頓服
頓服を飲んできたよ。この薬は他の薬と違う。
やばい…今日、他の薬飲んでないな、だからこんなに苦しいのか心臓が…。
ピッチを上げて書けるものじゃないから、ゆっくり書くね。
今日書く文、今書きたい文を書いたら、二つの薬を飲むよ。
飲まないと、僕は生きていけなくなったんだ。
若い頃の母と同じになってきてる。
僕は母の写し絵だからね。
母はね、文学少女で、絵の才能もあったんだ。
正直言うね。子供の頃にある画家さんの弟子として色々学んでいたらしいよ。
あの人は水彩画を描いてたみたいだね。
画家になれる可能性があったけど、母の世界はね、今みたいに甘くない。
そりゃそうだよ、だって時代が違うもの。
こんな風に好きに生き方を選べれる時代じゃなかったんだからね。
父もそう。
元研究者、道路関係のね。
僕の父も頭が良くてね、当時、有名大学を全て受け、首席で合格したらしいよ。
父からしたら、自分の力を試したかったみたいだ。
有名大学に入るつもりなんてなくて、ただのゲームだったらしいよ。
周りに『お前が受かるせいで、本当に行きたい人が落ちるんだ…』と皮肉を言われたみたい。
でも父は気にしない。だった雑賀家の当主だよ?
そんなんで、務まる訳がないんだ。13代目なんて…。
僕達は全て、家の犠牲。
父も、母も、兄も、勿論僕もね…。
僕は乗り越えれてなくて、時々兄に昔の話をする。
そうすると怒るんだ、過去の事だ、聞きたくないと…。
そりゃそうだよね、聞きたくないよね。
だって僕達の人生は、狂いに狂って、二人とも大きなものを背負っているのだから…。
…ふう、少し落ち着いてきたね。
僕の飲む頓服はね、一日3錠まで。
それを破ると命の危険に関わる薬なんだ。
病院に行って、何度も倒れて、すぐさま看護師が用意してくれる。
ベッドに倒れ込みながら、蹲る僕は、猫みたい。
上向きに寝るとね、息苦しくなるから、そうやって寝ると、少し安心するんだと、色々教えてくれてそうしてる。
うーああああああ。
頭がボーッとしてきたよ。
やはり効くね、この薬。
僕の人生を狂わしてしまうかもだけどね、飲み続けると、依存して、母みたいになるかもしれない。
そのリスクがある薬。
オーバードーズが出来る薬なんだ、簡単に、ね。
眠気も来るんだ。頭がふわふわして、思考が停止してゆく…。
それでも、書きたい、僕の我儘。
死んでも構わないなんて、覚悟もしているんだ。
母もそうやって始まり、普通に壊れた。
医者が言うには、よく保ってる、普通の人なら狂って当然なんだとさ。
僕の精神力が凄いみたい。
『あんな経験をして、普通を演じれるなんて、信じれない』
どの病院に行っても、言われる言葉。
トラウマでしかなかった音楽が、今では僕の支えになって、助けてくれている。
安藤先生のお陰だね。今の僕が生きてられるのは。
何度もクビを括ろうとして、腹を刺そうとして、発狂して『死なせてくれ』て叫んでた自分を思い出すよ。
沢山の人に迷惑をかけたね、止めてくれたんだ。
正気じゃない僕の頬を叩き、馬鹿な事するなって…。
残酷だよね、こんなふうにしたのはその張本人なのにさ。
『生きろ』なんて言うんだよ。
沢山の責任を背負って、僕には何の関係もない人達の人生、命を背負って、苦しんででも生きろと言うんだ。
助けてくれる人なんていないのにね。
支えてくれても、誰も変わってくれないから。
僕を人生を歩めるのは、僕自身だけだから…。
また頓服を飲む、心と体を保つように…。
こんな状態で小説書いてるなんて想像もつかないよね。
ふわふわしていて気持ちいい…。
僕の心の安定剤はどこにもいない、僕の心を支えるのは複数の自分だけ。
三人の僕は、一つに混ざろうとしてて、昔に比べてよくなったと思う。
その代わり、当たり前を失ったよ。
悲しくはないよ。
僕は強いからね。
苦しくはないよ。
薬があるからね。
2、3分、間を取って書いてる。
無理居ない程度に、書き続ける。
僕が壊れないように、狂わないように、ゆっくりとね…。