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転落






 


 僕の人生が変わったのは14歳の時。


 母の事は知ってるよね、僕が何度も語っていたし、理解していると踏んでいいかな?


 じゃ、続きを語ろうか。


 何が原因で僕の人生が変化したのか。君たちも気になるよね?


 僕自身は思い出したくない過去の一つである事に代わりはないんだ。


 それだけは覚えておいてほしいのは、僕の我儘かなぁ?


 僕は泣きながら言った。


 「大丈夫だよ…きっとよくなるから、だから安心して」


 僕の演技上手く出来ているのだろうかと不安になりながらでも、今僕が出来る事をするだけだと割り切る。


 『かおる…を置いて死ぬ事がつらい……。お前は箱入り娘で育ったから…心配なんだ』


 喉に穴をあけ、管を通している父の変わりようを目にしながら、大人になる選択肢しかない。


 本当なら、そんな状態の父を見たくないと目を背けるだろう。


 得に14歳。まだ子供、思春期の丁度いい時期。


 そんな時に、こんな事になるなんて分からなかった。



 母がずっと入退院の繰り返しをしていて、周りが僕に頭を下げ『悪役』になっただけ。


 だって僕が言わないと、あの人は言う事を聞かないし、父も言いたくないだろうから。


 僕が全ての発言者になるしか方法を知らないんだ。


 落ち着いたと思ったら、次は父だ。



 半年前、父は人間ドックをしたはずだ。


 その結果で悪いところはどこもなかったらしい。


 しかしそれから数か月もしない内に、父親の体調が崩れていった。


 周りに言われて検査すると悪性の肺がん、それももう末期、手遅れ。


 僕が14の時に後半年の命。半年持つかどうかも微妙らしい。


 

 何が何だか分からない。


 兄弟に言われる言葉を真っすぐ受け止めてしまい、どんどん狂ってしまう。


 逃げたい、消えたい、見たくない、信じたくない、夢であってほしい。


 母があんな状態で、父も後少しの命。


 僕は祖母と二人きり、祖母だっていつ死ぬか分からない。


 母の入院費用はどうしたらいいんだ?普通の仕事で稼げる額のレベルじゃない。


 夜の世界に入らないとやっていけない額だ。


 そして僕の家は土地を所有している。大体スーパーが建つ位の土地と山の畑と裏の畑、そしてこの本家の…。


 お金なんて足りる訳ない。僕には出来ない事ばかり。


 大人になれていれば、助けれたのかもしれない。


 僕はなんて無力で、子供なのかな?一人なんて怖くないはずなのに、いざまた人が死ぬなんて考えると弱い自分が出てしまう。




 誰かが助けてくれるなんて期待してない。


 どうにかしないとと思いながらも、心がついていかず暴走ばかりしてしまう。


 僕は人を傷つけてしまう宿命なのかもしれないね。悲しいね。


 


 そんな時だ。


 僕には兄がいる。助けてくれる為に地元に帰ってきたらしい。


 僕は純粋に喜んだよ?有難いと感謝もしたし…。


 でも、でもね、それは僕の勘違いだったのかもしれないね。


 今はやっと普通の関係になってきたから、もう大丈夫だけど。


 色々あって大変だったんだよ。


 僕を大切に思って帰ってきていたんじゃない。


 結局、全ては金なんじゃないかと正直疑った。



 だってさ、父に僕のいない前でこんな事言うたんだよ?


 『もう楽になれば?』と…。


 生きていきたいと願う人に、普通そんな言葉を吐くの?父は生きるんだと色々頑張っていた。


 痛みにも、苦しみにも、つらさにも、それでも、それでも…沢山微笑んでいた。


 『心配ないよ、かおる』


 そう優しく、頭を撫でる父とは正反対な兄。


 『お前が負担かけるから、あんな事になるんだ。親父をあんな風にしたのはお前のせいだよ』


 兄曰く、僕のせいらしい。僕の存在が僕の全てが、兄からしたら目障りだったのかもしれないね。




 命は乏しく


 ゆらゆら揺れる炎


 僕は両手で守りながら


 消えてしまう恐怖に怯えてる。









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