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温もりの夢

 



皆が私の背中を後ろ指指しています。


なんで、どうしてなんて思いながら、もう考える事を投げ出してしまった。


耳を塞ぎ、何も聞こえないと繰り返してる自分がいる。


そうやって現実から逃れようとするのが精一杯だった。


幼い私は、震えながら地面にしゃがみ込み、瞳に溜まっている涙が零れないように必死になっていた。


 『泣く事は弱い事、泣いたら誰も守れないんだよ』


 いつも言い聞かされていた父の言葉が、脳内の中でグルグル回っている。


グルグル回るのは、風車。


私の心も頭も、瞳も回ってる。


 「あ……れぇ?」


 私は大丈夫なはず、だって強い子だから…。


なのにどうして空が下になって、地面が上になってるんだろう。


分からない、分からない。


 グラグラしているのは私の心みたい。


 天秤みたいにアンバランスな心の形。


 それに耐えきれない私は、グラグラの世界に埋もれながら意識が遠のいてゆく。


遠くから声が聞こえるような気がする……。


 『かおる……ちゃん?』


 きっと私の空耳だと思う。


 だって現実世界に、私の味方なんて誰もいやしないんだから…。



 



 ゆらゆら揺れるのは私の心?


 グラグラ壊れるのは貴女の理性?


 私達はただ生きていきたいだけ。


 自分の命に向き合っていきたいだけなのに…。


 どうしてこうなるんだろう。


 クラクラするのは私の理想?


 崩壊するのは私の夢?


 その答えを知っているのは未来のあたしなのかもしれない





 ここは何処だろうか。


 瞳を開きたくても、どうしてだろう身体が動くのを拒否していて瞼がピクリとも動かない。


視界を感じたいはずなのに、何も見たくないと思っている自分がいて、自分の感情の矛盾に疑問が浮かぶ。


 ねぇ、知ってる?人間ってさ限界を超えると、見たいものも見えなくなるんだよ。


空の色が消えて、周りの風景が分からなくなって、そしてモノクロになるんだ。


それが進行すると、真っ白になって、見た事もない世界が広がっていくの。


それは光の世界。


光の世界はね、死の世界と言われているんだ。


私が見ているものがそれか分からないけど、それに近いものだと感じてる。


他の人に言ってしまうとオカルト好きなんて軽くジャンル括られて、引かれるかもしれない。


だけどね、私は何度も倒れる度に見えてる世界で、もう一つの私の中の現実世界でもあるんだ。


ただの妄想や、幻覚なのかもしれないけれど…。


それでも、その世界は私にとって一番の現実逃避。


心の安定剤なのかもしれない…。


 見たくないのに、まだ見えてしまう段階の私がここにいる。


人の声に敏感な私は目を開けてしまうと思う。


だって誰にも私の変化に気づかれてほしくないから、演じるしかないの。


それしか出来ないから、それしか言う事が出来ない。


 『か…おる…ちゃん、かお……るちゃ……ん?』


 薄っすらと鼓膜に振動するのは何処かで聞いた事のある声。


でも自分の家族じゃないのは分かる。理解してる。


 『大丈夫……は、まほう……の…』


 女の人の優しい声が聞こえる。


暖かい声、あっ、手を握られた。


心に染みこむ温もり。


懐かしい声、懐かしい匂い。


 (あなたはだあれ?)


 私は何も分からない。


誰だか知らない。


でも懐かしい匂いがする。




 それは私の記憶の一部分。


 現在いまでもその答えは見つかっていないんだ。



 ただ一つ分かるのは、私にとってとても重要な人だと言う事だけ。





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