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家族と貴族

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 お医者様は診察を終えると、今日は安静にしておくようにと言い残し退室した。




 部屋の中には、厳しい顔をしたお父様とお母様と私の3人だけになった。




 お父様は社交界で『氷の公爵』と呼ばれるほど、冷たい外見をしている。銀髪のオールバックに切れ長の銀色の瞳、今は眉間にシワを寄せてるせいで更に冷たい印象を感じさせている。



(え、すごく怖いんだけど)


 お父様は冷たい人に思われがちだけど、本当は家族を大切にする優しい人である。


 ソフィアのことを鬱陶しい程に溺愛していて、お母様がソフィアを叱っても必ずソフィアを庇ってくれていた。しかし、そんなお父様が冷ややかな目で私を見ている。




(普段温厚な人が怒ったら怖いってお約束だよね…。怖い、これならお母様に叱られる方がまだマシだよ)




 お父様が怖くて、助けを求めてお母様の方に目をやると、私と目があったお母様はにっこりと微笑んだ。


(お母様、目が笑っていません…)




「ソフィア、私がどうして怒っているのか、貴女は分かっていますか」



 お母様が冷ややかな声で問いかけてくる。


(あっ、やっぱり、お母様の方が怖いや…)



「わかりません」



 私は正直に答えた。


 そう、わからないのだ。今までも好奇心の赴くままに行動して、結果として怪我をしたり物を壊してしまったことはあるが、今回は何も壊していないし怪我もしていない。


 だから、お母様はまだしもお父様までがこんなに怒っているのか皆目見当がつかない。



 私の答えを聞いたお母様は、深いため息をついた。



「ソフィア、貴女からは貴族としての自覚というものが全く感じられません」




「貴族としての自覚ですか?」


 ソフィアが”貴族”と聞いて思い浮かべるのは、前世の本やゲームに登場した貴族か、お父様やお母様である。


 確かにソフィアのイメージする貴族からすると、ソフィアのお転婆すぎる立ち振る舞いは貴族としての自覚が欠けていると言えるだろう。



 そう思ったソフィアは、


「それは、立ち振る舞いが貴族として相応しくないということですか。」


 と聞いた。



 しかし、お母様は即座に否定した。



「違います。旦那様が常々仰っているように、あなたはまだ子どもですし沢山遊んで、沢山のことに興味を持って欲しいと私も思っているのですよ。なので、立ち振る舞いや礼儀作法は今後徐々に身につけていけば良いと思っています」



「でも、お母様はすぐに怒るじゃありませんか。それは私の行動が貴族令嬢として相応しくないと思っているからでは無いのですか」


 今までのお転婆の数々に、怒ってるんじゃないとしたら、なんでお母様はいつもあんなに怒るんだろうと疑問に思って問いかけた。



「娘が危険なことをしたら叱るのは親として当たり前です。貴女が無茶をして怪我をしてしまったらと思うと気が気じゃないのですよ」


 今までのような貼り付けた笑みではなく、慈愛に満ちた微笑みを浮かべながらお母様が私の頭を撫でる。



「お母様…」



(お母様は私のことを心配して、あんなに厳しくして下さってたのね…)




(あれっ、じゃあなんで今回の件でお母様は怒っているんだろう。もう一度言うけど今回は怪我もしてないし危険なことはしていない)



 ソフィアがそんなことを考えていると、優しく頭を撫でていた手が止まった。


 不思議に思いお母様の方に目をやると、お母様の顔はいつの間にか能面のような微笑みに戻っていた。



「『あれっ』ではありませんよ、ソフィア。『危険なことはしていない』と貴女は思っているのかもしれないですが、確かに貴女に怪我や危険はありませんでしたが、貴女は他の者を危険に晒したのですよ」



 心の声が口に出ていた衝撃と、誰かを危険に晒していたというお母様の言葉の衝撃、このダブルショックは前世と今世トータルして27年生きてきた中でもトップ3に入る衝撃だった。



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