表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/72

心音

 







 あたしには味方がいる。


 凄く凄く、心配してくれて、どんだけ狂っても、どんだけ泣きじゃくっても、捨てたりしない。


 あたしは怖い。


 見捨てられるのが怖い。


 母のように、都合のいい時だけ呼ばれて、見捨てられるのが震える程、恐怖。


 誰もあたしなんて見てくれない。


 誰もあたしを好きになってくれない。


 誰もあたしを必要とされていない。


 誰もあたしを人として見てくれない。



 『かおるちゃん大丈夫?』


 あたしは幼い頃からピアノのレッスンに行っていた。


 ピアノが好きな訳でも、音楽が好きな訳でもない。


 あたしにとって音楽はトラウマの一つ。


 腹を蹴られ、心臓を踏まれ、首を絞められ、そして包丁で刺されそうになった時に、いつも側には音楽が流れていた。


 恐怖の旋律、震える心、流れる涙、身体の痛み、心から流れ出る血。


 だからあたしは音が苦手、でもピアノの先生の安藤先生は私を守る為に、ここに居場所を与えてくれた人。


 音の恐怖を克服する為と、父の紹介で、逃げ場として提供してくれた。


 今言えば、あの人はあたしの恩師。


 世界を変えてくれて、私に音楽の心地よさを与えてくれた、大切な人。


 泣き続ける、あたしは彼女に聞くの。


 「…愛ってなあに?」


 『人を包み込む事よ』


 「…愛ってなあに?』


 『大切な人に思いやりを持つ事よ』


 「…愛……ってわからない」


 そう呟くあたしの唇は震えて言葉に詰まる。


 喉に感情が詰まったみたいに息が出来なくなる。


 身体が震える、寒くないのに。


 心が震える、つらくないのに。



 そんなあたしの状況が分かる彼女は大人。


 震える身体をぎゆっと抱きしめ、耳元で囁くの。


 優しくひっそり、温かくゆっくりと。


 『抱きしめる事が一番の愛情よ、安心するでしょう?』


 「……う……ん」


 『大丈夫、大丈夫、目を閉じてごらんなさい。安心するから』


 そう彼女に囁かれ、ゆっくりと目を閉じる。


 私の心音と彼女の心音がリンクし、同じようなリズムを奏でる。


 まるで重なっているみたいに…。



 温かい、温もり、あたしの心、癒されて、夢幻の世界へと誘ってくれる。


 とてもとても落ち着く心の温もりを残して……。









評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ