旗めくおむつと蘇る記憶
初投稿です。不定期連載を予定しています。至らない点も多々あると存じますが、よろしくお願いします。
※誤字報告ありがとうございました。訂正しました。
上質なふかふかのベッドに寝転び、緻密に編まれたレースの天蓋を眺めながらソフィアは考え事をしていた。
私はソフィア・ローレンス。
由緒正しきローレンス公爵家の長女。
ちょっとだけ好奇心が旺盛な6歳の令嬢だった。
そう、2日前までは…
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大国ベルロアイト王国の王都、平民の暮らす城下町よりも中心にある、貴族階級の者たちが暮らす場所、その中でもさらに中心、王城からほど近い場所にローレンス家の屋敷はある。
ローレンス家は、邸の立派さも然ることながら、ベルロアイト一と謳われるほど美しい庭園がある。
そんな季節季節の花が咲き誇る、手入れの行き届いた美しい広大な庭園に若い女性の声が響いている。
「お嬢様、其方はお嬢様にお見せできるような場所ではございません」
ソフィアは、お戻りくださいと告げる侍女であるアンナの声を背中で聞きつつ、緩くウェーブのかかった黒髪のツインテールをピョンピョンと跳ねるように揺らしながら中庭を歩き続けた。
ソフィア本人は知らないが、ソフィアは世間では『ローレンス公爵家の野猿令嬢』と呼ばれている。それほどお転婆な娘である。
そんなお転婆娘ソフィアが目指すのは中庭の先にある秘密の場所である。
アンナと日課である散歩をしていた時に、生垣の隙間から奥が見え、向こう側にも庭が続いていることがわかったのだ。
生垣の向こうには何があるのだろうと、ソフィアはまだ見ぬ世界への期待を胸にワクワクしながら歩みを進めていた。
気分はもう探検家である。
一方のアンナはこの先にあるのが使用人が洗濯物を干している場所であることを知っており、そのような場にこの家の当主の娘であるソフィアを連れて行くわけには行かないと必死であった。
そんなアンナの思いも露知らず、6歳になったばかりのソフィアは溢れんほどの好奇心を胸に使用人区域をどんどん奥へと歩いていく。
そして、たどり着いた先にあったのは、風に旗めく白い布であった。
「ねぇ、アンナ。あの布はなんなの?」
「あれは、ジャック様がお召しになられている下着でございます」
ジャックとは4ヶ月前に生まれたソフィアの弟である。
「あの長い布をどうやって下着にするの?」
「グルグルと体に巻きつけてお召しになるのですよ、お嬢様も以前はお使いになられていたのですよ」
アンナの答えを聞きソフィアは思った。
グルグルと体に巻くなんてジャックは動きにくくないのかしら?おむつカバーでもあればいいのに…
(あらっ、おむつカバーってなにかしら…)
自分で考えておきながら、聞き慣れない単語に首を傾げたその瞬間、
「へぇ、これが布おむつなんですね!私、布おむつ替えるの初めてです」
「おむつカバーってこんな形をしているんですね」
誰かの言葉と共に、
ソフィアの頭の中に濁流のように一気に情報が押し寄せてきた。
そのあまりの勢いに耐えることができず、ソフィアその場で意識を手放した。
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園田涼香は急いでいた。
ハマっているゲームの聖地巡礼をするために友達と旅行に行く予定だったのだが、出発の日に寝坊してしまったのだ。
このままでは電車の出発時刻に間に合わない。時計とにらめっこをしながら全力で走る。
信号のない横断歩道を渡る時、涼香は車の行き来の確認をせずに渡ってしまった。
毎日のように保育園で「右見て、左見て、もう一度右を見て渡ろうね」と子どもたちに言っていたのにである。
今までに感じたことのない程強い衝撃と車のブレーキ音の中、涼香の意識は薄れていった……
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昔のおむつ事情をよく知らないので、想像で書いています。イメージとしてはサ○エさんのワカ○ちゃんのパンツ並に嵩張ったおむつです。