壊れた人形
家族の形は色々な形がある。
どんだけ人の家庭を羨ましがっても、それは人の庭になるから、何も変わらないんだ。
人の庭は遠くから見るとよく見えるけど、いざ近づくと『あれ、こんなんだっけ』って不思議に思わない?
それと同じだと思うんだ。複数の味方から色々な形を見ると全ては全然違う形になると思う。
まぁ、あたしが思うだけなんだけどね。
煙のように儚く。
闇のように揺らいで。
「ああああぁあぁあぁあっぁぁぁあぁああああ」
頭を抱えながら、発狂するあたしの姿がある。
まるで化け物と言っていい。
自分の事そういうふうに言うなと言われるかもしれないけれど、あたしにはそう見えるから『化け物』なんだ…。
化け物には涙なんて出てこない。
出てくるのは狂った自分だけ。
頭の芯が熱い、どんどん広がりながら沸騰しているみたい。
自分の脳が自分のものじゃない錯覚が半端なく、痛みと狂い始めた身体の軋みに耐えるしかない。
頭の中に虫が這っている。ゾロゾロとウニョウニョと、まるで自分の思考を食べられてるみたい。
色があったはずの世界が、急に変化してゆく。
白く白く、過去の心のように。
黒く黒く、あたしの心のように。
『かお………』
遠くで何か音が聞こえる。
あたしの耳は壊れたのだろうか?
音の聞き取りは出来るが、何を言われても、それが音にしか聞こえない。
あたしは壊れた人形のようにカクンと首を横に倒す。
「アナタハダアレ?」
あついあついあついあついあついあつい。
脳が解けてゆく。火山に包まれたように浸食されていく。
これはあたしじゃない。
あたしじゃないんだ。
頭が痛みを通り壊して、音を立ててガラス玉が落ちて壊れていくようにバラバラになる。
「ココハドコ?」
あははあはははあはははあはははあっははははあははははあははははははあはははは
この笑い声は誰?あたしじゃない。
(馬鹿なおねぇちゃん達、この身体はゆうがもらうね。かほおねぇちゃん)
あたしの背中にゆうがいる。
あの子はあたしを盾にしながら、この瞬間を待っていたんだ。
あたしが理性を崩壊するのを、あたしが支配してる状況を変化させる為に、あたしを利用したんだ。
ゆうは幼いあたし達、インナーチルドレン。
包丁を持ちながら、あたしの背中を突き刺す。
(ゆうのもの、ゆうのもの、ゆうのもの、沢山のおもちゃが欲しいの。全部ゆうのものだから…)
死んで?
壊れて?
狂って?
ゆうの囁くのは一番の悪魔の呪文。
あたしの脳みそを解かす悪魔の囁き。
もう何も考えれない、何も届かない。何も見つけれない。
何も、何も、何も。
届かない。
「い………や………」
その言葉さえも届かない。