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十字架





 僕が背負うものは一体何?


 後悔?悲しみ?寂しさ?


 孤独?懺悔?それとも狂気?



 沢山の罪と十字架を背負いながら、生き抜くしかない。


 僕は僕でしかないし、人生に責任をとれるのは他の誰でもなく、僕自身なのだから。


 ねぇ、君の涙は僕に向けられた涙なのかい?


 こんな汚れた、悪魔の子供な僕でも、いいのかい?


 愛してくれるのかい?愛され方が分からない僕を…。


 傷つけてしまうんじゃないかって怖いんだ。


 君の言葉は温かい陽だまりのようで、僕には眩しすぎる。


 羨ましいよ、僕も君みたいに『素直』になれればよかった。


 目を閉じても、君の事ばかり…。


 長い髪に揺れる向こうで泣き声がした気がした。


 『忘れないで…私の事を……』


 そう言って消える風のように温かく。


 涙だけを残して、安らかに眠る君。


 「おいていかないで、くれ僕は…」


 続きの言葉を飲み込むしか方法はない。


 口に出す勇気なんて僕にはない。


 (愛してる…なんて言えない)


 僕はずるくて臆病な人間なんだ。




 悲しい、悲しい過去の形。


 君と僕を引き裂いたのは大人達。


 僕の初恋。


 あたしの思い。


 私の悲しみ。


 全て混ざる僕達を、誰が許してくれると言うんだい?


 神様なんていないんだ。


 いたら、僕の願いを叶えてよ、お願いだから…。


 寂しく囁く悲しい風の音が、僕達の心の傷跡に染みる。


 (ありがとう、ごめんなさい)


 愛していた…いや今も愛しているよ。


 僕には記憶が殆どない、あの時の記憶が…。


 心が耐えきれず、嘆いて、苦しんで、無意識に忘れたんだと思う。


 でも懐かしい匂いと君の影は覚えてる。


 『ごめんなさい…』


 そう呟きながら僕を手放した君の悲しみも凄く理解しているよ。


 幸せになってもらいたい今の僕達なら、純粋に思える。


 あの時の僕は、そう思う事も出来ずに「なんで…?」なんて呟いて嘆く事しか出来なかったんだ。


 そう考えると、僕は大人になった。


 凄く、凄く大人になったんだ。



 悲しくはないよ。僕達は混ざり合って今は一人になっている。


 忘れた記憶の欠片は取り戻せれないけれど。


 君を愛した事実は本物だよ。


 それだけは理解出来るんだ。



 僕は罪人だろうね、端から見たら。


 いいんだ、それで。


 ツタリと流れる心の傷が結晶化され、溶けて涙に変わってゆく。


 凄く温かく。


 そうやって思いながらも、過去を描いてる自分がいる。



 苦しくないよ、もう乗り越えたんだ。


 僕がされてきた事も


 僕がしてきた事も


 僕は被害者でもあり、加害者でもあるのかもしれないね。


 ただ幼いから、許されただけで、今なら許されない事だからね。



 罪を犯さなかったのは祖母のお陰だよ。


 そうやって振り返りながらエッセイを書いてる僕達。


 こんな言葉しか出てこないんだ。


 こんな僕達は、少しでも強くなれたのだろうか?




 音楽に包まれながら、カチカチとパソコンのキーボードで文章を描く。


 絵のように心をぶつけて、描くんだ。



 それしか方法が分からない。



 音に塗れて、心に溺れて、感情を捨てて、昔を思い出しながら描く。


 チクリと心が反応しながら、僕を甚振る。



 それは罪の代償なのかもしれないね。






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