう考えるのが妥当だと思う。けど、どうやって船の場所とか正確に見つけてるの? だって植物だったものでしょ? 目なんてついてないみたいだし……」

 埒の明かない考察をしていると、ルーカスが付け加えてきた。

「それなんだが、その一か所に集まっている場所は、俺たちじゃその深さまで潜れないような深さだぞ?」

「え? そうなの? じゃあなんで見えたの?」

「丁度、時間帯が昼間で晴れていてな、その一か所に集まっている場所までは見えなかったが、途中までなら見えたんだ」

「なっ」

 ルーカスが付け加えた内容に3人が唖然としていると、紙に書き足していたシャルロッテが口を開く。

「さすがにここで対策まで考えるのは難しいのでは? 十分すぎる情報は得られましたわ」

「そうね……、一回5人で揃ってから考えましょ」

 そしてカルラが改めてルーカスに礼を述べる。

「ありがとうございます、ルーカスさん。ちゃんとこの情報を役立てますね」

「そうか……もっと話していてもいいんだがなぁ。魚の釣り方とかどうだ?」

 ルーカスが名残惜しそうに部屋で話を続けようと提案してきた。

「それは、このことが解決してから教えてもらおうかしら」

「分かった。その時はちゃんと教わりに来てくれよ」

 カルラがあしらうとルーカスは重々しく立ち上がる。


 全員が船の見える場所へと移動すると陽が沈み始めたのか、陽の光は届かず、室内には灯りが点けられていた。

「じゃあな、気を付けて帰れよ。俺はここの長に礼を言ってから帰るよ」

「そう……私達の分も礼を伝えておいてね、ルーカスさん」

「おう」

 そう言い残して長を探しに歩き始めた。

「じゃあ、私達も宿に帰りましょ」

 カルラが言うと3人は宿へと戻り始める。


 *****


 一方、ミアとテオは、二手に分かれてから少したった頃、街のどこかにある飲食店で、海の見える日陰の席で優雅にお茶を嗜んでいる。

 その傍らでテオは落ち着かない様子でミアへ尋ねる。

「あのミアさん? 僕達こんなことしていて良いのでしょうか……?」

「このお店なら船乗りが良く来るって聞いたじゃない? だからそんな雰囲気の人に話しかければいいのよ」

 自信あり気に答えるミアを見たテオは渋々お茶を飲んでいた。


 しばらくお茶を飲んで店に来る者を眺めていると、ふとミアと目が合った者がいた。

 驚いたような表情をしたかと思うと目が合った者がミアの方へと近寄ってくる。

 その様子を見てテオは警戒していると、目が合った者が遠慮深く尋ねてきた。

「ミアか……?俺だよ、ケヴィンだよ」

「え?」

 ミアは名前を呼ばれたことに驚く。相手の風貌をよく見てみるとある人物の面影があった。

「もしかしてとおさん?! だいぶ……雰囲気が変わったね、なんというか……ごつくなった?」

 泣きそうになりながらケヴィンはミアが学園に行ってからの事を話始めた。

「うぅ…こんなに大きくなって……元々、ミアが学園に行ってから俺はこっちに来て、元々していた仕事に復帰したんだが、最初は筋肉が衰えていて大変だったがな……この見た目通り、力仕事も難なくこなせるようになったんだ」

「そうなのね……」

 ミアが軽く返事をしていると、ケヴィンはなぜここにいるのかを尋ねてきた。

「そういえば学園は卒業したんだろう? でもなぜここにいるんだ? もしかして俺に会いに来てくれたのか?!」

 嬉しそうにしているケヴィンの期待には答えられないミアは、申し訳なさそうに答える。

「あー、仕事できたの、ギルドのクエストでね。そうしたらたまたまとおさんがいただけなの」

「そうか、そうだよな……」

 残念そうに肩を落とすケヴィンがふとミアの隣にいるテオへと視線を向ける。

「彼はどうしたんだい?」

「テオ君のこと? テオ君は学園で知り合った友達よ。仕事を一緒にしているの」

 それを聞いたケヴィンは不思議そうにしていた。見るからに子供であったからだ。

「でも見るからに歳若いと思うが……」

「まぁ、いろいろあるのよ。それでここで力仕事って何してるの?」

 説明がめんどくさくなったミアは誤魔化して話を逸らす。

「ん? あぁ、今は、倉庫の荷運びだよ。前は船に乗ってたんだけど、壊されちゃってね。新しいのができるのを待っているんだ」

 それを聞いたミアは嬉しそうにテオを見ると、テオも驚いた表情でミアを見ていた。

「船に乗っていた時の話、聞かせてよ」

「分かった」

 ミアが今回のモンスターに関係するであろうことを聞き出そうとしていた。

 ケヴィンは空いていた椅子に腰かけると、船に乗っていた時の話を始めた。

「俺は船の一船員でしかなかったけど、そこで漁の手伝いをしてたんだ。だがある日、船があのモンスターに襲われてね。何とか船長と一緒に命からがら逃げれたんだけどね。その後はその船長のツテで倉庫の荷運びをしていたんだ」

 それを聞いていたミアとテオは、モンスターについてさらに詳しく知らないかと尋ねる。

「そんな感じだったのね……、モンスターについてもうちょっと分かることないかな?」

「分かることか……」

 ケヴィンは思い出そうと考え込んでいた。

 しばらく考え込んでいると、ぽつぽつと話し始めた。

「そういえば……勘違いかもしれないけど、深いところから泡が出てきていたような……」

「泡……?」

「そう、まるで何かがいるみたいに泡が出ていたような感じだったはず。それ以外は思い出せないなぁ」

 ケヴィンはほかに思いさせるものはなさそうであった。

「それだけでも聞けたのはいいね、うん」

 ミアはうんうんと頷きながらつぶやいていた。


「そうだ、話は変わるんだけど、かあさんとはあったのか?」

「会ったよ」

 ケヴィンが話題を変えて、ミアの母親であるエマにあったのか尋ねる。ミアは小さく頷くとケヴィンは心配そうに話を続けた。

「そうかそうか、それで……俺について何か言ってたか?」

「うーん……一切話題に出てこなかったかなぁ」

「相当怒ってそうだな……、ミアが学園に行ってから数回しか帰ってないからだろうな……」

 ケヴィンが青ざめた表情で頭を抱えていた。

 その様子を見ていたミアは、ケヴィンに提案する。

「じゃあさ、あのモンスター駆除出来たら、一緒に帰ってみない?」

 光明が差したかのようにうるんだ目でミアを見ていた。

「そうだな、その時は一緒に帰らせてくれ」

 ひとしきり話し終えると、ミアとテオは、その場から立ち去ろうとしていた。

「テオ君、今聞いた話をカルラちゃん達と共有しに行こうか。とおさん、ありがとね」

「ん、そうか。また聞きたいことがあったら造船場に来てくれ、昼間ならいるからさ」

「分かったわ。じゃあね、とおさん」

 ミアとテオは、店を後にし、自分達の宿へと帰る。


 *****


 宿に着いたミアとテオは、カルラ達が、帰ってきていないことを知る。

「あれ? まだ帰ってきてないんだ」

「予定より早く帰ってきてますからね」

「うーん、どうしよっか」

 ミアは少し考えてテオに提案する。

「夕食でも頼んでおこうかな。皆すぐ食べられるようにね。それでいい?テオ君」

「それでいいと思います」

 テオは小さく頷くと、ミアは食事を頼みにカウンターへと足を運ぶ。


 頼み終えると、近くにあった椅子に座って暇をつぶしていた。


 その後、予定の時間よりも少し遅れてカルラ達が帰ってきた。

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