泣き声
現実の世界は僕の瞳が開く事で変化する。
当たり前を失ってしまった世界。
もしかしたら、僕は五体不満足になったのかもしれない。
不安しかない、そこには帰りたくないけれど、声が僕を揺さぶる。
『もう…一度だけ……』
ポタリと温かいものが僕の頬を伝う。
感覚で分かる、これは涙。
誰かが泣いている。誰かが僕を待っている。
そんな心の弱さが僕を現実へと誘うんだ、地獄しかないのにね。
光が刺す、瞳をゆっくりと、眩しい光で痛みを感じる位にジンとする。
僕は…どうしたんだろう。
身体は動かない、心が動くのを拒絶しているみたいに、動けない。
だけど、少しずつ視界を広げる事が出来る。
ボンヤリと見えるのは母の姿…そして父の姿。
そして祖母の姿なのかな?
はっきり見えない。色がないんだ。モノクロの世界に放り込まれた僕には現実を理解出来る頭はない。
ただ誰かが僕に視線を向け、耳から聞こえる泣き声で実感するんだ。
誰かが泣いているって。
僕は何も思わない。何も感情がない。
怒りも悲しみも喜びも苦しみも。
解放された色々な感情から出来たのは人間の身体をした、ただの人形。
それが僕なんだ……。