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異世界帰りのパラディンは、最強の除霊師となる  作者: Y.A


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第百二話 事情聴取 

「校長先生、俺、なにか校則違反でもしましたか?」


「いや、そんなことはないと私は思うんだが、一部生徒の親御さんたちから通報のようなものがあってね。念のため、事情を聞いておこうかなと」


「そうですか。通報ですか……」


「うん、そうなんだ」




 私が校長を務める戸高第一高校は、つい数ヵ月前まではどこにでもある平穏な学校であった。

 今も大半は平穏なのだけど、新一年生として広瀬裕君が入学した時から、色々とトラブルが起きるようになった。

 入学してすぐ、私は広瀬裕君と彼の幼馴染の少女相川久美子君から届けを受けた。

 二人は除霊師で、もしかしたら除霊で公休を申請することがあるかもしれないと。

 この手の届けは、意外と多くの学校が受けているし、一部意地でも霊の存在を信じない先生や生徒、保護者の苦情や嫌がらせもあると聞くが、我が校は平穏だった。

 彼らが自分で、大したことない除霊師なのでと言っており、それが事実だったからだ。


 ところが最近、二人の活動が随分と派手になったような気がする。

 彼らは悪くないが、そのせいか二人とトラブルになる生徒や教師もいたからな。

 完全に向こうが悪いので、彼らを処罰する羽目になっていたが。


 実は広瀬裕君は、非常に優れた除霊師のようだ。

 次第に彼の周りに、清水涼子君、葛山里奈君、望月千代子君、葛城桜君などの女性除霊師たちが集まってきた。

 そのために、わざわざ我が校に転入してくるくらいなのだから。

 政治家に頼まれて除霊をすることもあり、先日は警察の依頼で除霊をしたとか。

 詳細は聞かなかったけど。


「先週の放課後なんだが、広瀬君と相川君たちは……その……いかがわしい場所で目撃されたと……」


 戸高市内にあるラブホテル街。

 ここで彼らを目撃した。

 これは『異性不純交友』なのではないかと、数名の保護者たちが言うのだ。

 今の世においてこれを罰するのは……やりすぎな気がしてならないような……。

 思い出せば私が高校生の頃、同級生でもうそういうことをしている人たちがいた。

 建前としては、『結婚するまで清い体で……』とか当時の年寄りたちが言っていたが、こっそりそういうことをしている同級生たちは一定数いたのが現実だったのだ。


 私のような真面目グループは、そういうことに縁がなかったけど。

 今なんて、余計にそういう人の割合が増えているのだから、言っても仕方がないような……。

 だが、私にも立場があるからな。

 一応、釘を刺しておこう。

 それに、どうせ除霊で行きましたって話だろうし。


「いわゆるラブホテルが複数ある場所だ」


「詳しい事情は話せませんが、そこに出た悪霊を除霊しました」


「なるほど。そうだと思ったよ」


 広瀬君も普段は普通の男子生徒だから、そんなことだろうと思ったよ。

 除霊の仕事なら仕方がない。


「相川君たちもかね?」


「はい、裕ちゃんの除霊のお手伝いです」


「そうかね」


 裕ちゃんかぁ……。

 広瀬君は、可愛らしい幼馴染がいて羨ましい。

 私にも、そんな幼馴染が欲しかったなぁ。


「あっ、でも。そのうち、私と裕ちゃんはラブホテルデビューするので!」


「ぶぅーーー!」


 私は安心しながら口に入れたお茶を噴き出した。

 突然この子はなにを言うのだ?


「裕ちゃんと私は卒業後に結婚するんです。でも、裕ちゃんは思春期真っ盛りのお年頃。だから避妊すれば大丈夫です」


「相川さん、なに勝手に裕君と卒業後に結婚する仮定で話を進めているのかしら? それはこの私よ。裕君はプニプニの相川さんよりも、お肌スベスベの私の方がいいはずだから」


「ああ、今朝米ヌカで洗っていたわね。涼子は精神がおばあちゃんよね。裕は、キュートな元アイドルの私を選ぶから。久美子も校長先生にそんな情報を流して、既成事実化しようとするのはやめてよね」


「師匠、私は傍に置いていただければ。子供も迷惑をかけずに育てますから」


「「「健気なくのいちキャラを演じるな!」」」


「あなたたち、広瀬裕は極めて優秀な除霊師だけど、ちょっと抜けている部分があるわ。だから、年上の私の方がいいはず。なにかあったら、生臭ジジイに尻拭いさせるし」


「会長の孫であることを開き直ったわね?」


「清水さんこそ、安倍一族であることを利用しているじゃない。きっかけは政略結婚でも、仲がいい夫婦なんて一杯いるから」


「じゃあ、私でもまったく問題ないわね。安部一族は面倒だから、私が対処するのよ。いわばこれは内助の功」


「師匠! 私なら護衛も完璧です!」


「裕ちゃんと私は、小さい頃から結婚を約束していて……」


「そんな事実、今初めて聞いたわよ。裕、毎日私が裕だけのために歌ってあげるから」


「料理くらい上手に作れるようになろうね、みんな。私は裕ちゃんの味の好みも完璧にマスターしているから」




 しまった!

 相川君たちを呼ばなければよかった!

 そういえばこの五人の女子生徒たちは全員が広瀬裕と噂になっていて、さらに五人とも美少女なので、噂では『広瀬裕死ね死ね団』が男子たちによってに結成されているとか。


 なぜか、他の女子たちは誰も広瀬裕に興味ないようだが、これは彼女たちが除霊師だからか?


「こらぁーーー! 噂を聞いたぞ! 広瀬が相川たち五人とラブホテルに行って、〇Pをしたと! そんな羨ましい……じゃなかった! 異性不純交遊ではないか!」


「中村先生、教師であるあなたがそんな無責任な噂を流さないでください!」


 いきなり校長室に飛び込んできた中村先生であったが、教師が伝言ゲームに流されてどうするというのだ。

 まあこの人の場合、女性にモテな過ぎて大変だという話は教頭先生から聞いていたけど……。


「広瀬! 聞いているのか?」


「仕事で行っただけですよ」


「仕事で相川たちとしたのか? それは男としてどうなのだ?」


「なわけないでしょうが! 除霊の現場がラブホテルの部屋だったんです!」


「除霊でしたのか?」


「そんな除霊あるか!」




 今ふと思ったんだが、わざわざ広瀬君たちを呼ばず、『除霊で行っただけでした』と適当に言い訳しておけばよかった。

 特に中村先生が……ウザイ。

 早く誰かと結婚して、落ち着いてもらえないだろうか?

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― 新着の感想 ―
[良い点] 久美子にエリーゼの正妻力を求めるのは不可能ですね。せめてラブホデビューとか引いてしまうセリフは勘弁してください。 [気になる点]  千代子は「護衛は完璧」などと言っています。それで思った…
[良い点] > 『広瀬裕死ね死ね団』 誰だって結成する。 俺だって結成する。 団長が中村先生っぽいのがアレですが。 [気になる点] オイコラ女性陣。そういうこと言っちゃいけない相手に何をぶっちゃけてい…
[一言] 最後の「除霊でしたのか!?」の流れを書きたかったんじゃないですかw 例の作品が頭に浮かびましたw
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