嗚咽
母が入院すると暴力はなくなった。
全て安定してきて、周りは笑顔、でも僕は…。
もう嫌だった。周りの吐く言葉に耐えれずにギリギリの状態を保っている。
『あの女がいなくなった』
『あの女』
『あの女…お前の母親』
『幸せ、幸せ』
『お前は不幸、不幸』
なんで僕が不幸なの?僕は何もしていないのに…。そう聞き返すと耳を疑う言葉ばかりが木魂する。
『あの女の子供だから…呪われた子供だから、後はお前だけ……』
暴力はなくなった。だけど…ここに僕の居場所なんてない。
どこにもある訳ないんだ。
心は崩れながら、狂ってゆく。今度は僕の番なんだね…。
周りは幸せ、僕は悲しみに包まれながら眠る。
何も聞きたくないと耳を塞ぎながら、眠る。
泣きたくないのに、叫びたくないのに、壊れたくないのに、もう誰にも止めれない状態。
「うあ……なんでだよおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
ガラスの音が響く中で、壊れた自分が笑ってる。
もうどうでもいい、人なんて、もう、人なんて…。
信じたくない。
「どうしてええええええええ、僕は……」
こんな事をするために産まれてきた訳じゃないのに…と言葉を飲み込みながら、嗚咽をあげる。
「だれか…たすけて」
項垂れる僕の背中、それを見ているのは静寂だけ。
「だれで…も……いいから」
助けて…。
二度目の言葉は飲み込んで、代わりにたとえようのない嗚咽が響く。
誰も助けてくれないのは分かってる。分かってるはずなのに…。
どうして、求めてしまうんだろうね。
これが人間なのかな?人の形なのかなぁ?
僕は、何も出来ないまま、眠りにつくしかないのかな。
顔が涙でグシャグシャで、凄く醜い表情になってるだろうね。
それを知るのは、鏡の向こうの自分だけ…。
そう思うと安心出来るのって変かな?
端から見たら可笑しな子供なのかもしれないけれど、そうやってもがきながら生き抜く事しか出来ない。
それしか知らないから……。