国会中継
『あなたのお父さんは凄いわね』
ある日を境に、凄いと言われ、なんだろうと思い話を聞くとね…正直驚いた。
『国会中継に出てるし、新聞のトップ面じゃない、凄いわ』
僕の知らない父の姿、テレビから流れてる映像を見ながら、小学5年の僕は恐怖を感じた。
沢山の政治家、沢山のカメラ、沢山の欲、沢山の演説。
父は一体何者なのか、僕には理解出来なかった。
ただ、普通の仕事ではないよ、とだけしか聞いていないから。
その光景を見ると、僕がいる世界と正反対。
ある意味ね。
僕は同じ世界に引きずられないように、普通の子供として育てられたいわば『実験体』だから…。
今なら理解してるけど、それは違う。
僕が表に出るとマスコミがくるかもしれない。
全ての物事が僕のせいで壊れるかもしれない。
父と仕事をしていた人達は現役だから、迷惑かけてしまうかもしれない。
だけどさ、いいでしょ、もう。
どんだけ夢を潰されたか分かってる?
僕が表に出ようとして、何度何度潰され、挫折してきたか。
どんな気持ちだったか、筆を握る手が震える程の悲しみと恐怖。
もういいでしょう、隠さなくて。
もういいだろう?僕の存在を表に出しても。
それは守る、守ってるって事じゃない。
囲い込んでいるだけだよ。
僕の背中の自由と言う名の羽を捥ぎ取って、檻に閉じ込めているだけ。
僕は僕として、人生を全うするんだ。
父みたいに、利用して潰されて、病気に追い込まれ『死ぬ』なんて嫌だよ。