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前世の記憶と今世の記憶

 


 ───というのが私の前世での最後の記憶である。



 ソフィアはベットの中でぼんやりとする頭をフル回転させながら思い出した記憶の整理をしていた。



 今のソフィアの頭の中は、前世の記憶と今世の記憶がごちゃ混ぜになっている状況である。



 ……、



 私の前世の名前は園田涼香。

 短大を卒業し、小さい頃からの夢であった保育士になった1年目の夏に死んだ。

 死因は車に跳ねられての事故死。しかも、車の行き来を確認せずに横断歩道を渡るという私の落ち度で死んだ。


 全くもって、自業自得である。



 涼香がハマっていたゲームというのが『ノーティ・スター(通称ノースタ)』という、主人公の女の子(ゲームではプロデューサーと呼ばれていた)が様々な問題を抱える男の子たちをアイドルにスカウトし、アイドル界の頂点を目指すというゲームであった。


 このゲームの売りの1つがストーリーが展開するにつれて生まれていく男の子たちの絆であった。

 そこに涼香は友情以上の可能性を見出していた。



 そう、何を隠そう前世の私は腐女子だったのである。


 中学生の頃までは、乙女ゲームが好きな夢見がちな女の子であったが、高校の時に忍者のたまごの学園生活アニメを見ているうちに腐海にドボンした。



(まあ、そんな話はどうでもいいんだけど)



(あぁ、隼也(しゅんや)京介(きょうすけ)の地元まで京介を追いかけて行ったあの駅、隼也と京介が永遠を誓ったあの海、隼京(しゅんきょう)の聖地に行きたかったなぁ。あの時横断歩道をちゃんと注意して渡っていたら…)



 隼京とはノースタでの涼香の推しカプである。




 ソフィアは戻ることの出来ない前世に思いを馳せていたが、ドアの開く音に意識が引き戻された。



 ドアの方に目を向けるとアンナが驚いた顔をして立っていた。



「お嬢様、大丈夫ですか?使用人区域の庭で突然倒れられてから、2日も熱で寝込んでおられたのですよ」



 急いでアンナが私の元へとやってきて、失礼しますと言い、私の額に手を当てた。



「お熱は下がっているようですね。お体で優れないところはございませんか?」


 薄らと目の下に隈を浮かべたアンナが、心配そうな表情で問いかける。


「大丈夫よ、アンナ。心配してくれてありがとう」


 アンナに笑顔で答えたところ、アンナは安堵の表情を浮かべて、お医者様とお父様たちを呼ぶために部屋を出ていった。

 私は大丈夫って言ったんだけど、念のためにお医者様に見てもらうんだって。



(6歳児の脳に21年分の知識が流れ込んだんだもん。そりゃ知恵熱も出るでしょう…。)



(あっ、そうだ。お父様たちが来るまでに今世の記憶を整理しておかないと!熱が出たあとに急に性格が変わったりしてたらお父様たちに心配をかけちゃうからね)


 そう思ったソフィアは、次に今世の記憶を整理することにした。



 私は、ソフィア・ローレンス。

 由緒あるローレンス公爵家の長女。



 ローレンス公爵家というのは、ベルロアイトに於いて『三公』と呼ばれるほど力のある貴族。



 三公は、ローレンス家、ハッフルパフ家、ベイトソン家という国内に3つしかない公爵家を総称した呼び名である。


 三公は建国当初から存在し、歴代の国王の信頼を得て、内政のローレンス家、外政のハッフルパフ家、軍事のベイトソン家として、それぞれの指揮を任され、国内外を支えている。



 つまり、私のお父様は国内の政治のトップを任されている人物と言うことである。




(ソフィアとして生きていた時には当たり前に受け入れていたけれど、公爵令嬢なんて、前世が庶民生まれ庶民育ちの私には荷が重いわ…)



 前世の記憶を思い出す前のソフィアは、大層なお転婆娘で、よくお母様に叱られていた。



(OK、要は元気に動き回って、沢山遊べば良いわけね。そういうの大好き、大得意!)




 ソフィアがそんなことを考えていると、部屋のドアがノックされ、お父様とお母様、そしてお医者様がやってきた。


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